hepoさんのマイページ

神作品

エキスパートレビューアー2020

女性hepoさん

レビュー数1097

ポイント数5871

今年度4位

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予想以上の可愛さに降参

箱入り息子くんは好きですか?
わたしは大好きです。
世間を知らな過ぎて、ちょっとしたことにも目を輝かせる姿や、同級生に敬語なところも萌える。

生活態度の悪さに成績不振も追加で問題児の星子友輝。
職員室で担任から指導を受けたあと、むしゃくしゃして投げたボールがうっかり窓にぶつかって…。

校舎内にいた朝子日昂(ひだか)にぶつかる!と思った次の瞬間、2人はなぜか隣町の田んぼに囲まれた道の上に。
日昂の超能力を軸に、「信じる」という気持ちがテーマになった作品です。

すごく良かった。
中学まで真面目な野球少年だったのに、たった一回の誤解を信じてもらうことができず、「どうせ誰も信じてくれないなら…」と問題児になってしまった星子。
謎に身について生まれた超能力のせいで、父親からいろいろなことを制限されて、人と接することもなく育ってきた日昂。
2人が一緒に空間移動したことで、初めて家族以外の人間に秘密を打ち明けられたこと、初めて見る海が綺麗だったこと、星子が教えてくれる「ふつう」の世界に胸をときめかせる日昂が可愛くて。
星子の方も、それまで一緒に野球に打ち込んできた仲間や監督が信じてくれなかった自分を、日昂は無条件に信じてくれたことで、大切な存在になっていくのが読んでいる方まで嬉しくて。
秘密の共有によって2人の心の距離が近くなるのが自然で、お互いに自分ができることを相手にしてあげたいっていう気持ちが良いんです。

クラスの中で「透明人間」みたいだった2人の雰囲気が変わってきたことで、周囲のひとたちも2人に目を向け始めます。
イケメン星子を狙いに来る女子の存在や、超能力の特訓と星子の補習をするために日昂が父についた嘘がバレるという大きな出来事が、2人の関係をさらに変えていくのが胸きゅんせずにはいられません。

親が子を守りたいという気持ちは当然のもの。
自分の子供が他の子と明らかに違うなら、その気持ちはより強くなるのも自然。
だけど子供はいつまでも子供じゃなくて、親がずっと箱の中で守っていけるわけでもない。
これからの日昂にとって大事なのは何か。
男手ひとつで日昂を守ってきた日昂父と星子の話し合いが、笑えるけど良い。
自分の気持ちを口にしたことで、その奥に隠れた本当の想いに気付いた星子の「下の名前」呼びもいい。
日昂が胸のモヤモヤの正体を自覚してからの流れもいい。
描き下ろしの2人だけの夏祭りも、何もかもいいんだよおおおおおお。

取り乱しました。

大学生編とか、2人暮らしを日昂父に許可してもらうために再び対決する星子とかも見てみたい。
その後に妄想が膨らむのは良作の証。
可愛い登場人物を愛でまくりたい!という気分のときに読んだら、可愛さで頭が爆発するかもしれません。

君が僕のsecurity blanketという関係

security blanket、またの名は「ライナスの毛布」。
そういえば昔、ライナスは父親から虐待を受けていたせいで、毛布が手放せなくなったという悲しい逸話を聞いたことがあります。
真偽の程は定かではありませんが。

大学入学に伴って、家を出た伊織。
向かう先は「金蘭寮」。
築80年くらいの、廃校になった木造校舎を再利用したかのような建物。
そこでの新しい出会いと生活に、伊織は戸惑いながらも…。

建物自体古い上に、男子寮ということもあって汚れ放題。
歴代の入寮者たちが積み重ねて来たゴミとも見紛う諸々のものたち。
伊織が住むことになった西館の面々は、みんな明るくて楽しくて大家族のよう。
料理上手で家庭菜園も手掛けるママ(見た目はちょび髭イケメン)に、おとこの娘ののんのん、スウェーデンからの留学生で日本に詳しいラッセに、眼鏡とぽっちゃりボディで隠れているけれど、実は一番のイケメンらしいマルティン、そして伊織と同じ年の帰国子女・アキ。
ママの作ったごはんをみんなで食べて、夜が更けるまでみんなでわいわい。楽しそう。

