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まぼろし食堂のこじらせ美男

maboroshi shokudo no kojirase binan

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表題作まぼろし食堂のこじらせ美男

伊波青州,38歳,「コーポ・ニュー島原」の大家で「まぼろし食堂」の店主
小路苑,24歳,失業したばかりの人生ドン底青年

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

路頭に迷いかけたところを、下宿屋を営む青洲に拾われた苑。甘やかされえっちなことまでされたのに、青洲は恋愛をする気はなさそうで!?

作品情報

作品名
まぼろし食堂のこじらせ美男
著者
小中大豆 
イラスト
白崎小夜 
媒体
小説
出版社
二見書房
レーベル
シャレード文庫
発売日
電子発売日
ISBN
9784576220116
3.9

(41)

(10)

萌々

(21)

(7)

中立

(2)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
9
得点
157
評価数
41
平均
3.9 / 5
神率
24.4%

レビュー投稿数9

心が疲れて弱ってる、全ての方に贈りたいです

人生どん詰まりの人が導かれるようにして集まってくる食堂兼下宿屋。
弱った羽根を束の間休めて、元気を取り戻して巣立って行くんですね。
そんなちょっぴり不思議な「まぼろし食堂」で、人生ドン底の主人公を受け入れてくれたイケメン大家は・・・。
と言った、お話になります。

もうこれ、とてもあたたかいしジンワリ心に沁みる、めちゃくちゃ素敵なお話でしたよ。
主人公の置かれていた辛い状況だったり、攻めの手痛い過去の失敗だったり。
ちょっぴりほろ苦くもあるんですけど、それら全てを穏やかに包み込んでストーリーは進みって感じで、本当にとびきり優しいお話だと思んですよね。
こう、読み終えた後は、「私も頑張ろう!」と前向きなれると言うか。
心が疲れて弱ってる姐さん!
ぜひ読んで、明日への活力にして欲しいです。

内容です。
信頼していた人に裏切られ、失業し、更にお金も無くと、人生ドン底の主人公・苑。
酔っぱらって道に迷っていた所を不思議なキジトラ猫に導かれ、「まぼろし食堂」にたどり着いたんですね。
そこで、変人に見えるけど面倒見の良いイケメン店主・青州に誘われ、まぼろし食堂(兼下宿屋)に下宿する事に。
やがて、優しくあたたかい青州に惹かれてゆきますが、彼は過去の経験から色々拗らせた、「恋」が分からない残念な男でー・・・と言うものです。

こちらですね、実はめちゃくちゃ地味なお話なんですよね。
何か特別派手な事件が起こるワケでも無いし、盛大なスレ違いなんかを経てと、涙、涙で盛り上がるワケでもない。
作者さんもおっしゃられてる通り、主役二人の恋がゆるゆる進むのを追うだけの作品なんですよ。
作品なんですけど、これがとにかく優しくて、ジンワリ心に沁みるってんですかね。

や、そもそも地味で分かりにくいけど、設定が秀逸だと思うんですよ。

えーと、繰り返しになるのですが、舞台となるのが「困ったり弱ったりした人が何故か集まる不思議な食堂」でして。
主人公となる苑ですが、まさにドンピシャの不幸青年なんですよ。
仕事ではブラックな環境で酷使され、信頼して恋心を抱いていた先輩にはいいように利用された挙げ句裏切られ、心が折れて退職したものの今度はお金が無い。
こうね、彼は人一倍真面目だし努力家なんですよね。
ギリギリまで自分をすり減らして頑張っちゃうし、「ちゃんと頑張り続けなきゃいけない」と自身を甘やかしてあげる事も下手。
何とも読んでて気の毒な感じの受けなんですよ。

これ、そんな主人公が、「まぼろし食堂」と言う優しい場所で、あたたかい人達に囲まれて過ごす。
疲れ果てて弱りきっていた心を癒し、やがて元気を取り戻す。
そして、恋をする。

前半がこんな感じでして、ここまでだと問題を抱えているのは主人公で、そんな彼をおおらかに受け止める攻めは(多少変人だけど)包容力のあるいい男に見える。
それが読み進めるうちに、実は攻めの方が、より大きな問題を抱えた困った人物だと分かってくる。
そう、この「まぼろし食堂」ですが、住民は皆、困っていたり弱っている人なんですよね。攻めも例外では無いのですよ。
なるほど、こう来たか!みたいな。

