SS付き電子限定版
さまざまな視点から3巻以降の二人の様子が描かれている短編集でした。
二人が夏休みを利用してフィリピンへ婚前旅行(?)する”玉の輿に乗ったその後の話”以外は、確かにBL?的な感はありますが、個人的には、二人についての周囲の証言みたいな掌編好きなんでアリです。青依と出会う前の印南さんのポンコツぶりが伺えることで、彼が本当に大切な人を得てどんなに変わったかという変化がよくわかります。そこから、青依という存在がどれほど大きい影響を与えたか(また逆もしかり)ということがわかり、じんわり萌えます。
んでもって、最後ね。やりましたよ。印南さん。
ベタですけど、もう、最高のプロポーズしちゃってました。ベタに感動しました。
「つけていてくれたら、嬉しい」
と指輪を青依の薬指にはめるのが、いかにも印南さんらしいやり方で言葉だなぁと思いました。どんな顔して準備したんじゃい!って萌え転げました。
これでハッピーエンドではありますが、もっと続き読みたいです。
ちなみに、二人のえちシーンの会話、描写が毎回楽しくて大好きでした。
ドラマもエロも過不足ない、申し分ないバランスの作品です。
「玉の輿ご用意しました」から続くシリーズのこれからを二人を取り巻く人たちの視点で書かれています。
完全に続きなので、前作3作を読了後に読むことをお勧めします。
前作までで、会社社長の印南(攻め)と元当たり屋の青依(受け)がいろいろあって恋人になり、スキャンダルやら新たな挑戦やらを経て、青依がはっきりと印南の助けになりたいという目標を声に出して宣言し、大学に進み再び戻ってくるという一応の道筋を見つけたところで終わっていました。
今までは基本一冊丸ごと一つの流れで視点も青依のみ(SSはその限りではない)で書かれていましたが、今作では6本の短編が二人の周りの人達視点で語られています。
短編なのに時系列に沿っていて、すごくわかりやすくうまくできていると思いました。
今までは青依の視点ということで、周りから見た二人というのはよくわからないままでしたが、今回のことで印南の過去や会社のこと、進学する青依をとりまく周りの人たちの反応などがわかって面白かったです。
「秘書兼親友の憂鬱」 酒匂視点
とある研究員の独白 ラボ研究員・新田の視点
甥と長い一日 印南の甥・誉視点
とある新入社員の陳述 青依の引継ぎ相手の新入社員視点
玉の輿にのったその後の話 青依視点
第2秘書の展望 印南の第2秘書・諸星視点
酒匂過去回想を通して、仕事面でのパートナーとしては支えられても自分ではどうしようもない生活面でのパートナーができたことを喜び、1作目から青依の兄貴分として面倒見のよさを発揮していた酒匂の心のうちがわかって良かったです。
何度も印南の恋人だと勘違いされることに対して、「俺は!おっぱいが!好きなんだ!」と普段の彼からは想像もつかない言葉が発せられるのも笑えました。
青依のことを喜ばしいと思いながら、自分の前でしか見せない顔があるという自負が仕事面でのパートナーとしての矜持を表しているのも良かったです。
印南が落ち着いたので、酒匂にも春がくるといいですね。
過去回想で印南の唯一好感を持てた点はなんでも許す困ったちゃんの恋人たちの勝手な行動も仕事が絡む時だけは一蹴するところです。「俺と仕事、どっちが大事?」に「仕事」と即答するところはスカッとするし、相手の体調や状況など全く気にせず自分の要求だけ言ってくる恋人たちとは身体は繋がっても心は繋がってないというのが印南を大事に思っている人たちには歯がゆかっただろうと思いました。
どの話も青依以外の視点は新鮮で楽しかったです。特に、過去回想のある酒匂と新田の話は前作までに何度かあった印南の昔のエピソードをより詳し思い出しているので、「あー、あの時の話かー」と思いながら結局全部読み返してしまいました。(笑)
新田の正論とはいえ本来なら遠慮するような言動を平気で言っちゃう性格がとても楽しかったです。
二人のこれからをより具体的に想像できる終わり方で、3冊も続いた後の話だからこそ、愛着のある人たちやこれから青依の未来を想像して楽しい気持ちになりながらも名残惜しい気持ちで読み終わりました。
私、こういう構成の短編集、大好きです!
