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表題作梔子島に罪は咲く

ファッションデザイナー 諏訪慎也
梔子島の男娼 崇生・15歳位

その他の収録作品

  • 梔子島・回帰

あらすじ

「女間に合うとるんなら、若い男の子はどうです?」高校時代の友人に誘われて、人気デザイナーの諏訪は梔子島を訪れる。さびれてなにもない・・・梔子だけが美しい島は、昔より人身売買を生業とする者が暮らす女郎島であった。女たちを買う友人をよそに退屈しきっていた諏訪は、旅館の仲居からこっそりと男娼の存在を耳打ちされた。びっくりするほど美しい少年がいる、と。その場を抜け出すための口実として少年に会いに行った諏訪だったが、いつしか少年に溺れてゆき・・・!?

作品情報

作品名
梔子島に罪は咲く
著者
綺月陣 
イラスト
高緒拾 
媒体
小説
出版社
大洋図書
レーベル
SHYノベルス
発売日
ISBN
9784813010418
3.6

(43)

(17)

萌々

(8)

(9)

中立

(5)

趣味じゃない

(4)

レビュー数
13
得点
149
評価数
43
平均
3.6 / 5
神率
39.5%

レビュー投稿数13

梔子島のモデル

実存する島を題材にして、こんな事もあったかもしれない、というサスペンス浪漫でした。著者は、BL作家というより、社会派なのかもしれない。
著者の作品のシナリオのアイデアは、なにかの報道を読んで、ヒントを得ているようです。
「背徳のマリア」も、実際に「男性の出産は可能」という研究論文が報道にありました。この作品のモデルの島も実存しています。
誰も触れたがらないタブーに目を向けて、BLのテーマにする著者の社会意識を評価したいです。
「エログロが得意なキモチワルイ作家」と某担当に言われて鬱になり、休筆していた著者を正しく評価してあげないと、気の毒です。

大きな社寺の門前町には、大きな花街がセットで存在するのですが、伊勢神社近くの売春島の歴史は、古いです。梔子島(くちなしのしま)は、架空の島の名前ですが、実在するそれらしい島があります。

「売春島」でググルと、
【売春島こと渡鹿野島は三重県志摩市の東部、カキの養殖で知られる的矢湾の中央部にある。周囲約7キロ、人口200人ほどの小さな島で、渡航手段はピストン運航するポンポン船(小型船)だけ。本土から隔離された島にはスナックやパブを隠れ蓑にした「置屋」と呼ばれる娼婦の斡旋所が点在し、管理売春で栄えてきた。】・・などなどがヒットします。ここは、警察と癒着した反社が仕切っている置屋の島で、恋人に騙されて売られた少女が、遠泳して島から逃げた実話もあるそう。

でも、島の人は、娼婦を大事にして、苛めたりしていなかったらしい。
江戸と大坂を結ぶ航路上に位置した島は、多くの船が停泊する「風待ち港」でした。

2016年5月の伊勢志摩サミット開催前に、「会場の賢島の目と鼻の先に、こんな売春島があっていい」と告発ルポが週刊誌に沢山出て一掃されたので、今は多分置屋は消えて無いのでは?

将来に光が無い売られた男娼の魅力に溺れて、共に堕ちていく或る男性の物語でした。バッドエンドです。

5

失◯園ではございません。

ちるちるの「腐女子・不朽の名作20選エロエロ編20選」に選出されていて以前から興味はあったのです。

ただこういう島が実存するとオッチャン御用達の週刊誌にもあったし(何を見て、そして何を記憶に留めてるんだ私)、そうそうオッチャン達をトリコにした失◯園あたりのエンディングでしょ?

ふふふ、BL1500読破のアタシにゃ(オッチャン御用達週刊誌もカバーしてまっせ)御見通しさ、あー、でもやっぱり"不朽"って気になる!
と買って読み始めてエロチックな描写には満足しながら、でもやっぱりエンディングはねー、このあらすじとロケーションならこうならないわけにはないわと233ページまでは思っていたのです。

でもそこからが"不朽"たる所以のストーリーでした。こんな伏線があるとは!

