耳から恋に落ちていく

mimi kara koi ni ochiteiku

耳から恋に落ちていく
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神33
  • 萌×242
  • 萌18
  • 中立6
  • しゅみじゃない3

220

レビュー数
14
得点
393
評価数
102
平均
3.9 / 5
神率
32.4%
著者
月村奎 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
志水ゆき 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
ディアプラス文庫
発売日
価格
¥620(税抜)  
ISBN
9784403524899

あらすじ

なりゆきで料理研究家になった渚に、TVの仕事が入った。新番組では口べたな渚と掛け合いをする天の声もキャスティングされているという。その声優・横田の声を聞いてびっくり、それは渚がいつも見ている深夜アニメのレッド隊員だった。気さくに接してくれる横田に緊張しつつも収録は楽しく、やがて仕事にも前向きになる渚。ところが横田との距離が縮まるうちに、ただのファン以上の気持ちを抱いてしまい…?

表題作耳から恋に落ちていく

横田悠陽、渚が夢中のアニメに出演中のイケメン声優
森澤渚、料理研究家の母を持つ二世料理研究家

その他の収録作品

  • もっと、耳から恋に落ちていく
  • ますます落ちていく
  • あとがき

レビュー投稿数14

安定のネガティブ受け

声フェチの料理研究家が大好きな声優と一緒に仕事をすることになり恋人になる話。


パワハラで仕事を辞めてニートと化していた森澤渚(受け)は料理研究家の母親の伝手で二世料理研究家としてテレビや雑誌で仕事をしています。
自宅のキッチンを仕事場にしていますが、口下手で表情が出にくい渚はいつも放送事故すれすれで、スタッフともコミュニケーションがあまりとれず居心地の悪い状態が続いています。
そんな時、幼馴染の二世料理研究家・飯島の代打で新番組を担当することになります。
5分の深夜の帯番組。
料理をしているときは一段と無口になってしまう渚は蒼白になるのですが、天の助けならぬ天の声として人気声優の横田悠陽(攻め)との掛け合いで構成されると知り安心します。
実は横田は渚が大好きな声優でした。
声が好きすぎて固まる渚に呆れることなく優しくリードしてくれる横田のことが恋愛の意味でも好きになってしまい、絶対に知られないようにと心に誓うのでした。


表題作と「もっと、耳から恋に落ちていく」「ますます恋に落ちていく」の3編からなり、表題作は二人が恋人になるまで、「もっと・・・」は恋人になってから渚が少しポジティブになるまでを渚視点で、「ますます・・・」は横田視点で描かれています。


有名な脳外科医の父と料理研究家の母を持つ渚は忙しくしていても精一杯愛してくれる両親により、すごく素直でセンスがよく家事も得意でお嫁さんにするのにぴったりな青年です(笑)
もともと普通のサラリーマンだったためか、料理や部屋を整えたりといったことが好きな渚は好きなことを仕事にするのはいけないことだと認識しており、今の仕事は腰掛のように思っています。
育ちの良さやファッション等のセンスのよさを自覚しておらず、それを指摘する人もいないため、自分の持っている武器を認識できないでいました。
でも、横田や声優仲間たちとの会話で好きなことを仕事にできることは悪いことではなく幸せなことであると同時に自分の持っているものが武器になると気が付き、流されるのではなく積極的にスタッフにも関わっていこうとする姿勢は好感が持てます。
ただ、横田も言ってるように悪いように考える天才なのでこれからもネガティブ思考になるたびに横田に引っ張り上げてもらうんでしょうね。


「もっと・・・」は渚視点でありながら、横田の焦りっぷりとかが垣間見えて楽しかったです。
渚の番組に件の飯島がゲスト出演したときは嫉妬して変にならない程度にどげとげとした天の声になったり、飯島との食事会に忙しい中渚が心配で少しでも早く到着するように走ってきたりしているのに、渚は飯島と食事するのがそんなに楽しいのかと勘違いしていて横田が報われてないのが楽しかったです。
声が好きすぎて過呼吸になって全然コトが進まないのも笑えるし、先に進めるために過大評価してくる渚に自分のかっこ悪いところを連呼する横田の必死さにも笑いました。絡みの最中だってのに・・・(笑)


