ボタンを押すと即立ち読みできます!
作家買いです。沙野作品は設定がちょっとファンタジーというか特殊なものが多い気がしますが、こちらの作品もちょっと斬新な設定のお話。
ネタバレ含んでいます。苦手な方はご注意を。
主人公は不動産会社に勤務するリーマン・堤。彼視点でストーリーは展開していきます。
イケメンでガタイもよく、仕事面でも優秀であるというハイスペックな男性。
世間では「枯れ人症候群」という病が蔓延中。
何かのきっかけで、やる気をなくし行動が緩慢になるという奇病。水を異常に飲みたがるという症状はあるものの、これといって特効薬もなく「水師」と呼ばれる人にしか治せない病気。
堤はなぜか子どもの頃から「枯れ人」に付きまとわれるという経験をしていますが、それがなぜなのか堤自身には全く分からない。
そんなある日、堤の勤める不動産会社にとある依頼が舞い込み、その仕事のために赴いた屋敷に住んでいたのは「水師」である保嵩と公認会計士の響二の九里兄弟で…。
というお話。
仕事遂行のために保嵩にいいように雑用係として使われ、初めは「水師」という仕事に否定的な考えを持っていたため九里兄弟に対してネガティブな感情を抱いていた堤ですが、保嵩の水師の仕事を手伝うようになり、徐々に彼に惹かれていく堤。
保嵩という青年はビジュアルは儚げで美人さんに分類されますが、口を開くと罵詈雑言が飛び出してくるというギャップ持ち。そして、水師としては有能で、自身の仕事に対して誇りと情熱をもって働く青年でもある。
そんな保嵩に惹かれていく堤の気持ちが手に取るようにわかり、応援したくなるのですが。
ここで出てくるのが保嵩の弟の響二の存在。
響二という青年もなかなか癖のある青年で、何を考えているのかわからない。
分からないのだけれど、彼の行動はすべて保嵩のためなのだろう、ということも透けてみえてくる。
「水師」という仕事。
保嵩が抱える過去のトラウマ。
堤が「枯れ人」に付きまとわれる理由。
そして響二の、保嵩への想い。
緻密に組み立てられたストーリーと、キャラのたった登場人物たち。
どうなるのかとページを捲る手が止められませんでした。
保嵩が水師の仕事を行うと、自身の「水」を相手に与えることになるため水分補給が必要になるのですが、その方法で最も有効なのが性的な接触。
という事で、保嵩は響二とも行為(挿入まではナシ)をしている。
響二に拒否られた後は堤と。
保嵩の方はそれらの行為を「セックス」とは認識していないのに対し、攻め二人が保嵩に恋心を抱いちゃってるので、これがまたなんとも切ない。
終盤で保嵩が危機に陥ったあとの行為が!
堤、保嵩、響二の三人の、
サンドウィッチです☆
誰が誰に挿入しているのか、書いちゃうとネタバレMAXなのでここでは控えます。
ぜひとも読んで確認してほしい!
ただ、攻めが受けになる、というパターンが地雷の方にはちょっときついかな…?と思います。
でもなあ、響二が不憫だった…。
保嵩は堤と響二の二人が欲しい、と告げていて、二人もそれを了解している。
という事は、きっとこの三人はこの三人なりの関係を築いていくのだと思うのだけれど。
響二は兄ちゃんが大好きで、彼のすべては保嵩のためにあるといってもいいくらい。そんな彼が、兄弟という枠を維持し続けたいと願う保嵩の意向を組んで身を引く姿に思わず萌えが滾ってしまった…。
通常の3Pという形とはちょっと違っていて、それが面白いと思うか、はたまた響二が可哀想と思うかは、読んだ方それぞれの感じ方なんだと思います。
でもとにかく面白かった。
スピンオフが出るんじゃないかな…?という登場人物もいたりするので、そちらも楽しみです。
レビューをまったく読まずに読みはじめたので、ラストはまさに驚愕、「えーっ、そうなるの!?」だった。もう想像の斜め上、まさに度肝を抜かれてしまった。いやー、たまげたなあ…。
まず、なんといっても受けとその弟の関係にめちゃくちゃ萌え! こんな兄弟萌えの話だと思ってなかったので、ドキドキし過ぎて序盤から中盤にかけては、なかなか読み進められなかった。弟の兄へ執着、兄の葛藤なんかが、もう本当に切なくて。