途中までが文章は滑らかだけどやっぱり既視感があるので萌え2止まりですが、やっぱりこのエンディングが好きなので神にしようか迷った作品でした。

私のような理由で迷われてる方(オッチャン御用達週刊誌読んでる方か?!)そう厭わずにちるちるの評価を信じてぜひぜひ御一読して欲しい1冊です。

2

エロティックではなくエロ

綺月陣さん初読みでした。BLノベルは出來の振り幅が広くて、素人?みたいなものがあるかと思えば、構成も文章もしっかりとしたものもあり(少ないけど)、今回は後者で読み応えありました。読み出したら止まらず、一気読みでした。あらすじを見ると非現実的な設定なんですが、心情の描写に無理がなく、また、実に官能をそそる文体です。

あらすじは、華々しい活動をしているデザイナーが、それと知らずに売春が行われている鄙びた島に来て、気まぐれに会った男娼に一目で虜になってしまうというお話し。梔子(くちなし)が咲き乱れる島の風景と、男娼、タカオから漂う強烈な梔子の香りが、匂い立つエロティシズムを感じさせます。貧相な小屋に暮らす孤島の男娼、それにのめりこんで今の地位を失うデザイナー、暗く退廃的な雰囲気に貫かれた作品です。

セックスシーンは多いのですが、全く自然な形で挿入されますし、とにかく攻め、慎也がのめりこむのも理解できるようなタカオのカラダ、行為の描写が実にエロティックです。いや、ティックではなく”エロ”です。慎也という名前はこれまた、いやはや。

物語は攻めの一人称で書かれています。最初は、自分のステイタスを自慢するような表現が多く、この本こういう調子なのかなー、やだなー、失敗したかな-、と思っていたのですが、それが男娼にのめり込み堕落して行くにつれて変化し、うまいなと思いました。

その後、慎也は仕事もまともにできなくなるほどのめりこみ、今の地位を失います。何も知らずに育ったタカオに東京の生活は合わず、島では慎也の仕事は続けられない。一緒に暮らすすべはないように思えます。慎也はお金も仕事もなくなり、しまいには自分の愛しい恋人の体で生活するところまで落ちぶれます。が、このまま堕落話で終わらないところがよかった。
タカオからヒントをもらい、慎也は自分が本当に創りたいものを見つけます。小さなところから始めた事業は成功し、二人だけの生活を手に入れるのです。慎也の自己充実のストーリーでもありました。

今までの評価を考えると星5相当なんですが、個人的に”萌えっ!”なところまでいかなかったので4つです。作品としての完成度は高いです。

2

「梔子」というタイトルの絵のようでした

BL小説はあまり読んだことがないのでどの辺の評価をつければいいのか迷いました。
渇仰を読んで小説も面白いかも??と興味を持って、高緒拾さんのイラストに惹かれて読んでみました。まだ読んだ小説はこれが3本目です。
そんな初心者目線のレビューをば。

よく仕事も忘れてのめり込む、なんて言いますが文字通りそれをやってくれる攻め様。受け様の前に完全に理性を吹き飛ばされてしまう攻め様なんてはじめてでした。いつもだったら、アリエナイと引いてしまうのに、なぜかこれは引きませんでした。
そうはいってもどこかで持ち直すだろうと思っていたら、ほんっとに際限なく馬鹿になっていく攻め様に唖然。受け様の性欲も際限ないけども。魅力のすさまじさが際立ちました。

私は梔子がとても好きなんですが、あの香りが好きな方にはいいんじゃないでしょうか。
なんだか、この作品はBLというよりも、それを通して「梔子」を描き切った作品のように思えてならなかったので。

