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久しぶりの再読。
この時代のBL小説の雰囲気、やっぱり好きだなあ。
数多くある雪代先生作品の中でも、内容が思い出せるほどに記憶に残っていたのは、依存や痛々しさからなかなか抜け出せない心理描写の細やかさがあったからかもしれません。
徹底的にとことん痛く。でも甘みもあるこの不思議なバランスが好きです。
今回十数年ぶりに読み返して、初読時とは印象が異なっていたことがおもしろかったのです。
発売当時には、恋人・崇からの手酷すぎるDV暴力の数々に苦しみながらも、ボロボロの状態で引き返そうとしてしまう智紘を救い出そうとする高藤が、包容力のある優しくて素敵な紳士に見えていたのですが…
読み返してみると、優しいと思えていた高遠もよくよく見てみれば、智紘を自分だけの鳥籠に閉じ込めているようにも感じられるんですよね。
暴力と共依存が蔓延る、痛くて苦しいけれど精神的にはある意味穏やかだった安息の地から救い出されたようでいて、とびっきり甘くて優しいのに逃げられない檻に移っただけな気がしてならないのです。
性質はやや違えど、崇も高藤もどこか似通ったところがあるのかも?なんて思います。怒らせると怖そう。
だからこそ智紘も惹かれたのかもしれませんね。
執着心が強く、愛に飢え、人一倍愛情を欲しては独占したい智紘と、そんな智紘を一生閉じ込めて愛したい高藤。
2人があまりにもお似合いで、破れ鍋に綴じ蓋とはこのことだなあとしっくりきました。
あなたを不幸にしても離れたくないって、愛してるよりも強い言葉じゃないですか?
犬用の首輪に理不尽な暴力と性暴力、共依存関係とストーカー行為に傷害…と、智紘の恋人だった崇の不安定さと、何をするかわからない不気味さに関しては、あまり気軽に読んでみてとはおすすめできないものです。
ただ、健気すぎて時に痛々しくあっても智紘も結構ガッツがあるんですよ。
高藤が何度もいい子だと智紘を甘やかすこともあって、そこまで重たくならずに読み切れるかなと思います。
欲を言えば、高藤の従兄弟視点よりもやはりその後の2人が読みたかった。
もしくは、崇がどんな人間だったのかをもっと知りたかったですね。
作者が後書きでBL小説とは恋愛小説ですと言われたと書いてますが、まさしく恋愛もの。悲運の受けが幸せになるというエンドはわかってても締め付けられるような展開。この頃の話って中身重視だったなぁと思う。イラストありきで読みはじめてるけど、表紙より挿絵の方がカッコいいです。
電子書籍で読了。挿絵なし。
「Fly me to the moon」がやたら可愛らしかったので、こちらも読んでみたのですが……
私には合いませんでした。
いや、面白いんだと思うんですよ、お話は。
何故に浸れなかったかと言えば、読んでいる最中、佳境に入れば入るほど
「依存の問題を抱えている人とすぐに恋愛したら本質的な解決にならんでしょっ」とか、
「あ、2人で解決しようとしてはダメ。相談員入れろ。チームであたれ」とか、
別にその手のお仕事をしているわけではないのに「専門職の正しいお仕事」みたいな声が私の中で巻き起こりまして。
おまけにそれが、だんだん大音響で響くようになってしまったんですよね。
攻めさんが医師ではなく別の立場の人だったら、多分じんわりしながら読めたと思います。
もしくは攻めさんがこんなに誠実でなくて、腹黒男だったら「この悪党!」とか言いながら楽しんだと思うのです。(木原さんの「POLLINATION」は「この外道!」と思いつつ面白く読めたものなぁ……)
自分のことを倫理的だと思ったことは一度もないのに、思わぬ処に落とし穴がありました。
木下さんが表紙絵だから勝手にほのぼのした話を想像してしまったんですが、結構痛い内容でした…
攻めに片思いしながらも、DVの元彼と共依存の状態に陥っている受けのお話です。
