ボタンを押すと即立ち読みできます!
ハンサム敏腕芸能マネージャー×ダイヤの原石美少年
ってなるとすごいキラキラ感なのに、
二番でも良いからとすがる死んだ恋人の知人×恋人の死を受け入れられない魔性受
ってなるとすごいヘビー感。
この全く異なる波長を吉田先生が上手に掛け合わせてくれました。
脅威のブレンド力……。
正直要素だけを取り出すなら、
芸能モノとしては、出会いが葬儀って暗すぎるし、死んだ人の話ばっかりしているし。
未亡人モノとしては、25歳×20歳ってちょっと若すぎるし。
それぞれ単独のテーマだと反発して使いにくい設定だらけなんですよ。
ところが、吉田先生らしいあの憂いを帯びたマイナー調の雰囲気がですね、
芸能と死ネタの二軸をうまーく調和させているんです。
違和感は消え、王道なのにどこか新しい設定に生まれ変わる。
だから読みやすいのに記憶に残る作品になる。
新しさだけを追い求めた作品はついて行くのにパワーが必要だし、
王道だけの作品は読みやすい代わりに他との違いがわからない。
吉田先生はこのジレンマをナチュラルに崩してくれる稀有な作家さんだと思います。
もう、雰囲気作りがとにかくお上手で。
序盤の冷たくジメっと暗い雰囲気から、
幹の椿に対する執着と情熱が徐々に高まる様子から、
天馬の死に葛藤する椿の姿から、
ドラマチックなラストへの見事な着地。
余計な説明よりも、エピソードでキャラの性格や心の距離を描いてくれる所もまた楽しい。
風邪をひいた幹の見舞いにビールを持ってきてしまう椿の非常識さ。
その理由を答えた瞬間の椿のいじらしさ。
説明はなくとも、幹がついポロっと告白しちゃう気持ちが痛いほどわかります。
全体を通して、最初はマウントを取りに行っている幹が、徐々に公私混同甚だしくなり、椿に翻弄されていく姿も良いですね。
吉田作品安定の受重心です。
ラストも華やか!というより、暗い部屋にポッっと間接照明がともったような奥ゆかしさと安心感に包まれます。
雰囲気の好みはあれど、好きな人はきっとすごく好き。
そんな希少なマイナー調芸能BL。
なかなかのハイレベル作品で、おススメです。
表紙の雰囲気から暗めのトーンの話かな、と思って、暗いお話が好きなので何となく手に取ってみました。
すごい話でした……。
芸能界を舞台にしてはいますが、スキャンダラスな雰囲気はなく、椿と幹さんの切な感情をじっくりと描いているお話です。
物語は、天才的な若手俳優の斉藤天馬が亡くなってしまうところから始まります。
天馬のマネージャーである幹、そして天馬の大切な恋人だった椿。2人は天馬の葬式で初めての邂逅を果たします。
本作の受けである椿は、存在するだけで人の心を魅了してしまう不思議な魅力を持ちながらも、天馬だけを見ているから、天馬だけが一番だから、天馬を失ったとしても他の人を代わりにすることは容易にはできない。
ある意味で残酷な、純真無垢で美しい存在だと感じました。
読んでいるだけなのに、私まで囚われてしまいそうに……。真剣に、丁寧に、美しく、可愛らしく、描かれているキャラクターでした。
攻めである幹さんはそんな椿にどうしようもなく囚われていきます。それこそ、2番目でも良いから、と縋ってしまうほどに。
ここでの幹さんの感情を思うと、胸が痛みます。私まで椿に惹かれている分、余計に感情移入がしてしまって……。
そんな幹さんと一緒に過ごしていくうちに、胸の中に天馬だけを抱いていた椿も、少しずつ少しずつ変わっていきます。
ずっと受け入れることができなかった「天馬が亡くなってしまった」という事実を信じた後の椿の行動は特に痛々しいものですが、幹さんとの関係が劇的に変容していく様は本当に圧巻ですので、ぜひ本編を読んでいただきたい。
そして、このストーリーの根底にあるものは「斉藤天馬」という1人の男の願い…のような気がしました。
素敵なものを目にした時に湧き上がる「この素敵なものは、自分が見つけたんだぞと自慢したい」という承認欲求、「素敵なものを誰にも奪われたくないから独り占めしていたい」という独占欲。