そんな優しい人たちに囲まれた環境で、伊織が強くなっていくさまが描かれていました。
父に捨てられて不安定になった母との2人暮らしで、幼い頃から心に負担ばかりがかかっていた伊織にとって、ぬいぐるみは心のバリケード。
心に触れられたくない、傷付けられたくないという思いが強くなればなるほど、ぬいぐるみの量も増えていく。どう見ても異様です。
心をガッチガチにガードした状態から、少しずつバリケードを崩していくときに、必ず寄り添ってくれるのがアキで。
困ったときにどこからともなく来てくれる、つらいときにそばにいてくれる、まるでスーパーマンのような存在に、伊織が惹かれていくのも納得。

アキの方も心に傷があって。
親の仕事の都合で海外を転々とせざるを得なかった高校までの生活。
簡単に順応しているようで、吐き出せずに飲み込んだ不満が澱のように溜まっていたんだなあ。
アキはミニマリストだけど、極端なミニマリストというのは心が助けを求めていることもあって、執着を持たないようにすることで無気力になったり、物が増えるだけで息苦しさを感じる強迫観念が出たり。
伊織がアキの頭を撫でたい衝動に駆られるのは、そういう部分を無意識に察知していたからじゃないかなあと思いました。

お互いの傷を舐め合うんじゃなくて、伊織には「バリケードがなくても、もう誰も傷付けないし、傷付けさせない」という安心を、アキには「もうどこにも行かなくていいし、お別れもない」という確固としたつながりを与えることで、本当の意味で解放し合える。
そんな関係を築いていく2人と、周囲の優しさに胸が温かくなりました。

読み終わって、深いため息が出ました。
重いテーマなのに、ここまで優しくてあたたかい作品に仕上げられていたおかげで、しあわせな気持ちで満たされました。

失恋ジャンキー コミック

 

ツボにハマれば、全コマ萌える

カバー折り返しにある作者からのひとことで、「え?浜崎あ◯み…?」と思ったのは、わたしだけではないはず。
初読みの作家さんです。デビューコミックス?
だとしたら、ものっすごい新人さんが現れたものです。

高校時代、浮いていた自分にしつこいほど声をかけてきてくれた同級生・龍次郎と罰ゲームでキスをして以来、片思いをしていた彗太。
大学進学で上京した龍次郎とは疎遠になったものの、面影を追ってノンケばかり好きになってしまう慧太だったが…。

ひとことで言ってしまうと、お互いに勘違いしすぎた両片思いです。
切なさよりも笑い。
ときめきもあるけど、それ以上に笑えました。

ストーリーも人物設定も台詞もモノローグも表情も何もかも楽しい。
最初、「あ、結構モノローグ多めなんだ」と思って読み始めましたが、多めどころじゃない。
台詞を1つ言うのに対して、心の声が倍以上。
1ページを占める文字の数が相当多いけど、全然邪魔じゃない。
龍太郎も彗太もイケメン、彗太が一目惚れする2人もイケメン。
作画も上手くて、デフォルメ画も可愛い。
人物設定も、おばかで愛せる2人。
彗太が働くコンビニの店長がカーネ◯・サンダースと安◯先生を足して2で割って、可愛さのふりかけをかけまくったような見た目なのも可愛い。
褒め言葉しか出て来ない。

ただ1つ大きな問題が。
基本的に「笑い」に特化した作品なので、笑いのツボが合わないと厳しい。
わたしはガッチリハマったので、コマ単位でツボでしたが、合わないと文字の多さと反比例するかのごとく、作品との距離が開いていってしまうかも。

