イラスト入り
優秀な外科医(谷脇)と自閉症の高校生(佑哉)
三部作の3作め。
電子版購入を機に数年ぶりの再読。3冊の中で一番好き。これほど「割れ鍋に綴じ蓋」という言葉がしっくりくるカップルはあまり居ないと思う。
しかし初手が最低なのは谷脇のお家芸なのか…
谷脇が佑哉にしたこと…性知識のない者に自分に都合よく歪めた情報を植え付けたり、下心を持って保護者を買って出たり、果ては眠らせてコトに…等々は本来許されていいことじゃない。
正直読んでいて引いたし、あの涙はなんだったのか、何も変わっていないじゃないかと幻滅した。
読者の中には、ここで読むのを止めてしまう人も居るのではないかと懸念する。(そういう人も、できれば最後まで読んで、それから判定をしてほしいと思う)
何も変わっていないと思えた谷脇も、よくよく読めば亡くなった松本への想いが暴走してしまったのが見てとれる。
以前の、情を理解しない谷脇ではこうはならなかったろう。彼も少しだけ変わったということか。(それにしたって何の関係もない佑哉を巻き込むなよとは思う)
どうなることかと思った共同生活も、谷脇の順応力が高くてうまく回っていたのは意外だった。
そしてもっと意外だったのは佑哉の反応。
行為を受け入れたのもそうだけど、拒むに至った過程も…
以前は愛情を向けなかったが故に失った谷脇が、今度は愛情を向けたことで拒まれる…すごい皮肉だなと思った。
数年後の佑哉視点は、とても興味深く読んだ。理解し難かった行動も、彼にとってはちゃんと理由や理屈があるのだとわかる。
こう言ったら不謹慎かもしれないけど、佑哉と谷脇はよく似ていると思う。相手の気持ちを理解せずに、中身のない上っ面の反応で取り繕うところとか…。鬼と小鬼かと…
大学の友人、吉村と加藤の対比も面白かった。
吉村の独りよがりの末の爆発は、あちゃ~という感じだけどとても人間味があるなとも。この若さで自身の中の偽善に気付けたのだとしたら彼にとっては良かったと思う。
加藤はおそらく本作の中で一番情を理解している人物。真面目さと人間性は比例しないのだな…。どうか悪い道に引き込まれませんように。
その後、ほんのチラっとだけど3人で仲良くやっている様子が窺えたのでよかった。互いに良い影響を及ぼし合えるといい。
谷脇体調不良のエピソードは、佑哉の現実をまざまざと見せられて苦しかったけれども、
谷脇の誰よりもゆったりと構えた態度を見ていたら、大丈夫な気がしてきた。少なくとも、谷脇から見限ることはないだろうし、佑哉に見返りを求めてぶつかることもないだろう。
それが佑哉にとってどれほど有難いことか…本人たちに自覚はないかもしれないけど。
巻末の繋がる短編。
在りし日の松本の行動が、佑哉の中で「よいこと」として根づいていたり、岡田を経由して巡りめぐって谷脇に届いたり……亡くなっても残っているものがあることに救われる。
アルバムのエピソードは、とても印象深い。佑哉の言ったことは真理だと思う。
最後の最後、砂漠の中で光るものを見た気がした。探しものを見つけられる日は、そう遠くないのかもしれない。
読んだのは図書館に蔵書されていた旧版です。だからpassed〜が読めてません。
さらに、三部作の最後を先に読んでしまったって言う悲しい出来事。
後書きを読むまで気が付いてませんでした。なのでこれだけ読んでも違和感はありません。
で、、、何ですか、これはBoysのLoveなんですか?!
