初恋をずっと忘れられないアッパーミドル×黒い噂のある羽振りのいい経営者 1929年――享楽的な街・ニューヨークで、男たちは刹那の快楽に溺れる。

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表題作こたえてマイ・ドリフター

エリオット・J・ウィリアムズ,自動車業界勤務
ロバート・フェレーロ,ドラッグストア経営者

あらすじ

――享楽的な街、ニューヨーク。
景気のいい自動車業界で働くエリオットは、知人の主催する新年パーティーで、
初恋の子に似た黒髪で黒い瞳のロバートに一目惚れをした。
その後高級ホテルで再会し、意味深なロバートの視線をきっかけに情熱的な一夜を過ごす。
――ロバートが長期滞在するホテルの一室で彼を抱くようになり数カ月。
ドラッグストア経営者だというロバートは、やたらと羽振りが良く非合法の仕事で荒稼ぎしているらしい。
それでもエリオットは、たとえ彼が裏で何をしていようと、
淡い恋の甘い疼きを味わいながら楽しめればそれで良かった。
しかし、世界を狂わす過酷な運命が二人を引き裂き――?

作品情報

作品名
こたえてマイ・ドリフター
著者
大島かもめ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
海王社
レーベル
GUSH COMICS
発売日
電子発売日
ISBN
9784796415996
4.4

(201)

(126)

萌々

(47)

(17)

中立

(10)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
33
得点
879
評価数
201
平均
4.4 / 5
神率
62.7%

レビュー投稿数33

海の見える部屋に帰ろう

作家様買いです。
「華麗なるギャツビー」を思い起こしました。
その頃とほぼ同時代の墜ちる寸前のアメリカ都会の華やかな人々のボーイズラブストーリーです。
マフィア、禁酒法、人種差別が絡みますので少々残酷シーンも有ります。

ホテルのパーティで知り合った黒髪のロバートと金髪のエリオット、その時点では同類のパーティピープルのようなのに生まれ育ちがまるで違う。

なのに子供の頃実は交流があり惹かれあっていた、というよりエリオットを守る為ロバートは父親を刺してしまうという展開がショッキングで切ない。

そのまま行方不明になったロバートとパーティで再会したエリオットは今度こそ自分が彼を護ると誓う。
でも結局自分の手で彼をマフィアから護りきれなかったエリオットが哀し過ぎます。
それでも彼の未来の為にマフィアの残党を殺したエリオットの手は血で汚れていてもう取れない。

出所後のロバート=リンチェを迎えに来たエリオットは彼と同じ処に立っています。
子供の頃の2人は住む世界が違っていたし、再会後の2人は体を重ねていても生きている世界がズレていました。
でも脚を引きずり片目がつぶれてしまったリンチェと少しだけ海が見える部屋で生活しようと決めたエリオットには全く迷いはなく、だから世界も同じように見えるはず、そう思いました。

とても切ないけれどイイお話でした。

濡れ場もとてもよかったです。

15

最高傑作

今まで読んだことのあるBL漫画の中でも5本の指に入る最高傑作。見事なストーリー展開、夢のような美しさと現実の厳しさと暗さのコントラスト。その中で愛し合う2人。美しすぎて素晴らしすぎて言葉にならない。涙しか出てこない。
大島かもめ先生の素晴らしさを凝縮したような傑作でした。
ラブスーリーでは片付けらえれない骨太ストーリー、先が読めなかった、でもラブストーリー以外の何者でもない。
本当にこのまま映画にできる、華麗なるギャツビーを超えてると思います。

12

単行本になるのを待ってた作品

何かで1話を読んでから単行本になるのを待ってました。

1話目以降は読んでなかったもので、煌びやかな世界観で大人の駆け引きのある恋模様を見れるものだと信じきってしまっていたら、とんでもなくガツンと重くて辛いストーリーでした。

リンチェの幼少期の境遇や事件の顛末ももちろんしんどかったのですが、なによりもショックだったのが最後に出所してきたリンチェが元凶である父親と同じように足を引きずっていたこと。
そして美しさを傷つけられた相貌になっていたこと。
ルッキズムとかでなく、幼少期に混血で差別や暴力を受けていたリンチェにとって、エリオットからかけられた「きれい」という言葉はとても特別なものであろうことが、大人になって再会してからの蜜月期でも要所要所で見受けられたので、言及するような描写は何もなかったのにも関わらず、「それさえも奪われてしまうのか…」と読んでて絶望感でいっぱいになってしまいました。

