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表題作いつか君とはなれ

野村喜一 高校生→大学生
野村次郎 喜一の義父 アパート管理人/人形作家

あらすじ

父ちゃんより大事な人なんて、できるのかな。

出会った頃の次郎は喜一の父親ではなく、アパートの管理人だった。
喜一の母と結婚し家族になって一年、二人きりになって二年。
なんでも話せる友人のような人、たった一人の家族、それから──ずっと一緒にいたい人。
この気持ちがなんなのか、ずっと考えていた。
だけど見てしまった次郎の古いスケッチブックには、物心つく前に亡くなった実父の姿があって……。

…終わったはずの初恋が戻ってきたようだった。
息子×義父 禁断の純愛。

作品情報

作品名
いつか君とはなれ
著者
井上ナヲ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
プランタン出版
レーベル
Cannaコミックス
発売日
電子発売日
ISBN
9784829686867
3.7

(24)

(6)

萌々

(7)

(11)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
10
得点
91
評価数
24
平均
3.7 / 5
神率
25%

レビュー投稿数10

切ない片想い 親子と恋人の境界線

喜一×次郎


井上ナヲ先生の繊細なタッチが光っている。好き。

「息子×義父 禁断の純愛」、
最初は義父との関係が、倫理から外れるかなとちょっと引っかかったけど、
実際に読んでみると、義親子なのに、歪だと思わないし、
むしろ、家族以上、何かがひしひしと感じられ、
2人の細かい感情が本当に切なくて胸がいっぱいになる。
素敵な物語だった。

2人の片想いは胸を打つもので、
喜一の次郎への応えられない想い、
ただ好きで、その葛藤、空回りが切ない。
次郎の初恋に心が痛くなって涙腺崩壊・・・。

さらに、終わり方に脱帽した。
2人の親子と恋人の境界線をしっかりと尊重していて、
読み終わった後も余韻からなかなか抜け出せないくらい。


主人公の高校生の喜一が、小さい頃に父を亡くし、
小学校の時に母と一緒にアパートに引っ越した。
喜一がその頃からアパートの管理人の次郎に懐いていた。
そして、母が次郎と再婚し、間もなく母が亡くなった。
その後からも、
世話好きな性格の喜一が、同じアパートに住んでいて、
不器用な次郎のことを大事な人として世話し続けている。

お互いにずっと大切にして、
一緒に住んでいて、近くて、喜一が次郎の髪を触ったり・・・

愛情についてよく理解していなくて、ついに恋心を目覚めてしまう喜一。
初恋に縋っていて、喜一に駆け寄ろうとする感情を抑える境目に揺れる次郎。
2人の距離感がもどかしい、だけどリアルで、すごく愛おしい。

喜一の世界には、次郎しかいないみたいで、
次郎以外何も見えていないという一途さに心を掴まれる。
学校の女子から好かれていても、全く気に留めない。
同じアパートの住人の愛の生き様も刺さるところで、
それを見て、喜一が小学生の頃から抱いてきた感情が、
家族愛を超えていることに気づいて、その変化に目が離せない。

最初は次郎が何を考えているのかわからないし、
喜一の母との過去や、その関係とか、謎に包まれていて、
だいたい予想できるが、
進むにつれて、次郎の視点もあって、
彼が喜一に対して抱く望みや、
彼の初恋も少しずつ明らかになってくるのが上手い展開だと思う。

自分の好きな人、その人の大事な人まで思う心の強さと優しさが、大変良かったで、
次郎の愛を守るために頑張る姿がほっこりして心に響く。

エロなし。
ただの義親子のお話ではない。
「大事な人のそばにいる、ただそれだけで幸せ」が伝わってくる。

絵の穏やかさから、
2人の心理描写やその変化、
難しい愛情まで丁寧に描いているのが素晴らしい。
こっちまで2人の世界にどっぷり浸かってしまう。
心にしっかりと刻まれる作品でした。



