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表題作恋愛病棟 シェーマの告白

玉川右晋,35歳,大学病院外科医
水窪春馬,26歳,大学病院外科専修医

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

水窪春馬は柏洋大学医学部付属病院で父の遺志を継ぎ専修医となる道を選んだ。父の死の真相を探るため、そして第一外科主任教授・朱鷺田に近づくためだ。初カンファレンスの日、ヤクザのような男・玉川医師から一緒に朱鷺田と闘おうと誘われる。不思議な魅力を持つ玉川に春馬は魅了され、キスも愛撫もすべて許していく。しかし、最後の一線だけは決して越えようとしない玉川に苛立ちと不信感が募り……。
16年の時を越え、複雑に絡み合う愛憎の行方は!?

作品情報

作品名
恋愛病棟 シェーマの告白
著者
谷崎トルク 
イラスト
高崎ぼすこ 
媒体
小説
出版社
大洋図書
レーベル
SHY文庫
発売日
ISBN
9784813041498
3.8

(57)

(28)

萌々

(10)

(9)

中立

(1)

趣味じゃない

(9)

レビュー数
7
得点
208
評価数
57
平均
3.8 / 5
神率
49.1%

レビュー投稿数7

医療BL

惹き込まれました。
お話はネタバレ無しで読むのが正解です。
医療BLにほんのりサスペンス要素もあって、でもしっかりエロもあります。

つーか、天才外科医・玉川は春馬の背中を舐める、舐める。
背中への執着、ゾクゾクします。
あと、キスの描写も、まーしつこい(笑)上に、長いっ。
でもめちゃめちゃエロいんですよー。

玉川は天才のはずなのに、どことなく変態臭がありましたが、受けの春馬はしっかり者で、素直で可愛かった。
外見はバンビっぽいとか、フェネックみたいとか表現されていたけど、玉川が春馬を見ては「可愛い」を連呼するのが、とても良かった。

文章自体はやや硬質で、とっつきにくいかなと思っていましたが、会話のテンポも良く、一気にグイグイ読ませます。
普通の恋愛モノではないお話を求めている方に、おすすめします。

これを最後に。
あとがき、絶対読んでほしいです。
胸がジーンとなりました。

0

BL医療サスペンス とても面白い

賞暦多いだけあって、惹き込み方が上手いです。
トルクさんは、面白い作家で、コンテストゲリラ。BLジャンルのナロウ系サイトから応募して、小規模受賞歴を多数持つ実力派。一匹狼的なユニークな作家です。

この作品は、HONTOの推奨をみて電子版を購入し、ウエブサイトの続篇も読みました。この作品は続篇があって、著者のブログに投稿場所が記載されています。

この作品は、主人公の父の死の真因を追求するBL医療系サスペンス。
「シェーマ」:
(ドイツ)Schema 医者がカルテを記すときに利用する、身体部位の絵図のこと。
Schmerzen:「痛み」

★不審死した春馬の父が山の写真の裏に手紙を隠していた。心臓部分へ矢印して「痛み」書いた父の手紙から謎が解けていく。
★謎解きヒントの一つ、主人公の恋人になる一見やくざな玉川医師。ドラマ「ドクターX」のデーモン女医に似たキャラで、手術失敗ゼロの凄腕医師で、行動が面白い。

主人公の勤務先は、「ファーストコール ~恋するヤクザの処方箋~」と同じ現場の設定です。「ファーストコール」は、医療ラブコメ。併せて読むと面白いです。
---
私のこの作品で一番好きな部分は、あとがき。
著者の医療現場の描写が細かい。現場を知る人の監修を受けて執筆しているの?と、思ったら、あとがきに「父は医者でした」とありました。むむ?。医術的な監修を父上がしているのなら、父上はBL愛読者?
・・まあ・・ファン1号であっても、おかしくないけど。外科医は呼び出しが多い、家に居れない忙しいお仕事なんですね。
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★ダヴィンチ君のようなロボット技術を使用して、衛星経由で名人医師が遠地の手術用ロボットを操作して執刀する実験は実際に行われて成功したと聞いています。著者もその報道を読んだのかも。

★なろう系サイトは、著者とチャットして感想や要望を直に伝えることが出来る点が醍醐味なんですね。良い体験をしました。

1

とにかくめちゃくちゃもったいない

冒頭の非常に思わせぶりな導入といい、緊迫する外科病棟の様子といい、実に引き込まれる描写です。
主人公の『父の死の謎を解く』という目的とマッチしているかの様な硬質な文章も雰囲気を盛り上げますし、専門用語が飛びかう内容なのに読みづらい訳でもありません。ガンガン読めます。
「うおーっ、これは!」と思いましたよ。

おまけにかなりエロティックなんです。
明らかに玉川は春馬を恋愛対象として好きなのだと思うのに、しないのですよ。
キスだけ(後々、エスカレートして行きますが)。
なのに……とてもエロい。
こういうのを読むといつも思うのですが、実はやらない方がエロいんじゃなかろうか?(え?違う?)
再び「うおーっ、これは!神降臨!」と思いましたよ。

