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表題作は、耽美風。
冒頭から、主人公は殺害された死人として出来事を語る。
死人の目を通したナビゲート。
斎原胤彦は、父の遺産を相続。
斎原胤彦は、幼少期まで住んだ館を売りに出して、買い手が付いたので久しぶりに館を訪れる。
館には、アルビノの弟が世話役の男と住んでいる。
色素異常で陽に当たれない美貌の弟を含めて館を買いたいという、狒狒爺が購入者。
それを告げると、世話役が怒る
弟の出生には、母の秘密が絡んでいる。・・そして、起きる意外な悲劇。
アルビノの弟は、朝日に当たっただけで火傷を起こす。
いずれ訪れる死を予感させる結末は耽美風。
死人目線で描いた異色、インパクト強い作品だった。
◆番人(表題作)
そ、そこで終わるんだ…という衝撃を与えられながらも、嫌な感触ではなく良い意味で読者に想像の余地を持たせてくれる作品でした。表紙の美しい男・霞に献身的に仕える加納と、霞の兄で好き勝手な言動が目立つ胤彦。でも、胤彦視点なのもあってか、不思議と彼に感情移入してしまうんですよね。あくまで彼目線でしか見れない、加納という男と、加納と霞の関係性。胤彦は明らかに加納を意識していたようだけど、加納が何を考えていたかは最後まで分からない。そしてこれ以上に、2人の関係が進展する機会は永遠に訪れない。加納は胤彦の意識を自分を向けさせ続けられたことに満足していたのでしょうか。想像が膨らみますね。
◆空の裏側
端的に言って、最高でした。レイプシーンのあるBLは多々ありますが、メインの攻めが加害者であることは少ないし、加害者が掘り下げられることも少なければ、主犯ではない従犯が掘り下げられることってほぼないと思うんです。でもこの物語は、レイプの被害者、加害者、加害者に命令されて動いた後輩という関係性になってしまった同じ部活の高校生3人を描いていて、後輩視点なんですよね。あの時なぜ助けられなかったのかという後悔よりも、なぜ命じられるまま犯さなかったのかという思いを抱える保。それは、優しく抱けば、野宮に好印象を与えられたかもしれないという狡い発想でもあり、実に人間臭い感情です。そして、野宮も何の脈絡もなく陽介に犯されたわけではなく、今も陽介に対しては複雑過ぎる想いを抱えている。幸とも不幸とも言えない結末。でも、私には少し希望が見えました。短編でありながら素晴らしい余韻を残してくれた作品です。
◾︎ 斎原(主人),加納(使用人),霞
帯にもなっている「僕の名前は斎原胤彦 つい先刻人生を終えたのだが 取り敢えず その顛末について語ろうと思う」…この始まり方からキャッチーで世界観への引き込み方が強い。濃い。泥沼三角関係。
◾︎空の裏側
昏い快楽…
陽介について深く語らないし、聖と陽介に卒業してからの関係性が一切ないところが好きです。描きたいものに忠実というか残酷というか。
ホチキスで留めてくれとまで書いてあるのが笑ってしまうのですが、うん、商業誌でこれをやったのはすごい。
2007年発表の短編集。
良く言えば耽美。地雷の人にとっては怖い死ネタの物語が多い。
「番人」
視点はなんと死人。のっけから殺人シーンで、死んだ斎原胤彦(さいばらかずひこ)のモノローグで物語が語られます。
登場人物はリアル感は薄く、人里離れた別荘に隔離されているアルビノの弟・霞、弟の世話係の屈強な使用人・加納、暴君の当主・胤彦の3人の密室劇。
胤彦は霞を憎んでいる。
自分を愛してくれなかった母。
なのに身寄りのない少年だった加納には目をかけて…
加納は霞を大切に扱っている。霞は加納を信頼しきっている。
…となれば、邪魔者は胤彦。
そして朝が来て、全てが終わった後。
霞を眩しい日の光の中に微笑みながら誘う加納。光の中では生きられない霞と2人の死の世界へ…
「Show Me Heaven」
面白みのないカタブツがなぜかチャラいホスト系の男と遊園地での1日を過ごすお話。凝り固まった自分が殻を破って…これから2人はどうなるんでしょ〜?
「空の裏側」
大学の先輩が急に事故で亡くなった。その葬式で10年ぶりに会うもう1人の先輩。
自分とその2人の先輩の3人の間には忘れたい過去があった…
この話は底知れず怖い。人の心の中にある本心というものにゾッとする。
先輩の死そのものにも疑惑があるし、残された2人の苦しみは消えず、さらに悲劇が起きる。
その後、手に入れた恋はあの時の傍観の罰なのか…?それが青い空の裏の闇なのか?
「めぐり逢い…COSMO」
この作品の前に注意の但書きがあります。これはそれほどの問題作。
…というより、なぜここに収録⁈という。
宇宙船艦の艦長クラウスが、捕らえた捕虜のアレックスを自室に引き入れる。クラウスの気高さに打たれたアレックスは…
…と2人はそういうコトになるんだけど。何しろモノスゴイんですよ。
何って、クラウスの顔が。
よくぞここまで、という。私は大変面白く読みました。
この1冊の薄暗く怖い感覚が一発でブッ飛んじまいました…
最後の短編に全てを持ってかれました!
この設定他の作品にも似たのがありましたよね?面白かったです。
不細工だらけの艦隊に敵の一味の美形が潜入し捕虜に。
艦長自ら自室に連れ込み世話をする。不細工だけどとても心の美しい艦長。
なのに実は捕虜の作戦で…。しかもその正体は!
タブーもぶっ飛ぶ最後のページでした。楽しかった。
表題作
加納と兄は何を考えていたのか。謎です。そして霞の父親は?
加納は兄をどう思っていたのかな?最後に絶対にしなかったキスをして。
そして加納は日射しの中火傷をさせて霞を連れ出して。あんなに大切にしてたのに。時間がなかったから体を覆う服とか着せなかったの?
余韻を引くお話でした。