Sakura0904
恋人だった天馬を失った椿の情緒が、この作品の軸として大きく占めています。天馬が亡くなったことを知らなかったのは、心の自己防衛だったのでしょうか。あからさまに取り乱すようなことがない分、感情が読みにくくどこか危なっかしい印象を与えます。天馬亡き後、新たに椿と出会う幹。天馬一筋の椿に苛つく様子も見せながらも、根気良く椿に付き合う彼に、そうして1人の男を虜にしてしまう椿の罪深い性質を感じました。
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◆野狐禅(表題作)
ストーリーの運びが素晴らしいと感じました。こういう結末になる作品って少ないんじゃないかな? ラフに体の関係を結ぶチバに真剣に恋をするモンジ。彼の健気さ、一途さに感化されることはなく、チバは最後まで無神経な男でしかないんですよね。モンジの行き場のない感情が切なくて。
でも、実は灯台下暗しで、モンジのことを誰よりも見ている人がいた。傷心のモンジを労わるオハギ。よくある展…
◆同性の恋人と同棲して6年が経ちました(表題作)
とにかく2人のやりとりが穏やかで、適度に甘くて、可愛らしいんです。丈から迫られて睦人が思わずめんどくさい、と返してしまうところから始まるのもリアル。本当に面倒なんじゃなくて、きっと長年の付き合いによる甘えが生じて、言葉に気を遣わなくなった結果ですよね。それに対して拗ねてみせる丈も、可愛げがあったり。結婚を期待される歳になって見合いを断れずつい行…
◆みちづれポリシー(表題作)
攻め受けの組み合わせがとっても魅力的でした。ノンケである親友・西岡を好きになってしまったことに悩む篠原。ノンケ相手だからと端から何もかも諦めている、ネガティヴ人間な彼に、西岡は一切引くことなく包み込むような迫り方をします。自分の好意すら信じてもらえないのって悲しいですよね。篠原の不安も分かるけれど。本音や事実を言いたくないなら言わなくていい、でも、少しでも漏れ出し…
フェンスを境に始まる新卒社会人と高校生の恋愛物語。学校と会社が隣り合っているのって、こんなに夢があったんだなぁと新たな発見でした(笑)。2人の会話のテンションはツッコミとボケという感じで、いつもの腰乃先生節でしたが、なんといってもこの作品の醍醐味は年上である松坂の可愛さ。普段は中島に何を言われてものらりくらりと躱し、年下をからかってばかりの彼ですが、ふとした時に照れたり、いざ積極的に迫られると初…
◆いつか雨が降るように(表題作)
最初は行き倒れの男を拾って一緒に暮らし始めるという王道の話かなと思いましたが、読み進める内に拾われたシロは実は匡一と知り合いだった?という疑問が生まれ、最後にはあっと驚く展開が用意されていました。匡一のとった行動は果たして偽善やエゴでしかないのか、贖罪と言えるのか。人によって受け取り方も異なると思います。たとえシロが記憶を取り戻して自分を恨むようになろうと、自…
前巻では萌えというより笑いの比重が大きくて、すごく面白かったけれどBLとしての萌えは少なかったかなぁというのが正直な感想だったのですが、2巻は前巻よりも粕谷と葛谷の可愛さが増していた気がして、萌えを感じることが増えてきました。
プライドエベレストでアナルを責められることへの執念はすごいくせに、コアなエロ用語は知らない初心なところが残っている粕谷も、普段は粕谷の扱いが雑で飄々としているのに…
まずは緒川千世先生、デビュー10周年本当におめでとうございます。すっきりした線のタッチが特に青春ものに合っていて、爽やかに汗が滴る少年や青年達の色気というものが魅力的な作家さんだと思っています。どの作品をとっても、キャラクター設定が素敵なんですよね。そんな先生がファンブックを出してくださったことに感謝です。
中身はざっくり、前半がカラーイラスト集、後半の2分の1が企画もの、残りが描き下ろ…
前巻はBL面が主でしたが、こちらはBL要素にこの年代ならではの葛藤や野球部らしいきらきらした青春もしっかり絡んでいる印象が強かったです。あれからキスや軽い触り合いはするようになったけれど、大きく関係性が変わるということはなく。夏は甲子園を目指して今井も引田も野球一筋で突っ走る。引田視点ではこの時もけっして野球のことばかり考えていたわけではなく、今井と接することが減った寂しさを覚えていたことが語ら…
京山先生のエロスを感じる着眼点、それを漫画でしっかり表現できる才能に改めて惚れました。野球部の部室。部活終わりで皆が出払った後の遅い時間の、2人だけの空間。2年の今井は、1年の引田の裸を触りたくって仕方ない。この導入だけで引き込まれてしまいました。引田自身も十分自覚しているのですが、彼は上背もなく野球の才能がずば抜けているわけでもなく、緊張すると睨むような表情になってしまうことがコンプレックスの…