• 電子書籍【PR】
  • 紙書籍【PR】

表題作FLOWER(新装版)

谷脇伸一,冷血ドクター
松本朗,生真面目な医大生

同時収録作品Green Green

草野雅也,大学生,弟
草野善彦,会社員,兄

その他の収録作品

  • WEED~one day~

あらすじ

医師・谷脇が新たに選んだターゲット、それが気弱げな医学生・松本だった。酒に酔わせて関係を結び、「君から誘ったんだよ」と甘い嘘で翻弄していく。一度はその手に落ちてきたかに見えたが…。いつも振り向いて君の姿を探してしまう。それがなぜなのかもわからずに――。
シリーズ三部作連動の番外ショート書き下ろしを追加収録した新装版! 伝説のツンデレラブ「Green Green」も!
(出版社より)

作品情報

作品名
FLOWER(新装版)
著者
木原音瀬 
イラスト
金ひかる 
媒体
小説
出版社
リブレ
レーベル
ビーボーイノベルズ
シリーズ
WEED
発売日
ISBN
9784862631893
4.1

(45)

(25)

萌々

(6)

(9)

中立

(4)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
12
得点
180
評価数
45
平均
4.1 / 5
神率
55.6%

レビュー投稿数12

これはほんとに心をエグられる

WEED→FLOWER→POLLINATIONの3部作の2作目。
この話だけでもすごくきれいにまとまっていますが、やっぱり1作目のWEEDから読むと谷脇の変わりっぷりが分かるので1作目からがオススメです。

冷血医師の谷脇×気弱な医学生の松本。ゲスの谷脇がたまたま目を付けた医学生の松本に無理やり迫って始まる関係から、2人の心がずっとすれ違ったまま話が進んで、何度読み返しても切ないお話でした。

あと本編に関係ない短編が1作入っていて結構面白かったのですが、これが兄弟ものなので「木原先生勘弁して下さい」という気分でした。ほんと重たくてメンタル来る1冊ので翌日予定のない土曜とかに読むのが良いんじゃないでしょうか。

1

クズ下衆というより勘違いオトメ

数々の最低男を輩出してきた木原さんの作品の中でも有名な谷脇を楽しみに読みましたが、人を嫌がらせる訳でもなく(無理やり連れ込んだり酒を飲ませたり浮気しまくったりはします)ベストゲスでは無かったです。表面は良いツラ被って悪態の限りを吐きますが、関係ない人には無害、それどころか外科医のトップです。人が心地よくなる言葉を心を通さずとも選んで囁く、目的の為なら魚(自分の獲物)にエサをやる…彼は時にある種の人間を自分の手で転がす様に操るのは、若干の小気味良さがあります。
そうして落ちてきた松本。流されやすく気弱そうな医大生を手籠にします。
頭脳もテクも囲い込みも上手の谷脇に松本は堕ちてしまいますが、ある行為から本気で谷脇が自分を愛していないと悟り、離れようとします。

どんなに松本が突っぱねても、谷脇は自分が好かれていると信じて疑いません。そのどポジティブさときたら感心するほど。嫌な例えをすると、「この人と付き合っていても彼は私の事がスキ」と勘違いしてしまっている少女のようです。
連絡がなくても自分を諦めたわけではない。
結婚式の知らせ(松本から)がくれば、不倫出来るかもしれない、それもいいかもと思う。
出来婚だと知ると、俺の子(妻も過去手付け済み)を育てたいのかと微笑む。
妻が先立てば、身辺すっきりして俺の元に来られるだろうと思う。
喫茶店に呼び出されれば、よりを戻そうと言われると思って向かう。
…もう、果てしなく夢見がちでポジティブッ!クズで見た目は出来る男の内容がこんな勘違い乙女で、なんだか笑えてきます。

谷脇にとってこのラストは自業自得です。松本には散々な思いをして大変なことばかりの人生だったのが不憫でなりませんが、このオチは短編映画のようなスッキリしつつ鈍い後味が残る絶妙さでした。むしろ監禁して首輪付けてドッグフード食べさせても、車に縛って海に捨てても、木原読者なら許すよ松本。
あとがきでは、このテーマにした曲が「one more time,one more chance」なのだそうです。言わずと知れた名曲で、後悔する資格すら無いような罪深すぎる谷脇。
次のPOLLINATIONに続きます。

