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表題作きみにあげる。

飯沼諒一,28歳,借金取りに追われる青年
白河蓮,お茶屋の主人

同時収録作品きみにあげる。

透綺,腹違いの兄
蓮,元組長

その他の収録作品

  • あらすじ
  • カバー下「新居にて」

あらすじ

ある嵐の日、恋人の裏切りで借金を背負った諒一があてもなくさまよっていると、一軒の茶屋に辿り着いた。独特の雰囲気を持つその茶屋で、店主の若い男・蓮にお茶を差し出され、お茶の温かさと蓮の言葉に忘れかけていた感情が溢れ出す。タダ飯代わりに雑用を手伝いながらの居候生活を送ることになった諒一は、蓮に惹かれる一方で、蓮の抱える過去と境遇を知り、力になりたいと思うが……?
(出版社より)

作品情報

作品名
きみにあげる。
著者
槇えびし 
媒体
漫画(コミック)
出版社
大洋図書
レーベル
ミリオンコミックス CRAFT Series
発売日
ISBN
9784813052340
3.6

(90)

(31)

萌々

(17)

(29)

中立

(8)

趣味じゃない

(5)

レビュー数
30
得点
318
評価数
90
平均
3.6 / 5
神率
34.4%

レビュー投稿数30

じつは隠れた良作

初めて読んだ槇えびし先生の作品です。

借金取りに追われる飯沼 諒一とお茶屋やとりの主人 白河 蓮のお話。

恋人の借金の連帯保証人にされた諒一は、借金取りから逃げていました。
辿り着いた見知らぬ土地は台風の真最中。
この世には自分の居場所なんかないと途方に暮れていた諒一は一軒の茶屋に入ります。
茶屋は独特な空気を纏っており、茶屋の主人も不思議な雰囲気でした。
「あそこの座席を君にあげる。」

最初に感じた印象が良い意味でどんどん塗り替えられていく作品でした。
槙えびし先生は個性的なタッチなので好みはわかれるかも知れませんが、絵柄は綺麗で丁寧です。
また、予想できないストーリー展開で物語に惹き込まれました。

恋人の借金を背負っただけでなく、自分のセクシャルティにより諦めたり逃げたりする諒一。
茶屋の手伝いをする代わりに居候として住むことになります。
一方、現在は茶屋の主人ですが元ヤクザであるが故に近所からは忌み嫌われる生活を送っている蓮。
他人には言えない過去があり、その境遇から動けずにいます。
その2人が出会ったことで、人生の歯車が大きく動き出すのです。
ゆっくりと新しい人生に。

この作品はメインの諒一と蓮はもちろん、他の脇キャラもみんな魅力的でした。
それぞれの立場と性格を最大限に活かしており、物語をさらに盛り立てています。
そして、当て馬と言うべきか迷いますが、義兄の透綺も蓮と対をなしている重要な存在として登場しています。
この透綺の存在が蓮の枷となっていました。
今の自分は透綺の犠牲のもとに成り立っている。
だから、どんなに悪意を向けられてもここにいることが「贖罪」になるかも知れない。

Hシーンはほとんどありませんが、どれも美しく儚いエロさがあります。
それも槙えびし先生の画力なのでしょう。
諒一と蓮が初めて結ばれたシーンは、モノローグのみで言葉も擬音もありませんがとても素敵でした。

人生は辛かったら逃げてもいい。
でも、向き合える時が来たら胸を張れ。
全てを処分して歩き出した蓮には諒一がいる。
一生かけて返してもらう13,000,000円。
先のことなんてわからないけれど、この2人なら大丈夫だと思えます。
ニャンコも一緒で良かった。

個人的には、もっと評価されて欲しい良作です。
ぜひ多くの方に読んでいただきたいです。

1

告白シーンが素敵

槇えびし先生、一般漫画のイメージが、というか天地明察のイメージがとっても強い。
商業BLを読み出したはなに読んだ作品で、久々に読み返しました。絵が安定してます。BLではあまり見ない絵柄。

