……満腹って、こういう感じなんだ……

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表題作恋も食事もあなたと二人

降町恭平,34歳,取引先の副編集長
佐々木夕都,23歳,落ちこぼれサキュバスでデザイナー

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

人から精気を吸えずふらふらの落ちこぼれサキュバス・夕都。
何も知らず救いの手を差し伸べてきたのは、取引先の副編集長で密かに片想いをしている降町で…。

本来女性であるべきサキュバスに生まれた夕都は、男性を誘惑する淫魔。
しかし他人の精気を吸う行為に罪悪感があるため、従姉に助けられてやっと生活している。
そんな夕都の片想いの相手は取引先の副編集長・降町。
食も遊びも洗練された大人の彼とつき合うことになり、夕都は初めてのベッドで優しく甘く満たされる。
けれどこれは自分のフェロモンがさせたこと。一晩限りの夢だったと別れを覚悟するも、抱き寄せてくる降町の手を拒めなくて…。

作品情報

作品名
恋も食事もあなたと二人
著者
葵居ゆゆ 
イラスト
香咲 
媒体
小説
出版社
二見書房
レーベル
シャレード文庫
発売日
ISBN
9784576191140
3.6

(46)

(6)

萌々

(26)

(9)

中立

(2)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
9
得点
163
評価数
46
平均
3.6 / 5
神率
13%

レビュー投稿数9

うっすら透けて見える策士ぶりにニヤニヤしちゃいました

超臆病で悲観的な受けと、そんな彼をこれでもかと大きな愛情で包み込みまくる世話好きな攻めによる、とても優しくてあたたかいラブストーリーになります。
受けの自己否定感があまりに強いと言う点では好き嫌いが分かれるかもしれませんが、個人的にはとてもツボなお話でした。

いや、攻めの愛と言いますか、器がとにかくデカイのです。
不憫な子が、攻めの大きく揺るぎ無い愛情で満たされてゆくー。
ってパターンが死ぬほど好きでして。
ついでに、意外と攻めが策士なのも楽しい。
更に、受けがその事に全然気づいてないのが、これまた楽しい!
サキュバスである受けは罪悪感を持ってますが、絡めとられたのは、どちらかと言うと自分の方なんじゃない?と。


内容ですが、憧れの取引先の副編集長・降町×デザイナーで落ちこぼれのサキュバス・夕都による、スレ違いがちょっぴり切ない優しくてあたたかいラブストーリーで同居ものです。

男性を誘惑する淫魔ー[サキュバス]でありながら、男性体として生まれた夕都。
臆病な彼は他人を誘惑して精気を貰う事がなかなか出来ず、従姉から精気を分けてもらって生活しているんですね。
そんな中、片想い相手である降町に危ない所を助けてもらった事をキッカケに、無意識にフェロモンを放出して彼を誘惑してしまいます。
初めての行為で優しく甘く抱かれ、心もお腹も満たされる夕都。
降町から側に居て欲しいと口説かれますが、彼の気持ちがフェロモンの作用でしか無いと分かっていてー・・・と言うものです。

夕都ですが、サキュバスでありながら男性体である事や、普通より精気を多く必要として両親を倒れさせてしまった事から、とても臆病で自己否定感が強い青年(淫魔?)になります。
まぁそんなワケで、自身で狩りをして精気を貰う事が出来ず、ずっと空腹状態なんですよね。
また、自分は不必要な存在なんだと強く思い込んでいて、わりとグズグズやってたりもする。

で、そんな彼を優しく穏やかに包み込む大人の男性・降町。
料理上手で世話焼きで、とにかく包容力があるスパダリですが、うっすら透けてみえる策士ぶりも素敵だったりします。

と、こんな二人で始めるのが甘くて優しい同居生活。
実はペットである猫を亡くしたばかりの降町。
フェロモンで無理矢理好意を持たせ、自身を抱かせてしまったと罪悪感でいっぱいの夕都は、降町から一緒に暮らそうと誘われても断ろうとするんですね。
しかし、降町からペットの話を聞かされ、彼の心の傷が癒えるまでの間だけでも共に暮らそうと決意するー。