これから2人を待ち受ける苦難を思うともはやメリバなのではと思ってしまいます。

それでも神評価なのは、もう作者様の力量に感服というか、「人生のままならなさ」とか「愛って救いになるとは限らないんだな」とかを感じて、まるで実在する人間の人生を見たような気持ちになったので、これはもう「ハピエン最高!神!幸せー!」みたいなのとは次元の違うタイプの神でした。


まったくの余談なのですが、この作品を読んでる途中からずっとKing Gnuさんの「白日」が頭の中で流れてました。
作中に雪は出てこないのに何でだろうと思ったんですが、あとから調べたら歌詞がこの作品の世界観と似てるなぁって部分が結構あって(あくまで私の中で)、私の脳みそが勝手にリンクしてセレクト再生したようです。
こんな体験初めてで驚きました。

11

ドリフターとは、だれのことなのか

私の読み込みが甘かったのかもしれませんが、リンチェなのか、エリオットなのか、それとも二人なのか、いまだに考察の余地があるタイトルです。
すごく、深い。

表紙のとても耽美で綺麗な二人の姿に惹かれて、本作を購入しました。
表紙からも感じましたが、さすがの描写力というか、圧倒されたというか。
あ、これは真剣に腰を据えて読みたい作品だ、と思わせるような、そんな印象でした。

羽振の良さそうな、どこか怪しさを感じつつも、エリオットの目を奪って離さない受・ロバート。
良い家に育ち、順風満帆な人生を送っていそうだけれど、実際は過去の憧れに囚われたままの攻・エリオット。
記憶のなかで、エリオットにとっては綺麗な綺麗な宝物であるリンチェ。

再会モノが大好きなんですが、本作の二人は果たして再会してしまってよかったのか。
昔の記憶って、美化されがちというか、手の届かない思い出、宝ものというか。
本作の二人にとってはまさにそれで。
エリオットが無意識でリンチェの面影を追いかけていたように、リンチェの脳裏にもいつもエリオットの影がいたようで。
エリオットを先に見つけたリンチェが、呪いだと、手に入らないと絶望感を感じてしまったことに、切なさがこみあげてきました。
でも、宝物を目にしたら、手を伸ばさずにはいられないのが人間のサガで。

二人が偽名で愛を育んでいる時も、それはそれは美しかったのですが(最高です。めちゃくちゃ綺麗で美しくて、切な甘酸っぱい。スーツ、バスローブ最高!!!!!)
リンチェだとわかってからも、あえてリンチェとしては呼ばないエリオットと、ロバートとして振る舞うリンチェ。
エリオットとリンチェとして、暮らし始める二人。
そして、思い出の中で、キラキラと輝く甘酸っぱい過去のエリオットとリンチェ。
どれも二人の人間の関係性ですが、どれも違って、どれも最高でした。

そんな二人の逃亡劇は長くは続かないわけで。
結局は甘々坊ちゃんのエリオットは、リンチェを守るにしては守りが浅すぎて。
あっさりリンチェはエリオットの守りから奪われてしまいます。
長らくそっちの世界に身を置いていたリンチェなら、その甘さに気づかない訳もなかったんじゃないかと思うんですが、あの頃の、エリオットと出会って友情を育んでいた頃のリンチェに引きずられていたのか、リンチェから積極的に逃げの姿勢をとるというよりも、エリオットが守ってくれていることを享受しているような。
なんだか、夢物語のような。
リンチェにとっては、幸せな時間だったんじゃないかなぁ、と今になると感じますが、読めば読むほど感想が変わってくる本作です。

本作、ハッピーエンドというよりも、メリバな気がします。
ラストの風景は、誰目線なんでしょうか。
リンチェを迎えに行く前にエリオットが部屋から見た景色なのか。
それとも、リンチェを連れ帰って、リンチェとエリオットが二人で見た景色なのか。
それとも、何かがあったあと、どちらか片方が、見た景色なのか。
それとも、ふたりとも見ることは叶わなかった景色なのか。
深読みしすぎかもしれませんが、壁に少しあるシミが、なんのシミなのか。
二人の行く末を暗示しているようで、深読みせずにはいられませんでした。

