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表題作箱庭ろまんす

秋月壮慈,幻想怪奇小説を書く風変わりな作家
玉緒,母を亡くし秋月拾われて育った青年

その他の収録作品

  • 箱庭の酔客
  • あとがき

あらすじ

親を亡くし、一人ぼっちで途方に暮れていた玉緒を拾ったのは、風変わりな作家・秋月壮慈。 壮慈のもとで暮らし始めた玉緒は、主人である壮慈を敬愛し一途に想いを寄せていた。 しかし、いつしか壮慈への尊敬の念は恋情に変わっていった――。 そんな玉緒に、壮慈は自分は恋や執着というものがわからないと告げるが、それでも玉緒の恋情は消えず、ある晩壮慈に抱いてほしいと頼むが……。

作品情報

作品名
箱庭ろまんす
著者
間之あまの 
イラスト
カワイチハル 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
シリーズ
旦那様は恋人を拾う
発売日
ISBN
9784344845541
4

(69)

(35)

萌々

(15)

(10)

中立

(4)

趣味じゃない

(5)

レビュー数
8
得点
269
評価数
69
平均
4 / 5
神率
50.7%

レビュー投稿数8

予想以上の愛の重さがすっごく良かった!!

あらすじから「恋や執着というものがわからない」攻めが「好き」を自覚するまでのお話なのかなぁって思ったら、もう一つ「箱庭」というタイトルに絡めたテーマがあって予想以上に楽しめました。

13歳にして男を惑わせる色香&美貌の玉緒(受け)。
そのせいで母を亡くした後、行く先々で悪い男の餌食になりかかり何とか逃げおおせたところで小説家の壮慈(攻め)に拾われます。

いくら時代物とはいえ13歳に手を出したらアウト……と思ってたけど、玉緒を「タマ」と呼び懐に入れて二人で縁側でお昼寝したり……という猫かわいがりで微笑ましい。
そして屋敷の外を怖がる玉緒に読み書きを教え、絵の手ほどきもしたりというほのぼのとしたやり取りが中心です。(一切の肉欲はなし)

壮慈は美しいものが大好きで確かな審美眼の持ち主でもあるので、作品を買い取って欲しいと願う職人たちや、壮慈のお眼鏡にかなった作品を買い取る美術商が月に二回出入りするのみ。
普段は壮慈と女中のキヌのみという閉ざされた世界で、壮慈に守られて育つ玉緒の様子が描かれています。

ポンと5年後に飛ぶ二章。
18歳だけど性の知識が皆無な玉緒に自慰の手伝いを請われればしてやるけれど、それ以上はするつもりがない壮慈。
だけど「まったく、きみが可愛くてならないよ。」とか、もう無自覚メロメロなんですよ、壮慈が。

玉緒の「抱いてください」にも「無知な君を最後まで抱けるほど悪人じゃない」と拒むのだけど、「それなら他の人に‥‥」と玉緒が口にした途端に不穏な空気を漂わせ「僕が抱くなら、僕以外では満足できないようにするつもりだけど それでもいいの?」というのが脅してるつもりとか最高なんだけど〜。

「好きを知らない自分が、君の気持ちを受け入れるわけにはいかない」とか言ってるけど、「一切の執着心がなく、好きという気持ちを持てない自分」というやつに囚われていて、自分自身の変化に気づけていないんですね。
だから読んでて突っ込みたい箇所が多々あって、そこがニヤニヤ。

そして外の世界を一切知らず、壮慈が世界の全てな玉緒を可愛く思う一方で、その「好き」を受け入れるべきではないと自制する壮慈。
だけど、いつ甘美な依存関係になってもおかしくない二人なんです。

そんな矢先に起きたある出来事で、状況は一変。
なんと壮慈は玉緒を置いて屋敷を出ていってしまう……!