メッチャクチャ残念なことに8割弱読み進めた部分で「ああ~、もったいない」と思ってしまったのです。
いや、誤解されると困るのですけれど、悪かないよ。面白いよ。
でもねぇ、この物語、中盤でとても心を揺さぶる部分があるのですよ。
春馬の父の死の謎が解き明かされる部分なんですけれども。
「これを中盤に持ってくるということは、後半はどれだけのものが待っているのかっ!」と期待に打ち震え、鼻息を荒くして読み進めたのです。
嫌な感じの悪役も出て来て「来るぞ、来るぞ」と思っていたら……あっさり終わっちゃいまして。

全くもって個人的見解ですが、もったいない!もったいないのです!
あの中盤の盛り上がりをもっと後ろに持ってくれば、尻上がりでもっと盛り上がったんじゃないかと思うんですよ。単なる私の好みの問題なんですけれども。

色々書いちゃいましたが、このお話がとても面白くて、凝った構成になっていることは間違いありません。
35年前のエピソードに挟まれた『現在』、そして全てが解決し、外科医として歩んでいく春馬の未来を暗示するエピローグも美しい余韻を残します。
だからこそ、だからこそ思ってしまうんです。
「ああ、とんでもなくもったいない様な気がする」って。

4

大人の物語

専門用語が多くてもしやこれはいちいち意味を調べながら読まなければならないのか?と不安になったけど読み進めていくと調べなくても大丈夫。わからなくても大丈夫でした。
とにかく一気に読み進められました。

なんだか読み終えて自分が賢くなったような気がする。(それは気のせいですけど。)

キャラが非常に魅力的で引き込まれました。

好みもあるとは思いますが、私は読んで良かったです。
ネタバレなしで読んだ方が楽しめるかと思います。

7

男性四人の心の葛藤をリアルに描いた超名作です!

このBLがやばいにランクインしていたので電子で購入。失礼ながら全く知らずの作者さん。これが初書籍のようでしたが読んで正解でした。表紙はぼすこ先生。(※興奮したので以下長文)

読み始めて、あれ?これ一般文芸だっけ?とトップの画面を確認するほどリアルなオペシーンから始まります。男性作家のような理系脳を思わせる硬質な文章。一切の無駄がなく、尖らせたHの鉛筆で描かれたデッサンのような美しい文体でした。(けれど非常に読みやすく展開がスピーディーに進むので最後まで一気読みでした。読み終えた後、圧倒されてしばらくぼんやりしてしまいましたが・・・)これでデビューとか本当に凄すぎます。文章の上手さはもちろん、知識量と表現力、構成力の高さにも度肝を抜かれました。

お話は恋愛、家族愛、医療の問題、大学病院の権力争いなど、様々な側面を持ったシリアスなエピソードが続いていきます。本格的な医療もので、BLなしでも充分に読み応えがありました。伏線の張り方やその情報開示の仕方も上手く、ミステリーとしてのエンタメ度も高いです。本当に凄いなと思ったのは、主人公である受けの春馬とその父親の恋愛が世代を超えてオーバーラップしている所。(既出のレビューにもありましたが、あの手紙の独白シーンは私も号泣してしまいました。父親の声と呼吸が実際に耳元で聞こえているみたいだった・・・)
父親と息子の二つの人生が一つに重なった時、それぞれが選択した答えの違いが浮き彫りになっていきます。この違いが本当に切ない。

春馬の父親は自分の人生・・・外科医としての夢や希望や家族まで捨てて、愛する相手を守り、ある事をきっかけに亡くなってしまいます。その事件から春馬は復讐を誓うんですが・・・。彼が何を想って父のいた大学病院に向かったのか、それは実際に読んで感じてもらいたいなと思います。

攻めの玉川はゲイ。作中では、玉川の恋愛に対する価値観や、愛する春馬をゲイにしてしまう躊躇いと葛藤が巧妙に描写されていて、どこか胸を掻きむしられるような切なさを覚えました。また、受けの春馬のノンケであるがゆえの迷いや、自分では制御できない恋心もよく表現されています。BLとしても萌えました。(キスを受け入れるシーンとかよかったです。このキスシーンがまたエロくて凄くいい!)

様々な障害と葛藤がありながら、父親の悲しい最期を明るい未来に昇華させたラストシーンには涙が止まりませんでした。春馬は父親の報われない恋を、あの瞬間、美しい愛へ昇華させたのだと思います。見事な救済でした。これが彼の復讐のケリのつけ方だったのかと思うと言葉が出ません。

BL的なキラキラやほっこりドキドキみたいなものは少ないです。ただ、このお話には父親の視点・教授である朱鷺田の視点・虐待をしていた母親の視点・春馬や玉川の視点でお話を見た時、別の物語に見えるような深みと人物の奥行きがありました。悪人である中庭でさえ、きちんとその小狡さと男の悲哀が描かれていて驚きました。

本当に名作だと思います。読み進めるうちに作者の感性の鋭さに圧倒されるような感覚を覚えました。読了後のぼんやりする感覚を皆さんにも体験してもらいたいです。一本の上質な映画を観終えた後のような体験ができました。この作品に出会えてよかったです。

13

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