一度だけ抱いて欲しい

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表題作十の願い

創馬直人,土地開発会社の社長
乃坂深夜,24歳,義母とたばこ屋を営む

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

老いた養母と小さな煙草屋を営む乃坂は、毎日くる創馬という男に、密かな恋心を抱いていた。想いを伝えるつもりなどなく、他愛のない話の中で男からの優しい気持ちを感じるだけで幸せだった。そんなある夜、創馬から突然の土地買収を告げられる。混乱する乃坂に追い討ちをかけるような養母の死。一人になった乃坂は、ただ傍にいたい。それだけの想いから同居を条件に買収を受けると話す。それが乃坂にとって、甘く切ない日々の始まりとは知らずに……。
(出版社より)

作品情報

作品名
十の願い
著者
火崎勇 
イラスト
三池ろむこ 
媒体
小説
出版社
笠倉出版社
レーベル
クロスノベルス
発売日
ISBN
9784773085495
3.8

(38)

(8)

萌々

(20)

(7)

中立

(1)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
10
得点
142
評価数
38
平均
3.8 / 5
神率
21.1%

レビュー投稿数10

欲が浅い主人公の11番目の願い

unlimi

火崎先生は、TL作品もだしているせいか、
文章に尖った所が無くて、とても読みやすかった。
派手さがないテーマ、激しく感情を揺さぶらない。地味目な文章。
だからか孤独な深夜の気持ちが凄く伝わってくる。

・10の願い:深夜視点
・特別編:創馬視点

●乃坂深夜:24才、タバコ屋 生い立ち複雑な美人・・幸せを願うのは十以内。
●創馬直人:30代 北斗産業社長 ラッキーストライクを愛飲・・幸せは幾らでも願うもの

ろくでなしの両親に虐待され、実父に擁護施設の前に捨てられた男の子・深夜。
深夜は、息子夫婦を事故で失った、50代の夫婦に引き取られる、
深夜が、もう捨てられないと安心した日、
養父が「誰でも生涯10、願いがかなう」と、願いごとノートを渡す。
養父が見せたノートには、深夜の幸せを願う文が書かれていた。

深夜は、やっとひだまりの中にいるような毎日を送り、大学を卒業して就職。
癌を患った養父を看取る。

務めを辞め、養母を支えながら煙草屋を営む穏やかな日が続く或る日、
地上げ屋として創馬が訪問。
地上げの話を受けた日、深夜はノートに願いを書く
「おばあちゃんが死ぬまで、この家に棲めますように」

創馬が何時ものように煙草を買いに来た日、奥で養母が倒れ、そして死亡
深夜は「誰にも愛されない孤独」を思い出す。
パニックを起こした深夜を支えたのは、昨年脳出血で父を亡くしたばかりの創馬。
・・ここまで、創馬の親切が地上げの為なのか、良く分からない。

他人に馴染みにくい深夜が、創馬に心を開いていく。
創馬に縁談が来て、離れる決心をした深夜は、願ノートを捨て創馬家から去る。
ノートには、秘めた恋が書かれていた。
・・(創馬家で捨てたら、創馬が読む可能性を深夜は計算していた?)


創馬は、愛情深い人だった。ハピエン。読後感が凄く良かった。

---
★創馬が愛飲する「ラッキーストライク」は、開運を意味する煙草。
アメリカ製で、パイプ煙草➡葉巻煙草➡紙巻となった、タール11mgのかなり深い香り。
ゴールドラッシュ時代の「Lucky Strike」(大当たり)という意味。
昔のパッケージは、マッチョイズムの象徴 ガッツ=握り拳だったそう。

二人にとって出会いは「Lucky Strike」。

0

自分のために願う事

今回は受様の店の常連客で土地開発会社社長と
義母とたばこ屋を営む青年のお話です。

土地買収問題を絡めながら
受様が攻様と出会って幸せをつかむまで。

受様の実の両親は
飲むと受様に手をあげるような二人で
母が男ともに家を出て行くと
父は養護施設の前に受様を置き去りにします。

暴力や空腹からは解放されても
自分がいらないモノとして捨てられた受様は
希望や期待を持つ事もなく
ただ日々を過ごすだけでした。

そんな受様の世界を変えたのは
息子夫婦と孫娘を失ったという老夫婦でした。

義父は願い事は叶わないことが多いが
どんな人だって一生のうちに十個は
必ず願いが叶うんだよと言い

今までいい事の無かった受様なら
これから十個の願いが叶うからと
受様の願いを書く為のノートを贈ります。

受様は
高校入試で初めての願いを書いて以来
色々な願いを書いてきましたが
叶ったものも叶わなかったもモノも有り…

大学を出た受様は一度は就職しましたが
義父がなくなってからは
病持ちの祖母とタバコ屋を営んでいます。

そんな受様の最近の楽しみは
ある一人の男性客の来店でした。

背が高くスーツの似合い
颯爽としていて押しの強そうなその人こそ
今回の攻様になります♪

攻様は受様宅の近所で仕事があるらしく
煙草を理由に店によく通うようになりますが

実は攻様は土地開発会社の社長で
近隣の土地とともに受様宅も
買収計画に含まれていたのです。

買収の話を聞いた義母は
家を手放す事を嫌い話は進みませんでしたが
受様の義母が急死した事で事態は一変、

残された受様は願い事を記してきたノートに
初めて自分のためだけの望みを書き込みます。

攻様と一緒にくらしたい
彼の側にいたい

果たして受様の願いは叶うのでしょうか?