受けの智紘が恋人の崇に酷い暴力を受け、攻めの高藤先生の働いている病院に搬送されてくるシーンから始まります。
先生は、あきらかに男にDVを受けている状態の智紘を心配して、治療後も住むところや働く先を探してくれ、更にその職場の店に何度も足を運び何かと気にかけてくれます。
智紘は優しくしてくれる先生のことを入院中に好きになり、店に来てくれるのを楽しみにしながら、徐々にまともな生活を送り始めていました。
先生からは、崇は最初一度だけ病院に智紘の居場所を聞きにきたものの、それ以降は何の連絡もないと聞かされていて、「崇とはもう一切会わないこと、考えることもしないように」と強く言い聞かされています。
しかし本当は崇は凄い執念で智紘のことを取り戻そうと探し回っているんです。
この崇がかなりやばいキャラで…
ストレスが原因のDVかと思いきや、もう崇と智紘の出会いからして異常でした。
バイト中の智紘を一目で気に入り、無理やり車に連れ込んで誘拐。レイプして監禁…
崇はこんな無茶苦茶なことを普段から当たり前のようにしてるんです。
しかも親が代議士なので何かあっても権力でもみ消してしまえるという…
こんな人間が、街に野放しになってると思うと怖すぎる…
崇の智紘への執着はとてつもなく、作中ひたすら智紘を取り戻そうと追ってくるんですが、これが結構恐いです。
予想外のタイミングでヒヤリとさせられることがあり、サスペンス的な展開が読んでて結構どきどきしました。
そして酷い扱いを受け普通なら好きになるはずがないような男なのに、強く求められることが嬉しくて無意識に依存してしまっていた智紘。
ずっと逃げたいと思っていた筈なのに、いざ逃げると自分がいない状態の崇のことが心配になってきます。
崇がいないことに不可解な寂寥感を感じ、そんな自分に智紘自身も戸惑うのですが、先生からは共依存の典型的な症状だと指摘されます。
父親の義母との再婚で家で寂しい思いをして育ったのが影響しているんですが、崇の暴力を許してはいけないと言われた時の「先生、だけどそうでもしないと俺を求めてくれる人なんていないんです」という心の中での台詞が切ないです。
あと個人的に結構ツボに入った最初のキスシーン。
崇のことでパニックに陥った智紘をショック療法で落ち着かせるためにキスして動きを塞ぐんですが、冷静にこんなことする先生に読んでてちょっとどきどきしました。
キスし終わった後平然としているところが逆にえろい。
先生が作中何度も「いい子だ」って言うのも子供をあやしてる感じがして好きです。
医者だからこういう台詞が似合う…厳しさの中にある甘さが良かったです。
先生の命に危険が及んだりいろいろありつつも本編が一応ハッピーエンドになるんですが、残りページ数1/4以上残ってる!後日談のあまあまくるかな〜とわくわくしてたら…なかった……
ずっと先生のことが好きだった従弟のはるか視点のお話でした。
後日談じゃなくてがっかりしながら読み始めたんですが、まさかの他人目線での2人のセックスとかいう個人的にすごい性癖に刺さるシチュエーションがきて、これにもどきどきさせられました。
本編で智紘に酷い言葉を投げかける小悪魔として何度も登場してたんですが、その時のはるか視点です。
智紘が崇から逃れて先生の家に匿って貰っていた時、智紘への嫌がらせのために先生の部屋に忍び込み様子を伺ってたら、2人がすぐ傍のソファの上で愛し合い始めて出るに出られない状態に。
もう〜これ!こういうの堪らないです。
見てはいけないものを見てしまったような気分でした。
…でもやっぱりその後のちゃんと幸せになったメイン2人の話を読みたかったなあ。
あと崇に踏みにじられた煙草の吸殻は、やっぱり誰かしらに捨てられちゃったんだろうか…ちょっと行くえが気になります。
大事に集めてたの先生にバレる展開も見たかったな。