その代わり、合ったらやばいです。
自分の言葉にセルフツッコミ、龍次郎に片思いしながらも惚れっぽい彗太が一目惚れするシーンはギャグ漫画テイストだし、彗太に好きなひとができるとへそ曲げる龍次郎の「ツーン」も可愛すぎる。
最初は彗太目線だから、「龍次郎、ノンケなのに男も抱けるなんてすごいなー」って思うものの、読者には「これって…」というポイントがバンバン提示されていくので、早い段階で両片思いに気付けます。
いや、むしろ勘の良い方は、龍次郎の家に自分は飲まないビールが彗太のためにストックされているという4ページ目の情報で「はい!両片思いです!」ってなるかも。
なのであとはお互いが気付く瞬間を待つだけなのですが、それぞれ思い込みに年季が入っているからそう簡単には気付けない。
むしろ気付きそうな瞬間が来ても、龍次郎の謎の念押しで気付けない。
そして拗れる。
拗れてからも面白い。
龍次郎目線の回想もあるので、1冊でしっかりと2度美味しい気持ちになれました。

面白かったです。
1冊目でここまでのクオリティ。
次回作にも期待が高まる作家さんに出会えて、大満足です。

鳥肌 and 感涙

終わってしまった…。
とうとう終わってしまった…。
読み終わって、ここを開くまでに3回鼻をかみました。
でもこの画面がまだ歪んで見えるのはなぜだろう。

1巻を読んだときは、完結の瞬間にこんなに泣かされるとは思ってませんでした。
内緒ですが、途中で「いつまで回想が続くんだろう?」って思ったこともありました。
単純な回想じゃなかったんだなあ。
これは気まぐれな天才ギター弾きと、そんな彼に振り回される年上編集者の話じゃなくて、お互いのギターに惚れて、嫉妬して、手放して、でも諦めきれなくて、また出会って、求め合って、支え合ってきた2人の歴史だったんだなあ。

アラタの弾くギターで始まった宗純のギター人生。
圧倒的な才能の差に打ちのめされて、宗純ごと、自分から切り離したアラタが、宗純に対して抱いていた罪悪感。
その思いが、ロンドンへ旅立つ宗純を待ち続ける礎になっていたこと。
成田でのシーンは泣けました。

それまでアラタとギターだけだった宗純の世界。
聴こえなくなったことで、自分が無価値に思えたこと。
それでも切り捨てずにいてくれるメンバーや、何もなくても「宗純」ならそれで良いと言ってくれたアラタ。
何も聴こえないのに、アラタのギターだけは聴こえたこと。
最初は世界中あちこちフラフラしては、気まぐれに帰ってくる宗純に「何だ、こいつは!?」と思っていたけれど、やっぱり宗純の原点はアラタのギターで、アラタと弾きたいという思いが捨てきれないから、ゼロになれる環境で、弾ける自分になれるまで戦ってたんだなあ。
逃避じゃなくて、前進だったんだ、と。
それが分かるから、アラタも見送れたんだな、と。

最終話に近付くにつれて、鳥肌が止まらない。
頭皮まで鳥肌状態。
マキちゃんの計らいも素敵。
逃げずにそれに応えたアラタもカッコいい。
自分が宗純に返せるものは何か。
そこにちゃんと向き合ってくれたアラタの気持ちが嬉しい。
そして宗純がずっと願っていたことが叶った瞬間。

泣いた。
全米どころか、全宇宙が泣いた。

鳥肌を全身に立てながら、号泣するわたし。
おそらく4巻を読んだみなさま、全員がそんな状態だったんだろうなあと想像すると、不思議な連帯感を覚えました。

良い2人だった。
最高に、カッコ良い2人でした。

描き下ろしで2人の出会いが読めます。
中学生のちびっこ宗純が可愛い。アラタはイケメン。

シーモアのおまけはマキちゃんを甘やかす静佳でした。

ああ、終わりたくない。
このレビューを投稿した瞬間に、本当に2人とお別れかと思うと、新しい涙がわいてくる。
でもまた本を開けば会える。
ふう、最高でした。

I'm in Love コミック

阿部あかね 

尊ゴロゴロは必見

いやあーーー、面白かったです!
阿部あかねさんは、ダークサイドとあほでえろすサイドの二面を華麗に使い分ける作家さんですが、今回はあほでえろすの方でした。
作品の世界観にハマり過ぎる傾向があるので、『苦いのテーマ』みたいな人間の脆さや弱さが剥き出しになった作品は、「人間ってこんなにだめなんだぞー、ほらほら」っていう現実を突き付けられまくってつらすぎる。
その一方で『花といっくん』みたいな、「恋って素晴らしい!好きな人がいるって素敵なこと!でしょ!?」っていう作品はしあわせが紙面から仕掛け絵本ばりに溢れ出して来て、読み終わったあともずーーっとしあわせが続く。
ダウナーにもハイにもなれる、危険薬物か!?