1

人として終わってる……だがだからこそ目が離せない

見事に順番を間違えた感半端ないですがこのシリーズ初読みです。


『FLOWER』

表題作の攻め…谷脇は皆様の言う通り人間としてぶっ壊れた攻めでした。
フィクションだからこその大前提で言いますが、ほんと好きなんですよね。
玩具感覚で受けを弄ぶこの手のキャラ…。

顔も良く医師というスペックの高さ…仕事仲間として見せる姿は人当たり良く気遣いもでき…傍から見ればいい男。
でも恋人視点で見る姿は最低最悪。
平気で浮気してその証拠をわざと残し嫉妬する受けに気分を良くしつつも君が一番だと甘く残酷な嘘を吐き散らかす。

谷脇にとって松本(受け)は恋人でもセフレでもないただの魚。
エサを手に自分の気の向くまま泳がせる。
まだ使えるうちは表向き取り繕いつつも松本の大切な母親が死のうが知ったこっちゃない。

そんな谷脇の本性に気付き彼に溺れていた松本の態度は一変します。
松本の女性との結婚やら彼自身の病気…
まさかの連続にようやく目が覚め悔い改めるかと思いきや終盤まで彼の本質は変わらなかったところが彼らしく…甘い展開を一つも残さなかった木原先生にはさすがですとしか言い様がないです。

先生の書くドクズは根本からきちんと腐っているというか(笑)ドクズさが一貫していて好きなんですよね。
生半端な展開で心変わりして自分の間違いに気付き受けに許しを乞い再び結ばれ奇跡で受けの病気も治ってもう二度と離さないからと甘ったるい真実の愛を並び立て喜び震える受けとハッピーセックスエンド…なんてことにならないじゃないですか。

いやしかし松本くんに関してはもう…辛みしかない。
これ絶対彼視点きたら心潰れる…と思いきや書き下ろしでグサリときました。
捨てられそうになった飴…それに自分を重ねるそんな彼の幸せはもう永遠に戻らないんだ…。



『Green Green』

いやぁ、好きでしたねこの兄弟。
これまたお兄ちゃんが難ありなキャラしてますが快感に溺れ好きという言葉に酔いしれ弟を手放せなくなる…。

結婚して子どもができて…家庭をもつという理想的で完璧な未来予想図をぶち壊しても禁断ともいえる兄弟同士で愛を育む。
もう彼なしで生きていく自分のビジョンが見えなくなる…ってゾクゾクきますよね。

だからといってモノの見方や自己中さが一気に変わることもなく…
弟が一生懸命作る弁当を捨てていた事実には驚きました。
頼んでいないのにむこうが勝手にやってること。昼はお腹が空かないからこっちも勝手に捨てる…。
でも頑張りを伝え弁当の感想を聞く弟に心が軋み少しは食べるようになる…。

恋人になっても全体的に甘ったるくなることはまずない…それでも少しずつだが確実に変わってはいく。
弟のことを好きだと繰り返す兄にグッときました。


『WEED』も早く読みたいです。

1

永遠に失くしてしまった花

「WEED」で登場した医師・谷脇が主人公です。性悪な鬼男が最後に見せる涙に、愛の不条理さと切なさを感じました。

外科医の谷脇は気弱そうな男子医学生・松本を弄びます。まんまと松本の体と心を手に入れますが、しょせんは遊び。傷ついた松本は谷脇の元を去りますが、谷脇は松本が心底自分に惚れていると疑わず、結婚して間もなく松本の妻が死んだときも、松本を挑発します。しかし、病に侵された松本は突然この世を去ります。すぐに忘れるだろう、そう思っていたのに、気づけば谷脇は雑踏の中に松本の面影を探すことをやめられず…。

