思いを言葉にする駿斗と、仕草や振舞いで伝える央倫と。
本編「チキンハートセレナーデ」の方もゲイで在ることの苦しさが根底にありましたが、この短い番外編の方も央倫の苦しみに満ちていた過去が語られます。
BLはファンタジーでいい、リアルなマイノリティの苦しみなんて描かれても…という読者もいるとは思うんですよね。
でも私個人は、そういう負の側面も目をそらさずに描いて欲しいと思っていて、この央倫の高校時代に遭った苦しみ、生きづらさ、居場所のなさ、家族との分断、孤立感、その他彼に降りかかった全ては、本当に読んでいて苦しくなった…
だからこそ央倫がハヤトと初めて寝た後の涙に衝撃を受けました。
表情があまり動かない央倫の流す涙の、破壊力。
自分がやっと本当の自分になれた…っていうのかな。
しょせんマジョリティとしての生活を送れている自分には、こういう形での安堵感、自己肯定感の感じ方は自分の中には無いから、ある意味衝撃的でした。
駿斗の方も心の中では過去トラウマを抱えていた人物だけど、本作においてはとても自然な笑顔と愛情表現。こういう駿斗との恋愛が央倫の傷を癒して、結果的に2人の幸せな時間に結びついていくのかな…
声かけてくれてよかった、今の幸せにつながったから…そんな出会いができて2人は本当によかったね。