『主人公2人の周りの人達が彼らについて語る』形になっているんですよ。
酒匂から、新田と大槻から、誉から、資料室に新しく入った阿部から、そして物語の語り手にはなっていないのですが諸星から、それぞれが見た青依と印南が語られます。
こんな構成なので、青依と印南が、その二人の関係も含めて立体的に浮かび上がってくる様に感じるんです。
栗城さんが、雑誌掲載のまとめでもなく、同人でもなく、書き下ろしでこの『番外編』を出されたことに敬意を表しつつ、感謝したいと思います。
しかしお話の初まった頃と比べると、青依も変わりましたけれど、印南の変化はとんでもないですね。
周りの人達からの話をまとめて読むと、彼が『仕事マシーン』から『人間』になったのが良く解りました。
大団円の後も人生は続きます。
人生って『関係性』のことだと思うのです。
青依が選んだ選択がどうなるかは書かれていませんが(フィリピンのあの方も青依を手元に欲しがっていますからね)でも、2人とそのの周りがこんな風だったら「何があっても大丈夫」と思える様な最終巻(だよね?)でした。
私がこのシリーズで一番好きなところは、青依が印南を恋人としてだけでなく仕事でも支えられる人間になろうと頑張っていること、そして印南もその日を信じて待っていることです。それは恋愛を抜きにして相手の力を認め、信頼し合っていなければできないことだと思うのです。恋愛でも仕事でも良きパートナーであろうとする二人は、24時間365日、お互いの全部が好きなのだなあ、と感じます。そこにすごく萌えます。
だから、二人を見守る面々の視点で二人の仕事ぶりと人柄がたっぷり描かれたこの短編集は、大満足でした。
酒匂視点の「秘書兼親友の憂鬱」は、新米社長時代に仕事と空疎な恋愛で心身をすり減らしていた印南と、青依と出会い恋人を大切にすることを知った今の印南とを描いています。仕事ができて人間も良くなった印南は、惚れ惚れするほどいい男ですね。印南の変化を喜びつつも、仕事のパートナーとしては青依に負けないぞ、と密かに考える酒匂も微笑ましいです。
「とある研究員の独白」は、丸蔦の研究員・大槻と新田が学生時代に印南にスカウトされた話と、今の仕事の様子を描いています。青依が将来研究員になったら彼等とこんな風に仕事をするのだろうな、とイメージがわいてきて面白かったです。
研究とは試行錯誤の繰り返しで、失敗も楽しめる好奇心がないと続かないのです。自分が学生時代に理系でしたので、身につまされました。大槻と新田が見込むように、青依なら良い研究員になるのでしょうね。
「とある新入社員の陳述」は、青依の仕事の優秀さだけでなく、真面目で気負いのない人柄を描いていて、青依と仕事ができたら楽しいだろうな、と思いました。
人を育てるのは大変なことです。希望の部署に配属されなくて不満をためていた新人くんに、青依は自分の背中を見せて仕事の楽しさを教え、やる気を出させます。青依も立派になりましたね。
最後にシリーズのフィナーレを思わせる表題作を持ってくる構成が上手いなあ、と思いました。第三者視点の短編で自分まで二人を応援する同僚の気分になっていたところに、ハネムーンのような甘いお話。すごく嬉しく感じました。
青依が仕事でも印南のパートナーになる日も遠くないようです。幸せと希望に満ちたラストに胸がいっぱいになりました。
このシリーズは地味に好きです。
地味にというとヘンですが、大きな事件も劇的な展開もないのですが青依の行く末が気になって読みたくなる作品です。
印南さんと同じ目線で青依の成長が楽しかったような気がします。
当たり屋だった青依と、青依を元カレを見返すための恋人役に雇ったイケメンでセレブな会社社長の印南氏。
やがて二人が本当の恋人となり、年下の恋人が成長していく様子を見守りときに手を貸し愛を育んでいきました。
今作は、それから3年が経ち青依は大学進学を目指してまもなく休職する予定というところです。
あらすじに書かれていた「蜜月の日々」とはだいぶ違ってBL色の少ない展開でしたが、秘書の昔の苦労談や印南さんの過去の恋愛、甥の誉から見た印南×青依カップルや新婚旅行のラブラブな様子も楽しめました。
でも前作の続きなら新しいステップに進んで行く青依の未来への希望や一層深まっていく二人の愛情などじっくり読ませてくれるのかと期待していた読者としては、これで最後という感じのまとめ的な掌編の集合という感じはちょっと残念なところです。