「WEED」で、谷脇が悪友・若宮の恋人を揶揄したセリフを思い出しました。「お前にはあいつが綺麗な『お花』に見えるんだろう。俺にとっちゃただの雑草だけどな」。谷脇は、松本のことも雑草程度に思っていたふしがあるのですが、死後何か月もたって、愛していたと気づくのです。本当は大切な花だったと。なんという皮肉。タイトルの「FLOWER」は、松本のことなのでしょうね。作品中、花が出てくるのはただ一度。松本の家の荒れた庭に咲く薄紅色のコスモス。ありふれた可愛い花が、松本の人柄そのものを暗示しているようです。

松本がどれだけ自分にとって大切な存在だったか。死後、谷脇がそのことに気付き始める描写が、衝撃的です。谷脇が何気なく持ち歩いていた松本の小さな遺骨。看護師の「先生それ何、貝殻?」の言葉に、谷脇は、自分にとってのみ、そのかけらが意味を持つことに気付くのです。形見とは、そういうもの。そこにまつわる思いがあるから手元に置きたくなる。そんな当たり前のことに、松本の死後、何か月もたって気づくなんて。
松本の温かい体を抱いていたときは分からなかったことを、死後小さな骨のかけらが突きつけます。なぜ、生きているとき愛は伝わらなかったのか。不条理だと思いました。愛という形のないものを、たまらなく切なく感じました。

「WEED~one day~」は、初詣に行く若宮と岡田の話。わずか4頁の短編に、萌えがギュッと詰まっていました。谷脇にも岡田のような優しい恋人ができるといいなと願わずにはいられませんでした。

「Green Green」は、表題作とは関係のない、ツンデレ兄と体育会系弟の近親相姦もの。可笑しく甘いのですが、表題作とのギャップが大きくて戸惑ってしまいました。同時収録されたのは、お口直しの意味なのかな。

書下ろしの「Passed by~scene2」は、生前の松本の想いを描いた短編。谷脇に愛されていないのは分かっているけれど、いつか…。表題作は谷脇視点でしたので、松本の想いを知って表題作を読み直すと、さらに切なさが増します。作者様の追い打ちにやられた感があります。

前巻同様、書下ろしに登場する人物たちは、谷脇、若宮の恋人たちなのだそう。とすると、今回の自閉症の少年は…。次巻も谷脇のお話とのこと。優しい展開でないことは予想できますが、読まずにはいられません。

8

兄弟モノがとても良い

シリーズ三部作の第二作。第一作で脇役だった医師・谷脇と医大生である朗のお話です。本を読むとき事前にできるだけ情報を仕入れずに読む私ですが、第一作の書き下ろしで出てきた医大生が朗だったことはすぐ分かってしまって「ああ…死ぬのね…」と構えてしまい、萌えより哀しみの気持ちのほうが強くてしょんぼりしながら読みました。

加えて、谷脇がもうどうしようもないクズで、しかも第三作まで読んでも何故この男がこんなにもクズなのか何の説明もなければ相応の報いもないので、ただただ谷脇という男が不快でした。朗は…すごくシンプルに、可哀想でした。まあそんなわけで表題作だけなら評価は「中立」です。

同時収録の「Green Green」「SWEET」はシリーズとは接点のない兄弟モノ。これがとても良かったので★1つプラスです。出来が良くて高飛車な兄・善彦と、彼に長年コンプレックスを抱いてきた平凡な弟・雅也。事故みたいにしてしまったキスを切欠に、雅也は善彦から性処理と称したセックスの真似事をするバイトを持ちかけられます。あり得ない…と思いつつ1年以上そのバイトを続けるうち、二人はそれぞれ特別な感情を抱くようになり――…というお話です。善彦のツンデレぶりがもう非常に可愛らしくてですね!!!兄弟モノでインモラルなはずですが谷脇がクズすぎるせいで(おかげで)、元気で相思相愛ならそれでいいじゃないか!と思えたので気になりませんでした。

3

痛すぎて中々読み返せない

裸ん坊3部作2作目。
前作でも大概でしたが、今作ではもうフルスロットル。
敷き詰められた地雷をいかに避けながら走破するかというデスレースもかくや、なお話です。
木原作品で嫌いな攻を三人挙げなさいと言われたら、迷わず飛び出す

谷脇、甲斐谷、寛末!!

