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表題作食べないの? おおかみさん。

ウル
森に住むおおかみ男
太郎
生贄になった少年

その他の収録作品

  • ぼくを愛したおおかみの事。(描き下ろし)

あらすじ

生贄として森に捨てられた人間の子ども・太郎。
森の奥に住む狼のウルは、痩せた人間は美味しくないと言い、太郎に美味しいご飯を食べさせ、きれいな洋服を着せ、怪我の一つもしないように、大切に大切に育ててくれた。
大きくなったら大好きなウルに美味しく自分を食べてほしいと願う太郎だけど、いくつもの季節が廻った森のなかで二人は――。
甘く、切ない異種族BLストーリー! 描き下ろしショートも収録。

作品情報

作品名
食べないの? おおかみさん。
著者
小石川あお 
媒体
漫画(コミック)
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
バーズコミックス ルチルコレクション
発売日
電子発売日
ISBN
9784344846661
4.5

(365)

(257)

萌々

(77)

(20)

中立

(5)

趣味じゃない

(6)

レビュー数
45
得点
1658
評価数
365
平均
4.5 / 5
神率
70.4%

レビュー投稿数45

心臓の毛が抜ける衝撃作!

先ほど読み終わり、あまりの衝撃をくらいましたのでレビューいたします!

森に住む狼・ウルと生け贄の男の子・太郎のお話。
とにかく何がすごいのか。
最初私は獣×人間の、ストーリーが苦手で購入を迷ったんです。でも紹介文の切なそうなところに惹かれて読んだら、なんと一話終わりで衝撃の狼→人型描写が来まして!

ウル、すごい素敵!!

これがまた、ウルがとにかく狼姿でも紳士なんです。
○言葉が丁寧!
○ミシンで太郎に手作り服縫う!
○自分の着てる服が裂けてもかまわず走って太郎のピンチにかけつける!
○住んでる家、太郎への服、とにかくセンスが光る

全体的なこの本の魅力は、子供のころに読んだ美しい絵本の、優しく美しい空気をまとっているところです。
絵本。この表現がぴったりです。

太郎をはじめ、人間キャラクターの顔(特に、目、髪、手)も派手な描き方でなく、また背景は主に森の中。その他動物や人魚、景色やインテリアの整った洋館(二人の暮らす家)など、ファンタジーを自然に見せる丁寧な描写が続き、全ての存在と人間や狼の存在が、ことごとくマッチしています。

太郎は口べらしのため生け贄にされた、痩せている小さな男の子。その子に、おいしく食べるためだよ、と狼が言い聞かせながら手厚く育てています。
蜂蜜クリーム、へちま化粧水などを与え、とにかく、過保護に育てています。

いつかはウルに食べてもらえる、食べられると思いながら暮らしてきた日々。太郎は徐々に声変わりし始め、蓮の沼で見た男女の人魚の交わりに大人としての芽生えをしていきます。
もちろんウルは頭からバリバリ食べる気なんてなく、いつか自分が太郎を手放し別離する道を覚悟しています。

穏やかに穏やかに、進む時間。
この穏やかが怖いですので。←すごいネタバレです

腐女子になり色んな描写に慣れ、ちょっとやそっとの漫画ではこの心臓に生えた毛が揺らぐことも珍しくなってしまった昨今でしたが。
計三回、人型のウルと太郎(だいたいそのシーンで太郎は半裸)のところで、ウルの色気にとにかく、久しぶりに!!ドキーっというあの電気を感じました。
腐女子になりたてのあの頃の電気です。もうふさふさの心臓の毛が抜けた感じです。

本番シーンはシンプルでラスト一回のみですが、これ含めて三回は美味しいと感じるところがありました。絵本を読んでたら急に15禁漫画をくらった気分に近いです。

ちなみに、普段はメリバやバッドエンドを好む私ですが、この本はハッピーエンド以外受付けられないくらいの優しさで前半溢れているので、最後まで怖かったです。

大丈夫です、ハッピーエンドでした(  ̄ー ̄)ノ

なにげに素敵なのは、太郎の履いている靴。
いつも素敵な靴を履きこなしています。
お布団がまた、いい!!熊の毛皮です!