メイは、乙女の心を揺さぶりまくる胸キュン恋愛もので人気の少女漫画家。
そんな彼が内に秘めた”破廉恥”。
それはAV男優のおかざき尊に恋をしているということで…。

編集部からの帰り道、買い物に寄ったスーパーで実演販売をしていたのは、何と恋焦がれ続けたおかざき尊!!という始まりです。
最初から可愛い。
売り場にフラフラ寄っていく姿から、もうメイが可愛くて仕方ない。
想像してみてください。
自分がずっと神にように崇め奉り、クローゼット1個を神棚にするくらい愛してやまない相手が、警備員が間に入ることなく、ピンクのエプロンをして、目の前に、いるんですよ!
絶対フラフラ寄って行っちゃう。頭の中フル稼働しつつ、手に汗握って、ガン見しながらにじり寄ってしまう。
その気持ちがものすごーーーく分かるだけに、フラフラしてるメイの隣でわたしもフラフラ寄っていっている気持ちに。
早くもここで、主人公に寄り添うポジションに読者を引き込む力技、さすがです。

ほわほわゆるふわ系な見た目に反して、メイはかなりのえろす脳。
尊鑑賞で培った知識は豊富で耳年増、妄想だけは達人級。だけど実戦歴はゼロという子。
尊に抱きしめてもらってポーッとなって、キスされて気絶して、とことん可愛いんだなあ。
遠い存在だったのに、触れ合ってしまったことで何も手につかなくなるのも分かりすぎる。
えろ妄想が止まらなくなっても一個一個の行動が可愛く思えるのは、見た目と共感の為せる技。

一方の尊ですが、7年付き合った彼女には「結婚は”ちゃんとした”人としたい」とフラれ、事務所の社長には「種の創造主、種王」と呼ばれ、自分には「ち◯ぽ」しか価値がないという現実に向き合い中。
ずっと断っていたゲイビへの進出もお膳立てされて、待ったなしの状態で思い浮かべるのがメイなんですよ…。尊い。「あいつなら…」って妄想するの、尊い。

ああ、ここまでで既にすごく長い。
なのでここからはちょっと駆け足で。
尊がメイを気にして会いに行っちゃうのも、尊をライバル視するゲスな後輩から守ろうとするのも、メイなら妄想だけで反応するのに、他の人じゃ無理になってしまうのも全部尊い。
メイの気持ちは最初から分かりきっているから、尊の心と体の変化にいちいちワクワクします。

そんなわたし一押しシーンは、何と言っても「尊ゴロゴロ」。
駄々っ子のように往来で尊がゴロゴロ。
万物とファ◯クできる種王が、人目も憚らずゴロゴロ。
見たいでしょう?見るべきです。その後の2人の会話と脳内のギャップも楽しかった。

ストーリー的にはまさに「少女漫画BL」。
手の届かない人だと思っていた相手に出会って、ますます恋をして、相手も自分を好きになってくれるという、少女漫画に置き換えるならスーパーアイドルと恋に落ちる地味子でしょうか。
そんな王道なストーリーでも、阿部あかね風味が加わると笑えて、きゅんとして、切なくて、そして笑えます。
あほでえろすサイドの阿部さんの世界は、主人公を囲む人々がみんな優しい。
そこも読んでいてほっこりします。

夢のような恋をぜひ、ご堪能くださいませ。

条件が揃って初めて開く、それが禁断の扉

ドアノブを回したら開く。
上部にあるセンサーに反応して、勝手に開く。
そんな扉はどこにでもある、ありきたりの「ただの扉」です。
呪文を唱えたり、合い言葉を言わないと開かない。そもそも扉のない壁にしか見えない。
何らかの条件を満たさないと開かない、中を見ることが叶わないのが「禁断の扉」なのです。

ひとりのリーマンをストーキングする男。
元は高校時代のいじめっ子といじめられっ子だった吉野と高瀬。
制服のズボンを脱がせるといういじめの最中に、高瀬に何かを感じてしまった吉野は、2年間にも高瀬を見守り続けて…。