そんな谷脇が主役の2作目。ムカムカ度は相当です。
人として色々と終わってる男ですが、適当にみつけた松本を酒で潰してレイプし、それだけでは飽きたらず偽りの告白をし、弄ぶだけ弄び、浮気はわざとのし放題。

この時点でもう色々とあり得ないんですが、松本が○んでもこの男は薄情でした。
けれどその薄情が、読んでて何だか途中から哀れになってきます。
そうやって、読者が可哀想な人を見る目で谷脇を見始めた頃になって、漸く谷脇は自分の恋心に気づくという愚かっぷり。
いやぁ……ここまで徹底した愚か者だと、余計に松本が可哀想に思えてくる。
とんでもない鬼畜、といえばこの男だと思います。

書き下ろしは松本視点でした。
次巻の主人公、祐哉とのエピソードで、これがまたせつなくて堪らなかった……。

2

相変わらず鬼畜谷脇

裸んぼシリーズ2作目。
今作も、酔って意識の無い医学生を犯すという鬼畜スタートなお話でした。
単純で純情な受けは、主人公の手管にまんまと引っ掛かって手の内に堕ち
人でなしの主人公が演じる虚構の姿に溺れて行きます。

主人公が受けを含む遊び相手を、
釣った後水槽で飼っている魚に喩える描写が秀逸でした。
主人公にとって身体を重ねる相手は、無聊を慰めるペットか
ゲーム感覚で気持ちを操って楽しむ人以下の存在なんだと実感します。
(主人公が、人として存在を認めてる人間はほぼゼロですが)

主人公はどれだけ愛されても受けを愛し返すことはなく
刺激欲しさに浮気を繰り返して、それを受けに仄めかしたり・・・。
さらには、同意も得ずに受けを含む3Pを強行して、
とうとう受けの方から関係を絶たれます。
(しかし主人公は全く凝りません。)

その後、受けは主人公を完全に拒絶し
二人の人生は交わる事無く、受けは夭逝します。
しかし主人公は、受けが最後まで自分を愛していた事を人づてに知り、
死んだはずの受けの面影を追ってしまう無意識の行動を繰り返すうち
ようやく自分の気持ちに気付き、人目もはばからず涙して、話は終わります。

見事なバッドエンドで、読んでいて痛さが気持ちいいw
受けが気の毒なのはもちろん、主人公も哀れな男です。

「WEED 〜one day〜」
短いですが「WEED」の若宮と岡田のお正月SSも収録されています。
この二人が大好きなので、甘やかな話に安心しました。
・・・横ですが「FLOWER」の中で、谷脇に脅されて
若宮が岡田とのセックスを覗かせる場面があります。
若宮が抱く側だと思っていた谷脇は、
岡田に抱かれて喘ぐ若宮に驚きます。
谷脇は無自覚ながら若宮の事が好きらしいので、
この二人の甘々エッチを見せつけられるなんて
複雑な心境だろうな〜と想像すると、すごく楽しいww

「Green Green」「SWEET」
分量的に約半分を占める同時収録作品は実兄弟もの。
最初は実兄弟なんて・・・と、引いてたのですが、読んでるうちに、
まぁいいか・・・(*゚ー゚)トオイメ
となし崩しにインモラルを許容させられてました。。
お兄さんのツンデレっぷりが可愛いくて、萌えます (〃∇〃)
これで6歳も年上なんて詐欺だろww

「Passed by 〜scene 2」
書き下ろしSSは「FLOWER」の受け松本視点。
谷脇に浮気されて気持ちを踏みにじられ、
愛されていない事に気付いても、
なお谷脇から離れられない苦しい気持ちが、
諦観と共に淡々と語られます。
この後に起きる結末を知ってるだけに悲しい。。

