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表題作羽化 悪食2(表題作「夢魔」)

奥槻泉里,28歳,水琴の才能に魅いられた画商
胡桃沢水琴,18歳,不思議な力を持つ画家の卵

その他の収録作品

  • 足枷
  • あとがき

あらすじ

正体不明とネットで噂の「妖精画家」が、ついに姿を現した!! しかも新規ホテルに飾る絵を正式に依頼されたらしい!? 繊細なタッチまで酷似した、偽者の登場に驚愕する水琴(みこと)。けれど、水琴の才能を高く評価する、過保護な恋人で画商の泉里(せんり)は大激怒!! 正体を暴くため、招待客として水琴と共に乗り込むことに…。初めての旅行は嬉しい反面、画家として今後どう生きるか水琴は選択を迫られて!?

作品情報

作品名
羽化 悪食2(表題作「夢魔」)
著者
宮緒葵 
イラスト
みずかねりょう 
媒体
小説
出版社
徳間書店
レーベル
キャラ文庫
シリーズ
悪食
発売日
電子発売日
ISBN
9784199010309
4.7

(32)

(24)

萌々

(7)

(1)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
8
得点
151
評価数
32
平均
4.7 / 5
神率
75%

レビュー投稿数8

まさに羽ばたくための羽化。

前作がとても面白かったので、続編を楽しみにしていました。
厚みにビックリ。
あとがきで、先生が予定を百ページ近くオーバーって書いてあって、そりゃぶあつくもなるでしょうね。


受け様は、この世にならざるものが見える水琴。
その姿を描き、正体不明の妖精画家としてSNS上では話題になってる。

攻め様は、水琴のパトロンであり画商のオーナーであり恋人の千里。


雑誌掲載作品の「夢魔」
千里がオーナーの画商『エレウシス』に、桜庭という画家の作品を問い合わせに来客がある。
その時初めて水琴は桜庭を知るのですが、平凡な絵だったのが、家族を失って絶望の淵で描いた絵が皮肉にも人々を魅了する作品となり、今では行方不明であるという。

もし千里を失ったら…
絵を描き続ける、という業に怯え、水琴は死者の姿を描くことができなくなる。

そんな中、桜庭の殺人事件に巻き込まれ、桜庭の死してなおの想いを描きたい、と強く思い、残したい相手に繋ぐ水琴。

桜庭の守りたい想いに共感してホロリでした。


妖精画家の偽物が現れた『足音』
自分こそが妖精画家だ、と名乗り出たのは、モデルも務める若い美女。
手をひくようにと対面するため、プレオープンのホテルへ向かうと、出迎えた支配人の加佐見の後ろには小さな足跡が続く。


画家としてどうありたいのか、自問することになる水琴でしたが、画家として生きる覚悟を決めてます。

題名のように、水琴が画家として羽ばたく前の、まさに羽化の時を読ませてもらいました。

そして、死者の想いに同調してしまう水琴の重いおもーい重石となる千里。
画商のオーナーとして、パトロンとしては、水琴の才能を最大限に生かして世に送りたいけど、恋人としては腕の中に囲いこんでいたい。
そんな葛藤がとてもよかったです(#^.^#)


えちシーンでは、いまだに無自覚に煽る水琴が、素直でかわいい(///ω///)♪
煽られる千里ににやにやです(´∇`)

不穏を感じる謎の人物が出てきましたけど、次巻も楽しみに待ってます。


イラストは引き続きみずかねりょう先生。
口絵がカラーならではで、とってもキレイ。

3

妖精

先生買い。水琴ちゃんの透明度がますます上がったように感じて嬉しかったので、萌2より萌にしました。カプの馴れ初めやら受けさんの異能に関する説明はほぼないので、是非1巻からお読みください。雑誌掲載の表題作150P+別のお話230Pほど+あとがき。水琴ちゃんの異能の関係で、どうしても死者が絡んでくるのでちょっぴり悲しいエピがあるのを許容できる方向けかと思います。

恋人でありパトロンである泉里のギャラリーで仕事し、同棲している水琴ちゃん。ある日、ちょっと柄の悪そうな男が「桜庭廉太郎の絵があるって聞いた」と押し掛けてきて・・と続きます。

攻め受け以外の登場人物は
前半エピで、桜庭廉太郎(画家)、慧、橋本(水琴の友達)、
後半エピで、加佐見(ホテル支配人)、槇(水琴を激推ししているギャラリーオーナー)、百川結衣(妖精作家と名乗り出た♀)、光次(加佐見の弟、故人)、七瀬(誘拐犯)ぐらいかな。槇さん、イケメン~♡

