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ヤマシタ先生の短編はいいですね〜。と毎作言ってしまいます。
表題作が好きでした。
女好きのドMがいきすぎてバイになったド変態と口が悪くつい罵ってしまうノーマルがパティシエで同僚という設定だけでもおもしろいのに。
それぞれの言い分がわかるし、なのにわかり合えないもどかしさ。
「二神」の名前はバイだからニがつくんですかね。性癖と感情が別という意味もありそう。そして性癖は神であると作者から言われているよう。
「中頭」は中(ノーマル)で理性的で理解したい人だから頭なのかなと思いました。
ニ神が自分を好きと言いながら罵られ欲情しにきていると感じる中頭わかります。プレイであって恋ではないだろうと感じてしまいますもんね。だからニ神の気持ちを知りたい。
ニ神は本当に中頭が好きだけど、好きになってもらえるわけないからと黒い羽を取ろうとはしない。傷つくことを恐れてできない。
中頭が悲しいのはニ神が言うように相手を傷つけて振るからというより、中頭がニ神のことを理解したいのに心を開いてくれずわかり合えないからだと感じました。
今後、本当に中頭にドSの羽が生えるかも知れない。そうすると2人は性癖でも感情でも理解し合えるのでは。ドSとドMで相性ピッタリ! なんて想像しちゃいました。
悪党の歯
もよかったです。ヤクザBL大好き。片思いでもいいんです。男の片思いは切なくていい。
最後の組長のセリフが男の友情、仁義で泣かせます。
私がBLを読み始めた頃にはまだバリバリBLで活躍されていた先生。あまり長編はないんですよね。意外なことに。まだ持ってる本も少なかったので、何度も読んだ一冊。
◾️ベイビー、ハートに釘
だからといって足田を許せるわけじゃないけどね。当事者目線ではないところから語られるBLが好きですが、こちらは特に姉目線なので絶妙な肩入れがまた良い。
◾️イッツマイチョコレート!
「同期の阪下とねんごろ」ってフレーズだけでも萌えられる。こういう男が突然泣くだけでも萌えられる。そんな"だけ"がいっぱい詰まって、もはや萌の坩堝。
◾️悪党の歯
歯と指が転がったら泣くだろがい。
男から恋愛的な意味で好意をもたれていると分かっているが、"あくまでもその好意を恋愛の意味では受け入れない男"が好きです。BLの世界でくっつかせるためにはノンケは大方"ほだされる"わけですが、そんな世界でそれを断れる男。大変に誠実ではないか。そんな作品を描ける先生は貴重。おそらく編集に同じ趣味の人がいないと難しいのでは。皆んな基本ラブラブハッピーが好きさ。自分もラブラブハッピーよりメリバ優勢になってしまったら、そりゃ違うと思うでしょうし。勝手だけど。
◾️表題
適度に茶化さないと告れないってやつ。
中頭くんはちょっと絆されました。完全には落ちてないけど。夢売るケーキ屋といい、この人相当ピュアよな。
◾️しおさい
これも表題とテーマ近い気がします。六条は中頭君的にピュア。高校生だからより。
◾️FOOL 4 U
結が、この風貌で受だし「いたい」って繰り返すのがマジで可愛いです。バカな感想。
◾️フォトジェニック
◆ベイビー, ハートに釘
ゲイの弟の姉目線で描かれるのが斬新でした。弟の基久が決死の思いで伝えた好意は、報われず。同級生の足田は彼を利用したり、学校ではこっ酷く接したりもする。けれど、足田は完全な悪役というわけではなく、彼も本当は基久に真摯に向き合いたいのだけれど、他の友人の手前、基久と同じゲイや隠キャとして扱われることに怯えているんです。その気持ちも分かるから、何ともやりきれない気持ちになりました。少なくとも基久にはいつでも味方でいてくれる姉がいるから、それが救いになるといいな。
◆イッツ マイ チョコレート
6人兄妹の長男・実。家に帰れば弟妹の世話に明け暮れ、恋人・阪下にも愚痴ってしまうほど。弟妹は何かあれば実に相談できるし、彼を頼れば守ってもらえる。では、実は? 彼は誰に相談できて、誰に守ってもらえるのでしょうか。実の我慢の糸が切れた、怒りの叫びが胸に刺さりました。弟妹を愛していても、やっぱり一番上は辛いですよね。でも、自棄でやったカムアウトも、弟妹は誰もからかったりはせず、それがこの家族の良さだなぁと。今後は少しずつ、周りに甘えられるようになれればいいですね。
