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作家買いです。
一穂さんは文章の運びや言葉のセンスがとてもお上手で、個人的に読み始めると一気に引き込まれてしまう作家さまです。
内容は皆さま書いてくださっているので感想を。
人付き合いを避けて、閉じこもるように生活している縁。なのに出会ったばかりの女の子をお持ち帰りしてしまう。すごく違和感があって、でもどうしてそうなのかすごく不思議で、縁が抱えるモノが一体何なのか知りたくてページをめくる手を止められませんでした。
対して攻めの数真は人当たりも良くするりと人の懐に入り込んできて、それでいて相手に不快感を与えないというタイプの人。全く真逆の二人は、実は子どもの頃に出会っています。
数真は子どもの頃目が見えないというハンディキャップを持っていて、縁は「相貌失認」という障害を持っている。目が不自由だけれど、その代り聴覚や触覚が発達しているカズくんと、目は見えるのに人の顔は覚えられないゆかりちゃん。お互い、自分が他の子とは違っていることを理解していて、世間から一歩引いた生活をしている。そんな中で出会った二人はお互いが唯一の光で。まだ子どもだった二人が健気で、頑張れ、って応援したくなりました。
縁は大切な人は作れないし、作ってはいけないと思ってるんですね。だから人と深く関わるつもりがない。そういう雰囲気になれば女性をお持ち帰りすることもあるけれど、決して自分から誘うことはないし、誰でもいい、っていう感覚なんだと納得しました。一穂作品にしてはエチシーンが多めで、かつ唐突に始まる気がしました。でもそれも、縁が人とセックスするのなんて大したことない、別に誰としても変わりないし、と自分に言い聞かせているからなんじゃないかなって思いました。
その上で、大切な人になりそうな数真を切り離そうとする縁が可哀想で涙が出ました。
「見える」ってどういうことだろう、って改めて思いました。見えても理解できないことってあると思うし、見えなくても大切なこともある。目で見るだけではなくて、触って見えることもあると思うし、感覚で見えることもあると思うし…。なかなかに奥が深いなと。
あと縁の叔父さんの訓さんがとても好き。いつでもサングラスをかけている理由を知った時、思わず萌えてしまった…。縁を恋愛感情のように大切に思っていたら個人的にちょっと…って感じだけれど、本当に甥っ子と伯父さんの愛情で繋がれていて良かった。縁を甘やかすだけではないし、ナイスガイでした。
小椋先生のほんわかとやさしい絵柄も、とてもよかったです。
とても異色な話でした。
子供の頃に目が見えなかったが手術により完治した編集者と相貌失認という症例で人の顔が認知できない在宅ワーカーのCGオペレーター
登場人物の身分や職業が変わった設定は数あるけれど、生かされていない場合薄っぺらでとってつけたようで面白みがないけれど、この作品の場合はとてもうまく背景が生かされていると思います。
幼い頃の目の見えない数馬と人の顔がわからない縁との出会いにほのぼのとして、子供らしい純粋で残酷な思いが溢れて会うことができなくなってしまった別れが辛かったです。
台風のせいで会えないかもしれないと思った時、無理しないでと言いながら、来ないと言われたら腹をたてるだろうと思いわがままな自分にあきれるシーンでわかるわーと思いました。
恋をするとわがままになったり自己中な気持ちにもなりますね。
初めてのことに戸惑う縁の気持ちがよく表れていると思います。
縁の叔父がとてもいい人なんです。
夜でも室内でもサングラスをしている理由。
それを優しさだと言い切る縁。
幼い縁に安らぎと大人になった縁に居場所を与えてくれる優しい人です。
可愛がっていた甥に友人になれればと自分が紹介した仕事仲間に掻っ攫われて、花嫁の父状態でした。
はやく縁に自分のことを伝えて欲しいと思いながら読みました。
でも、好きな人に顔を忘れられるというのはどんな気持ちなのか想像ができません。
そしてそれを人に知られることが恥ずかしく死ぬほど辛いことなのですね。
あとがき代わりのSSがよかったです。