6

木原作品の中で最も愚かな人間登場

私が今まで読んできた作品の中で史上最悪に愚かな男・谷脇が登場します。前作「WEED」でも最悪っぷりを発揮していましたがこの「FLOWER」でも全快です。

谷脇は自分が楽しむためだったら他人の気持ちや想いを平気で弄ぶことが出来る男。今作で谷脇の餌食になった人物は成績優秀で将来を期待される優しい医師・松本である。
酔った事を狙って松本を強姦します。松本は酔いのため覚えていませんが、その後宮脇の嘘と脅迫めいた発言のため関係を続けていくとになります。
谷脇は自分の従順な松本を面白い玩具として扱う一方、他人から初めて『好き』だと言われた松本は最初は忌避しながらも谷脇の偽りの優しさに触れ惹かれていきます。

谷脇は松本との関係に飽きを感じ他の女と関係を持ったり、嫌がる松本に3P強要したり平気で行うんですよ。本当に自分が楽しむことしか考えていない、谷脇に道徳なんてものは存在していません。
松本は谷脇の浮気、嘘の言葉すべて気づいていても好きだから関係を断つことができない、想い続けるその姿に涙しました。

最終的に関係を断ったのは松本なわけですがその頃には心身ともにズタズタな状態。後に松本に病魔が襲います。
谷脇と関係を断ってから心がない感情を見せないようになった松本。もちろん谷脇の声にも反応しないようになる。いざ死ぬとなった時の松本の涙に私も一緒になって泣いたな…最後の最後に好きな相手に『好き』って言えない、最後の最後まで傷ついた松本の姿は見るに忍びなくて苦しかったです。

ラストの谷脇の描写はなんとも言えないな。不憫だけどそれ異常に愚かだなって思ってしまった。

「 Green Green 」は「FLOWER」とは打って変わってすごく甘いお話です。兄弟の近親ものです。「FLOWER」での苦しさを払拭してくれる作品でした。これがあって少し救われた感じがあります。

5

Green Green好きです。

表題作はあまり好みじゃないんですが(最後が…。)、同時収録の短編「Green Green」近親相姦兄弟物が雑誌掲載時からとにかく萌々で(金ひかるさんの挿絵もまた素晴らしい。)。掲載時はもう少し淡々とした描写だったような気がするんですが(語り過ぎないところが想像力をかきたてられてより良かったような。)。コンプレックスは感じるんだけど存在は無視みたいなね。兄弟の関係がほんとリアル。それが何と!恋愛に発展してしまうという離れ技。一本!!!

3

いつでも探している、君の姿を

木原音瀬のファンを自負する私だが、植物三部作の中でもっとも
好きな作品がこの『FLOWER』 だ。 手持ちのBL小説の中でも、
何度も読み返した数少ない作品ではあるがしかし、
決してひとにはすすめられない。 というのも、
攻め・谷脇の鬼畜にも悖る所業の数々に立腹される方も
多いのではないかと思うからだ。 私自身は、遊びと称して
嫌がる松本に3Pを強要した場面には、流石にドン引きした覚えがある。
BLにおける鬼畜は、いまや飽和状態を呈しているが、
谷脇はそんじょそこらの愛あるキチク攻めと一味違って、
ホントに人間として一番大事な部分が壊れているとしか思えない。
でも、そういう男が恋をして、もしかしたら生まれ変われるかも
しれなかったのに、その前に恋が死産してしまうという、ほとんど
寓話めいたストーリー。 ラストシーンが切ない。
谷脇は自業自得といえど、松本はなぁ…。
続刊で、自閉症の少年の中に失った恋人の面影を見出そうとする
谷脇の慟哭が耳に残る。 続刊と合わせて読む方が後味は良いかも?
単品でも、個人的には『WEED』よりも読みやすかった。

5

これは伏線

「WEED」に続く裸ん坊シリーズ2冊目。
前回サブで登場した谷脇伸一が本作の主役となる。
何と言うかまあ、冒頭から相変わらずの最低男ぶりであった。
それはもういっそ清々しいほどに。