その2つを椿に抱いていた天馬が取った、二つの相反する欲求の均衡点なる選択が、「自分の死後に、信頼がおける人で自分と好きな男のタイプが同じ人である幹さんに託す」というもので。
思わず、なるほどな……と。
また、天馬を巡る演出が素晴らしかったですね。
最初からクライマックスまで、読者は天馬の顔さえも知らない。ただ、彼に魅了された椿と幹さんの口から語られる「天馬像」だけが徐々に形作られていって……天馬のことが気になって仕方なくて、知りたくてたまらないのに、全然教えてくれないんです。
ただ、外見が似ていると言われている新というキャラクターは出てきますが、椿に「似ていない」と断言されているから、余計にどんな人なのかが気になる。
そうやって引き延ばされて、ようやく最後に天馬自身の姿を初めて見れた時、それまでの全てを天馬に奪われてしまうほど、圧倒的な存在感にあてられてしまいました。圧巻でした。
本当に素晴らしい作品でした。もっと早く読んでいればよかったと思いました。でも、今日出会えてよかった。
吉田先生の他の作品も読んでみます。
今年のランキング(個人的にも)が出揃ったなんて、まだ早かったみたいです。すごい。引き込まれて涙が出ました。
試し読みですぐ、“何か違う”作品だと分かると思います。
タイトルで想像出来ないのが少し残念です。
ストーリーは人気俳優の天馬が事故で亡くなり、通夜に現れた恋人の椿と、マネージャーだった幹が出会うところから始まります。風変わりで不思議な魅力のある椿に幹が演技をすすめ、天馬を含む三人の人間関係とお仕事が絡んでいきます。
ネタバレはコメント欄にしますが、椿を大切にしていた天馬はお話のはじめからいないのです。
居なくても存在し続ける天馬が、椿をどう愛したのか、何を見ていたのか。一人になった椿が一人の人間としてどう感じ、新しい世界で殻を破るのか。
明確に描かれない部分もありますが、その“敢えて描かないことを描く”表現と見せ方がとても好きでした。
恋愛ものとしてドラマティックにときめいたりするお話ではきっとありません。映画を観ている様に情景豊かに、一つのテーマに沿って進む真面目さと演出が素晴らしいです。
基本ビターですが、ほんのり甘可愛い部分もあり、ビタースイートというところでしょうか。
タブレットをお持ちの方は、是非とも見開き表示にして迫力を感じて下さい。文字も読み易いつくりになっています。
「想像しろ」台詞としても何度も出て来るこれがテーマである筈です。
飼われていたと言ってもいい椿は幹に出会い、演技の仕事でも日常でも問われる。
「(この役の人物は)どんな気持ちだと思う?」
「本当にわかってる?」「想像してくれ…」
椿は感じ、考え、行動していくようになる。
天馬は居ない、再登場しない。どんな風に椿と過ごしたか知り得ない。敢えて描かないことでこちらに想像させる(有り難いことにヒントはちゃんと置いてある)地道な明確さと一貫性が作り込まれている作品で感動しました。
そして何と言っても、天馬の出し方が本当に素晴らしい。某桐島くんよりも濃い存在感とカタルシスと愛がありました。
作家買い。
吉田さんの、シリアスというかダークな、というか。そんな独特な世界観が非常にツボなのです。
今作品も、そういったそこはかとなく漂うダークな雰囲気は満載。満載なのですが、読後は心がほっこり温かくなる、そんなお話でした。
ネタバレ含んでいます。ご注意ください。
主人公は人気俳優・斎藤天馬のマネージャーである幹。
人気絶頂の中、天馬が事故死したシーンから物語はスタートします。
天馬の葬儀で、幹は出会う。成川椿という青年に。椿は天馬の恋人だった。幹は椿と会ったことはなかったが、天馬との会話で椿の存在は知っていた。
天馬の遺品の中に椿名義の通帳が見つかっており、それを椿に渡したかった幹は椿と会うことにするが―。
というお話。
亡き恋人を想う椿と、そんな椿を愛してしまった幹。
幹の想いは椿に届くのか?