ちなみに、ウルは獣のときブラッシングされるのが大好きで、そのブラッシングコールがもらえた時の描写のかわいさたるや!

私の語彙力はこんなものなので、どうかこの絵本のようなBL漫画をぜひ一度読んで頂きたいです!

今年買ってみて一番良かったです。ちなみに電子で購入しましたが、紙でも欲しくなりました。

たくさんの方が、癒されることを願っています!!

25

ずっと優しい。もっと優しい。精霊と棲む森のBeauty & Beast

どういうわけか、「Beauty & Beast」をモチーフにしたBLは多い。さらに「赤ずきん」が好きな作家さんも多い。これはそれらを絶妙に掛け合わせた様な趣き。

狼のウルはいわゆる獣人では無い。普通に恐れられる山の狼。
太郎は生贄として供えられた子供。「いつか食べられる」と思わせておきながら、狼は幼ない太郎を可愛がり、慈しみ、大切に。それはもう大切に育てる。
太郎の方も自分は「いつか食べられる」のだと思いながら、それまでその時が来るのを待っている。
BL的には、それはいつか凌辱、というか。抱かれるんだろうな、と匂わせていて。
おそらく太郎も子供ながらそれに気付いているんじゃなかろうか?と、期待もさせるんだけど。
そうでも無い。人並みに教養を付けさせながら、教育を施されている太郎は無知では無いがウブなのだ。
愛されたいとモヤーッと願いながら、あまりよくは分かってなさそうなのだ。
狼の方の苦悩はそれよりも大きい。いつか太郎が自分の元を離れて生きて行くその日まで。
太郎を一人前に育てようと、覚悟している。監禁して凌辱しようだなんて考えてもいない。
この狼の無償の愛を想うとき、号泣せずにはいられない。狼の孤独。
人々に恐れられ、忌み嫌われ、それでいて山の神だと奉られる孤独。

狼は獣人では無く、月夜の夜に美しい男の姿になる。彼が変貌する様子は些かグロテスクではあるけれど、狼男である彼の美男っぷりは麗しく。獣姦にはならない事にホッとする。
その姿を最初から晒してくれていたら。太郎はもっと簡単に落ちたであろうに、と精霊に心配される様子も良い。狼は決して。太郎を籠絡しようなどとは思っていないのだ。
お伽話の様な美しい愛の物語。
森には精霊が棲み、人魚が戯れ、恋を謳歌する。ユニコーン。ひっそりと木の精霊は美しく描かれ、
妖精が春の訪れを知らせる。それらは詩の様に美しい。
太郎に懐いて、側で丸くなって眠る狸も可愛らしい。あらいぐまかと思ったよ。

子供が育つのは早い筈なのだが、幼ない太郎は中々大人にはならない。
変声期を迎え、背が伸びて。いよいよ?と思わせておいて。「それはまだ僕が小さかった頃のお話。」と言って、遡ったりする。どんなに狼が太郎を愛していたのか、溺愛しているのか、萌えだけを楽しんでいくのかな、などと思わせてもいて。
突然に別れはやって来る。

狼は太郎の幸せの為に、太郎に別れを選ばせる。(号泣)
そして、あっ⁉︎ と驚かされてしまうのだ。森の楽園に2人きり。過ごしていたその時間は、100年も経ってしまっていた事を。
えーっ⁈ 100年も⁈ エンディングには「One Love」が私の頭の中を駆け巡る。
「〜100年先も愛を誓うよ。君は僕の全てさ〜♬」100年…。
この世の禍いの全てから太郎を守りたいという、狼の、永きにわたる大きな愛情。
森の精霊と生きることで、太郎も永遠の命を授かったのか。もしくは、時がゆっくりと流れたのか。
いつか太郎は自分の意志のままに森へと戻り、愛しい者と結ばれる。
必ず訪れると信じていた美しいハッピーエンディング。温かくて、優しくて。
そして2人はずっと。幸せに暮らしましたとさ。めでたし、めでたし。

途中、狼の縄張りに迷い込む猟師。盲目の行商人など、人間が介入したりしてヒヤヒヤしたりするものの、それは楽園をかき乱すほどのものでは無く。
もしかしたら、普通の人の目に触れる事なく、今も何処かで息づいているのかも、と思いたい。
これまでの100年とこれからの100年。そしてまたそれ以上に。
永遠にこの幸せを守られて欲しいなと、願ってしまうのでした。
満ち足りる、というのはこういう気持ちなのかもね。

