イラスト入り
あらすじに惹かれ購入。
あらすじに書かれた「彼は獣人の王で、ディリヤは敵国の兵士。」という文句から、ロミジュリ的なお話をイメージしていましたが、予想をはるかに上回るお話でした。
スパダリ、そして薄幸健気受け。
そんなキーワードに萌えツボを刺激される方にはぜひとも手に取っていただきたい素敵な作品でした。
ネタバレ含んでいます。ご注意を。
獣人と人間が共存している世界が舞台。
主人公はディリア。
彼は「金狼族」と呼ばれる狼の頭にヒトの体を持つ獣人の王・スルドを暗殺するために送り込まれた人間です。
といってもディリアは軍人でもなんでもない。
故郷にお金を仕送りするための道具として、暗殺者として祀り上げられただけの少年。けれど、ディリアはそれを悲観していない。むしろ、故郷の役に立てて死ねるなら本望。そんな風に思って、スルドの元へとやってきた。
が、スルドに優しく抱かれ、愛情を向けられ、そしてその時の1回の行為でディリアは子をもうけてしまう―。
スルドとの愛を貫くお話なのかな、と思って読み始めたのですが。
予想の遥か斜め上を行く、壮大な愛のお話でした。
とにかくディリアという青年が非常にたくましい。
スルドとディリアの子であるアシュを一人きりで産み、そして育ててきた。
学もなく、まだ若く、そんなディリアが、たった一人で子どもを育てる。
それがどれ程苦労だったのか、子を持つ親の一人として彼の想いに思わず落涙した。
たった1度肌を合わせただけのスルド。
けれど、愛情を知らないディリアにとって、スルドとの思い出は=愛情と直結している。
ディリアは薄幸青年ですが、薄幸受けさんにありがちな女々しさが一切ない。
とにかく強く、そしてたくましい。
けれど、その彼の強さは、すべてアシュを守り育てるため。
ゆえに時に厳しく、冷たく感じることもあるのだけれど、彼の心に秘めた思いというのがきちんと透けて見える描き方になっているのでディリアに感情移入しっぱなしでした。
そして攻めさん。
スルドは、戦争で早々に亡くなってしまいます。
そのスルドの代わりに王代理をこなし、そしてスルドの忘れ形見であるアシュを探し出し、アシュとディリアのサポートをするのがスルドの弟のユドハ。
ユドハが、カッコ良すぎ。
なんです。
アシュは次期国王候補という事で命を狙われたりしますし、ディリアを襲う勢力も存在します。
それらの全てからディリア・アシュ親子を守り、そして尽くす。
まさにスパダリの鑑です。
ユドハがディリア親子を守る、その理由は、早々に読者にもわかってきます。
というか、そこかしこにまかれた伏線が、非常に素晴らしい。あ、もしかして…?というトリックの仕掛け方が、なんとも絶妙でした。
ユドハは時々、ディリアを「自分のメス」という言い方をします。
BL作品において、個人的に「メス」という言い方ってあまり好きではないのですが、ユドハがディリアに対して言う「メス」は非常に萌えました。
自分のもの。
自分の子を産んでくれた人。
愛する番。
そんな意味が、この「メス」に込められている気がするのです。
ディリアやユドハの感情の機微が、繊細に、そして緻密に描かれていて、読んでいてこの作品の持つ世界観にぐっと引き込まれてしまう。文章力や構成力が半端ない作家さまだな、という感じを受けました。
かなり分厚い本なのですが、その分厚さに見合った内容になっています。
登場人物たちの感情の機微。
複雑に絡んだ利権争い。
ディリアの、アシュに向ける愛情の深さ。
どこをとっても過不足なくきちんと描かれていて、非常に読みごたえがありました。
ディリアはきちんと男の子ですが、金狼族は男でも妊娠させることが出来る能力がある、とか、ディリアがモブに襲われるシーンがあったりとか(挿入まではありません)、流血するほどの怪我をさせたりさせられたり、といった暴力的なシーンがあったりとか、もしかしたら人によっては苦手な描写もあるかもしれません。
が、それらを差し引いても非常に面白く、そして萌え滾る作品でした。
次回作も楽しみです。
それと挿絵を描かれた佐々木さん。
もともと味のあるイラストを抱える絵師さんではありますが、非常にインパクトのある、そして優しい挿絵で、萌え度は確実に上がりました。
表紙からわかるように、とてもファンタジー要素の強い作品です。
金狼族(狼)の獣人ユドハ×人間ディリヤで、
受のディリヤには狼の子どもの
アシュがいます。
このアシュがまた可愛いです。
金狼族の雄は、雄でも雌でも関係なく異種族間でも
子どもを孕ませる力があります。
そして、孕ませた自分の雌に対して
めちゃくちゃ尽くし甘やかします。
上記のようにディリヤに接するユドハ。
己の雌であるディリヤに対する執着が素敵……。
でも、このディリヤも一筋縄ではいかない性格で
なかなかに振り回されるユドハです。
受に尽くし執着する攻と、
なかなか素直になれませんがデレると可愛い受
という感じでした。
こちらのご本からは、タイトルの通り、
愛をたくさん感じることができました。
個人的評価
ストーリー ★★★★★
登場人物 ★★★★☆
エロ度 ★★★☆☆
とても面白く、世界観もしっかりとしており
読み応えがありました。
スピンオフで、成長したアシュや
双子達の話も読みたいです!
人生ではじめて、あたたかい過去になったーー
全てを了読し泣きに泣いて表紙と裏表紙をみて、アシュの瞳の色を見てまた泣きました。
「中途半端じゃなく生まれてきてくれてよかった。これで狼世界で生きていける」っていってたのに瞳とまつ毛だけ…
ひたすらに自分を省みないディリヤに「幸せになって良いんだよ」と声をかけたくて仕方がない。
ただでさえグスグス泣いていたのにあなたの前でだけは死にたくないと初めて感情を露わにしたディリヤ。それまでの6年の思いが詰まった言葉を聞いてとうとう涙腺決壊しました。
身分差BL、ケモノ好きな人には是非お勧めしたい一冊です。
コミカライズされて、コミックス版を先に読んで、とても良かったので、もっと詳しく読みたいと思って小説購入して、大満足!みんなの、心の動きも含め世界観に浸れて良かった。コミックス読んだ方も小説読むことをオススメします!
正直、絵柄が好みではなく今まで読んでいませんでした。
コミカライズ作品の方を先に読み
より深く書かれているであろうこちらを
かなりの時を経て読んだのですが
もっと早く読めばよかった…と思いました。
絵柄に関してですが、最初は得意じゃない…と決めつけていたのですが
お話を読んで、この世界に入っていくと
絵柄がお話にすごく合うなぁ…って思ってきて
読み終わるころには、この絵柄でよかったと私は思いました。
お話の内容は切なくて悲しい部分も多いのですが
それ以上に愛しい気持ちになりました。
とにかくアシュが可愛くて仕方ないんです。
愛を知らないって言うディリヤですが
アシュに対するその気持ちは愛以外の何物でもないんですよね。
とても大きな愛でアシュを包み込んでいて
だからアシュもディリヤのことが大好きなんですよね。
獣人好きな方や、不憫な受け、溺愛攻めが好きな方にはたまらない作品かと思います。
続きを読むのがとても楽しみです。