同じく声フェチの私にはとても共感できる話でした。
大好きな声優さんの声を耳元でずっと聞けるなんて、なんて贅沢なんでしょう。
渚の好きなことって家政夫とか天職なんじゃないかと思うので、大丈夫だとは思うけどもし仕事がなくなったら横田の専属家政夫になればいいんじゃないかなと思うのですがどうでしょうか。

0

幕張かな〜

ネガティブ過ぎる自分に価値を見出せない受さんが、思った以上に天然でコミカルでした。

大好きで夜中にひとり癒されていたヒーローの中の人と直接関われる間柄になって、もっともっと仲良くなればなるほど尊さとありがたさと信じられなさに空回る…
わかる。仲良くなった経験ないけど。
自分の葬式で流してほしいとか墓に入れてほしいとか、ありがたみの突破のしかたが常に最期を想定してる渚先生が、ネガティブていうか一周回ってもう、明るい。吹き出しちゃいました。
苦労人ゆえに人の良いところを前向きに受け止める横田さんが、渚先生のネガを根気よく反転させて言い換えるところがとても良く、ああそう捉えれば良いのか、てこちらも目から鱗でした。
このときの渚先生はすべて悪く悪く取っていたけれど、横田さんのおかげで前向きになろうと努力して変わっていく過程が良かったです。
憧れのイケボ過ぎて何度触れ合っても過呼吸になって、いざてときに「ちょっと、黙って…」と言っちゃうとこもめちゃくちゃウンウンて悶えました。

四ノ宮くん始め業界仲間たちも仲が良くて、揃って同じリアクション取るところとか、同じセンスな関係が楽しかった!

渚先生が自分も二世なのに業界にサッパリ疎くて興味もないのがとてもよい感じで。
ヲタクなので、中の人ネタっていうのにすごくうずうずしますが、横田さんが声優でなく俳優とか芸人とかミュージシャンとか、何のアーティストであってもこの関係なら萌えたと思います。
業界人同士でよかったw
中の人仲間たちの指向の受容のしかたについては〜、ネタ的にスレスレ過ぎてヒリヒリしました〜。

良太先生のひっかき回し方もイイ感じ。めちゃくちゃ、この番組見たいです。良太先生には超塩な天の声さん、絶対ヲタク女子そわそわ見てる…。渚先生の写真集なレシピ本欲しい!

話が進むと渚先生の芯の強さが現れてきますが、渚先生を変えた横田さんは渚先生をどのように可愛く思い始めたのか、てとこは、もう少し詳しく読みたかったです。

こちらが前向きになれる優しさがあり、神よりの萌萌です。

0

王子様がふってきた!失神しちゃう。

王子様がふってきた!

月村さんのネガティブないい子受けですがこのお話ではそこまで辛い目の描写はないです、ご安心を。

ずっと好きだった声優さんと仕事で組むことになり、素晴らしい彼にどんどん好きな気持ちが膨らんで。攻め横田と交流を続けるうちに主人公渚もいい影響を受けて成長していきますね。

なんでも悪い方に考える天才の渚にイケメン良い声の憧れの声優さんが現れ、グイグイ親しくなろうとしてくれ渚の良い所を認めて教えてくれて。
シンデレラは王子様に出会って幸せになりました。

神な横田にドキドキしすぎて渚が失神しそうになってなかなかエッチは進みません。ですが最後にはちゃんとありますよ。
最後の横田視点のお話もとっても微笑ましいですね。

とっても乙女をキュンキュンさせてくれるお話でした。私も声優さんが大好きなので激しく共感しました。ぜひお葬式で流してもらったり棺に入れて欲しいと思いますね。

ですが最後にちょっと意地悪な事を書いてしまいますが、BL好きな乙女?にはこれ萌えるでしょ?なあざとさを若干感じてしまいました。
横田の気持ちが当然のようにあっさり渚に向かって。
でもスラスラ読めて幸せになれるとってもいいお話です。なぜここまで横田が渚を好きになったのかも最後の短編でわかってきます。

0

甘さ控え目過ぎて味がしない。

なんか足りない感じ。

渚のマイノリティならではの恋への臆病さみたいなのはわかる。わかるけど、卑屈すぎ。
仕事に対して前向きになろうとするところは良かった。なので横田に出会えて良かったのね。
横田がどこから渚に惹かれたのかは曖昧。好感を持ってる感じはあったかなぁとは思う。