◆恋の心に黒い羽(表題作)
ゲイで、好きな相手に罵られたい、手酷く扱われたいという性癖を持つ二神。彼のそれは本心でもあるし、それを淡々と伝えることで、好きな相手に完全な拒絶を受けないための最後の砦でもある。なんだ、単に性欲の対象か、と思えば確かに相手の気は楽になりますよね。でも、生憎中頭はそんな人間ではなくて。純粋に好意を伝えられていたら向き合えたのに、いつまでもドMさをアピールし続ける二神にキレた中頭。拒絶されたくないという二神の気持ちは痛いほど分かるから、もどかしい平行線には目を瞑るしかないのです。最後はしんみりするわけではなく、コミカルに終わってくれたので、その平行線がいつか交わる可能性に賭けたいなと思いました。
ヤマシタトモコ先生作品の中で一番好きかもしれない。
内容は、ヤマシタ作品の特徴ともいえる女性の存在感と、非BLとの境のようなものも多い短編集。
「ベイビー, ハートに釘」
社会人の姉と高校生の弟。親は亡く二人暮らし。
視点は姉。弟は同級生に恋をしているらしい。
保護者面談で学校に行った姉は、弟がホモとからかわれているのを見て…
弟は苦しんでいる。それを見る姉も苦しい。でも、どうやら告白された相手の心にもしっかり釘は刺さっているみたい。
「イッツ マイ チョコレート!」
これ面白ーい。ていうか、私は一人っ子だったんで兄弟が沢山いる家という状況が実感できないんだけど、そういう事なのかーって。あーそれなー、って。
お母さんがのほほんでよかったんだよね、きっと。
「悪党の歯」
でたっ、ヤマシタ女子。
ヤクザの娘で、近々父(組長)がガンで死ぬ事になる。
父の盟友はずっと父に恋してて、父によく似た目をした娘は彼に容赦ない。
ヤマシタ作品によくある、BLそのものじゃなくて、周辺から見せる形式。
「恋の心に黒い羽」
感情と性癖は別の場所にある…
この概念は、新しいような、そうだったのか!というような。
表題作だけあって熱量を感じる。
恋心が芽生えるからそこに黒い羽が生えるのか?それなら好きとM感情は絡まっているのではないの?違うの?
「その火をこえてこい」
三島由紀夫の「潮騒」がBL風味で。なるほど!
でも私の好みより明るすぎて、すぐHになるところが違う〜!って。潮騒ってこうじゃないでしょ!
「FOOL 4 U」
超鈍感で変人な男にずっと片想いして、ハンサムな恋人を失う悲惨。が急転直下、夢中を露わにしていい解放感。
「フォトジェニク」
試しに呼んだデリヘルボーイ。写真と顔が違うし、何より攻める予定だったのに犯られてしまった!という可哀想な話。
巻末は「構想からネームに至る段階でカットしたシーンたち」4作、
「悪党の歯」「FOOL 4 U」の描き下ろし。
そしてカバー下に作者様による作品解説的コメント。
話自体はエロが多いわけでもない、でも周辺から攻めてくる視点、つまりは端から眺める客観性を感じて面白い。もとよりBLそのものが、当事者になりえない男同士の恋愛を壁から、空から、空気になって見る客観性があるわけで、その上に更にもう一段の客観が加わる所が面白いのかなぁと感じる。
短いページでこうも人間を描いているのがすごいと感じました。女性キャラクターも生き生きとしているのがいいですね。面白かった…
・ベイビー、ハートに釘
姉から見た、弟とその友人の話。私は姉と同じ視点に立って、部外者ながらも心苦しくなる気持ちでした。良い…
・イッツマイチョコレート
大家族の長男と、その恋人の話。騒がしい毎日が、とにかく生きている感じで良い…。
・悪党の歯
長年を共にした友人・よく似た親子、その一言で言えない関係性の描き方がかっこいい。セーラー服と機関銃いいよね。
・恋の心に黒い羽根
タイトルからお?シリアスかな?となりつつ扉絵が笑えますが表題背負っているだけあってすごくよいです。
まだ他にも作品あります!一冊でいろんな関係性が摂取できてお得~!おすすめです。