こう、夕都ですが、やたら悲観的であると共に、ちょいズレてたりもします。
実は読者側には、降町があからさまに夕都を好きで手に入れようとしてるのが分かるんですよ。
夕都が逃げ腰になる度に、「マナ(ペット)とも一緒にお風呂に入ってた」だの、「マナにもこうやって食べさせてた」だの猫なで声で言い、共にお風呂に入る事や「あ~ん」で食べさせる事に成功する。
いや、策士ですわ。
「マナちゃんが・・・」と、アッサリ騙されてる夕都が、若干気の毒になりますわ。

と、そんな日々を過ごす中、降町から「好きだ」と告白される夕都。
彼の想いがフェロモンによる勘違いだと思っている彼は、もう自身から解放してあげなくてはと別れを決意し・・・と続きます。

こちらですね、あまりに夕都がネガティブすぎて、若干イラっともするんですよね。
ただ、ここで見せる降町の言動がめちゃくちゃカッコいいのです!
もうすっごい包容力ですよ。
これぞスパダリの鏡ですよ。
ついでに、結構なヤキモチ焼きだったのにもニヤニヤですよ!

と、とにかくこれでもかと攻めの愛が大きくて揺るぎないお話なんですよね。
いや、これくらい後ろ向きで自己肯定感が薄い受けには、ちょうどいいんだろうなぁと。

あとですね、終始夕都視点で進みますが、前述の通り降町の策士ぶりがうっすら透けてみえる仕様です。
こう、ペットを引き合いに出しては、甘え下手な夕都を甘えさせてるんですよね。
ただ、策士策に溺れる!
すっかりマナの代わりだと思い込んじゃった夕都から「寂しかったらいくらでもマナちゃんの代わりになります」とか言われてしまい、「ー君は絶対、根本的な所を勘違いしてるだろう」と降町がため息混じりに言ってるのにはニヤニヤしちゃいました。

12

恋も食事もあなたでいっぱい

男性を誘惑する、本来は女性体が多いはずの淫魔(サキュバス)の男性体として産まれたデザイナー・夕都が初恋を実らせるまでのお話です。

サキュバスとして、本来であれば他人をフェロモンで誘惑して精気を得なければならないのですが、過去に両親の精気を両親が倒れるまで取り過ぎてしまった事がトラウマになってしまったのと、その気がない相手をフェロモンで誘惑する事に引け目を感じていて、サキュバスは普通の食事では満たされないため、常に空腹状態の夕都。
同じくサキュバスである従姉妹からのハグで精気を分けて貰ってどうにか生活をしている状態で、このままでは駄目だと渋々出逢いを求めバーへ向かいますが、フェロモンを出して見知らぬ男性を誘ってみるものの、やはり無理だと思っているうちにトラブルになりかけてしまいます。
そんな所を助けてくれたのが、夕都が密かに恋をしていた取引先の出版社副編集長・降町。
そのまま降町の部屋まで連れられ一夜を共にすることに!
翌日、片思い中の相手・降町の体液と精気を中から摂取した事で心と体とお腹が満たされている事に驚き、更に降町の手料理を味わって今までにないくらい普通の食事も美味しく感じる夕都。
そんな夕都の食生活を心配したのか、降町から良かったら一緒に暮らさないかと提案を受け、同居生活を送ることになり…


受けの夕都視点で描かれた今作。
夕都の自己肯定感が自分の生まれや過去・男性サキュバスという劣等感をこじらせているのか、終始じれったいくらいあまりにも低すぎるのです。
ここが苦手な方はいらっしゃるかもしれません。
(不憫系オメガバースのオメガのよう…)
しかしながら、攻めの降町がこれまた凄い執着溺愛攻めでですね!
悲観的かつちょっと天然な夕都をさり気なくあの手この手でこれでもかというくらいでろでろに溺愛し、あっという間に恋人関係にまで持って行ってしまいます。
いやいや、降町さんお見事!!見事な執着っぷりとちらほら見え隠れする腹黒感といいますか、策士っぷりが凄い!!
夕都は自分のフェロモンを嗅いだせいで降町は自分の事を好いてくれているんだと勘違いをしているのですが、そんなことは全くなく、降町は以前から全力で夕都の事が好きです(笑)

はじめに夕都の初恋が実るまでのお話と書きましたが、降町が夕都を囲い込むまでの間違いかもしれません…(笑)
夕都の思い込みですれ違ったりもしますが、全体的に可愛らしいラブストーリーでした!