という始まりです。
歪な関係はどこまで行っても歪なもので、「迷惑」「やめろ」と言われても待ち伏せをやめない吉野を、雨が降れば気にかけて、遅くなったら心配してしまう高瀬の悲しい「良い人」っぷりがツボにハマる。
悪びれずに高瀬一色の毎日を送る吉野もイイ。
ストーカーに不労所得を与えてはいけないというお手本のような男です。

そんな2人がジワジワと開ける禁断の扉。
その中に潜んでいたのは、SやらMやらなわけで。
元いじめられっ子で、社会人になっても無難な人間関係を築いてきた高瀬が、吉野にきつく当たることで今まで感じたことのない「何か」を感じる。
元いじめっ子で、放任主義の親に叱られた経験もない、欲しいものはすべて簡単に手に入る、まさに人生イージーモードだった吉野が、初めて手に入れられないものに出会って、拒絶されてもゾクゾク、きつく当たられてもゾクゾク。
この「ゾクゾク」に下半身が反応するという、初めての体験に「何か」を感じる。

「何か」の正体を知らなければ、それまで通り。
壁にいきなり扉も現れないし、変わらない生活が送れる。
だけどほんのり「何か」の気持ちよさを知ってしまったら…。
ひとは弱い生き物です。そして知りたがる生き物でもあります。
気になって、つい自分から扉を開けに行ってしまう。
吉野が現れたから、それまで壁だったところに扉が現れた。
高瀬に気付かれたから、壁にあった扉の鍵を手に入れた。
どちらかが開けようとしなければ開かなかったはずの扉を、2人が一緒に開けてしまったら…。

BLという禁断の扉を開けて、中の世界にハマったわたしたちが抜けられないように、彼らもそう簡単には抜け出せないでしょう。
禁断は蜜の味。
次第にハマっていく2人の心理描写にワクワクが止まりませんでした。
そうしてわたしたちも、さらなる蜜の味を求めて本屋を彷徨うのであります。

60年の歴史に萌え

得てして、「伝えなかった想い」は綺麗なまま、心に残りやすいですね。
想いを伝えて、一緒の時間を過ごして、ケンカしたり、分かり合ったつもりになったりして、結局分からなくて別れた恋人よりも、初恋の君は永遠に美しく、美少年のまま…。
決してSNSで検索なんてしちゃいけません。びっくりするから。

こちらは祖父世代と孫世代の想いが交差する、素敵な作品です。
私立高校に通う貧乏な三崎君と、理事長の孫の明治君。
貧乏ゆえに学費は出世払い、制服は祖父のお下がり、校内で商売をする三崎君に、いつも食ってかかる明治君。
だけど本当は…、という話。

飄々として我関せず×素直になれないツンデレの孫世代も萌える。
だけど祖父世代はもっと萌える。
戦時中に苦学生だった三崎祖父と、文学少年だった明治祖父の回想がときめきの宝庫。
現実的で屈強な三崎祖父は男らしくて、憧れ以上の気持ちを抱くのも頷けます。
しかもこの回の会話に何度も出てくる「月が綺麗」という台詞の真意が、のちのち三崎孫によって明治祖父に伝えられるシーンと、描き下ろしにもつながっていく手法にやられます。ニクい。
自分の気持ちを秘めて、それよりも敗戦国になった日本のためにという現実的な考えをする人だったからこそ、孫世代に続くわけで、切なさよりも「時代」を感じるエピソード。

明治祖父が可愛いんですよ。
三崎孫と一緒にいると心がときめいて、それが見た目を若返らせるというやり方で読者に伝わるように描かれているんです。
ビシビシ伝わってくる!
あの当時、想いを寄せたあの人と叶わなかった青春のやり直しをいている明治祖父は、ほんとうに純粋で可憐で、全身で恋をしています。可愛い。
そんな三角関係にキリキリする明治孫も、自分の孫の気持ちを煽る祖父もまたいい。