5

読み手をかなり選ぶ

気安く手を出して、軽く後悔した作品です。
綺月さんの作品は初読みだとは思うのですが、文章もカチッとしてますし、読み応えがあり、生意気な書き方ですがうまいのだなあとは思うのですが…


攻めは有名デザイナーの諏訪。
友人に連れられ、梔子島へ。

受けは梔子島の男娼・崇生。
島の外も人間としての暖かい関わりも知らない、美少年。


女には事欠かない諏訪は、訪れた梔子島で男娼である崇生を買います。
この出会いが、諏訪の怒涛の転落劇の始まりで…というお話。

諏訪は崇生に執着し、とうとう島外へ連れ出してしまうのですが、東京は文明や他者との交わりを持たず、ただ性のはけ口として育った崇生にとって恐怖という他ない世界。

諏訪にとっても崇生といるうちにいつしか、自分の地位や仕事よりも崇生への執着が優ってしまい、あれよあれよという間に何もかも失って、崇生と梔子島で暮らすことに。
この辺りで諏訪の落ちっぷりは底なし沼で、島での暮らしを読んでいるあたりは「こりゃ、死亡エンドかな?」なんて思っておりました。
商業では無理だったでしょうが、やり切ってもらっても良かったのかなあ。

確か諏訪は30歳くらいだったかと思うのですが、文章の感じか、えらいエロヒヒジジイのように頭にビジュアルが浮かんでしまい、ひじょうに読み辛かったです(苦笑
雰囲気は昔の純文のような薄暗ーい感じで、そこはかとないエロス漂う作品。
排他的な作品がお好きな方にはハマるのだと思うのですが、わたしには無理だったなあ。

2

転落の果ての愛

◆あらすじ◆

人気デザイナーの諏訪慎也(30歳)は、高校の同窓会で梔子島(くちなしじま)なる離島を訪れ、そこが売春島であることを知ります。
女に不自由していない諏訪は、気乗りしないまま少年の男娼・崇生(たかお)に引き合わせられますが、まるで虫が梔子の花の強い芳香に誘き寄せられるように瞬時に彼に魅せられ、彼の虜に。そして、島を出たことがない崇生を東京に連れ帰ります。
しかし、梔子島とセックスしか知らない崇生が都会の生活に慣れることはなく、諏訪に終始セックスを求めて来るばかり。崇生との情事に溺れ、仕事にもトラブルが絶えなくなった諏訪は、ついに東京を追われ、崇生と梔子島へ遁れます。
二人は、生活のために男娼とポン引きとして暮らし始めますが…
魔性の少年に溺れて人生を狂わされた男の物語。全てを失った彼に、愛だけが残ります。

◆レビュー◆

男女ものなら官能小説に分類される作品。
数えてはいませんが、感覚的に8割方はHシーンという感じですね。
受けの崇生は、まあ何しろ淫乱な少年です。
学校にも行かずに離島で男娼として暮らしてきた彼は、セックスの快楽以外の楽しみも知らず、常に発情のスイッチが入った状態。
誘い受けで、その上被虐性もあって、乱暴に扱われたり、ギャラリーに見られながらのセックスも大好き。
美しくて、無知で、あどけなくて、しかも24時間発情中。
男を狂わせる要素がこれでもかというほど揃ってます。
崇生を少女に入れ替えても成立する話ではあるのですが、そこは敢えて彼の一人称を「俺」として、少し荒めの言葉づかいにしたことで、BLであることを意識しながら読める作りになっています。

とにかく壮絶なほど、セックス。セックス。セックス。
愛なのかカラダだけなのか、良く分からないままに、どこまでも尽きることなく激情とエクスタシーが繰り返されます。
求めて求めて求め倒して、諏訪を破滅させていく崇生…多分彼は、性愛という形でしか愛情を知らない人間なのかもしれませんね。
最終章に入って、諏訪は好きな仕事をしている時にはやさしい表情になることに気づき、諏訪に仕事をすることを許す場面に至って漸く、崇生の諏訪に対する愛情の萌芽を感じました。
もっとも、とことん性愛にフォーカスして、ぎりぎりまで恋愛の甘さを遠ざけたところが、この作品の持ち味なんだと思います。
なにしろこれは、狂った愛の物語ですから。