22

もふもふ×ファンタジー×ほんわか【※作中文章の引用あり】


ウルという黒い狼男さん、
その狼男の生贄として森に捨てられたちっちゃな太郎のお話です。

もふもふ好きの私にとっては換毛期に毛が抜けやすいという設定が
The もふもふ!!でとても嬉しかったです。

森の精霊が出てきたり、大蛇や人魚、一角獣、
そして森の動物たちがたくさん出てきて、
雰囲気は魔法使いの嫁にとても似ているなと個人的には思いました。
精霊や魔法の動物が好きな私にはこれもツボ。

そして「食べられたい太郎」と「食べる食べる詐欺のウル」のやり取りが、
どちらもお互いを好きで微笑ましい部分もありつつ、
ちょっと切ない二人の気持ちも見えて、
すごくバランスのとれたいい作品だと思いました。


「たとえそれが正しい幸せでなくても その日が来るまでは そこは ふたりだけの楽園」
いい文章かくな〜と思ったシーンです。

森の中のウルの縄張りにある二人の家はまさに楽園で、
二人はそこで幸せに暮らしているけれど、
傍から見た二人は、生贄と、それを食べる者という、歪な関係です。

でもそれをシリアスな暗い雰囲気で
ドロドロに描いてないところがすごく好きです。


もふもふが好き、ファンタジーが好き、
ほのぼのした雰囲気が好き、
このどれか1つでもあてはまるなら、ぜひ読んでいただきたいです。

18

繊細でロマンチック、哀しくも甘やかな名作

小石川先生の作品は、心を掴んでじわじわと揺さぶるような、深い根を張った優しさと寂しさがある。
誰も真似できない、圧倒的な個性。

限りなく優しくて、温かくて、悲しい。優しすぎてたくさん傷ついてしまう人たちを、静かに描く。

冬に初めて降る雪のような、春に降る温かな雨のような、そんな、読者の心を静かに包む優しさに溢れた作品だった。

ウルの愛情はひたすら慈しみに満ちていて、太郎の心と体をひたひたと満たしていく。初めて読んだ時は、なんて心温まる描写だろう…と思ったのだけれど、再読時にはその限りなく優しいウルの姿に涙が止まらなかった。

いずれ手放すと分かっていても愛さずにはいられない、そんなウルの愛、孤独の深さに胸をえぐられる。

とにかく読んでほしい。素晴らしい作品。

17

上質な大人の童話

上質な絵本のような美しさと愛らしさ。
童話のように優しさと残酷さが同居するストーリー。
先の気になる展開。
1話目から強烈に惹きこまれました。
(まず試読したのですが、続きが気になりすぎて即ポチでした。うますぎる)
切なく愛溢れる素晴らしい人外ファンタジーだと思います。

おおかみ男ウル×生贄に捧げられた少年・太郎。
痩せっぽちの幼児だった太郎を“大人になったら美味しく食べるために”という理由で、食事や素敵な衣服や教養などを惜しみなく与え、大切に大切に育てていくウル。
太郎はそんなウルのことが大好き。
いつか食べてもらうために、大好きなウルの側にいるのです。
そして太郎は少しずつ成長し、思春期を迎えるときが訪れて…。物語が大きく動き出します。

ウルの正体とは?太郎が大人になったとき、2人に何が起こるのか?
もう、先が気になって仕方ないのだけど、世界観があまりにも美しいから、先を急ぐのが憚られてしまう。
1ページ1ページをものすごく大切にしたいような、そんな作品でした。

ウルはめちゃくちゃ男前で優しくて、太郎は可愛い。
ウルはしょっちゅう太郎のことを抱きしめてペロペロ舐め回しているんだけど、これわかりすぎる!
ずっと愛でていたいくらいに反則級に愛らしいんだもん。
本当に「食べちゃいたいくらい」可愛い。

そんな2人の生活は、あたたかくて優しくて、その未来は感動的なものでした。
今、心がとてもぽかぽかしています。

16

この作品が収納されている本棚

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