本編終了直後。
最後に協力してくれた叔父さんに報告の電話を入れた数馬との会話。
伯父さんも数馬も縁を大切に思っていることが伝わるおまけのエピソードでした。
元々、一穂ミチさんの作品が好きなんですが、
この作品は設定も好きなのでかなりツボです。
盲目の少年・数馬と、一夏の間、親しくしていた縁。
縁は相貌失認(人の顔を判別できない)の障害をあることを数馬に隠していたんですが、とあることをきっかけに別れ、再会する。
数馬は目の手術を受け、目が見えるようになったものの、「ゆかりちゃん」のことは女の子との思い出だと思ってる。縁は数馬のことを気付いてるけど…
というストーリーです。
相手のわからない初恋の人との再会ものといったら王道ですが、やはり盲目と相貌失認っていう設定は特殊ですね。
ただ、それが”設定だけ”、になっておらず、数馬の目が見えなかった時、目が見えるようになってから感じたこと、相貌失認の縁が普段不安に思ってること、気にしていることの描写がとても良いです。
それから訓さん(縁の理解者である叔父)の「その話、最後まで聞いたら俺は鼻からそば出しそうか?」のシーンのやりとりみたいな、軽快な会話があったり、
数馬の好青年でありながら、以外としたたかなとことか、縁の障害があってコミュ症みたいな生活してるのにあっさり女の子と寝てたりするギャップもお気に入りポイントでした。
あああ。やっぱり一穂さんの作品はいいなあ。綺麗な文章だなあ。好きだなあ。
子供のころ目が見えなかった岩崎数馬と人の顔が識別できない仁科縁の話。縁が、数馬に病気のことを知られたくなくて逃げる逃げる。本当は、数馬のこと好きなのに。好きな人の顔さえ覚えられない自分など、人から好かれる資格がないという心理。あああ、切ない。そんなゆかりの魂胆に、結構初期から気づいていた数馬がすごい。今回は、数馬が最初から覚悟を決めて、縁にモーレツアタックしてくれてたから、ものすごい安心して読めた。サトシさんという味方もいてくれた。私は、このサトシさんが本当にいてくれてよかったと心から思う。サングラスを貸してくれてありがとう!!
アイズオンリーとは、「見るだけの重要機密」の意。転じて、プライベートという意味になる。この作品を読むと、この言葉がなぜタイトルになったのかが分かります。
表紙に惹かれて購入した、初めての一穂ミチさんの作品。
仕事の飲み会で仁科縁は岩崎数真に出会います。
その席で数真は、目が見えなかった幼い頃に出会った初恋の「ゆかりちゃん」の話をし、縁は目の前にいるのが「かず」たど知ります。
でも、縁は自分が「ゆかりちゃん」だとは名乗り出れない訳がありました。
実は、縁は相貌失認で人の顔を顔として認識できないんです。パーツの違いは分かるけど、「顔」の違いが分からないから、個人を特定するのが苦手で、そのことを知られたくないと思っていて・・・
縁と数真が「ゆかりちゃん」と「かず」だということも、縁が相貌失認だということも、小説の早い段階で読者に明かされます。
縁が待ち合わせには必ず早く行く理由とか、この時点で分かってしまう。なるほど、このせいかーって、伏線が回収された気になるんですが、そこからが、一穂さんのすごいところだと思います。
大きな事件が起こるわけじゃないのに、ページを捲る手が止まらなくなるんです。
「ゆかりちゃん」と「かず」の過去の話も、縁と数真の会話のテンポも、縁の心理描写も、すごく良くて!!むしろ、いつもの私がBLで楽しむエロが邪魔だと思ってしまうくらいに。(苦笑)
そしてラストに明かされる「ゆかりちゃん」と「かず」が過ごした最後の一日と、「かず」のその日の続き・・・もう、せつなくてせつなくて!!!
縁は数真に嫌われたくなくて、数真は縁に心を開いて欲しくて、互いに一生懸命だったんだなぁって思うと、読んでいて泣けました。
あと忘れちゃいけない、縁の叔父の訓さん!
皆様レビューで書いていらっしゃる通り、訓さんが本当に優しい、いい人です。
訓さんの優しさがこの話に溢れてるから、読み終わってこんな優しい気持ちになれるのかも・・・って思ううぐらいに、訓さんがいいです。
小椋さんの優しい絵が似合う素敵な話だったと思います。