我関せずっぽい三崎孫が何もかもお見通しなのもいいんです。
明治祖父が自分に拘る理由も、明治孫が突っかかってくる理由も分かっているけれど、何も言わない。
相手が言わないから、そのままにしておく。
だけど「我関せず」を絶妙に貫き通せたバランスが崩れたときの、三崎孫の変化も見逃せません。

またまた人物描写の技で引き込まれまくりです。
切なさも笑いもときめきも味わえて、読み終えたときに清々しい気持ちになれる。
3世代にわたる恋は読み応えも抜群です。ぜひ。

BLに抵抗がある方にも読んでほしい

ズガーン!と後頭部を鈍器で殴られたような衝撃を味わったのが、BLハマりたての4年前。
あの日からずっとわたしのBL本棚の1列目にいます。
何度整理や処分をしても、この本の定位置は変わらず。
それくらいずっと好きな作品です。

休日の渋谷、ハチ公前。
遊びに来た高校生の百瀬が目にしたのは、女装をしたクラスメイトの八代で…。

声をかけずに2度やり過ごし、教室では八代の姿ばかり目で追ってしまう。
脳裏に残る女装姿の八代が頭から離れず、いろいろな疑問が渦巻きまくりです。
「ホモなの?」「罰ゲーム?」などなど。
気になって、考えて、見つめまくって。
1人の人間のことで頭が占領されて、夢にまで見てしまったら、それはもう恋。
BLでは恋を自覚するのによく使われる「夢」ですが、夢の威力ってはんぱない。
わたしも昔、レコードショップでバイトをしていた時代に、全く好きじゃなかったバンドのベーシストと家庭を持つという夢を見てから、やたらとそのひとが気になって、販促用ポスター見ては「この人…、わたしの夫…」とあほなことを考えていた瞬間がありました。
潜在意識に直接訴えかけてくるもの。夢、恐るべし。

八代は陽キャ、リア充、クラスの中心グループ。
百瀬は隠キャというか、クラスでは目立たないけど、オタクというのではなくてno music no life系のDK。
私服だと「あれ?百瀬って意外とおしゃれ」って思われる系。
そして体も大きい。

接点のなかった2人だけど、百瀬のグイグイ攻撃で距離を詰められて、自分の奥底にあった願望を引っ張り出される怖さを八代が感じる心理描写が素晴らしいんです。
ふつうじゃない感情。
きっかけは頭に緩い元カノにさせられた女装だったけど、「女」として見られたときに感じた「何か」が八代の心を痺れさせて、その「何か」に蓋をしたまま、こっそり続けていた女装。
秘密を知られて、距離を詰めてくる百瀬にその「何か」を暴かれる恐怖が読んでいる方にもしっかり伝わってくるから、手に力が入ります。

百瀬はそれまで男女交際におそらく興味がなかったタイプ。
それよりも自分の好きな音楽なんかに時間を費やす方が大事っていう感じ。
だから初めて自分の中に芽生えた感情に戸惑う思考回路が楽しい。
戸惑って、考えて、観察して、それでも分からなくて、相手にぶつかっていく。
不器用で言葉足らずだけど、その不器用さが愛おしい。

そう、一言で言うなら「愛おしい」。
もともと男が好きなわけでもない2人が、じわじわと相手に頭と心を占領されていって、抗いながらも恋に落ちる。
巧みな人物設定と心理描写に引きずり込まれて、読者も2人頭と心を占領されていくんです。
そしてわたしたちは抗わない。
喜んで受け入れるので、この作品と簡単に恋に落ちてしまうんだなあ。

STAYGOLD (6) コミック

秀良子 

堂々完結?

駆け足で読み返しつつ、各巻に足跡を残しつつ、ここまでやってまいりました。
秀先生の8年の年月を一気に駆け抜けた気分。

最初のページを開いた瞬間、まさか…と思いました。
5巻ラストの思わせぶりなところから、駿人がアメリカに行ったところまで飛んだのかと。
あのあとは回想でほんのり知るしかないのかと。

焦りすぎでした。
ちゃんと5巻ラストから続いてました。
そしてかなーり濃い1冊でした。

京都の夜が明けて、試合をして、東京へ戻ってから。
この先の駿人の人生に自分の居場所があるのかという漠然とした不安を抱いていた優士ですが、まだ駿人と同じとは言えなくても気持ちをやっと伝えたー!
あの瞬間の駿人のすごく嬉しそうな表情と、無表情な優士が対照的で気になりました。