淫魔ものなのでベッドシーンも多いのですが、どのシーンも甘い言葉責めが多く、夕都がふにゃふにゃになっていく様子が可愛らしかったです!
最初は空腹感でいっぱいだったのに、いつのまにか身も心も降町でいっぱいに…
降町さんの絶倫振りに、途中でもしかして彼も淫魔なのでは…?と疑ってしまいました…(笑)

穏やかな溺愛執着攻めにどろどろに愛される受けがお好きな方におすすめです!

3

こわがり淫魔の初恋物語

今回は出版社文芸部の副編集長と男性サキュバスのデザイナーのお話です。

受様が精気を得る為に誘惑した攻様と恋人なるまで。

この世界の人口の2割は「人ならざる者」と言われていますが、受様は淫魔の
中でも男性を誘惑するサイキュバスなのに男性型で、生まれてからであった
数少ない人外でも自分と同じ存在はいません。

まだ両親から精気を分けてもらっていた子供の頃に、空腹のあまり吸い過ぎ
て具合を悪くさせた過去があります。両親は受様を責めはしませんでした
が、接触をしたがらなくなり、受様が独立した今では年に1度の連絡がある
かないかの関係となっていました。

受様もその1件が精気を吸うことがトラウマになり、セーブするうちに吸う
行為そのものがすっかり下手にもなっていました。生きていく為に必要な事
だとわかっていても、女性なら種族を残す為と思えても、男である受様には
子供も産めません。

好意もない相手を誘惑してその気にさせるのはズルイ様に思えサイキュバス
という種族がそもそも好きではないのです。精気を貰ってまで生き延びる
必要があるのかと思うと誰に対しても申し訳ない引け目を感るのです。

そんな受様を心配する同じサイキュバスの従姉はハグによって精気を分けて
くれますが、倒れない程度しか受け取れない受様は万年精気不足です。その
従姉も結婚を控えているために遠からず、自立しなければいけません。

でも恋をした事の無い受様にはセックスには苦手意識があり、どんなに空腹
でも誘惑して一夜を共にしたいと思った事も、キスしたいと思った事すらあ
りませんでした。

そんな受様でしたが、従姉とともにて出向いた仕事先の出版社で出会った
副編集長に遅い初恋をする事となります。その男性こそが今回の攻様です♪

攻様は物腰が穏やかで落ち着いた雰囲気をまとう文芸部の副編集長です。
多くの作家の担当をしつつ、若手編集者の面倒を見ている事も仕事の出来る
社会人として素敵だと思えますし、的確で丁寧な対応は見習いたいと思える
相手だったのです。

攻様への向けた想いが尊敬ではなく恋だと気づきますが、彼には同居人が
いると知って失恋の痛みと共に安堵もしたのです。大切な人だからこそ眺め
て至るだけで良かったし、誘惑して嘘の好意で抱かせるなんて暴力に等しい
とさえ思うのです。

そんな受様を心配した従姉に恋人探しで来る人が多いというバーを紹介され
て行ってみる事にします。しかし、声をかけてきた遊び慣れた雰囲気の男に
フェロモンを放ってみるもののキスの寸前で逃げ出してしまいます。

そこを助けてくれたのが帰宅途中だった攻様でした。攻様は動転する受様を
落ち着かせようと自宅でもてなしてくれますが、意識しなくてもフェロモン
が溢れて出してきて一夜を共にしてしまうのです♡

翌朝、攻様は甲斐甲斐しく朝食を作ってくれて、受様は叶わないはずの恋が
嘘でも叶った事に幸せを噛みしめますが、食の細い受様を心配した攻様に
同居しようと言われてしまい!?

サイキュバスとして人間を誘惑できず精気が得られない受様が仕事相手で憧
れの人である攻様を誘惑した事から始まるすれ違い系ラブコメディです♪

自己否定の強い天然系受様と執着系で強気な攻様というカップリングが
とても葵居先生らしいお話でたいへん楽しく読ませて頂きました (^-^)

受様は男性を誘惑して精気を貰うサイキュバスですが、両親2人の精気を
吸って倒れされたトラウマから精気を吸うという行為が苦手になります。
また自分と同じ性である男性を誘惑するサイキュバスと言う種族そのものを
厭うていて自己否定が強い青年なのです。