またこれね、しつこいですが、激的な出来事は起こらないんですよ。
一緒に食事をしたり、ちょっと買い物に出掛けたり、かわいいからとうっかり攻めが受けに手を出したり。
そんな日常を繰り返す中で二人の気持ちは通じあい、やがて恋人同士として結ばれる。
本当にゆるゆると進むのです。
そして、それがめちゃくちゃ素敵だと思うのです。

えーと、個人的に一番萌えた所なんですけど、青州が苑への気持ちを自覚した瞬間だったりするんですよ。
や、どこにでもありそうな日常のささいな出来事で、彼はハッとこれが人を好きになるって事だと気付くんですよね。

そうだよなぁ。
相手が自分を庇って剣で切られて死にかけるとか。
そう言う派手な出来事で気持ちを自覚するとかってドラマチックではあるんですけど、実際には「こんな事で!?」みたいな地味な出来事で相手を好きになっちゃうし、愛情は深まるのよね。と。
マジで、等身大の普通の恋愛なんですよ。
そしてそれが、めちゃくちゃ萌えるんですよ。

あとですね、実は私は小中先生の書かれる「拗らせ攻め」が大好きなんですよね。
拗らせ攻めが大好きと言うか、そんな残念な攻めを受けが「しょうもない人だなぁ」的な感じで大きな愛で受け入れるのが好きと言うか。
今回も、自分は青州に恋をしてるけど、彼は自分に恋をしていないー。
その、失恋を自覚した際の、苑の思った事がめちゃくちゃ素敵で心を打たれましたよ。
そう、愛する人には幸せになって欲しいよね。
そして、自分も幸せになる努力をしなきゃね。
ちゃんと、みんな幸せにならなきゃね。

ちなみに、苑をいいように利用して裏切ったクズ男ですが、ちゃんと成敗されます。
これにはスッキリさせてもらいました。

と、そんな感じで、とにかくあたたかいし優しいし心に沁みる素敵なお話でした。
こんなご時世だからこそ、こういうお話が嬉しいですよねぇ。

16

優しいって癒されますね

パワハラ、裏切りと散々な目に合って仕事を辞めた苑が、人通りのない木の繁った道をさ迷っていると、猫が現れて、「まぼろし食堂」へ導かれていくことから始まるお話。

ファンタジーのような始まりなんですが、異次元ではなく現実です。
だけどそこは、傷ついた人々を癒す優しい下宿屋と人々がいる世界。

店主の穏やか超絶イケメンの青洲さんと、仕事のせいで自尊心低くなってしまったけれど、実は器用な苑ちゃん。
二人の穏やかなやり取りが癒されます。

帯に小さく、「大事なものが欠落してる美男×どん底男子。ラッキースケベの先にあるのは恋ですか!?」と書いてあります。
感情ない男と下宿でエッチなことしまくる展開かな、と思ってたんですが、青洲さんはすごく優しい人ですし、純愛で全体的に穏やかなお話でした。
でも、ラッキースケベは良かったです!

本気で恋愛をしたことなかった青洲さん。恋心を自覚するまで時間がかかります。恋心溢れ気味でしたが。ちょっともだきゅんでした。

苑ちゃんも青洲さんも、それぞれ過去のわだかまりが解けて、新たに歩き出せて良かったです。

青洲さんは最初の出会いの時に、鼻眼鏡に裸エプロンなんです。
トリッキーなキャラなのかな?と思ったのですが、それ以降はずっとイケメンで優しい人でした。
なんでそんな変な格好してたのか気になります。笑

13

ゆっくり癒やされ( ´∀`)

小中先生、今度のお話はハートフルな癒やされストーリー。
毎度思っちゃいますが、いろんな引き出しをお持ちなんですねぇ。╮(^▽^)


受け様の苑は、真面目な頑張り屋さん。
職場の先輩への恋心を利用され、仕事を押し付けられ成果を横取りされ続けたあげく、コンペの案まで盗作されてしまい、とうとう頑張れなくなって仕事を辞めてしまった。
飲んで迷子になって、現れた猫に案内されるように『まぼろし食堂』と暖簾のかかった小屋へたどり着く。
中にはハゲのおじさんとヒゲのおじいさんと半裸の男が。
歓待され、皆で飲み直して、気付けば食堂兼下宿のそこへ下宿することに。