で、何が萌えないかというと声を文字にするのは難しい訳で、せっかく?いいムードなのに声にやられて過呼吸は無いだろう!横田も私も生殺しだよ(笑)
横田が仙人か?という我慢強さだよ。

何が足りないって?甘さとイチャイチャが足りない‼︎

挿絵はとても良かった。


2

残念

月村奎さん、作家買いしてる作家さんの中でも上位に入るくらい好きなんです。
こちらであまり評価が高くない既刊でも面白く感じたし、前作の『ボナペティ!』なんて神だったし。
なので今作もとっても楽しみにしながら読み始めました。が…、どーしちゃったの先生ー!って感じです。
表題作と、その続き物が2作収録されてますが、表題作だけ読んでもう読み進められませんでした。

まず受け。月村作品お決まりのウジウジ君なのですが、ちょっとあまりにも卑屈すぎて…無理でした。現実にこんな卑屈なのいる?って冷めてしまいました。
そして攻め。元々ストレートなんですよね?なんでいきなり受けの事好きになっちゃったの?って謎。
今作の受けの魅力が全く感じられなかったから特に。

今までの月村作品は、会話や動作できちんとその時の心情だったり心境の変化だったりが丁寧に描かれて違和感なく入り込めたんですけど、今回は淡々と説明されて無理やりそう思わされたという印象。

次作に期待します。。。

4

家の中を整えよう!という気にさせられる

受けがネガティブで自己否定の強い受けだったけど、まったくイラァっとせず読めました。

引っ込み思案なのに、華やかな経歴を持つ両親の元に生まれついてしまったために否応なしに周囲から期待&注目されてしまうのってツライだろうなぁ……って思ったので。

受けの渚は
「男もほっこり暮らしたい」
「実家男子のていねい暮らし」
という本を出しているけどそれを誇るどころか、いい歳した男なのにこんな本出して…と恥じ入っていたり、「二世料理家」でしかない自分というものに価値を見出せずにいるんですね。

でも、私はこういう人好きだなぁって思いました。

だって、「目に見る範囲を心地よく整えるのが好き」とか素敵じゃないですか。
そして心がけ一つで日常を快適に過ごせそうだなぁという気持ちになれるんです、読んでいると。
きっと渚のファンもそうなんだろうなぁと思ったし、私も渚の出した本、欲しい。

実際、私のヤル気スイッチが入ってしまって、以前からやらなくては……と思いつつも後回しになっていたカーテンの洗濯やら照明器具やら、エアコンの掃除、おまけにスイートポテトまで作ってしまった!
ものぐさでダラダラ人間にとっては、盆と正月がいっぺんに来たような……。

渚、ありがとう!
おかげで、うちんなかきれいになったよ〜!

家事のやる気がまったく起きないときに、また読んでみよう!って思いました。

そしてそんな渚を暖かく見つめ&見守る攻めの横田がめっちゃいい男。
二人の恋愛模様もかわいらしく、読んでて癒されました。

嫌な気分になるところが一つもない、それどころか読んでると家事、がんばろ!って気持ちになれる貴重な一冊です。

3

恋のパワーってすてき

 二世料理研究家ではあるけど、親の七光りだけでお仕事してる、なんて思っているとっても自己評価の低い受け様である渚が、新しい料理番組で憧れていた人気声優である攻め様の横田と親しくなって恋が成就するまでがほっこりと甘く優しく綴られてます。


 一度社会人としての仕事を挫折している渚なので自分自身に自信が持てず、今の料理研究家としての仕事も流されてる感が否めない。
真面目に一生懸命だけど、人見知りで遠慮遠慮しくてスタッフさんとの付き合い方もよくわからない、人付き合いは不器用な渚。
 そんな渚の不器用さを繊細でかわいい、とにこやかに距離を詰めてくるのが料理番組の天の声として見守っている横田。

 横田はけっこうぐいぐい距離をつめようと頑張ってるけど、なんだか押し付けがましくない、というか爽やかでかわいく感じちゃう。
そして、横田の仕事への姿勢を聞いて、自分も仕事への気持ちを見直して自分から動いていこうとしている渚の頑張りがいい。