実の両親に望まれなかった事から
自分から何かを望む事をしてこなかった受様が
初めて自分から欲しいと望んだ恋のお話になります。

最初は土地の買収目的で通っていた攻様ですが
受様と交すたわいない会話は
ささやかな癒しの時間となり

義母と二人きりの静かに暮らしていた受様には
日々の生活に彩りとなりっていきます。

受様の義母の死で何も無くなった受様は
攻様との繋がりを維持する為に
売買の条件として攻様宅への同居を望み
攻様は受様を自社での仕事を与えます。

このあたりで既にそこはかとな~く
攻様の好意の質が見えおりますが
必死な受様は気づきません(笑)

ここで押せ押せな攻様なら
何かしらちょっかいをかけそうですが

大人な攻様は
肉親の死で気落ちした受様に迫る事は無く
万事控えめな受様も
自分の気持ちを攻様に伝える事も無く…

攻様の結婚話が出た事で
受様は彼から離れる決意をした事で
二人の間には立たなくていいはずの大波が!!

ハッピーエンドがお約束なのですが
受様なりの理由があっても
すれ違ったままに身体を繋げ
別れを選択した時はハラハラでしたが
最後は攻様が頑張って大団円を迎えます。

何事にも控えめながらも
出来る事に真摯に真面目な受様が
幸せをつかむまでとっても楽しく読めました♪

もうちょっと
攻様が押せ押せでも良いかなって思いますが
人間関係に恵まれなかった受様なので
こういうのも有りかな。

受様をしっかり捕まえたコレからは
攻様も俺様ブリを発揮しそうですけどね(笑)

本作は通販書店の初回特典で
攻様視点での書き下ろしの小冊子がありました。
本編では抑えられていた
攻様の思いがバリバリなラブラブ後日談です。

今回は本作と似たシチュで1本、
土地の開発を巡る社長と健気な受様とお話で
雪代鞠絵さん『花はキスで咲き誇る 』をお薦めです。

7

一生で10の願いが叶うとしたら…到底叶う願いは10では終わらない

昔から活躍されている作家さんなのに、何故か最近になって読み始めました。リーマンや様々な職種の大人の恋愛と、自分の好き系なのに、今までに読んでいなかったのが不思議というか、もったいなかったなあと思います。

内容は、青年実業家年上攻×薄幸の美少年年下受のお話です。
攻め様とは、受け様の実家が営むタバコ屋で出会い、タバコを通じてお茶飲み友達のような関係になっていくんですけど、とてもほのぼのとした心温まるシーンになっていて、とても読んでいて心地よかったです。
不幸な生い立ちを持つ受け様は、一人になりたくないという切実な思いと、攻め様が好きで愛し合いたいという気持ちで揺れ動きます。この、受け様の恋心の葛藤も丁寧に描かれていて好きでした。
生涯に10個だけ本気の願いが叶うと言われて、義父から譲り受けたノート。迷いながらそこに書かれる願いは、率直でシンプルなものばかり。その計算高くない不器用なところが、健気で愛しくて、攻め様の近くにいながら思いを伝えられない甘く苦しい日々…読んていて泣けます。
最後に、10の願いのその後を、攻め様が攻め様なりの言葉で強く語ってくれて、受け様の心に訴えかけるシーンは迫力があります。やっと、心が通じあった時はまた泣きました。この攻め様も、大人で抱擁力があって好きなキャラでした。

読後も、なんとも言えない心地よい余韻に浸れる作品でした。火崎先生の言葉の力强さは凄いなあと感動です。純愛話を読みたい方にはオススメかなあと思いました。

7

11番目の願い事

1冊丸ごと表題作です。深夜の目線でストーリーは進んでいきます。

虐待され、実の両親に捨てられた深夜(受け)。養父母も亡くし、深夜は養父からもらった「十の願い」が叶うノートと共に、心を寄せる創馬(攻め)の家で同居を始めるが…。

「十の願い」が叶うノート、と書くとメルヘンチックですが、10個までなら願い事がなんでも叶うものではなく、願い事が10個叶うまでノートに書き続けることができるというだけでした。

自分で叶えられない願い事なので、病気治癒など深夜の力だけではどうにもならない事ばかり。7個までは養父母のこと、残りの3つが創馬に関することで、10個目が叶った途端、深夜は創馬の家を飛び出します。そんな深夜を探し出して、創馬が叶えた11個目に、ぐっときました。

創馬と同居といっても、母屋と離れという予想外だった暮らしですが、創馬がかなり前から深夜を意識していたからだと分かってから読み返すと、ニヤけてしまいました。創馬の気持ちがちらほらと透けて見えるので、ラストの告白で唐突感がなくて良かったです。ただ、「婚約ぐらいはしないとな」は言いすぎです、と文句を言いたい。

深夜は健気で頑張り屋、それが無理なくできているのが良かったです。唯一気になったのは、創馬の家を出る前に養父からもらったノートをゴミ箱に捨てたこと。黒表紙の立派なノートなのだから、ゴミ箱に入っていた他のゴミとあわせてゴミ袋に入れるまでの配慮が欲しかったです。創馬がゴミを漁るのは予想外だったとしても、間違って捨てたのかも、と保管はされる可能性は考えておくべきだったと思いました。

余談ですが、130ページの「二人(養父母)の最期が、最悪な形で終わったことはよかったと思っている」というのは誤りですよね?

健気で頑張り屋の受け、包容力のある年上攻め、がお好きな方にお勧めです。

3

願いはかなう

幼い頃、両親に愛されずに施設に捨てられた乃坂は
引き取ってくれた養父と養母の温かい愛情に感謝する。

養父からもらった十の願いのかなうノートは心の支えになって
私も真似しようかなと思ったほど。(十とは言わないけど)

養父亡き後、養母が倒れ取り乱す場面は創馬でなくても守ってあげたくなる。
養母が亡くなり、創馬と同居しはじめ十個目の願いをかなえ姿を消した乃坂。

そこからラストまでベタな展開。でもそういうものが読みたい私には満足でした。

2

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