最初、ひたすら捨てられた哀しみに囚われている玉緒。
だけど常に壮慈の影に隠れ、自分というものがなかったことに気づいたあたりからどんどん変わっていく。
これが本当に胸アツというか、まるで気分は我が子の成長ぶりを目の当たりにし涙ぐむ母!って感じでした。

そして攻めが小説家という設定必要ある?と途中までは思ってたんだけど、間之先生、愚かな読者をお許しください!!と思いました。
攻めが発表した小説の中身。
あれにはやられたし、危うい美しさにゾクっとしました。

受けが身を引いたり、攻めから距離を置く受けという展開は時々見かけるけど、攻めが「愛ゆえに」受けの前から姿を消すって記憶にないので(記憶力皆無だから他に読んでるのかもしれないけど)この新パターンが新鮮でとっても良かったです。
おまけに弱ってる壮慈の姿は、壮慈に申し訳ないと思いつつもやたら萌える……。
受けのせいで弱体化する攻めってほんと美味しいですよね。

いつもどおり甘味たっぷりなお話だけど、ただ甘いだけではなく絶妙なスパイスも効いていて非常に美味しくいただけました。
そして二人の魂の苛烈な熱さ・激しさを見せつけられた感…最高。
ああいう重い二人大好きなので、神です。

14

綾部!!むかつく!!!

たまらない溺愛と執着、それが繰り広げられるのは家の中のみ。
まさに箱庭で繰り広げられる、”ろまんす”という言葉がぴったりな物語でした。

前半部分はまさに2人だけの世界。
出会いは受けが12歳のときで、そこから一緒に暮らし始めて愛を育む。
という若干の光源氏感はありますが、最初は攻めにその気が全くないところがポイントだと思います。

このまま永遠に2人だけの箱庭で生活していくのかと思いきや、そうではありませんでした。
2人は今の環境・状況で満足していると訴えているのに、周りがそうはさせません。
女中や攻めの兄、それから家に出入りする美術商が2人の箱庭を閉じさせてくれず...
この美術商の綾部がとにかく、余計なことしかしないむかつく男なんです!!!
受けを襲おうとしたり、余計な気を回したり...

2人は現状で満足しているはずなのに、それを壊されるような過程は悲しくなりました。
それなら周りが認める形で、一緒にいようと奮闘する2人の切ないこと...
現状で満足しているけれど、同時にその環境に違和感を持っている攻めの苦しみはつらかったです。

溺愛と執着、甘いけれどそれだけではないお話は読みごたえがあって、大満足でした。

7

甘くて妖しい箱庭の中

甘さの中に少し妖しいスパイスを入れた間之先生作品でした。こういう絶妙な重さが好きです!

子どもの頃に母を亡くし、様々なところで男に襲われかけ、逃げていた玉緒。そんな玉緒を保護し教会に預けようとしたところを懐かれて自分の屋敷に招いた、世間から変わり者といわれている小説家の壮慈。壮慈の屋敷で働くキヌに見守られながら、壮慈にまるで猫のように可愛がられ、庭に出るときには下駄がないからと抱っこされながら連れ出される日々。壮慈が喜ぶ事をしたい壮慈だけが自分の世界となる玉緒と、そんな玉緒に告白されて一度は拒みながらも受け入れ、玉緒が可愛くて仕方がない壮慈。そんな2人の世界はどんどんと濃密になっていくけれど…。

まず、先生先生と壮慈を慕い、壮慈にされる事はなんだって大丈夫な玉緒が、危うくて可愛い。保護をしてくれる大人である壮慈に全てを委ねている玉緒が、抱いて欲しいと壮慈に告げるところは、いたいけで可愛くてドキドキしてしまいました。

明るく甘い、けれどそれだけではない、少しスパイスのきいた時代もののお話です。
敬語受、2人の閉じた世界、甘々、年の差、執着が好きな人にはおすすめです!

4

究極の箱庭ですね

本の厚さに気が引けたもののつかみが強力で読んでみたら最後まで一日で読めました。嬉しいです。

大好きな【旦那様は恋人を拾う】を連想しました。

世界の中心とはこういうことなのか!と言葉の意味を知った気分です。

長いお話ですが飽きずに読めました。

受けはこんな事を言っては失礼ですが、間之さんのラッキー受けですね。
不憫な境遇から偶然救われてどんどん良い方に転がって。
二人の容姿について詳しく何回も書かれていますね。美貌同士で特に受け玉緒の魔性な傾国の美人ぶりや酔ったときの色気が想像できなくて。でもその容姿のせいで不自由な人生を送ることに。

