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センチネルバース 水底の虹

sentinel verse minasoko no niji

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表題作センチネルバース 水底の虹

吉積 佑
新米巡査→警察庁特殊部鑑識課、ガイド
中条 蓮
警察庁特殊部鑑識課、センチネル

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

警官の吉積は火災現場で高校の先輩・蓮と七年ぶりに再会する。昔と変わらず美しく飄々とした蓮は、目に見えないはずの火事の手がかりを吉積に伝えて去り、直後に吉積は蓮が所属する特殊部鑑識課に配属された。蓮は感覚が異常に鋭敏な〈センチネル〉で、吉積は彼をサポートする〈ガイド〉に選ばれたのだ。不思議なほど任務に熱心な蓮は、能力向上のため吉積と絆を作るべくセックスしようと言い出し――

作品情報

作品名
センチネルバース 水底の虹
著者
安西リカ 
イラスト
松基羊 
媒体
小説
出版社
心交社
レーベル
ショコラ文庫
発売日
ISBN
9784778136567

ちるちる評価ランキング

39

4.5

(53)

(35)

萌々

(15)

(2)

中立

(1)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
8
得点
242
評価数
53
平均
4.5 / 5
神率
66%

レビュー投稿数8

おもしろくないわけではないのだけれど

安西先生がセンチネルバース?と、いったいどんなお話を書かれるのだろうかとわくわくしながら手に取りました。
結果、おもしろかったかおもしろくなかったかでいうと、決しておもしろくないわけではない。
ただ、物語に没頭するほど惹き込まれたか?と考えると否でしたし、残念ながら萌えたか萌えなかったかでいうと、私はあまり萌えられなかったかなとこちらの評価になりました。

やや自己犠牲的にも思える中条の内面の不安定さや、やっと自分と相性の良いガイドを見つけられた彼の喜びが伝わる心理描写はとても良かった。
まだ情緒が育ちきっていない危うい美人というか、吉積が好きな人になろうと掃除も食事も頑張る中条は健気で愛らしかったです。
そして、そんな彼を文字通り引っ張り上げる吉積のすっきりさっぱりとした性格も非常に好ましいものでした。
中条の苦手な食べ物をなんでもないことのように食べてあげたり、おおらかで何気なくしている行動のひとつひとつがやさしい人です。

ですが、肝心のセンチネルバース設定が少々ふわふわとしているように見えたことや、バディとなる彼らが挑む事件の数々が設定のわりにどれもそこまで派手なものではなかったのが惜しかったです。
中条の口からはぽつぽつとしか語られませんが、幼い頃からあれだけの環境の中で苦しい思いをしてきたというのに、人が多い場所にいても平気なのか?と単純に疑問がわきましたし、努力をして克服したのならどうやって慣れていったのかまで知りたかったなと。
1番残念だったのは2人の恋愛面。ここが大きかった。
中条はともかく、吉積のポリシーがあっさりと流されて覆ってしまい、庇護欲が恋愛感情に変化する図が唐突に思えて、一貫している考え方が好ましかったのにそりゃあないよとがっかり。
放火事件の終盤も盛り上がらず、本来であればもっと胸が切なくなりそうな中条が眠り続ける日々もあっさりと描かれていてすっきりしないまま読み終えて今にいたります。

現代ものなら安西先生!と、新刊が出れば思わず手に取りたくなるほどすごく好きな作家さんなのですが、今回は自分の好みとは異なりました。
時間にも恋愛面にも、もう少し奥行きが欲しかったです。

4

虹のムコウに

先生買いのセンチネルバースに疎い読者です。
特殊設定苦手科目なので、初のバースものでドキドキだったんですけど、わりとスイスイ読めてよかったです。ということは、こちらの分野が大好物の方とかには、もしかして物足りない?のかななんて思ったり。ちょっと懐かしい”サイコメトラー”ってやつとイメージ重なりました。普通の世界線にいる特殊能力あるひと!っていう感じで入門編として(?)読みやすかったです。