セフレだった若宮に恋人ができ、相手にされなくなり退屈になった谷脇は、今度は何でも言う事を聞きそうな医大生・松本朗を飼いならそうと画策し、酔い潰した上で強姦(またか・・・)。
松本本人には「君が誘ったから」と嘘をつき、まずはまんまと取り込みに成功する。
もちろん谷脇は松本の事を都合の良い暇潰しくらいにしか思ってなかったわけだが、逆に松本は谷脇に惚れていくところが何とも気の毒だった。
しかし半年ほど過ぎると谷脇は同じ医局の女医と浮気を繰り返し、嫉妬することに疲れ果てた松本に別れを告げられてしまう。

・・・と、まあここまでは、予想できうる展開だ。
普通のBLなら、この後いろいろあるけれど2人は結ばれて幸せに・・・の展開なんだろうが、木原ストーリーにそんな甘っちょろいものはなかった。
この先からは無茶苦茶だ。
松本とその女医は結婚したのだが、身ごもったまま病死してしまい、もちろん子供も駄目になってしまう。
しかしその子供は、実は谷脇の子だったという展開!
思いもよらぬ事実に谷脇が混乱している内に、今度は松本が癌に侵され死が近い事を知らされてしまう。
本人の希望で谷脇が執刀医になるのだが、ほどなく松本は帰らぬ人になり、失意の底で谷脇は自分が松本を本気で欲していた事を初めて知る・・・・・・。

何とも救いようのないお話だ。
しかし全て読み終わった後に前作の「WEED」の時と同様、また釈然としない気持ちでモヤンモヤンとしていた。
ストーリー云々の前に、なぜ谷脇がこんなに人の気持ちを軽視したり、弄んだりする傾向があるのか、ということだ。
こういう性質の人間を物語の中に放り込む事は確かに面白みはあるが、谷脇のようにバックグラウンドがあまりに希薄だと、ただひどい男のひどい結末を読んだ、という想いにしかなれない。
ラストシーンには言葉に尽くせぬ想いがあるのだろうが、それを言い尽くすのが物語の役割だと、私は思う。
しかし次作の「POLLINATION」はそんな谷脇の続きを描いた物語なので、またどうしようもない人でなしぶりを発揮してくれるんだろうが、それでも今とは違う谷脇になって行く様を見せてくれそうな気もしている。
「FLOWER」は「POLLINATION」の伏線としての位置づけなのかもしれない。
以上の理由で個人的にはこの物語だけではなんのカタルシスも得られなかったため、大好きな木原作品だが評価は「中立」とした。
もし木原音瀬を読んだことのない方に1冊薦めるのであれば、私は本作はセレクトしない。
そういう意味での評価でもある。

5

最低男谷脇に学ぶもの

鬼畜谷脇その1です(笑)
その1はWEEDかな?
でもあれは若宮メインだし、あれがないと二人は会えなかったと岡田も言っているのでまぁよしとして、この「FLOWER」を最後まであんな形で進めて終わらせた木原さんに拍手、と言うか脱帽。
勇気あるな。
しかも商業誌で。
これは同人でも勇気いるんじゃないのかなぁ。

もしも実際にこんなやつが居たら、知っていたら許せないですよ絶対に!!
でもこれはファンタジーだから。
ある意味読んでて面白いんですよ。
人間てここまで残酷になれるんだ、とか。
ここまで卑屈になっちゃうんだ……うん、わかる。とか。
いろいろ人間てものを考えちゃう。
そして必ずそれは自分に返って来ちゃうんだなぁとか、居なくなってわかるって言うのはほんとに本当なんだろうなぁとか、痛いほどわかっちゃう。
実体験しないで納得してしまうと言うことは、ひとつ自分が経験しないで学べたわけで、大切な人は本当に大事にしようと再確認。
反面教師になる……そう思うと最高にいい本です(笑)

そう思える人には是非お勧め。
人間関係に疲れちゃってる人にも、逆にお勧め。
殺伐としていながら、自分が人間に帰れる気がする。
痛いって思うのは自分が優しいからだと思うよ。

でもただ痛いだけじゃない、そこに小さくても明日が見える。
そこが木原さんの作品を好きな理由かな。

7

この作品が収納されている本棚

マンスリーレビューランキング(小説)一覧を見る>>

PAGE TOP