駿人とキッカのアメリカ行きが決まって、中山家に「家を売る」という大きな変化が。
家を出てひとりで暮らしを始めてからの優士がつらい…。
寂しさを埋めるように仕事を詰め込んで、倒れるまで働いて。
「アメリカに行っちゃおうよ!」って何度思ったことか。
それだけ優士にとっては「家族」が大きな意味を持っていたということがひしひしと伝わってきます。
姉が出て行ったとき、駿人が高校の寮に入ったとき。
いつかは帰ってくると思っていたときと違って、もう家族を待つ「家」がない。
近くに誰もいない、健康でもなくて、仕事しかない。
孤独に潰れそうになったとき、駿人との電話で絞り出すように言った一言に頭皮までずわーーーっと鳥肌が立ちました。
極限状態になって、何もかも削ぎ落とされて残った気持ちがそれだったんだな、と。

コウの方も日高に再会します。
女の子が好きだけど、きっとずっと日高はそばにいてくれる存在で、変わらないと思ってたんだろうなあ。
「またね」と言ったコウの気持ちは、親友としてだったのか。
失った魂のかけらは、コウにとって「女の子が好き」とは別次元のものなのかなあ。
この2人のその先は番外編で読めるのでしょうか。

久しぶりに美浦さんも登場していて、駿人が彼女の人生にどれだけに影響を与えたかが分かります。
国枝さんのその後もちょっと見たかったかも。

終わり方がまた鳥肌でした。
13才だった駿人の目には優士しか映っていなかったけれど、今の駿人にはテニスがあって、たくさんのひとと出会っても、駿人にとっては優士が「世界で一番好き」なひと。
そしてどこへ行っても「帰る場所」。
「ただいま」と言って帰ってくる人がいて、「おかえり」と返す人がいる。
あたたかい気持ちに包まれました。

番外編も楽しみです。

STAYGOLD (5) コミック

秀良子 

広い世界を知っても

初読のとき、5巻でもう少しコウと日高の話を読めると思ってました。
読めなかった。
本当にあれで終わり!?という衝撃と共に、「惜別 日髙くん」と心の中で手紙をしたためました。

そんなわけで3巻終わり、2年ぶりの駿人の帰省のシーンの続きから。
とは言え、最初に入るキッカの話が素敵です。
家族のことを書いた作文でクラスメイトから「変!」と言われるキッカ。
コウにそれを愚痴ると、「変はスペシャルってこと」と教えてもらいます。
このエピソード、大好きです。

高校でめきめきテニスの腕を上げていく駿人。
周囲で色めき立つ女子たち。
そして国枝さんという特定の女子との噂まで。
「嘘だー」と思いつつ、あれ?という流れ。
気持ちを伝えずにそばにいることを選んだ国枝さんもずるかったし、気持ちを知りながら仲良くしていた駿人もずるかった。
そのずるさの分、家に戻っても国枝さんの夢を見る駿人のあの夢は…。
うーん…。
もしかして「優士を好きでいること」が自分のアイデンティティのようになってない?
その気持ちを失ったら、自分が自分でなくなるような意地を感じてしまいました。
寂しい。
国枝さんは何だったんだろうと考えたとき、優士以外の選択肢を初めて駿人が意識した相手だったのかなと。
でもその選択肢を目の前にしても、やっぱり譲れない気持ちが駿人の中にあって。
ちゃんと優士への気持ちは駿人の中でしっかりと軸になって、変わらず大きいものだったことが分かって安心しました。

優士の方も離れたことで気持ち変化が表れてました。
アメリカ行きを決めていた駿人に対して、優士が思ったこと。
「お前の見てる世界に、俺の居場所はあるのだろうか」
この想いだけで十分!
もう認めて、受け入れて!と思ったものの、駿人は駿人で「人の思いを拒絶する辛さ」を知ってしまったから迂闊に動けない。

もどかしい。
もどかしいけど、そんな簡単なものじゃないのが伝わってくるから見守るしかない。
さあ、次が最終巻です。