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表題作春暁

広瀬隆信・深を囲っている秋信の弟・28歳
紗内深・広瀬家の下男の息子・30歳

その他の収録作品

  • 清夏

あらすじ

十歳になった日、広瀬家跡取り・秋信の愛人として囲われた深。
鎖に繋がれ監禁陵辱される日々に少しずつ壊れてゆく深を支えていたのは、秋信の弟・隆信との優しい思い出だけだった。
だが十六年後、隆信は逞しく成長して現れた―肉欲に溺れ母を死に追いやった兄と、深に復讐する為に。
彼は兄から深を奪い、夜ごと憎しみをぶつけるように蹂躙した。
身体は手酷く抱かれながらも、深の心は少年だった頃の隆信の記憶に縋ってしまい…。

作品情報

作品名
春暁
著者
いとう由貴 
イラスト
あさとえいり 
媒体
小説
出版社
笠倉出版社
レーベル
クロスノベルス
発売日
ISBN
9784773099027
3.5

(27)

(7)

萌々

(7)

(9)

中立

(2)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
10
得点
92
評価数
27
平均
3.5 / 5
神率
25.9%

レビュー投稿数10

狂おし~

不憫!不憫すぎる!!
10歳から20年近く囲われ、ほんのひと時の安らぐ時間も奪われて、辛くない、自分は抱き人形と思って過ごし、さらなる追い打ち追い打ちで…

最初は秋信の執着が通じないのがもどかしかったけど、島崎との画策で不器用だから優しくできなかったというか性根の問題だな…と。深の失望を思うと痛すぎました。(木馬には乗って欲しかったところですが!!)伽藍洞になってしまった深が辛くて辛くて…壊れる前に心の奥に閉じこもって、でも隆信への想いが溢れ、虚ろいながらも光を求めるところはめちゃくちゃ耽美!!!壊れかけた時の美しさってたまらないものあります…

深は中性的なところが強いけど、男だから秋信に与えられ、隆信も深も葛藤が強く、男だからより妖艶に感じられ、秋信も隆信も魅入られてしまったのかな。恋心がねじ曲がった隆信に対して、冷静に幼い深が本位だったはずがないことを諭す高梨がいて良かった…

どこにも逃げ場がない深にそのままの心で居させてくれた隆信との幼少期のひと時は唯一の光で支えだったことが切なく、これまでの辛いことも思い違いも熱い想いで、心のままに庇い合う姿の美しいこと!!時代背景も相まって狂おしさに惹きこまれました。

0

健気な深

暗い展開の健気受。
前半の込み入った人間関係のメモ。

紗内 深 :代々広瀬家に仕える奉公人の息子。美貌が災いして10歳から秋信に囲われ幽閉される。自死もできず、所有物として心を殺して生きる。
広瀬秋信 :大店の跡取り息子 秋信の母が、男妾として深を宛がう。
  母  :父の死後、本宅で溢死。
  隆信 :秋信より八歳年下の弟。母の死後、深と兄を恨み失踪。自力で企業し、秋信から家督と深を奪う。
高梨   :孝信の友人、共同経営者。物語中、唯一のまとも。
島崎   :銀行取締役。秋信の逃亡を助け、深を隆信から買う。

自分で生き方を選べない深の、数奇な運命。
ただ深だけ居たらいい、他は不要の秋信。執着が過ぎて、深を苦しめ、深から愛されない哀れな人。
孝信が深と初めて出会った時の紋白蝶の思い出。深への苛立ちが憎しみなのか愛なのか、自分の気持ちがわからない。
最後にやっと高梨に言われて、孝信は自分の気持ちに従って行動する、そして深を救う。
深が、ひたすら耐えてやっと掴めた、あの日のモンシロチョウの夢。

---
★『春暁』 有名な孟浩然の漢詩。
幽閉されて、高窓から覗く外の景色を眺めていた深の心境を当てたんだと思います。

春眠不覚暁 しゅんみんあかつきをおぼえず
処処聞啼鳥 鳥のさえずりが聞こえる
夜来風雨声 夕べは風雨の音がひどかった
花落知多少 花はどれほど散ってしまっただろうか

1

籠の鳥がたどり着く幸せまでの長い道のり

いとうさんお得意のこれでもかと虐げられる不幸でかわいそうな受けが最後にやっと好きな人と結ばれるお話しです。
もともと同人として発表された作品を加筆訂正したものだそうでコピー本らしい設定や展開でした。

大店の跡取り息子である秋信が下男の子で世話係として付いた10歳の少年 深を手篭めにして毎夜行為を強要して壊れていく様が、大雑把に描かれていますがショタとか幼い子へのあれやこれやはあまり好きなシチュエーションではないので入り口のところで萎えてしまいました。

それが弟に見つかり独占欲のあまり15年にわたり鎖で縛り付けられる監禁生活が続きます。

恐るべき秋信の狂気は、深を遠ざけ結婚を強要する実の母を邪魔に思い追い詰め自害すさせてしまうという悲惨な結末を迎えました。
もともと性のはけ口にと深を与えた母親ですから因果応報と言えなくもないのですが、秋信がそこまでするかと気の毒にはなりました。