本人達も覚悟しているように、本編の後は、決して容易な生活ではないでしょう。
でも、二人の幸せを、安寧を願ってしまうのは、それだけこの二人に、ストーリーに惹かれたからなんだろうなぁと思います。

続編を見たいような、このままこの二人の今後のことを多くを知ってはいけないような。

ラストに至るまでの二人の束の間のラブストーリーとか、もし構想があるならぜひ購入させていただきたいです。
こんなにも精巧に一冊にまとめられているのに、あまりにも魅力的な一冊だったので。
もっともっと、エリオットとリンチェを読んでいたいなぁ、という読了後の感想です。

11

再会の奇蹟、残酷な運命

エリオット×リンチェ(ロバート)


淡い恋。
偶然の再会。
運命の翻弄により、衝撃と共に疼きを感じる。
涙が溢れ・・・涙が止まらない。
その痛みが胸に突き刺さるのです。


1929年、享楽的なニューヨークを舞台に、
エリオットという自動車業界で働くアッパーミドルが
ドラッグストアを経営するロバートと出会う。

エリオットはロバートが初恋のリンチェにそっくりで、
一目惚れしてしまう。
彼の黒髪と黒い瞳に引かれ、
心が震えるような感情に囚われる。
2人は燃え上がるような一夜を過ごし、
エリオットはその後もホテルの一室でロバートを抱き続ける。

ロバートが実はエリオットの初恋の子、リンチェ。

リンチェがハーフアジアンでいじめられていたり、
父との酷い関係・・・
辛くて不憫な過去を持っていた。

子供時代の2人には特別な友情があって、
淡い恋も芽生えていた。
2人の家庭環境は真逆で、
エリオットはお金持ちでリンチェは貧乏だった。
それぞれの対照的な背景が、
お互いに欠けている部分を埋め合うような関係を築いていた。

エリオットの純粋さや
リンチェからみた人間性が、
当時の彼らの生活の中で新たな価値を見つけたかもしれない。

ある事件が起きて、
それが2人を引き離すきっかけになった。

そんなリンチェがずっとエリオットのことを忘れられなくて、
エリオットからもらったメガネケースをずっと大切に保っている。とか
2人の心の交流や繋がりなど、
すべて胸が締め付けられるほど切ない。

大人になって、
偶然再会する2人が、
初恋を忘れられないという思いを抱えながら、
どう向き合っていくのか、
見守りたいと思うところで、
不穏な要素が・・・。

リンチェが非合法な仕事に関わっているとしても、
エリオットは愛を諦めるつもりはない。

しかし、運命の魔の手が2人を引き裂こうとしている。
1929年、世界的な金融危機である「大恐慌」の始まりだ。

大恐慌の中で、
苦しさがエリオットの心を押し潰すように迫る。
愛は試され、
2人がどのように立ち向かう?選ぶのか?
彼らの選択と苦悩にまた胸が痛むことになる。

エリオットへの手紙の内容は、
おそらくリンチェからエリオットへの
深い想いや心の叫びが綴られているんだろうね。
それは最後に感動が迫るような結末を演出してくれている。

リンチェはエリオットにとって、永遠の初恋。
出会った日からずっとエリオットはリンチェを愛し続けて、
その目は、誓いを立てているように輝いている。

「連れて帰ってくれ」というリンチェの言葉には、
彼がずっと心に秘めていた本当の思いが込められている。

涙と共に読まれる感動的な結末で、
どんな困難に狂わされても、
2人の愛が運命に勝利し、
輝かしい未来が見えてくる気がするのだ。

2人のセックスは、
奥深くに秘められた想いが解き放たれているようで、
嘆き悲しみながらも、
お互いがずっと欲していた関係が現実となって、
愛と痛みが絡み合いながらも、
官能的なエロさで最高。

『こたえてマイ・ドリフター』というタイトルは、
彼らがお互いに愛を探求しつつ、
運命に翻弄されながらも、
自由に動き回る人生を追い求めるでしょうね。
素晴らしい。

経済の混乱や社会の変革の真実の中で、
夢と現実の対立の厳しさに直面せざるを得ない
2人が、
お互いの幸福を優先し、
献身的に助け合って、
どんな罪でも受け入れて覚悟を固めている。
昔からずっと、ただ純粋な愛を抱いている!
愛しくて切なくて苦しみに満ちた
ひたすら感動して心が震え続ける愛の物語でした。

10

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