体内の生体エネルギー「水」が枯渇する病気「枯れ人症候群」が蔓延している世界。それを癒す力を持つ「水師」の保嵩は幼いときに両親をなくし、弟の響二と養父母のもとへ引き取られる。枯れ人だった養母を癒すため、水師としての力を使わされていた兄。力を消耗した兄に自分の体内の水を分け与えるため、弟は兄にキスをする。そうして、兄弟のちょっと爛れた関係は始まり、段々と深まっていく。
なぜそういう触れ合いをするかと言うと、「水師」のお仕事は手を握っての水やりだけど、粘膜からの接触の方が効率がいいそうで。つまりお口の中やら性器やらの接触で、兄は弟から水を補充し、大人になってからも仕事終わりにはいつもふたりでエロエロしていたってことで…。いやー、なんて素敵な設定(笑)
兄は養父母を救えなかった過去のトラウマから、いつも仕事で限界まで力を使おうしてしまい、家のなかでもよくぶっ倒れてしまう。弟はそんな兄の安全確保のために、家中にカメラをつけて兄をつねに監視。
実は水を無限に湧き出させることのできる「水人」という特異体質だった攻めを、兄の仕事の際の「水筒係」として宛がったのも、すべて弟の策略だった。まさに、何もかも兄のために生きているような弟…。
とは言え、兄弟は最後の一線だけは越えることなく、兄は攻めといい感じになり、一度は弟は攻めに兄を託して身を引く。やっぱり兄弟だし、もう大人なのにいつまでも兄弟でエロエロしてちゃいけないと二人とも思ったりする。この辺り、本当に苦しくて。だから、そのまま弟は蚊帳の外で離別エンドかなー、と私も思ってた。
そこからの「えーっ、そうなるの?」なオチなので、もう意外過ぎて、でも萌えて萌えてしょうがなかった…。弟の発想もすごいが攻めもすごい。懐が深いわ、としか言えない。
どんな変則的プレイでもどんとこいな方に、是非読んでみて欲しい。兄に執着する弟が好きという方にもおすすめ。
奇病・枯れ人症候群を治療する水師の話。
九里保嵩 水師。枯れ人の治療後に、水人から水の提供を受けないと萎びて動けない。
九里響二 保嵩の弟。眼鏡をかけた会計士。水人。
堤 朔眞 地上げ専門の不動産屋社員。水人。響二に招かれて商談に来る。
九里兄弟が住む屋敷を地上げに向かった不動産屋、堤。
弟の響二が商談に応じて、家を訪問する堤。
堤は、玄関前の階段で兄の保嵩が倒れているのを発見。助けたのに、怒鳴られる。
水師協会に属さないフリーの治療師、九里保嵩。
水師の水治療の後、失った水の補給は「水人」の誰かから貰うしかない。
貰う方法は、水人と体のどこかの接触。
堤は、庭の掃除をして、偶然保嵩が弟から水を貰っている現場をみて、理由を知らず驚く。
館を売る商談の前に、交渉相手の九里響二から条件を出される。
兄の水師の仕事に同行して、枯れ人と二人きりにしない事。
半信半疑だったのが、目の前で元気になる枯れ人を何人も観て、堤は治療を施す九里の兄に惹かれていく。
展開を読みにくくしているのは、響二の行動。心情が掴みにくい。
響二は兄を館から引きはがそうと考えていた。
でも、兄が不動産屋の堤に惹かれるのは想定外。弟も兄を愛している。
「水師の血が薬になる」という展開で、保嵩が囚われてしまった時、
・・ これは吸血鬼の変形版か?と思ったけど、そうじゃなかった。
この話は、水の補給=体液交換と、サンドイッチ 3pがテーマだった。
水師の保嵩を、二人の水人が癒すという結末。ややこしいわ。
「お前は俺の水筒だ」
そんなトンチキな口説き文句を吐かれたら、ふつうまとまるカプもまとまらないだろうと思うのですが、本作の攻め、堤は結構喜んじゃってます。(まったくBLとは関係ないのですが、昔読んだ貴志祐介さんのホラー小説「クリムゾンの迷宮」に「お前は俺の弁当だ」という台詞があったのを思い出しました。こちらはまさに額面通りの意味で、言われた方も読んでる私も総毛だちました)