 自分に自信が持てない渚だから、自分から告白、なんてまず無理だよね、と思っていたのに、まさかの勘違いからの自爆のような告白だなんて。
想定外でしたわー。
でも、おかげですぐに巣の中に引っ込んじゃうような渚と最短距離で相思相愛になれたんだから、よかったね。

 ただ、えっちな雰囲気になると、イケボすぎる横田の声に渚は動悸息切れ過呼吸のような症状になってなかなかそれ以上すすめない2人。
さらりと大人の余裕を見せていた横田だけど、内心怖がられているのか、とじれじれのようだったようだけど、でもね、これわかる、わかるよ渚ーー。
だって、大好きな恋人が、憧れてたイケボで耳元で愛をささやいて来るんだよ。
そりゃー、はわわわわわってなるって。
なぞの変死を遂げそうになるよね。

 書き下ろしの最後の横田視点のお話がものすごーく甘かった。
横田が渚に名前呼びをお願いするのだけど、もうねー、渚がかわいいったらありゃしない。

 
 仕事のために恋をセーブしていたという横田は、渚と恋人になってプライベートが充実して幸せになったらこの幸せをファンの人へ、と仕事に意欲的に気持ちに。
渚も、楽しく仕事を頑張っていこう、前向きな気持ちになっていて、恋のパワーっていいな、ステキだよね、と微笑ましく思ったのでした。


 そうそう、イラストは志水ゆき先生。
イベントに参加した渚に横田がおちゃめにウィンクして、真っ赤になってドキドキの渚のイラストがとってもかわいかったー。
ラストのえちシーンはとっても色っぽくてステキ。
目の保養なステキなイラスト、ありがとうございます。

1

甘くて可愛くてお腹が空く話

穏やかなお話ですが、テンポよく読める、可愛い癒し系なお話です。

二世料理研究家で、親の七光りで仕事が出来ている事を理解している渚。生真面目で大人しい性格で、お仕事も頑張っていますが、非常に後ろ向きで自信がない。そんな中、新しく始まった番組で、相棒として天の声を務める人が、ヒーローものの番組で大好きになった声の声優で…。

渚くんが非常に可愛いです!ネガティブだけど、素直で頑張り屋さん。憧れの声の持ち主だった横田さんと過ごす中で、少しずつ前向きに変わっていく様子が微笑ましいです。周りに出てくる人達も、嫌な人がいない、優しい世界なので、ホッと一息つきたいときにぜひおススメです!

4

心から応援したくなる主人公なので

月村さんおなじみの『素直で良い子なんだけれど異様に自己評価の低い主人公』が、恋をして少しずつ自分を認めていくお話でした。
ここ最近読んだ月村作品と比べれば『痛さ』は少なめですが、そこはそれ、安定の月村さん作品。
「自分なんか……」と思っている主人公が好みど真ん中の声を持つ声優さんと接し、その声に萌えまくり、その人柄に感銘を受けてモダモダジタバタする可愛らしさを堪能しながら楽しく読めます。

父は有名外科医、母は料理研究家。
渚はキラキラしい家庭のひとりっ子なんですね。
それなのに両親に似ず人見知りで、緊張のあまり不愛想と思われる態度を取ってしまう。
不器用なんです。
就職先で虐められ体を壊して退職している間に、二世として料理番組に出演したり暮らしに関する本を出版して好意的な評価を受けても、自分の力だと思えずに「ちゃんとした仕事に就かなきゃ」と常に思っています。
両親に理解があることも余計に渚を追い詰めているのかも。

そんな風に思う一番の原因は、会社員時代の経験から『仕事というものはつらいもの』という刷り込みがされてしまっていること。
だから楽しいと「仕事だ」という認識が出来ないのです。
いや、ここの部分は非常に身につまされるというか、良く解る気がしました。
そもそも仕事って『自分の持つ能力で他人にサービスをする』という、本来であればとても楽しいことのはずなんだけれど、なかなかそう思えないことが多いですよね、実人生では。

そんな渚の認知の歪みが、誇りをもってしかも楽しく精一杯仕事をしている横田と触れ合うことで解消されていく部分が、とても読ませられたのです。
さらっと書いてあるのですけれどもね。
結構ここはグッと来た。