++より内容に触れる感想

水琴ちゃんは透明度ばりばり上がりまして、画家としてどうしようかと色々模索中。それで雑誌掲載作の表題が「羽化」。ええ少しずつ羽化してますよ、もう超キレイ。真っ白ぴゅあぴゅあで健気に泉里さんを慕うもんだから、ウハウハなのでは。

泉里さんは変態色&犬みが少ないイケメンだけど、もう水琴ちゃんしか見えていない執着さんだし、大事に大事にしまいこんでおきたいと思っている溺愛さん。お金持ってるからじゃんじゃん貢ぐ&着飾らせるので、かなり羨ましい。正統派イケメンだと思うんだけど、めちゃ惚れる~という箇所が無かったかな。

槇さんもビジュアルイケメンなのだけど、やっぱり超惚れるというところが無くて、ちょっと残念です。

お話としては前半の方が良かったなあ。まだ続きそうなサブキャラ登場があったし、そのキャラを読みたいので、天使のような受けがお好きな方、是非是非、よろしくお願いいたします。

1

ボリューム満点!

宮緒先生があとがきで書かれていた通り
全編後編の2話で約400ページ、単行本2冊分相当のお話でもりもりのボリュームでした。

前回の悪食で晴れて恋人兼パトロンと画家のたまごの関係になった泉里と水琴。

今回は、衝撃的な作品を残して行方知らずになった画家の作品をめぐってのお話(前編)と、「SNSで話題の妖精作家は私」と名乗り出た偽者が現れてってお話(後編)

今回ホント泉里さんのモンペが加速してて過保護が過ぎるぞ!って思いました。
かわいい、かわいいで構いすぎて至れり尽くせりにしたら結局本人の為にならんぞ、ダメ人間を製造してまうぞって、子育て世代なもんで思ってしまいました。

しかし、私の思いと同じ人がいた!
前作で出てきた槙怜一さん。彼も水琴を崇拝してる1人だけど、泉里より冷静に画商としてビジネス視点も持ち合わせてる。
怜一さんが水琴に「君はこの先どうなりたいの?」泉里に「過保護過ぎて水琴の才能の開花に悪影響」と言ってのける。(正確にはこんな言い方ではない)
これ言われなかったら、甘々溺愛カップルの珍道中が繰り広げられるお話になったかもしれない。

受けが溺愛されるのはいいんだけど、姫扱いで存在してくれるだけでいいって関係性は、ペットみたいで嫌なんだよね。
やっぱり、1人の自立した人間であって欲しい。

今回、シャーマン的な能力がどんどん発揮されている水琴。それによって死後の世界に引きずり込まれかねない恐怖もあるけど、水琴への感情重々の重たい男の泉里のおかげで現世に繋ぎ止められている。
お互いがいてたからこそ魂が救われた感のあった前作、今作は庇護する者とされる者の関係性から一歩踏み出そうとする未来が見えるお話でした。
まさに、タイトル通り、サナギからチョウへ「羽化」しようとしてるお話でした。

ただ、不穏な空気が漂いながら終わったので、次何が起きるの???とドキドキします。
雪輪の存在が気になるし続編が読みたいです。

濡れ場シーンは、挿絵も相まってとっても良かったです。初々しいのに言葉と態度で煽ってくる水琴くん。
この子はもしかしてインキュバスなのかもしれない。
泉里さんの悶絶してる姿が目に浮かびました。


ここからは、個人的に気になる事。
BL作品内で、女性登場人物が極端に性悪だったりするのが、残念に思います。いろんな女性キャラがいてその中にどうしようも無い性格の人がいてもいいのですが、唯一出てくる人物が毎回悪人ってどうよ?と。
世の中、いい人もいれば悪い人もいるのでは?
あと、ステレオタイプに悪人は悪人じゃなく、人は多面的だから、いい人、悪い人の境界が曖昧でもいいのではと思ったり。それだとキャラ設定がブレちゃうのかな。
悪女、鬼女ばっかだとうーん………と思ってしまいます。

3

大切な人を守るために

今回はギャラリーオーナーと不思議な力を持つ画家の卵のお話です。

行方不明だった寡作な画家の殺人事件に関わる顛末と
妖精画家の偽物の出現により暴かれる誘拐事件の真相を収録。

受様は高祖母の美貌と不思議な力を引継いで生まれ
幼い頃から無念を抱える死者達が見たことから
母に疎まれ、父方の祖父の元で育ちます。

受様が描いた絵がSNSにアップされた事がきっかけで
画商である攻様にその才能を認められ
祖父の死は攻様の元に身を寄せ
彼を後見人として絵画の基礎が学び始めます。

攻様は受様の才能だけではなく
受様自身をも深く愛して大切にするあまり
かなり過保護でもありました。

受様がちょっと体調を崩し微熱をだしただけで
1日マンションの寝室に閉じ込めたばかりか
翌日も画廊の踊り場をはき終えて階段を掃除しようと
しただけで止められてしまいます。

