イラストあり
ちるちるさんの作家インタビューを拝見して、読んでみたくなり購入。ネタバレ含んでいます。ご注意を。
個人的に安西さんの作品てホワンホワンとして可愛らしいお話、というイメージが強いのですが、この作品はそのイメージを覆す作品でした。
主人公は医大生の高良。
実家は開業医で、絵にかいたように裕福で、優しく穏やかな家庭で育ってきた、いわゆる良家の子息。
中学生のころから自分はゲイではないかと思い悩んできた彼ですが、ある日一人の男性を見かけ恋におちてしまった高良くん。
女性経験もなく奥手な彼は声をかけることもできずにいましたが、あるきっかけを機にその男性・環紀と恋人になることができて…。
というお話。
安西さんらしい、サラリとした、ほんわかな恋のお話なのかなと思いつつ読み進めましたが、少しずつ二人の間に暗雲が立ち始め―。
複雑な家庭環境に育った環紀は、「恋」という感情に疎く、自分がどうしたいか、が第一優先で行動してしまう。ゆえに性的に奔放で、そんな環紀と、一途でまっすぐに環紀を愛する高良くんとの恋のゆくえは、二転三転する。
高良くんと出会ったことで恋愛感情というものがどういうものなのかを知った環紀。
ハイスペック男子でありながら一途に環紀を求めて、けれど自分の恋心を持て余してしまう高良くん。
環紀の恩人であり、理解者であり、そして身体に秘密を抱えた環紀の愛人である画商の字津木。
この三人のうちの、誰に感情移入するか、誰の気持ちに共感できるか、でこの作品の評価は変わる気がします。
主人公は高良くんで、この三人のうちの唯一の常識人でもある。ゆえに高良くん視点で話を読んでしまうのだけれど、環紀の気持ちも宇津木さんの気持ちも、どちらも理解できる。できるからこそ、三人の行く末がなんとも切ない。「正しいこと」が分かっていても、感情がそれに沿うとは限らない。
この三人の出した結末は、読み手によって受け取り方は様々なんじゃなかろうか。
最後の最後までぐるんぐるんと変わる彼らの感情に、共感し、そして落涙した。
正直、この三人は好きなキャラではない。いや、ごめんなさい。複雑すぎるというか、なんというか。
けれど常識とか「こうすべき」というものに囚われず、色々な形の「愛」がここにはあり、そして愛した人を手放したくないというエゴも描かれていて、ぐっとストーリーに引き込まれました。
読んでいて楽しくなる話ではなく、ずっと胸が詰まる、というか切ないというか。
なので評価に悩みました。でも今までの安西さんのイメージを覆された、というインパクトも手伝い、「神」評価で。
電子書籍で読了。挿絵有り。
ショコラ文庫に書かれるのは初めてとのことですが、安西さんの今までの作風から考えると評価が分かれる一冊ではないかと思います。かなり冒険しているその心意気が潔くて、このお話、大好きです。
価値観は十人十色で、人生を過ごす上で大切にするものの順番は人それぞれです。恋愛は、異なる価値観を持つ二人が、各々の大切なものの順番を図りながら、引く所は引き、主張する所は主張し合いながら、二人の価値観をすりあわせ一緒に過ごしていくことだと私は思っています。
育ってきた環境故に、貞操というものに価値を持たずに過ごしてきた環紀が、特定の恋人を持たず、好きと思う人とは誰とでもセックスしちゃうというのは「そういうこともあるだろうなぁ」と納得出来ますし、心底好きになった高良が「自分以外の人とはしないで欲しい」と強く望んだから、それを良しとするのも「いやー、高良、良かったね」と、ここまではすんなり。良い恋愛だと思います(これ、出来ない人も多いからね)。
問題なのは、環紀には何よりも大切にしていること=絵を描くこと、があるということです。私には作品を創る仕事をしている知人が何人かいるのですが、この人達は息をする様に創作活動をしています。そのこと自体が生活をすること、生きることと同意義の様な暮らしぶりだなぁといつも思います。
その創作活動に大変な恩義がある人の危機に、恋をなげうって応えようとすることも、環紀の誠実さであり、よく解るのです。そういう環紀だからこそ高良も好きになったわけで。
ここが苦し切ない!
