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表題作挑発のルポライター

羽多野猛 27歳 フリーライター
新見友哉 24歳 男性週刊誌の編集部員

あらすじ

出版社に勤める新見友哉は入社二年目。
きっちりスーツを着込んだ外見とは対照的な記事ばかりを扱っている、男性週刊誌の編集者だ。
そんな新見が再会した学生時代の憧れの存在、波多野は、以前とすっかり変わってしまっていた。
大手新聞社を辞め、妻子にも逃げられたという。
おまけに新見の家に転がり込み、家賃代わりに身体を提供すると言い出した。
強引に迫られ、受け入れてしまう新見だが。

作品情報

作品名
挑発のルポライター
著者
あさぎり夕 
イラスト
山田ユギ 
媒体
小説
出版社
集英社
レーベル
コバルト文庫【非BL】
発売日
ISBN
9784086010870
4.2

(4)

(2)

萌々

(1)

(1)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
3
得点
17
評価数
4
平均
4.2 / 5
神率
50%

レビュー投稿数3

あさぎりさんのイメージ変わったー!

正直、あさぎりさん作品って苦手であまり読まないんですが、これは山田ユギさんとあさぎりさんという自分的にはミスマッチな組み合わせに引かれて読んでみました。

失礼を承知で言わせていただくと、こんな男前同士なカップリング恋愛話も書けたんですねーー!!あさぎりさんって!!
甘い感じのベタベタ乙女系話なイメージしか持ってなかったので目から鱗。
こんな骨太な話も書かれる方だったとは!!

かつて新見〔受〕が恋して尊敬もしていた、元新聞記者の波多野〔攻〕との再会は波多野が落ちぶれて駄目男になっているという新見をがっかりさせるものでした。
しかし放っておけずに自宅へ出入りさせている内に波多野は新見宅にちゃっかり居座ってしまいます。
そしてある政治家の賄賂事件を彼らで追う事になって行くのですが、最初は無感情な新見が段々と男前になって行くのがかっちょいい。
波多野が何故、ジャーナリストの第一線から足を引いてしまったのかの理由も、そしてその明かされ方もいいです。
エロシーンもなかなか男臭くてこれもいい!
男同士の恋愛モノとしてもジャーナリストとしての事件モノとしても両方の面でがっつり読みがいがありました。
苦手意識を捨てて、あさぎりさん作品をもっと色々読んでみようと思わせるだけの作品でした。

0

あきらめないということ

あらすじを読みながら、なんか知ってる話だよなーと思って気になって気になって探したら、モンデンアキコ先生の「リミッター」内にこの小説原作の「挑発のルポライター」がありました。

(余談ですが、「リミッター」を買った理由は「1円の男」内の『放蕩と無頼』の続き『放蕩と無頼~覚悟』がどうしても読みたかったから。これはコミックもCDも最高です!)

コミックは短編になってるのでかなりカット&少し設定が変わってますが、この小説をよくまとめたなと感心。ほんと。
小説の方のイラストは山田ユギ先生です。それぞれの良さがあります。

小説を読んだことでディテールを深く知ることが出来ました。
どんな事件を追っていて彼らがどんな行動をとって、そこに行き着いたのか理解できます。
コミックを先に読んであとから小説を読むのはそういった驚きと面白味がありました。

羽多野先輩が無理に友哉に説明してあきらめさせたり言い訳することなく、自分へ過度の期待をしている友哉にわかってもらおうとするのは、今は落ちぶれたように見えてもやっぱり落ちぶれてなんかいない。魅力的な人でした。

ふたりでやり遂げようとした取材が失敗に終わっても、まったく希望がなくなったわけではなく、またいずれという僅かでもそう思わせるのもよかったです。

きっと世間にはそうやって揉み消されて一般市民が知らないことがたくさんあるんだろうなとつい考えてしまいました。

ノンケの羽多野先輩が友哉に惹かれたのはわかり難い感じがしましたが、友哉が自分に惹かれているのを知っていたのと一緒に生活していて絆されたってところなのかな。ともあれ友哉にとっては良かったよね。
最後の最後までなにやら誤解はしてたけれど。どうぞお幸せにw

0

一生懸命足掻きながらもがきながら仕事をして生きている男たち

再会ものです。
新見(受)が高校1年生のとき、家庭教師をしてくれたのが波多野(攻)。
傲岸不遜、大胆不敵、身の程知らずな広言を叩いてもそれを軽々と実行してしまう、向かうところ敵なしの熱い男・波多野に、新見は憧れを抱き、それはいつしか恋心へと変わっていました。
しかし波多野は新見が17歳のとき、大学二年でできちゃった結婚をしてしまいます。
波多野が大手新聞社に就職したあとは、この不毛で辛い想いを絶つべく、距離を置いていました。

その後、新見も大学を卒業出版社に入社。
ある日、繁華街で若者グループから暴力を受ける男を発見します。
新見が駆け寄ってみると、殴られていたのはなんと波多野で、新見は波多野を自分の部屋へと連れて帰ります。
しかし波多野は、自分が好きだった頃の面影はなく、覇気のないフヌケ男へと変貌してしまっていました。

妻子に逃げられ、出版社も辞め、輝いていたころの勢いもなくして、細々と小さな記事を書いては食いつないでいるような波多野に新見は失望します。
しかし、見た目には以前と変わらない精悍な面影を残す波多野に、くすぶっている恋心はなかなか鎮火しません。
フヌケ!と腹立ちながらも、なんとかもう1度前のような波多野に戻ってほしいという願いも捨てられない。

そんなとき、二人は波多野が新聞社を辞める前に追っていた収賄疑惑の関係者の密会場面を目撃します。
このネタを追うことで、再び以前の波多野に戻って欲しい、と新見は波多野と共に事件を追うことになります。


波多野の妻が、波多野に不満を告げる場面があるんですが、この不満がすごくリアル。
けれどこれだけが夫婦仲が壊れた原因では面白くない。
波多野が、飛ぶ鳥を落す勢いの、周りのものや人全てを追い越して前進していく、世界が自分中心に回っていて、それを周囲も認め憧憬せざるを得ない何でもできる男だったからこそ、家庭を壊してしまった・・・というところにオチているのが面白いと思う。

昔デキた男がフヌケになって登場したからには、また元のような男に戻って欲しいと思うのは当然、読者も期待するしまたそういう展開が多いと思うんだけど、これはそうじゃない。
一般道路を限界までの猛スピードで疾走していく車と、余裕を持った安全運転の車と、自分の側を通っていくとしたら、どっちがいいか。
波多野は、苦渋を舐めた末に変化した。
そういう裏が見えてくると、波多野への見方が変わってきます。

政治家の汚職事件を大々的に発表してヒーローになって大団円という終わり方はしない。
仕事自体は成功するけれど大きな壁に阻まれてしまう。
しかし、そういうことがあったり、人生に影が射したりしても、一生懸命足掻きながらもがきながら仕事をして生きている男たちという感じがして、締めもいいなと思いました。

2

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