・コミコミ特典8P小冊子
描き下ろし漫画4P:
次郎が中学生の喜一に中華鍋を誕生日プレゼントしたけど、
まだ使いこなせそうにないぐらい重いのに、
成長した喜一が使っているのを見て、次郎は感心している。

8

静かな余白が素敵

幽霊アパートと呼ばれている、少々年季の入ったアパート。
そこで繰り広げられる義理の息子と義理の父親のお話。
決して派手なお話ではないのですが、住民たちとの賑やかな時間と義父との静かな日常の中で、高校生である貴一の揺れ動く心が繊細に描かれていきます。
味のあるタッチで綴られていく日々はどことなく淡々としても見えるのだけれど、独特な間合いと余白をじっくり読みたくなる作品でした。

彼と知り合ったのは、夫を亡くした母と共に幽霊アパートに住み始めた小学生の頃
出逢って数年。3人家族になって1年。2人になって2年。
貴一の中で次郎という、兄のようで「父ちゃん」でもあるその人の存在が次第に大きなものになっていく。
アパートの住人、そして貴一に想いを寄せる同級生との交流を通して「この気持ちは一体なんなのか?」の答えを、てっきり高校生の青さいっぱいに描くのかなと思ったのです。
ところが実際はもっとしっとりとしていて、若者の初恋と共に、義父の忘れられない過去の初恋のエピソードが語られます。
展開的におそらくこうなのだろうなと分かる部分があっても、静けさが漂う切なさに心惹かれてしまいます。
心理描写が丁寧でお互いの気持ちが理解出来るものばかりで、読んでいると胸がツンと痛んでどうしようもなく切なくなってしまうんですよ。

ラスト1ページが本当に素敵です。センスの塊だと思う。
いやあ、この締め方はずるいなあ…読後になにかを想像したくなるような余韻を味わいたい方はぜひ。
大切な人だからこそままならない。複雑な関係を繊細に描いた良作でした。

3

ただ人を好きになっただけ

井上ナヲ先生の久々の新作と聞いて。

先生の作品とのはじめましては「捨て猫の家」でした。
無機質ながらも重く深い愛の形を描いたその世界観に引き込まれ、
読み終えてからもしばらく頭の中に居座って離れなかった記憶があります。

一歩踏み間違えればバッドエンドを彷彿とさせる不安定さと、
繊細な心理描写、そんな井上先生ならではの作風は今作でも健在でした。
少し時間が空いての新作だったので少し緊張しながら読み始めたのですが、
どうやら杞憂のようでした。

死んだ母の再婚相手で義父の次郎に恋をした義息子の喜一。
「ずっと一緒にいたい」と次郎に想いを伝えるも拒絶され…。

親子の一線を越えてはならないと自分の気持ちから目を背ける次郎と
親子であろうと男同士であろうと「ただ人を好きになっただけ」と
自分の気持ちにまっすぐな喜一のすれ違いが切ないのです…。

結婚してもなぜか恋人同士には見えなかった次郎と喜一の母ですが、
次郎視点で二人が結婚に至った経緯が明かされて納得でした。

次郎のことを「ライバル」や「同士」と表現した喜一の母ですが、
それってつまり次郎が自分の夫に密かに寄せていた恋心にも気付いていた、
ということなのですよね?
同じ男を愛した者同士という歪にも見える二人の関係ですが、
同時に二人の絆がそれまで以上にずっと深いものに思えて、
胸がぎゅっと詰まってしまいました。


義理の親子の道ならぬ恋というセンシティブなテーマであるにもかかわらず、
どこか淡々と展開してゆく物語は井上先生らしく、嬉しかったです。

けれど、義理とはいえ親子の恋はどうあがいても禁断。
恋が実っても実らなくても、完全無欠のハッピーエンドなんて難しく、
だからといってメリバだって耐え難い。

そんな私にとって、この緩やかなハッピーエンドは程よく馴染みました。
一応は想いが通じたということで決着はついたけれど、
だからといって突然恋人らしい生々しさを醸し出すでもなく、
だからといってこれまでの歪な親子関係でもなく、
穏やかさと切なさが入り交じったような奇妙な幸福感が湧いてくるのでした。
喜一が言ったようにずっと一緒に、二人で幸せになってほしいな。