そんな受様が憧れていた攻様をひょんなことから誘惑してしまい、彼と恋人
関係になり、好きだと言われるのですが、それは自分が誘惑したから攻様は
勘違いしているだけだと全く本気にしないのですよ。

しか~し、どう見ても攻様は受様をロックオンして囲い込んでます♡

寝た翌日に同居を提案して会社までお迎えに参上したり、可愛がっていた
愛猫を引き合いに出して、受様を愛猫に見立てて彼女はこんなことをして
くれた、あんなこともさせてくれた・・・といって受様にいろいろしたり、
させたりするのですから腹黒系策士ですよ。

本当なら純な受様が可哀想になるのですけど、受様の自己否定の根強さを
考えるに、これくらいの相手でないと受様を安心させられないのかな!?

こういう腹黒さんは大好物です、たいへん美味しく頂きました m(_ '_)m

今回は健気受な葵居さんの既刊『九天楼の買われた花嫁』をお勧めです。
こちらも人外ファンタジー設定です。

2

乙女チックです

年が明けてから読む本の多くが何故か『控えめな受け』なんです。
偶然でしょうか?それとも流行り?

夕都は『自己評価が低いあまり自分への好意に鈍感な受け』です。
子どもの頃に両親から与えられた精気(サキュバスの栄養の元ですね)を加減を知らずに大量に奪ってしまったため親が体調不良に陥り、延いては両親と別々に暮らすことになってしまうという悲しいいきさつがあります。そんなこんなで、夕都は人から精気を奪うサキュバスであることを嫌い、23歳にもなるのに清いままで(人サキュバスなのに!)人間を誘惑することが出来ずにいます。

「いやいや、違うだろう。主たる原因はそれじゃないだろう」と思いまして。
夕都が降町の精気を奪うことに罪悪感を感じるのは、彼が心底から『乙女』だからなんじゃないかと。

降町は夕都の初恋の人です。
夕都は『人を性的に興奮させるフェロモン』を出すことが出来るのに、降町の前では決してその必殺技を使おうとはしません。おまけにそんなことをするのは卑怯だと思っています。
セックスしたいわけじゃないんですよ。
好きになってもらいたいのです。

見方を変えれば『フェロモンを出せる』というのは夕都の能力(あるいは魅力と言い換えても良いと思いますが)です。それも含めて好きになってもらおうとしないというのは、自分の別の処を降町に評価してもらいたいからですよね。
「どこを?」と考えたんですけれど。
多分『どこ』という明確な部分ではなくて、自分の存在というか『芯の部分』じゃないかと思うんです。
攻めの降町さんも包容力があって、優しくて、大人で、現代風味に『料理上手』で、無理強いはしない人。

で、気づいたのです。
ああ、これ、乙女浪漫の物語だ!
主人公がラストに「だけどそんな君がすき」って言われるやつだ!

今はこんなになってしまった私も、オトメン夕都と一緒に少女の頃のドリームに浸ることが出来ました。
今現在乙女真っ盛りの方にも、言葉として無理がありますが『古の乙女』の姐さま方にも、ホンワカした気分を運んでくれる一冊だと思います。

2

なんて素敵な攻め!

もどかしくて何度も読むのを諦めそうになりました。

主人公夕都は男なのにサキュバス。男の人をフェロモンで誘惑し精気を吸わないと干からびてしまう。でもそんなことしたくなくて…。何重にも自分の存在を認められなくて。

初恋の人である取引先の副編集長の降町。とっても紳士でそつがなくて励ましてくれて。

んもう初恋の人が抱いてくれて甘やかしてすぐ同居に迎えて美味しいご飯を食べさせて楽しくデートしたり、こんなに良くしてくれるのに!なんで夕都は凝り固まってるの?
フェロモンで誘惑しちゃったから、本当は降町さんは…って罪悪感ばかりで。
夕都さえ素直になればとっても幸せな恋人になれるのに、降町の深い愛情に必死で抗ってすれ違って。それが一冊の半分くらい続いて。

終盤で明かされる降町の秘密に、そうだったの〜!?なんで言ってくれなかったの?
うーん、夕都が嘘をついたりしてたから?

もう辛いすれ違いは本当に苦手なんです。もったいない!素直に打ち明けたりしてればその分もっと早く楽しく幸せに過ごせたのに。

2

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