高緒拾さんの挿絵も、じっとりした湿度があってGJ。特に、崇生の狂気を感じさせる描写にはゾクゾクしました。(電子版は、水上シンさんの挿絵になっています。)

攻めが受けに翻弄される展開は大好き。そういう意味では好みの作品でした。
ただ、ストーリーが古めなのと、展開が読めてしまう部分は、少し物足りなく感じたかな。
文章・構成とも安定感抜群なので、安心して読める作品ではあるんですが…
エロ度に関しては、言うまでもなく申し分なし!です。(なんせH度「変態」ですし)

5

エロい!

なにこのエロ本wwwびっくりするほどのエロ度じゃないですか!!てな訳で、受け様の誘い受けぶりがたまらなくてドキドキしながら読みました(/ω\*)。綺月先生の誘い受けの美味さは何回味っても飽きはしません^q^そういえば受け様は、清澗寺シリーズの冬貴と似たような気がするけど、セックスなしに生きていけない受け様でしたね。なによりその色気!冬貴を遥かに上回るのではないかと、まぁあくまでも個人的な感じなんでしたけどね。
  
落ちぶれの攻め様といえば、以前読んだ綺月先生の作品にもありました。あいかわずこういったキャラクター作りがお上手ですね。今回も綿密な心理描写がなされていて、おかげて感情移入しやすかったし、読んでいるうちに攻め様の心境の変化にすごく理解できるようになりました。
  
  とにかく綺月先生の世界観を存分に堪能できる一冊でしたので、先生のファンならこれできっとお腹いっぱいになるだと思います。ちなみに挿絵も最高にエロくて濃密でしびれちゃいました。

8

売春島

恥美の傑作。名作。
神。
綺月陣先生の代表作です。
これ以上の恥美本は今は探しても見当たらないです。
淫靡で殺伐。
淫乱で無垢。
売春島で出会ってしまった美しい男娼は
売春でしか生きる道が無い15歳の少年だった。
社会的地位も良識もこの少年には関係が無かった。
ただただ自分の身体で相手を喜ばす事が少年の仕事であったから。
快楽にのめり込み 人生さえも捧げてしまった男。
どこまでも落ちるがいい。
売春島で生きる以外 少年の幸せは無いのだから。


5

堕ちて、堕ちて、その先は?

好き嫌いが、別れる作品だと思います。
なんたって暗い、重い。読んでいて、ストーリーもさることながら、行間から漂う退廃的で濃密な空気に、息苦しくなりました。
その感覚は、山藍先生や木原音瀬先生(FRAGILEなど)の作品など、確かな筆力の作家さんの作品でしか味わえないものだったので、私としては神評価をつけます。
初めて読んだ、綺月先生の作品だったのですが、一気にファンになりました。

さわりだけ、あらすじを。

成功し、有名デザイナーとしての社会的地位も、経済力も、美しい彼女も手にしている攻め様。仕事に対してプライドも情熱もあり、社会人としての良識も持っています。
同窓会で旧友に連れられ、そうとは知らず、おとずれたのが『梔子島』。そこは、産業も名所もなく、島ぐるみで売春を生業にしている島でした。
女性に不自由しているわけでもなく、普段美人に囲まれている攻め様は、島の女に迫られても全くその気になれず、うんざり。その場から逃れたいばかりに、成り行きで、島唯一の男娼(受け様)を見に行くことになります。見るだけ、のはずが、受け様を買わずにはいられなくなり、一度抱いてしまえば、その魔性の虜になる攻め様。築き上げてきたものを放り投げるほど、受け様中心でしか物事を考えられなくなり、堕ちて堕ちて・・・その先は?  といった感じです。