で、高校の先輩後輩の警察官ふたりのラブ&連続放火事件の解明。事件のほうは、なんかそうだろうな〜ってうっすら予想できる落ち着く顛末でした。攻め受けのキャラにはそこまでハマらなかったんですけど、今回とても印象的だったのは、センチネルの人生ってとこでした(←ラブじゃないやんけw!)。自己犠牲は過ぎると毒なんだなっていう人生訓を得てしまったw 目的のために攻めさんを必要としていた受けさんが、センチネルであることに全振りだったアイデンティティを、熱い男・吉積によってもたらされる”日常”を通して中条蓮としての個の覚醒w、なんのためでもない、ただ誰かが好きだという恋愛感情の重さと尊み。虹の向こうってゾーン超えたら行ける世界なのかな(切ない)。

別に誰かの役に立つことだけが人生じゃないってゆー…(役立たずでもいいもんね!)しみじみしてしまったのでした。松基羊先生の絵がめちゃいいです。

3

あらっ

ここ最近の安西リカ先生の作品の評価は殆ど神にしてたのですが、今回のセンチネルバースは私の期待していたのとかなり違った物でしたのでこの評価になってしまいました。うーん。

こちらの作品はセンチネルバースの現代物で、しかもセンチネルにしては結構緩い設定なのでセンチネルバースというよりは特殊能力を持った警察物として読めるし、初めての人でもスッと物語の中に入れると思います。

私はそんなに数は読んだ事は無いのですが、ガチガチのセンチネルバースしか読んだ事がなくて、それがまた好みだったのでこちらの作品はなんだかしっくり来なくて何度か戸惑いました。まず、繁華街らしいとこに住んでて人の多い居酒屋に行ってるのにビックリしました。

時代設定は現代物ですがセンチネルバースの研究自体はそんなに進んでなくて、センチネルバースの黎明期のような設定だと思いました。
それ故か事件自体も凄く地味だと思いました。せっかく警官から特殊部鑑識課に移動になってますが、担当する事件も少なくて個人的に追ってる連続放火がメインの事件なので「思ってたのと違う」感が強くて、読んでて途中でこのまま終わるのかしら?と戸惑いました。

そして蓮がゾーンアウトするキッカケになった事件の扱いが雑でした。吉積に疑問を持たせてからの蓮の残像視認でしたが、ちょっと私には???となりました。その結末とか書いてあれはまた違ったと思いました。

それと今回は私的には萌が殆どありませんでした。安西リカ先生の作品は数少ない作家買いしてる作品なんです。なんだか今作はらしくないなぁと思いました。次作に期待したいと思います!

7

より強くなるために求めた相手は

今回は交番巡査と特殊部鑑識課の技能者のお話です。

センチネルの受様にガイド指名された攻様が
受様と公私のパートナーとなるまで。

攻様は友人が大怪我を負った
放火事件の犯人を捕まえたいと警官を志し
地元エリアの管轄区に配属されます。

管轄区には老朽化が進み住民が激減した団地があり
出火通報で先輩巡査と現場に向かいます。

火災には少々敏感な攻様ですが
今回燃えたのは倉庫の放置されていた段ボールのようで
近所の住民により鎮火されていました。

消防への連絡のためにパトカーに戻った攻様が
パトカーを降りた時人の気配を感じて顔をあげると

長袖シャツと白いボトムで素足にビーチサンダルながら
一度見たら忘れられない美貌な男が立っていて
「ひさしぶり」と声をかけられます。
この美貌の主が今回の受様です♪

攻様は一目で受様だとわかりますが
受様は高校で有名だった先輩ながら
口をきいたのは1回だけです。

その際になぜか「警察官になるつもりはない?」と
訊かれた事が心に残っていましたが
まさかの再会に驚いていると

受様は胸ポケットから警察手帳を取り出し
特殊鑑識課の所属を告げて倉庫を起点とした
百メートル四方をスキャニングした後に
「おれのガイドになってくれたら嬉しい」と
去っていくのです。

先輩巡査は
特殊部の技能者は超能力を有するセンチネルで
そのサポート役がガイドであり
相性のいいガイドをスカウトするらしいと言いますが
攻様は半信半疑です。

しかしその2日後、攻様に突然の移動通知が届き!?