1

えちはない。だが、、、

帯に、「息子×義父 禁断の純愛」とあったので、義理関係好きの私には読まずにはいられなかった1冊。


Cannaさんだし、一筋縄ではいかない展開なんだろうなあ、、、なんて思っていたら、スト重視のエモ作品でした。

義理の息子(DK)×人形作家の父。

今は亡き攻めの実父を好きだった受け。

愛する人を失った息子と妻を自らの元へ呼び寄せ、ともに暮らしながら好きだった相手の面影を息子に見てしまう。

やがて籍を入れ、3人は家族に。

しかし妻はほどなくして病で亡くなり、2人家族に。

少しずつ親子関係が歪んでいくのが分かっているのに、受けは終わったはずの初恋が戻ってくるような夢を見てしまい、曖昧なままにしてしまう。

けれど、攻めはアクションを起こして、、、


という感じ。
本編のほとんどが攻めがDKであるからか、キス止まりなんだろうけれど、それでも心の機微が丁寧に描かれているので、満足感はある1冊でした。

これはえちがなくていい。

そう思える作品でした。

ちなみに、コミコミさん限定の8P小冊子の中華鍋のお話は受け視点でしたが、小さい頃から攻めの健気な愛がかわいいと思えるお話でした。



0

なぬ 糖度よりも試練をお求め とな?

11月最後のお楽しみだったんです

作家さまを知ったのは【捨て猫の家】なんとも味のある絵面に派手な演出もエロもないのに妙にハマってしまって そこからアレやコレや一気に読み漁った それが2021年

こんなに早く次作にありつけるなんて ってまぢ浮かれたんですよ
なのに発売日当日が講習会だわ 飲みにいって翌日ひどい二日酔いだわ

据え置いた日数存分に味わってやるッ!


父ひとり 子ひとり
されど 父にあらず 子にあらず

とんでもないものを日々流れていく何気ない日常に潜り込ませるのがお上手で 丁寧に見せられるなんでもない誰かの1日に郷愁すら感じてしまう

友人で たったひとりの家族で 大事なひと
そこにイヤでもプラスされる いつまでも子供じゃいられない


利発そうで物わかりのいい女子高生がいい塩梅で絡んでくれるし アパートの住人たちの抱える思いも重なって 自分を考えるってところがすんごいクローズアップされていくのがさ

そうそうそうッ! 激しいエロより見たかったのはコレッ!
汁まみれの喘ぎ声より読みたいのは こんなたわいない小さな想い
穏やかなお話なのに隠しきれない熱と 劣情はなくともふたりの間に流れる空気と情の虚しさ

絶対ネタバレさせちゃいけないんだろうけど ネタバレせずには語れない
言いたい 言いたいが言ったら負けだッ!


目で追っていれば気づいてしまう誰かの恋 報われない恋の行方

実母と義父の関係わかんねぇよとか この人おんな? おとこ?とか
お話しの途中で不服があっても黙って最後まで読めばわかる ←ちょっと文句いいかけた人

予期せぬ恋の乱立に不覚にも だれの恋 が一番せつないか選手権を開催してしまいそうな

はぁぁぁん すき

正直すんごい地味なお話だと思う 多少の物足りなさもある
けど読んでよかったって絶対思えるお話だと あたしは思う いや思った

あたし如きでは語れない 隠された情とうしろめたさの中で魅かれる恋 望んだことで歪んでいくその関係 
ふたりの視点で余すことなく魅せる想い 思い

ここから始まる ふたりだけの恋

そこのどエロいのに飽きてきちゃった方 重さはあっても読み口やわらかなお話をお求めの方 
迷ってるくらいなら読んでみればいいのにな 

5

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