Loveが無い(実際にはあるんだと思うが)んですよ。攻めは良く出てくるタイプの誠実じゃ無い医者。受けは意思疎通をしにくいけど、ちゃんと生活できるレベルの自閉症の子。ひょんなことから、攻めの治療を受けて…なのですが、もう恋愛小説じゃ無いですよね。さすが木原音瀬さん、って。
途中に出てくる吉村なんかは典型的な偽善者だし。最初はもしや吉村と他にわきが取り合うのか?とか思いましたけど、そんな型にハマったものじゃなかった。コイツもイケてないクソ野郎だった(爆)
金髪の加藤の方がフラットに物事を見られるいい奴じゃ無いか。
しかし、谷脇の改心?が佑也の力だとしたらすごい。彼がこれから見えない感情を理解して言葉にできる時がやって来るのかな。
二人の間にあるものが愛情だと良いのに。。。
木原さんの作品って、その後、のお話がとても良いので、やはり新装版を手に入れるべきか…と思ったのでした。
WEED→FLOWER→POLLINATIONの3作目です。
常識で考えたら「こんな作品出版して大丈夫なの?」と思ってしまうようなハラハラする描写が多々ありますが、そこは木原マジックですんなり受け入れられちゃいます。
最初のWEEDではゲスかった谷脇が作品を通してだんだん本当の愛に目覚めPOLLINATIONの後半には溺愛攻めに覚醒。感動しました。
木原先生はエロくて魅力的なキャラを書くのが本当に上手いなと思います。
「これをすれば『思いやり』と『優しさ』がわかるのです」
3部作の3冊目。自閉症を木原さんがどう描かれるのか。そして相手が鬼畜谷脇!3つの中で私が一番気になっていたのはこのお話でした。
3冊どれから読んだら良いのか迷っている方がいらっしゃれば僭越ながら参考までに。(ネタバレを含みますが) 私は②③①で読みました。
クズの医者2人が3冊共通の登場人物で、お話自体は1冊完結です。
①WEEDから…これだけ若宮メイン、谷脇と3P強姦した被害者との恋。中盤乙女で後味はエモめ!
②FLOWERから…谷脇メインのお話。医大生との恋 ①の若宮岡田cpも少し出ますが説明があるので、若干愛着は沸きづらいですが話としては問題ないです。
③今作からであれば、②で恋人が亡くなるまで谷脇は散々酷いことをして大切さを実感できなかったこと、外科一の腕を持っていることを知っていれば大丈夫です。
谷脇の心の声や企みは笑える程クズで清々しく笑っちゃいます。思う存分抱けると思って上手いこと周りを丸め込み、外科処置した少年佑哉をマンションに引き取ります。何も知らない少年を地位ある男が囲うBLかと思いきや、谷脇と一緒に自閉症とはなんて厄介なんだと思い知らされます。
本編後の佑哉視点である「NEED」で更に、自閉症とはなんと生き辛く、彼らにとって自然なことが他の人に理解されないかが描かれています。悪気がなくとも理解できない人が去っていく。
谷脇のことを佑哉がどう思うか聞かれた時の答えには笑っちゃいました。
佑哉と暮らし、人らしい側面が生まれてくる谷脇の成長?に、読む側はほんの少し感動します。
谷脇にも人の心が宿ったかと思いきや、佑哉の大学の友人吉村に性的搾取を指摘され、勘違いだと大人の男らしく軽くあしらいます。その後の帰り際のゲス顔ときたら…!!(挿絵あり) 最高でカタルシスを感じるほどでした。なんて魅力的なクズキャラなんでしょう。
そしてもう1人の魅力的なキャラクター、“金色”と呼ばれる加藤。彼はドラッグもするし勉強しない若者ですが、佑哉に金髪を気に入られ交流を持ちます。金髪にオレンジ色や黄緑色の服を合わせるのなんて良い趣味です。絶対可愛い。
自閉症について知らなくとも色んな友達のいる加藤は殆ど先入観も差別もなく佑哉に接し、時に諭してくれます。彼との会話がこの小説の中でキーになっていて、彼との出会いがなければこの美しいラストにはなりませんでした。彼がいれば佑哉は心の成長(それは普通と言われる人側の差別的な意味ではなく、人として)が出来る、思った事を口にして議論出来る。人として認めてくれる人です。
また谷脇にとっては佑哉との出会いが、今までにない人らしい部分を生み出したと考えれば、この本は二つの出会いが人を変えていくことを描いていると言えるのではないでしょうか。
「やっぱ、イイよ。アルジェ・ガリのコート着てゴミ集めなんてすんの、世界中でもお前だけだぜ。」
どうかこのまま交流が続いて、金色くんは谷脇の良きライバルになってほしいものです!
3部作目!
このシリーズではもはやお馴染の谷脇がまたまたメイン攻めです。
1部から群を抜くクズっぷりですが今回も健在で。
自閉症の未成年の男の子に現役医師が手を出しはじめます。
モラルの欠片もあったもんじゃない。
自閉症については深く知らなかったので、色々と驚かされました。
そんな設定の子をBL本の受けにし書ききった木原先生は本当に凄いと思いました。
BL界隈では稀なカップリングではないのでしょうか。
一日で読み終えました。
二人の愛と呼んでもいいのか分からない結び付きから目が離せませんでした。
でもBL本としてしっかり成り立っているとも思える…木原先生らしいマジックです。