この下宿屋さんの大家が攻め様である青洲。

皆で飲んでるシーンのイラストがあるのですが、カーネル似のおじいさんとザビエル似のおじさん、猫のキジえもんにアフロと鼻メガネのパーティーグッズを身に着けた裸エプロン姿の青洲。
見えてるカラダはいいのに、姿が可笑しすぎて、笑いがもれる1シーン。

ちゃんとしなきゃ、と自分を追い詰める苑に、休んでいいんだよ、と労ってくれる青洲。
まぼろし食堂を訪れる人達はみんな優しい。

なんだか、今もどこかで誰かがこんな風に弱って困っているんじゃないかな。
そんな時こんな避難所があればいいよなぁ、なんてじんわりしながら読み進めました。


苑と青洲、確実に距離が近づいているのに、自分の恋心に気付かない青洲にはやきもき。
そんな中、やっと恋心に気付いたタイミングには、なるほどなぁ、とほっこりあったかい気持ちになりました。
何気ない日常の中に幸せってあるものだよね(*´ω`*)

青洲の告白に、告白されたような気が、と固まり、もう一度告白されて、やはり告白だった、と納得してる苑がかわいくて(≧▽≦)
一方、苑を落としにかかってる青洲にはにまにまです。

搾取先輩のその後にはスッキリで、ラストシーンのイラスト同様、にっこり笑顔になる優しいお話でした。
気持ちが弱ってる時に読んだら、ホッと一息つける1冊です。

イラストは白崎小夜先生。
登場人物全てかぴったり。
口絵の苑が可愛すぎてヤバい(☆▽☆)

9

不思議な魅力の食堂

不思議な魅力の飲み屋兼下宿や、青洲と彼を取り巻く下宿人や常連さん、何よりキジえもんに心が和む。ボロボロだった苑が少しずつ前を向いて、自分を見つけていくのが微笑ましい。青洲を好きになり彼の憂いを知り、一歩引いて想う姿は健気だった。寧ろ青洲の方が抱えてるものが大きくてしんどそうだったけど、苑と出会えて光が見えて良かった。青洲が無自覚だったからハラハラしたけど、2人で幸せを見つけられて安心しました。青洲にとって初恋やったのかも。ざまぁもあってすっきりしたし、優しくて温かくて幸せの溢れる作品でした(˶ᵔᵕᵔ˶)

8

幸せのあり方

ひとつ失敗しても人生ダメじゃない。ちゃんとしてなくてもいい。疲れたら体と心を休めてやりたいことを探して、出来ることをしてみればいい。

勝手に思ったまま要約しましたが、自分の就活時代を思い出しました。
会社員にならなければ。社会人にならなければ。お金を稼がなければと考えて、やりたいこともないのに就活して上手くいかず追い詰められて。どうやって生きていくかも、どうなりたいかもわからず。
初めて入った会社を辞める時も人生終わったような、これからどうすればいいのかすごく不安だったなあと思い出しました。

序盤は主人公苑が先輩疋田に搾取され、読んでてとても苦しかったです。

苑がまぼろし食堂に辿り着いてからは読んでいてとても幸せでした。
苑が焦ったり不安になったりしても、青洲は無料で住まわせ美味しい食事もくれて。もっと休みなさいって。
夢のような下宿屋ですね!

ボロボロになった人達が癒され力を取り戻し巣立ったり社会復帰したり。とまり木みたいな下宿屋さんで。再生の地ですね。

苑視点なので青洲が何を考えているかよくわからなくて…。
でも苑は青洲への片想いが実らなくても、苦しくても乗り越えてそばにいたくて。
変に気まずくならず自然体で片想いしてて新鮮でした。

幸せの形?あり方?見つけ方?いいですね。
それに人の縁の繋がりの素晴らしさも。
傷ついたり疲れた人にはしみるお話ですね。

青洲、動きます。
まさか彼から…。しかも自分の魅力を総動員して落としにかかって。
そんな人だった〜?
その日のうちに…。初めての子なのにあんまり慣らしてなくなかった?BLだから大丈夫なの?
初エッチで不穏なことを言ってきたり。そりゃあなたは百戦錬磨の経験豊富なテクニシャンでしょうけど…。

うーん、お話は神なんですけどエッチのときの青洲がなんだかひっかかり。

その後の下宿屋のあり方とか太郎さんからのメッセージとか二人の将来とか良かったです!

5

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