と、そういうストーリーを思い描きながら読み進めましたが、いや、さすが吉田さん。そういった王道を行くストーリーとは一線を画しています。
今作品のキモは、言うまでもなく椿です。
彼がねえ、なんて言うのかな。不思議ちゃん、というか。いやいや、そういうありきたりな形容詞では括れない、なんとも謎めいた青年なのです。
天馬が亡くなった、その事実が受け入れられない。
天馬を愛していたから。
でも、それだけじゃない。椿の行動のすべては、彼の恋人、天馬の存在に起因しています。
「天馬」という男性は、作中登場することはありません。
無いのにもかかわらず、すごい存在感を放っている。椿の、そして幹の回想から、読者は天馬という青年の人物像をくっきりと思い描くことができる。
そして、その天馬の呪縛にかけられている椿の想いも。
姿を登場させることがないのに、ここまで強烈なインパクトを魅せる。その吉田さんの手腕に脱帽です。
天馬、椿、そして幹。
三角関係と言える彼らの関係ですが、天馬はすでに故人。椿と幹、彼らは彼ら自身の力で天馬を昇華していく必要がある。ゆえに、単純な三角関係ではなく読みごたえがありました。
が。
うん、だからこそ、もう一声ほしかったな、という感じ。
椿という青年が天馬に傾倒して言った理由の一つに、彼の孤独な環境があります。じんわりと漂う、その椿の薄幸さが、これまた一切描かれていない。なのでなぜそこまで天馬に入れ込むのか、そこに現実味がないっていうのかなあ…。彼の家庭環境とか、そういったものがもう少し描かれていたら、もっと感情移入できる作品になった気がします。
が、総じてとても魅力的な作品ではあります。
ストーリー展開、キャラ、そして彼らの恋の行方。
序盤、天馬という存在を介してしか、その存在が浮かび上がってこなかった椿という青年が、幹と出会い、彼と恋をして、そして「自分」を出すことが気できるようになった。
「恋」というベクトルだけではなく、彼らの「これからの自分」をも描いた作品で、そこがとても良かったです。幹の一途さと献身ぶりに、椿は人として成長していく。そのシーンに心が温かくなりました。
吉田先生らしい、不思議な雰囲気の業界ものです。
事故死した俳優とその恋人、マネージャーの三角関係のようなストーリー。
人気俳優・天馬の恋人だった椿は、彼の死後、マネージャーの幹に会います。
天馬の死を受け入れられていない椿と、椿に役者の才能を感じてスカウトする幹。
次第に幹は椿に惹かれていきくのですが、いつまで経っても椿の一番は天馬で……と、いうお話。
椿は天馬の死を理解しておらず(ここ微妙)、とても危うく不思議な子です。
ただ、ハッとするような表情に目を奪われるし、憑依系の演技もゾクっとします。
そんな椿に惹かれていく幹ですが、天馬が一番の椿にとって、幹は二番目でしかなくて──と、ここが切ない。
椿も幹に惹かれながらも、天馬への罪悪感から二の足を踏んでいるように感じました。
そして、椿にとっての幹は精神安定剤です。
既にいなくてはならない存在。
現実逃避をするように仕事に没頭する椿と、それを止められない幹。
二人の葛藤や焦燥が、セリフやモノローグからしっかり伝わってきました。
亡くなってもなお存在感のある天馬でしたが、生きている人には敵わない。
だって、椿の人生はまだまだ続いていくんだから。
天馬に囲われて世間を知らないまま生きてきた椿が、最後の最後に自分で選んだ未来。
天馬好みに仕込まれたHが主体性を帯びてくるところ。
人として、俳優として成長していく様子。
……と、作品を通して描かれる椿の変化がお見事でした。
椿名義で貯金を残していた天馬の思惑は分からないけど、何となくこうなる事を予感していたのかな?という気もします。
どこに終着するのかドキドキしましたが、収まるところに収まってホッとしました。
タイトルにある〝いけない子〟は、存在していなかったように思います。
かなり変わってるけど、椿は寂しがりやのいい子だったと思う。
そして、恋をしてからの幹の一途さが素敵な作品でした。