「どう着陸させるのか?」とかなりハラハラしたのですが、環紀も高良も、当て馬宇津木も『環紀が一番大切にしているものをどうやって続けるか』という観点から結論を出しました。
この着地のあり方が素晴らしい!
特に高良は環紀のことを充分に理解していなければ出せなかった結論ではないかと思うのです。健全な家庭で育った(この描写も途中で挟まれていて、上手い複線になっていると思いました)高良が、ここまで解っているとは……愛の深さをとてもとても感じました。
恋愛の他にも大切なものを持っているお姐さま方の中には「恋か○○(ここに『仕事』などが入る)か」という選択を迫られた方々も多いのでは。
甘さばかりではなく、かなりの苦さを残しながら、でも、私たちの望む、最高に幸運な結末がここにあります。
是非、読んで涙していただきたいと大声でお薦めいたします。
萌2が既に訂正できない、残念。「しゅみじゃない」で評価。
安西作品の中で、多分もっとも読後感良くない作品ではないかと思う。
自分がどんなに不幸であっても、
他人を巻き込んで不幸をバラまくような遊びで、無垢な医大生を巻き込んではいけない。
自分勝手な病人だと思った。
愛人を連れて、さっさと海外へ行ってしまえ、と呪いたくなる。
ただ外見が美しいだけの心が幼い相手に愛を注ぐ医大生はどこか病んでいる。
不毛で安定感ない、共依存的な関わり。
当本の発売を知った時に「買います!」と正座して叫んだぐらい
大好きな安西先生と梨先生。
うきうきで購入したものの、カプたちの心情についていけず?
いや、理解したくなく?辛かった(泣)。すいません、萌でお願いします。
本編230Pほど 書下ろし+安西先生のあとがき2P。
先に挿絵話。
カラー口絵は、笑えます。(肌色図とかではない)
本編読み終わってから見た方が笑える気がします。梨先生、可笑し過ぎる。
中の挿絵では二人が着衣でぎゅうし合う図が2枚あり、それが好き。
片方しか表情が見えず、もう片方の戸惑ったような泣きそうな表情が
見えたら、尚嬉しかったんだけどな。ちょっと残念。
地雷要素:
あらすじにあるように、受けさんが攻めさんと違う人と親密であること。
これだけかと思います。
今回、私はこれで結構凹んでしまいました↓
攻めさんは、うぶうぶ忠犬のように感じます。
受けさんは、みかけ草食系、中身は節操なし肉食系?
目覚めていく過程が可愛いんだけどね・・・。
ほわんほわん幸せ一色な本ではなかったです。
*************** 以下 よりネタばれ
辛かったのは、受けさんが、いろんな事情により、親密にしている方と
ずるずるしてしまうところ。
受けさんの家庭の事情や、これまでの経緯や、親密にしている方の事情とか
色々あって、ずるずるするのは分かるけど、それでうぶうぶ忠犬が傷ついて
受けさんも傷ついて というところが辛かったー。
分かるけど、分かりたくない といった気分です。
おっさんの方には、大人やろ、こら手をだすな!と怒ってしまう。
渋めないい感じのおっさんではあるのですが。
最後は忠犬が頑張り、大人の方の事情も分かって、よしよしとなりますが
そこに至るまで、なかなか悶々としてしまいました。二転三転?
これはあまあま後日談必要と感じます。
ペーパーついてる所で買えばよかった(泣)。
ペーパーであまあま読みたいっ
年下攻め・受けを溺愛に攻め視点という好きな設定だったんですが、攻め(高良)に感情移入してしまい最後までずっと苦しかったです。
初めて人を好きになり、身体を重ねるたびにもっと好きになっていく。
ただし好きな人は、自分への愛とは違う『愛』を他の人にも持っているという…。
受けの環紀の気持ちも理解できるんです。
どうしょうもない時に支えてくれた宇津木。
高良への愛情は確かなものなのに、宇津木を蔑ろにはできないという葛藤も分かります。
そんな環紀の気持ちを高良は受け入れるけど、やはり心に棘が残るんですよね…。
キスはできても身体を重ねる事が無くなるという事実が、切なくて仕方なかったです。
最終的に環紀は高良を選んでハッピーエンドとなるんですが、それまでずっと切なかったのでその後のあまい二人が読みたかったかな。
萌2寄りな萌な作品でした。