「お話の運びが予測できるのに、なんでこんなに面白いんだろう」って不思議だったんですけれども、多分、主人公に大きな共感を持つからなんじゃないかと思いました。
気がつけば応援している。
これが月村テイストなんじゃないかと思った次第。

最後のSS『ますます恋に落ちていく』は必見です!
横田視点なんですけれども。
どんな話かは書きません。
どうぞ読んで渚くんの可愛らしさに悶えてください。
もう……可愛すぎて鼻血が出るかと思ったよ、私は。

5

神声優もほっこり恋愛したい

読後の印象だけで言うと、あとがきで先生が書かれている通り確かに地味。

内容も「料理研究家の男の子が仕事を通して好みの声の声優さんと仲良くなり、お互い惹かれていく」というもので、展開の起伏は少なく、エロもあったっけ??と思っちゃうくらい極少量(最近読んだ作品の中では断トツで少ない)。すごーくなだらかで安全運転なBL小説です。
刺激たっぷりの作品に馴れているとひょっとして物足りなく感じてしまうかも…

でもこれ、まさに作中に出てきた渚くんのスタイルそのもののような作品だと思いました。

作品を読んで頂くとすぐにわかるのですが、渚くんの料理って特別な材料や技は使わず、基本に忠実なのにちゃんと美味しく美しい。料理に限らず生活自体も自分が心地よく住みやすいと感じることをシンプルかつ丁寧に織り込んでいくスタイル。
そしてその魅力に自分では気づいておらず、年齢に比して未成熟+ぴゅわーなところが可愛くもあり脆くもある。

この物語自体もそう。
「ネガティブ可愛い子ちゃん+包容力王子+自爆告白スタイル」という月村奎コードに忠実に進行。
あざとさ、駆け引き、身体的危険、暗い過去、アップダウンなどの添加物は一切使用せず。
ギャグ、エロなどの刺激物はさらっと控えめに。
志水ゆき先生の美麗イラストで彩られるほっこり癒し系の文章。
ジャンキーさやパンチは無いけれど、無添加こそが魅力なんですよという独特の雰囲気を持っています。

ただ、起伏が少ないせいか、受目線進行なせいか、当初は平凡男子がハイスぺ男子から一途に恋慕されるというパターン色が濃く映りすぎてバランス悪いかも…などと思ってしまいました。
攻の若手トップ声優・横田悠陽が(渚くんから見て)「顔良し・声良し・性格良し」な抜け感のない神的人物として描かれていたのもその理由の一つ。

ところが、神イケメンはもちろん気まぐれに渚くんを好きになったわけではありません。
背景には、ほっこり丁寧な渚の暮らしとは対照的に描かれる声優業界事情がありました。
多忙でアップダウンは激しく、裏方にとどまらず、表舞台で自分自身までも演出する者としての誇りと苦労が混ざり合う場所。妙に道徳的で落ち着いた攻をはじめ、彼ら声優仲間の会話の節々からは早熟が求められる世界であることが伝わってきます。

そして最後の悠陽視点のストーリーまでちゃんと読んだところで二人の関係の必然性にストンと納得。
この業界で頑張ってきたこの性格の悠陽くんだったからこそ、ほっこり暮らしの渚くんにより一層魅力を感じ、一生懸命アプローチしていたのだなと。

そういう意味では付き合ってからも「自分なんか釣り合わない…」とネガティブ発言を連発されてしまう悠陽くんは気の毒ですが、そこも含めて丸ごと愛して渚くんを精神的に成熟させてあげて欲しいなと思ってしまいます。
実際、渚くんは悠陽くんと出会い、社会性や意欲の面で成長し、悠陽くんは渚くんに癒され人生の活力を得ることができました。まだまだ「ほっこり」と「ドキドキ」でちぐはぐな所もありますが、幸せそうで何よりです。

小説部分に切り取られた二人の物語はやはりどこもかしこも平坦で地味です。ただ二人にとってはかけがえなく丁寧で心地良い時間の積み重ねの一幕なのだなとも思います。その地味さこそが魅力に映るとってもほっこりな小説でした。

6

この作品が収納されている本棚

レビューランキング

小説



人気シリーズ

  • 買う