母親の死後、隆信は家を出て苦労し一から立ち上げた事業を成功させ実家を凌ぐ勢いで大きくさせ、秋信はもともと能力もなく深に溺れて事業をおざなりにした結果傾かせることとなりました。
隆信は秋信から次々を事業を奪い残された家屋敷と深を借金の形として貰い受けることを突き付けた時、秋信は深を道連れに心中を企てるが隆信に止められ欧州に放逐されました。

深はこれでやっと好きな人と結ばれるのか…と思いきや隆信の方もまたけっこう歪んでるんですね。
幼い頃に見た美しい紋白蝶のような人が兄に犯されれている姿に欲情した自分自身が許せなくてそうさせた深を逆恨みしてしまったのです。
兄だけでなく自分までも誘惑するかと毎夜陵辱し挙句に商売相手への接待に男娼として差し出す人形扱いをしてしまうのですから歪み具合は相当なものです。

そこへ、欧州へ放逐された秋信が、知人の銀行家と組んで隆信を破滅させようと密かに帰国します。
いつものように深が接待に出向いた先に銀行家は秋信を同伴し二人から陵辱されとうとう心を壊すことになります。それでも隆信のためにならなんでもしたいからと熱のある体で接待に行こうとする姿には涙を誘われます。
なんという鬼畜な兄弟なんでしょうね。

銀行家に身を差し出すことで隆信を嵌める計画を止めてくれるならと手紙を出すのですが、秋信に軟禁されていた幼少期から学校に行っていなかったせいで拙いひらがなしか書けないところや郵便の発送方法も知らないのが哀れで健気です。
でも、郵便には切手が必要で切手を買うためのお金がいることやそのために着物を担保に質屋でお金を借りるというような知識があったのは驚きでした。

そこでいい仕事するのは隆信の友人で事業の片腕的存在の高梨のです。
隆信を嵌めようとする秋信と銀行家を逆に嵌めて財産も信用も失墜させ今度こそ完全に成功を収めました。
その高梨が冷静に分析して隆信に初恋を自覚させ今もなお思い続けている気持ちを理解させるのです。
10歳の子供がいかに辛い仕打ちを受け、何も分からぬまま監禁生活を強いられていたかを説明するまでそんなことにすら思い至らなかった坊ちゃん育ちの隆信を皮肉る場面は気持ちよかったです。

『清夏』
甘さのない本編に続くの甘い後日談。
深を連れて別荘でのんびり過ごしたいと思った隆信。
別荘で深窓の令嬢のごとくなにもできない深に料理を教えたり普通の暮らしをおしえます。
それからも、失われた年月を取り戻すようにいろんなことを隆信に教えてもらいながら幸せに暮らしていくのでしょうと思わせる素敵な終わり方でした。

お幸せに。

3

惜しい

受けの薄幸さはなかなか良かったのですが、どうしても納得いかなかったのは、秋信でした。

あれほど執着してすべてをすてても、というのがあったからこそ、深の扱いも納得できたのに、隆信にやり返されてからの秋信は納得いきませんでした。それも、再び深を手に入れるためにやむなく、だといいなと期待してたのに、そうでもなかったみたいで。…愛憎渦巻いてはいたんだと思いますが、その辺の詰めの甘さのせいで振られちゃったんでしょうね。
20年も執着してたはずなのに、ちょっとあっけない。ドロドロ腹黒く執着してほしかったです。

もっと秋信が活躍してくれると、面白いお話になったと思うんだけどなぁ。最初の無理心中を遂行したが、命を救われて二人ともに後遺症、とか。秋信が自分で頑張って深を取り戻すべく画策するとか。深に振られた後、あてつけでトラウマ刻み付けて死ぬ、とか。
せっかく現実離れした設定・キャラなので、これでもか!なドラマが欲しかったです。

あと、秋信を振った後の幸せそうな二人にも、ちょっと納得いかず。秋信が不憫すぎる。作者様に、もう少し秋信を可愛がってあげてほしかったです。

0

大正ロマン@いとう由貴センセイ

正直なところ、薄幸の美人が、金持ちに手籠めにされて座敷牢につながれて…
な話って、たぶん、10冊以上は読んでいると思われ。

ちょっと変化球な点は、
兄と弟で魔性の美人を取り合うってあたりか?
展開としては読者裏切りがないので、安心して読めます!
エロスに翻弄されつつも、受けの清らかさが最後まで失われないでいる
というロマンスがよろしいですねえ。
同じ魔性の美人でも、和泉桂先生の「清澗寺家」シリーズに出てくる冬貴とは
真逆のタイプです。
従いまして、兄弟の確執や、ねっとりした人間ドラマとしての迫力は欠きますが、
想い人と最後は一緒になる、というわかりやすさはあるかと。

となると、ディテールそしてベッドシーンの作りこみが気になるわけですが。
濡れ場は、いとうセンセイにしては控えめかなぁ。
手数はそれなりに多いんだが、濃度はそれほど強烈でもなく。
受けの深(しん)に、男性らしさを思わせる描写はほとんどないので、
中性的ないしはやや男の娘よりのキャラ描写に抵抗がない人におすすめです。

1

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