センチネルの受様にガイドとして見込まれた攻様の
現代日本を舞台としたセンチネルバースです♪

センチネルバースは特殊能力を活かして
警察や事件に絡むバディモノが多い印象ですが
本作の受様も能力を活かす技能者です。

今回すごいなと思った設定は
センチネルは遺伝性で神経過敏の傾向がみられると
すぐ国家の保護対象となり

物心着いた時から共同施設で生活し
それぞれの資質にあった国家機関で働き
約に立たないセンチネルは生きている意味がないと
受様が思っている事でした。

常識者で健常な強さを持つ攻様を
ガイドにできた受様はより能力を高めるためと
個人的な繋がりを欲します。

受様母は相性の良いガイドを得られなかったことで
力を使い果たして亡くなっていたため
より強い力を欲するのはわからなくもないですが
受様が恋ではなく攻様との繋がりを欲するのが
とても痛かったです。

そんな2人の曖昧で危うい関係性に
攻様の友人が怪我を負った時と
同じような連続失火、放火事件が発生する事で
受様はより捜査にのめりこんでいき
ハラハラ&ドキドキ

連続放火犯の逮捕によって更なる難関に対した攻様が
受様を取り戻すまで楽しく読ませて頂きました。

2

身も心も救われていく救済の物語

安西リカ先生といえば、現代日常ものBLのイメージが強い作家さんの1人。
センチネルバース設定の作品を手掛けたとあっては、読まなきゃっしょ!……ということで購入です^ ^ BLと事件の部分から楽しめるストーリーでした。

センチネルバース自体、小説コミックス合わせて私はまだ数作品くらいしか読んだことなく、ザックリとした知識しかないのですが、事件のあらましや犯人に辿り着いていく真相究明は複雑であるにも関わらずすごく読みやすかったです。
滑らかな文章の読み心地が良く、登場人物たちの相関関係も分かりやすい。読み慣れないジャンルの設定でもスッと入ってくるストーリーのお陰で、物語の世界に没入出来ました。


警察組織に所属するセンチネルとガイドの2人が主人公で、センチネルの中条の能力を吉積がサポートすることによって事件を解決していくストーリー。それと同時に恋愛関係にも発展していく2人の関係が見どころです。
中条のキャラがちょっと変わってて、センチネルという能力を持つが故の特性といいますか弊害なんですが、情緒が育ってないんですよね。空気が読めないとか、倫理観の欠如みたいなところがそう。センチネルの力を最大限に引き出すにはガイドとの"絆"が必要だってことで、中条はいきなり吉積にセックスしようと持ち掛けます。

硬派な吉積はキッパリと断るのですが、中条はどうにか吉積とセックスできないものかと諦めず、ずーっとセックスしたいセックスしたいと考えていて、まあまあしつこいです( ̄▽ ̄;)
一応、中条がセックスにこだわるのに理由もちゃんとあります。ありますが、セックスセックス言いすぎていてビッチかよって途中思ったくらいです(笑)

そんなこともあり、身体から始まる系のセンチネルバースストーリーってことになりますね。結局、セックスしちゃいましたし。
身体の繋がりから2人の絆が深まっていく、そして好きになっていくそんなお話です。
センチネル能力を高めるための手段としてのセックスから始まる恋愛模様は、ストーリー重視というより展開重視みたいなところがあって、もう少し顕著に関係を進めていって欲しかったかな。センチネルとガイドの間にある"絆"というものがチープに見えたのがちょっと残念でした。


事件の解明や中条の身に起きた身体のリスクについては、ハラハラもしたしドキドキもしました。特殊な能力故に国に庇護される対象だけど、愛国心や"役に立つ"ことの精神の植え付けには闇深さを感じるところで、そこんところの読み応えはすごかったです。
中条の中に根付いた使命感は、彼が異常にセックスにこだわっていたこととも関係があり、彼の自己犠牲がベースにあることを知ったときはやるせない気持ちにもなりました。

吉積との出会いによって身も心も救われていくエンディングは感動的でした。彼らの中に生まれた本当の絆を実感できたことに安堵の思いでいっぱいです。

4

この作品が収納されている本棚

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