とにかく、攻め様の転落ぶりが半端ないので、ご注意を。
ある程度の転落ぶりは予想していた私でも、たじろく展開もありました。

濡れ場はとにかく多く、エロエロです。そしてドロっドロです。

でも、独特の雰囲気を持った素晴らしい作品だと思います。
すぐにではなくとも、いつかまた読み返したくなるだろうなあ。。

11

何処までも堕ちてゆく先に見えるもの

この作家さんの作品と言う事だけでも個人的趣味で高評価になりがちなのですが
読み終わってやっぱり評価が下がらなかった作品。
ただし、かなり内容は排他的で暗く人間が何かにハマって堕ちて行く様は
陰鬱とした内容でしかないのですが、それでも惹きこまれる。
耽美と言うと思い浮かべるのは山藍先生ですが、それとは違ったピュア的な
エロスもあって読みごたえありましたね。

主人公の受け様の環境は他人から見たらかなり酷な背景なのですが
生まれてから島以外知らない、気がついたら男娼に当たり前になっていた。
だってその島そのものが売春島なんですから・・・
だから本人は当たり前の中で日々暮らしていて、セックスすること自体に何も
疑いも抱かないで快感だけを追っていける、ピュアな淫乱なのです。

攻め様は、有名デザイナーで、立場も力も常識も併せ持っている成功者
それが同窓会名目で訪れた島で、男娼の少年の受け様と一夜を過ごしたことから
人生の歯車が狂いだしていくのです。
本土の戻れば、モデルの彼女もいて、何不自由することのない満たされた日常のはずが
島での一夜の交わりで、狂おしい程の飢餓に襲われるのです。

島から受け様を連れ出し、マンションへ連れ帰って、二人で痴態を繰り広げる。
でも、受け様は島から出る事に怖がっていた為に、ひと時も攻め様から離れられない
攻め様も受け様に求められるまま、次第に受け様以外の日常を排除してしまう。
そんな中でアクシデントがあり受け様が一人島に戻ってしまい、
攻め様は全てを投げ捨ててしまう形で受け様を追って島へ住み着くことに・・・

何処までも堕ちて行く攻め様なのです、堕落した生活に身を置いて、次第に荒れて行く
攻め様、島での生活の為に受け様は再び客を取る、それも攻め様の手引きで・・・
どん底にまでいっているような攻め様ですが受け様の一言で一筋の未来が開ける。
これを幸せと呼んでいいものか考えてしまう結末ですが二人でいる為の最善だと
思えば、これも一つの終着なんだろうと納得できるラストでした。

7

そこはかとなく耽美JUNEの匂い

今でもあるかどうかは知りませんが、島全体が売春島になっているという島があるという話を何かで読んだ事があります。
島ぐるみでの売春、売春目的で訪れる外からくる人々、そういう島があるのだ、と。

綺月さんもひょっとするとその島をモデルにしたのかもしれませんが、人気デザイナーの諏訪〔攻〕は同窓会で梔子島を訪れる事になります。
美人を見慣れ贅沢な生活に慣れている諏訪にとっては、島の女コンパニオン等には食指が動かず、更に売春目的でこの島を選んだというのが分かりすっかり辟易してしまいます。
そんな諏訪に旅館の女将が、紹介するのが女ではなく少年の崇生〔受〕
崇生を見た瞬間に諏訪はすっかり心を奪われ、その淫らな美しさに夢中になってしまう。
島を離れても彼を忘れられない諏訪は、再び崇生の元を訪れ、そしてついに彼を島から己が住む東京へと連れ出します。
けれどずっと島で、しかも教育さえ受けずに育った崇生にとっては東京での生活は苦痛でしかなくて、求めるのはただひたすら諏訪とのセックスのみ。
少しでも離れれば崇生は悲しみ、一秒足りとも離れたくないとの如くに諏訪を求めるのみ。
結局諏訪は、人気デザイナーの地位も失いゲイのお稚児趣味と貶められ、崇生と共に島へと戻るのです。
何もかも亡くした諏訪が島で崇生と生きていく為には、崇生に客を取らせる他無く、諏訪自らが客引きをして崇生は当然の様に他の男に抱かれ。
崇生という少年に魅入られた諏訪は落ちるところまでどんぞこに落ちて行く。
しかし彼は服を作るという、デザイナーとしては当たり前の事を崇生の一言から気付き、再び服を、崇生の為の服を作り始めるのです。