攻めは良い人で変わり者で玉緒を連れて帰り家に住まわせやっと信用できる大人として玉緒に慕われ。
玉緒もなに不自由なく暮らせて…。

紙一重ですね。
監禁と取るか保護ととるか。
5年も屋敷から出ないで生きてられるなんてすごい!
そして攻めよ、この気持ちは何だろうって言ってないで気付けよ!と後ろから頭をはたきたくなりました。
『可愛いね』は愛しいねでしょ。

玉緒や二人の関係を心配する周囲の人達からの説得で離れ離れに。
でも二人で乗り越えてずっと一緒にいられることになって良かったです。

ああ、あらすじにあまり触れないのもどかしい。

玉緒の気づきや自立にもう少し時間をかけて何かを成し遂げてからの再会の方が良かったのでは?と思っていたら数年後のくだりで成し遂げてましたね。

エッチも話も長かった。
究極の箱庭でした。箱庭というとどうしても狭い、妖しい、隔離されてるイメージがします。
しかし選択した箱庭で出入り自由ですからね。清々しいです。

4

「たくさんの中から選んだ方が絶対に幸せなんですか?」

間之あまのさんの作品はいくつか拝読しましたが、『旦那様は恋人を拾う』と並び一番好きな作品になりました。執着攻めと健気不憫受けという鉄板は何百作でも読みたい黄金の組合せでしょうが、それだけでなく、恋愛でもそれ以外でも普遍的に何かを探し求める人達にビシッと玉緒から言い切られたような胸に来るものがありました。
『旦那様は〜』と同じく、不幸な生い立ちの子を旦那が拾うお話。道で座り込んでいた子供の玉緒を教会に住む夫婦に預けようとする壮慈、離れたくないけれど何も言えずギュッと壮慈の手を握る玉緒。情景が浮かんできて冒頭からとても好きでした。
その後に家に連れてきて女中キヌと先生のやりとりがまた、弁のたつ二人で面白い!

玉緒が自分には耳と尻尾があるのではないかと確認してしまうくらい、壮慈は膝に乗っけたり撫で撫でしたり、おやつをあげたり昼寝したりと甘々。男の人の「おいで」が好きな方はぜひ!読んでほしいです。
庭で花見をする時の植物の描写も素敵。

暴行未遂で男(外の世界)が怖い玉緒と、可愛くて家から出したくない(彼の美貌が彼自身を不幸にする確信がある)壮慈は題名通り箱庭の中で甘々健全に幸せに過ごすものの、時折やってくる美術商と兄貴に諭される。
玉緒には普通の子と同じように広い世界を見させ、才能を伸ばしてやりたい、初めに見たものを親と思うように壮慈を慕う姿勢から目を覚ましたい。そんな大人達から、“世界を知るほど幸せになれるのか”とブレない玉緒の発言には痺れました。
仕事でも恋愛でも、人生においてもっと出会わなければ、もっと知らなければ、経験しなければと追い立てられる気持ちは皆多々持ちますが、この玉緒の魂からの好きという嘘の無さは響きました。最終的には周りにも認められる(ある意味)二人ですが、何を言われようが二人にとって周りは全く関係の無いお話だと、闇もないような感触で読みやすい中にも芯があって良かったです…

でもバカップルぽいというか。自分には所持品もなく、家を守るとしたらこの身ひとつしか受け渡すものがない…というようなことを玉緒が言った時、
壮慈「君の体ももう君のものじゃない。おれのものだ」
玉緒「あ!そうでした…」
って…なんでしょうかねこれ?可愛くて笑いました。

抱かれるシーンは超甘々でありつつ、何をされても許して気持ち良くなってしまう玉緒の狂おしさも感じられて最高でした。
履物を与えないで抱きかかえるとかも、甘々に描きつつ狂気だよね…

挿絵も甘い雰囲気で何度も見返すほど丁寧に描かれているのですが、どうも少女漫画的というか、玉緒が女の子にしか見えないのが残念でした。美人系だと思う。
内容が良いだけに2年前とは思えないカバーデザインもちょっと残念です。

2

この作品が収納されている本棚

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