過保護スイッチの入りかけた攻様に焦っている所に
悪さが滲むチンピラ風の大柄な男が
予約もなしに攻様の画廊を訪ねてきました。

攻様の画廊は完全予約制ですが
得意客からの紹介なら迎え入れる事はありますが
顧客は育ちの良さのにじむ富裕層ばかりで
とても目の前の男が縁を持つようには見えません。

彼は微かに幼さを留めた華奢な青年を伴い
不遜な態度で「ある画家の絵を見たい」と迫りますが

攻様がそんな暴挙を許すはずはなく
彼は暴言を吐きながらも帰っていきます。

ところがそれから1週間後、
受様は街中で暴言男の連れ立った男性と偶然行き会い
受様は彼らの企みに関わる事となり・・・

本作は既刊「悪食」の続刊で
雑誌掲載作の巻頭作に書き下ろし新作を収録して文庫化した
オカルトミステリーです♪

宮緒先生もあとがきで書かれていますが
巻頭作は通常の掲載作の「短編」の域を超え、
書き下ろしもこれで1冊でもおかしくない長さでしたが

その厚さ分、ハラハラとワクワクが詰まった
とても読み応えのある1冊でした (^O^)v

巻頭作は攻様の画廊にやってきたチンピラ男が
求めた絵の作者である画家の殺人事件を
受様が死者の想いを読み解決へと導くお話、

描き下ろしはSNSで拡散された絵を真似て
「妖精画家」を名乗る女性画家が現れ
彼女の嘘を暴くために向かったホテルで
過去の誘拐事件の絡むある計画を阻止する
お話になります。

無念の思いを抱く死者達が見え、
人物は彼らしか描けない受様が描く事と
攻様に愛される事について色々と考え
成長していくストーリーでした。

それぞれに丁寧に張られた伏線と
絡まるように配置された登場人物達が
徐々にその思惑を見せ、受様に絡まり、
攻様をも巻き込んでいく様は実に見事です。

毎回事件に関わった人物が
次作で重要な鍵と化していますが
本作でもそうなるだろう人物が登場しています、

オカルト系はあまり得意じゃないのですが
新たな事件に受様がどうかかわっていくのか
とても気になります。

2

「あなたは独りではない」と伝える水琴

前作は、恋人との出会いと祖父との別れ。
今作は、水琴が、社会の関わりの中で、自分が持つ能力の意味と意義に気づく巻だった。
他に粗筋があるので、印象に残った場面をメモ。

★「夢魔」
聴覚を失ったゴヤのスランプ。「我が子を食らうサトゥルヌス」を食堂に描いて蟄居したゴヤが、正気を取り戻し、活動を再開した逸話をなぞる展開。
「蒼い馬」の作家・桜庭は、妻子を失った「絶望と狂気」を描く作品で財を成した事に虚無を感じ、筆を折り隠遁。
桜庭が何者かに殺害され、刑部が容疑者となるが、桜庭の魂は水琴を訪れ「刑部を助けて」と願う。

生前の桜庭は、実の子のように孤児の刑部を慈しんでいたが、誰にも愛されない孤児の刑部は、桜庭の自分に寄せる親の慈愛に気づけなかった。
絵を描けないはずの桜庭の遺品に、刑部の素描が遺されていた。桜庭もゴッホのように、狂気に勝っていた。
・・・桜庭が刑部に「いつか これを」と言っていた絵を水琴が渡す場面は、泣ける、感動した。
表題作のインパクトが強くて、後編が霞んでしまった。
この1作だけでも、買う値打ちは十分に有ると思う。

★「足音」・・この物語は、次作の序章。
水琴の偽物が出現、水琴は偽物に興味を示さないが、泉里達は激怒して策を講じる。
泉里の義兄が経営するホテルで、水琴は、祖母に似た女神が月を指さす夢を見る。
そして、義兄の後について回る子供の死者は、足跡と足音しか見せない。
水琴が、死者が最期に見た情景を泉里の義兄に見せると、未解決の20年前の誘拐事件が解決していく。

★副題の「羽化」
水琴が、画家として活動をすることで誰かの役に立ちたいと決意。水琴は、幼体から、成虫に羽化しようとしています。
・・もし蝶の羽化のように、蛹で一旦体を溶かす過程を経るのなら、水琴は一度あの世に行って戻る必要があるのかもしれない。だから絆役の泉里の存在は重要。

★次作は、「眺月佳人」と一対の「群雲」の絵を持つ雪輪家の物語になるみたい、楽しみ。

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