表題作レモンタルト

あらすじ

「もう、ずっと前から義兄(あに)のことが好きだった」姉は若くして逝った。弟の私は、姉の夫だった義兄と、遺された一軒家でふたり暮らしをしている。会社では無理難題を持ちかける役員のもとで秘密の業務にあたり、私生活でも奇妙な事件ばかり。日増しに募る義兄への思いと、亡き姉への思慕。もどかしい恋の行方と日常にひそむ不思議を、軽やかに紡ぐ連作集。(講談社文庫)


「もう、ずっと前から義兄(あに)のことが好きだった」
ひとつ屋根の下に暮らす義兄と弟。ミステリアスでスウィートな連作短編集

姉は若くして逝った。弟の私は、姉の夫だった義兄と、遺された一軒家でふたり暮らしをしている。会社では無理難題を持ちかける役員のもとで秘密の業務にあたり、私生活でも奇妙な事件ばかり。日増しに募る義兄への思いと、亡き姉への思慕。もどかしい恋の行方と日常にひそむ不思議を、軽やかに紡ぐ連作集。

作品情報

作品名
レモンタルト
著者
長野まゆみ 
媒体
小説
出版社
講談社
レーベル
講談社文庫【非BL】
発売日
4

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萌々

(1)

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中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
1
得点
4
評価数
1
平均
4 / 5
神率
0%

レビュー投稿数1

いろんな種類のモヤモヤを楽しむ

とても不思議なお話。主人公の仕事が特殊で、モブの名前表記がアルファベット一文字だったり、訳の分からない事件によく巻き込まれたり。主人公の義兄への片思いははっきり表明されるが、先が見えないまま終わる。いろんな種類のモヤモヤを楽しむ作品なのかな。

姉の死後も、姉の夫(義兄)と二世帯住宅での生活を続ける主人公。義兄は主人公の男好きな性質を理解してからかっている節があるが、自分への恋心に気付いている素振りは見せない。そのわりにピンチにタイミングよく颯爽と現れるので、ますます惚れさせているのでは?と思わざるを得ない。

主人公はとにかくよく倒れる。襲われたり殴られたり、立ち眩みを起こしたり階段から落ちたり。そのたびに義兄に助けられ、事件は解決したようなしなかったような、曖昧なところに落ち着く。悪事を働いた人間が、最終的にいい目を見ていることにモヤりつつ、ムカついた気持ちは消えているという、妙な読み心地。

連作集として傘が重要なアイテムかと思いきや、そういう感じともちょっと違う。主人公と義兄の関係に注目してみると、付かず離れず、進展も後退もない。

義兄には彼女がいるらしく、主人公の想いに応える気配はない。だが彼女を家に連れてくることはなく、その存在は主人公の目には触れない。義兄にとって主人公はただの義弟の域を超えているとは思う。ただ現実的にどうこうする相手とは別次元で一緒にいる感覚な気がした。

なんとも気持ちの置き所に困る作品。この先の二人を想像してどう捉えるかは、本当に読み手次第、人それぞれだろう。個人的には、どうやっても昇華できない感情を抱え込む作品だと思った。

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