牧さんのレビュー一覧

天球儀の海 小説

尾上与一   

「海に映さなければ本当の形を知ることができない」

1945シリーズ、復刻の第2弾。
命の恩人資紀の身代わりに、特攻隊として出撃することとなった希。再会しお礼を言う希に対して資紀は冷たく拒絶してきて。でも時折見せる優しさに触れ、その態度の裏にある想いを知った時には……。
天球儀の海、海に希の右手を映すとオリオンとなりそれを辿った先にシリウスがいる。お互いがお互いのシリウスなんですよね。
そして、海に映さなければ坊ちゃんの本当の心を知ることが出…

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天球儀の海 小説

尾上与一   

モチーフの使い方が秀逸

地元の名家成重家の跡取り息子、資紀(坊ちゃん)と、
天文学者の四男、琴平希(ゆき)。
希は成重家の要請で戸籍上成重の次男となり、ひっそりと屋敷の離れに迎えられる。
ごく幼い頃に坊ちゃんに助けて貰った恩を胸に、彼の代わりに「特攻」の出撃命令を待つために。

シリーズ新装版2作目。
帯や裏表紙に書かれていること以外前情報なく読んだ。



まず驚いたのは、「助けて貰った思い出」のさ…

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『天球儀の海』1945シリーズコミコミスタジオ限定連作SSフェア小冊子「とりのはなし2 琴平希」 特典

ずっと自問自答しながら生きていくんだろう

小冊子付きで買いたくてこのシリーズはコミコミスタジオさんで毎回注文する事に決めてます。

文庫本の付録SSですが、コミコミさんのSSってA5サイズです。大きくて読みやすいですが、一緒に保管したい派なのでサイズ揃えて欲しいななんて思ったりします。

さて内容ですが、こちらは本編終了後の資紀視点です。戦後10年と言っているので2人が再会してからさらに2年が経過してますね。
あの時の判断は間違…

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天球儀の海 小説

尾上与一   

ときに優しさが痛い。

幼い頃、自分を助けてくれた坊ちゃんのためならば、特攻隊の身代わりとして命を差し出せると考えていた希。
しかし、再会した坊ちゃん(資紀)からは冷たい態度を取り続けられて、、、
という始まり。

出逢いから丁寧に描かれており、すぐさまググッとお話に惹き込まれました。

が、度重なる坊ちゃんの希への荒ぶりように、なにかその感情に思惑がある! と分かっていても辛く苦しくて、、、
しかもその荒…

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蒼穹のローレライ 小説

尾上与一   

涙がボタボタ落ちる。

冒頭は戦後18年。
戦時中は航空機の整備員として従事していた三上の元に、当時世話になった男の息子から連絡がくる。
亡くなった父からの預かりものとして、
詫びの言付けと共に渡された封書には一枚の紙が入っていて……



戦時中の話であること、どうやら辛い展開がありそうだということ以外、あまり前情報なく読んだ。
冒頭の紙、書かれた文字を見た三上の反応に、物語の世界へグッと引き込まれた。…

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天球儀の海 小説

尾上与一   

ロマンティックと戦慄

旧版未読。今回文庫版で再発売されたキッカケで読み始めてます。前回と発売順を変えているのは何故なんだろう?と思いつつ、旧作では第1作目だったらしい今作を読み始めました。(追記:尾上先生のつぶやきによると中古価格が尋常ではない金額に高騰している作品から発売する事にした為とのことでした)

これ一作目に読むのはヘヴィかもしれない。初恋の思い出を胸に身代わり特攻隊を受ける事を決めた主人公 希に対して、…

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天球儀の海 小説

尾上与一   

評価に苦慮しました

復刊されたこのシリーズ、元は本書が1冊目だったのですね?
復刊が刊行順でないのにはどのような意図があるのか気になるところです。
前作(本当は前作ではない……)「蒼穹のローレライ」とは時代は同じですが、直接のつながりはほぼありません。衛藤新多大尉は両方に出ていますが、片やラバウル、こちらは日本が舞台です。
由緒ある大家の跡取り息子の身代わりとして、他家の末子を養子にし、特攻に出す。
大家の家…

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蒼穹のローレライ 小説

尾上与一   

大切な一冊になりました。

噂に違わぬ素晴らしい作品でした。
お書きになった尾上先生、最初に刊行された蒼竜社HollyNovels様、復刊してくださった徳間書店Chara文庫様には心からお礼を申し上げたいです。読ませてくださってありがとうございました。
と、ここまで書いて、胸が一杯で手がとまってしまいました。言葉で表すのは難しいです。
生まれた時から瞳の色が青灰色で、家から出せないと隔離されて育った塁が、横領の濡れ衣を…

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天球儀の海 小説

尾上与一   

何という愛情

尾上先生の作品は、情景描写がとても美しいと思います。花降るシリーズは、匂いや温度湿度も感じられる気がします。
このシリーズも同じく、油の匂いや南国の湿度とジリジリする日光、日本の冬から春の空気の移り変わりを感じます。遮光された戦中の家の昏さとか。
執着溺愛攻と健気受の20年愛ですが、2人の生きた年代が大戦中という…
死こそが美とされていた時代と思想の中で、ひたすら愛する人を生かしたい、生きる…

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天球儀の海 小説

尾上与一   

そうかぁ……

復刊2作目、1作目既読です。

子供の頃の一度の邂逅、初恋がすっと入ってくるかどうかにも寄るかなと思いました。
5歳の頃に命を救われた名家の坊ちゃんが好きで、お役に立てるならと特攻の身代わりを引き受ける。

希の父が天文学者だということ、右手にホクロがあることの設定が効いていてなんともロマンチックです。

希視点で描かれるので、資紀がなぜ冷たい態度をとるのか、ひどいことをするのか、が…

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