きらびやかなデザイナーだった諏訪が、たった一人の魔性の少年に出会ったせいで転落していく様は、少し耽美でうっすら耽美JUNEのにおいがします。
最後は絶望的なものではないけれど、セックスと諏訪しか知らないある意味無邪気な崇生と、彼の元で島に住み服を作り続ける諏訪。
しっかりした文章力で閉鎖されたこの不思議な遊郭島の空気を描ききっています。
エロ描写もエロの中に独自の敗退的な雰囲気があってそこも良かった。
挿絵も見事に合ってます。
自分は実はそうJUNE的な作品が全部好みかっていうとそうじゃないんだけど(何せ地味受、ちょいブサ受スキーなので…)、これはがっつり魅き込まれました!
BLというよりJUNEに近い作品だと思う。きっとJUNE的作品が好きな方にはこの作品は気に入るんじゃないかな。

12

読み返す

作品ではありませんが、背徳の美学

堕落の美学?と云う意味ではかなりな高作品だとおもいます。

この堕落さ加減は、、山藍紫姫子さんと通じるモノがあると思います。
オソラク山藍紫姫子さん好きな方は、カナリな確立で好きな作品では?

6

とことん堕ちるところまで堕ちるエロス

綺月さんのピアス作品はぶっとびエロがものすごいのだが、これもそうである。
この作品は当初はピアスに掲載だったのが休刊になった為、大洋図書さんからの登場となった異色作品です。
とにかくディープ!エロも半端ありません!
ストーリーにときめきや胸キュンや、感動や、そんなものは期待できず、とにかくSになって堕ちて行く主人公達を見てやりましょう的な、全編エロでしか構成されていない作品なので、その覚悟がある方だけを許可するような、そんな本です。

安部公房の「砂の女」のBL版とでもいいましょうか。
売春を産業とする島で出会ってしまった唯一の男娼タカオに、地位も名誉もある男がはまって、はまって、抜け出せなくなる。
そしてしまいには堕ちて行ってしまうのが本編作品です。
タカオのどこにそんな魅力があるのか、それは梔子の花の香りと、女性よりも刺激的で魅力的なその外見と性器と交尾であるかもしれません。
諏訪は、自分だけのものにしたくてタカオを東京へ連れて帰りますが、一時も諏訪とはなれていたくないタカオのその淫乱さ、というか依存度は常軌を逸していて、それに引きずり込まれる諏訪もまた狂気です。

「回帰」にて何もかも亡くした諏訪が島でタカオと肉欲だけの日々を過ごしてすさんでいく姿は、予想通りでありますが、惨めです。
そこでタカオと共にある為に見つける糧は、都合よしといえどハッピーエンドにする為にはこれでしかなかったよねとは思います。

ただ、とことんS気分で読んだ自分にはバッドエンドもありだと思います。
犯り殺されてしまった諏訪とか、阿倍定になるタカオとか・・・死姦とか・・・
↑そこまでいったらBLではなくなる!?
いや、そこまで妄想させるほど、ジメ~っと暗く粘着質なエロ物語だったということで。。。
自分的にはこういうドロッドロもの好きなので萌え評価ですが、読者を選ぶ作品ですね。

8

この作品が収納されている本棚

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