さてお話を堤に戻します。そのビジュアルは黒いシベリアンハスキーに例えられるほど、ガタイが良くてこわもて、かなり迫力のある面構えなんですが、中身もまさにワンコ、それも相当な忠犬なんです。彼自身は普通の不動産会社社員ですが、受けの保嵩は「水師」というとても特殊なお仕事。異様な渇きを覚え、ひたすら水を求める「枯れ人」に自分の内なる水を分け与えて癒やすという特殊能力の持ち主なのですが、いつも限界を超えて与えてしまうため常に命の危険にさらされている始末。そんな保嵩の危うさと、綺麗な顔に似合わぬ毒舌に惹かれ、最初はただのビジネス目的で近づいたはずが、いつしか彼のサポート役を務める羽目に。実は堤、自分でも気づいてなかったのですが、その身の内に汲めども尽きぬ豊潤な水をたたえた「水人」という特殊体質の持ち主だったのです。水師の水分補給にこれほどうってつけの人材はいない。水の受け渡しは粘膜の接触により行われ、しかも濃厚なほど効果も覿面。堤の水をたっぷりと注がれた保嵩は「枯れるどころか溺れそう」なありさまで、めでたく堤は保嵩の「水筒」認定されたというわけです。
この堤、人としての根っこがとてもすこやかで強靭。だからこの世界に蔓延する枯渇性症候群の毒気にあてられることもなく、常に清冽な水を宿し続けることができる。恋愛においても、「好きになるのはどこか尊敬できる部分のある人」「セックスするのは本気で付き合いたい相手だけ。身体だけの関係なんてもってのほか」等々、沙野作品の主人公には珍しいくらいゆがんだところや世をすねたところが見当たらない。こんな男にそばでこまやかに世話を焼かれ、水と愛情をたっぷり注がれたら、さしもの保嵩の毒舌もツンツンも矛先が鈍ろうというもの。当初緊急避難的な身体の関係から始まった二人だけど、次第にお互いをなくてはならない存在と認め合ってゆく。
ここですんなり終わればめでたしめでたし、というところでしたが、ラストにアレが待ち構えてるんです。そう、例の「サンドイッチ」…沙野さん的にはこれが本作の一押し、メインディッシュ的扱いで、ノリノリで書いてるのも伝わってくるんだけど、わたし個人としてはつらかった。苦難を乗り越えた理想のカプの記念すべき両想いエッチに有無を言わさぬ異物乱入。突如酢豚の中でパイナップルに遭遇した時みたく、「なぜお前がここに」「お前さえいなければ完璧なのに」やくたいもない泣き言が口をついて出てしまいました。よって評価も「神」をつけられませんでした。無念!
沙野さんのお話を読む前はいつもワクワクします。ストーリーがきちんとしていて読ませるお話だというのと同時に、毎回何らかの(特殊な、と言って良いのか?良いような気がする)エロ描写にチャレンジしてくれるからです。まさに「商品も良し。おまけも良し」。
大流行の『枯れ人症候群』という病(欝の重いヤツという理解で私は読みました)を煩う人たちに、自分の水(「気」みたいなものと思います)を与えることで癒す『水師』は、失った『水』を、他者との粘膜接触で補給することが出来ます。与えすぎると水師も枯れてしまう。だから多くの水師は、水量をコントロールしながら仕事をするのに、保嵩はセーブしません。枯れ人を癒すことに殉じようとしている様に見えます。
堤はそのこと自体に感動しちゃうんですね。
最初に保嵩に惹かれたのは、その儚げな見た目だったのだろうけれども、恋愛感情を自覚するのは「尊敬できる人だから」。ここ、グッと来ました。堤、いいよ。いい男だよ。
堤は自らの中に湧き出る泉を持つがごとくに、大量の『水』を持つ『水人』。だから、これだけなら「相思相愛な上にお似合いの組み合わせですね」ということなんだけれど「そう簡単にはいきません」ということで、そもそも2人の出会いをしくんだ保嵩の弟、響二の思惑も絡んでくる。枯れ人症候群に係る事件が多発した所為で日本全体がパニックに陥り、行政の怪しい動きも絡んでくる……って感じで、なかなかにお話のスケールはでかかったです。でも、広げた風呂敷はちゃんと畳む所は、沙野さん、お上手。
さて、今回のおまけはM/MではなくてM/M/Mでした。
それも、あまりにも不憫でせつない。
そこを読んだ時、思わず「そう来たかぁ~っ」と口に出しておりました。
家で1人で読んでいて良かった……
事件は解決したのですが、恋愛に関しては不安定な関係のままお話が終わってしまったような気がします。
でもある意味、そこがいい。
彼らのその後について妄想する楽しみも込み込みの作品だと思っております。