◾︎表題
諒一を「単なるアホ」(蓮の言葉を借りる)と思ってしまったのが私の敗因。どうも騙されやすいキャラに本気でヒヤヒヤとかガッカリとかしてしまうので、向いていないのです。このアホさ加減に癒される心のゆとりが欲しい。そう思うと蓮はしっかり懐が広い。
フィクション世界は反社と関わりを持つことの危険さを軽視しがちだ。

1話でお茶に一家言あるような雰囲気を出したにも関わらず、蓮がずっと店でタバコ吸ってるのも苦手でした。匂いがさ。

でも蓮から諒一へのこの告白シーンは非常に良い!!!財産も過去も未来も心もカラダも全部…なんて情熱的なセリフ!!それが蓮の口からでたという事実もエモーショナルの極み。

0

壊れ物のような空気感

 メイン2人の出会い方、距離感、正反対な性格なんかがとても素敵な作品だなぁと思いました。恋人に裏切られた挙句借金を肩代わりさせられ、人生に疲れ果てた諒一が1人彷徨い歩いていたところに、1枚のチラシが飛んでくる。書いてあった言葉は「君に座席をあげる おいしいお茶を淹れてあげる」。切羽詰まっていた彼に、唐突に与えられた居場所。この序盤で心を掴まれてしまいました。

 天然で人の悪意に疎くて何でも信じ込んでしまう諒一と、ヤクザの家に生まれ人を疑ったり人から避けられたりするのが当たり前な環境で生きてきた蓮。相容れない2人ですが、諒一の世間知らずさに時折苛つきながらもそれを激しく責めたりはせずに、なんだかんだ時間を共に過ごすことを許している蓮が可愛いんですよね。距離が急激に縮まるわけでもなく、優しく穏やかな時間がゆっくり流れていくような雰囲気でした。

 過去や2人の元恋人・情人も絡んではくるけれど、あくまで2人の関係に集中させてくれます。終盤にかけて起こる波乱ですら、全体の雰囲気を壊すことはできなかったように思います。ボケているようで人の本質を見抜くのに長けている諒一の性格も魅力的です。淡白なトーンではありますが、この繊細な雰囲気を是非実際に読んで味わってみて欲しいですね。槇先生の独特のタッチも細かいところまで見るといろいろ面白くてセンスを感じました。

0

不思議な受け

なかなか独特な絵柄ですね。最初に黒い!と思いました。

諒一が元恋人の借金の連帯保証人になり取立て屋から逃げて逃げてたどり着いたのが蓮のお茶屋さん。

美味しいお茶を頂くもお代を払えず居候兼従業員に。

色々蓮にも深い事情があるのですが、なんというか二人の(律も)展開がいつも唐突で。それが味なんでしょうが???ハテナで。

諒一の借金や元恋人のことは割りと早めにどうでもよくなっていったような。いや蓮の予想通りの連絡はありそれで見捨てるきっかけになったけど。

蓮は町の皆から避けられてそれでも逃げずにお茶屋さんを続けてます。それは罰を受け続けることで。

腹違いの兄に実家のヤクザの組を潰させ親を殺させた贖罪だそうで。
だから夜眠るのが怖いのかな?

いつのまに蓮は諒一を好きに?たまに反応してはいましたがそこまでするほど?と不思議でした。
ど天然だけど真っ直ぐな諒一を必要としてるのかな?諒一といると幸せな時があるって。
兄とは依存はしても幸せではなかったようで、兄は捕まります。

諒一が言ったように二人で町を出ます。店を売って諒一の借金を返して元恋人を殴るよう手配しててくれて。急展開でした。
しかも諒一の実家の近くに新居も決めていたようで。

うーん。くっついて良かったのだけど蓮が諒一にそこまで惚れた要素というか反応がわかりずらくてすっきりしません。

0

モノクロの印象が強い絵柄

寡作の漫画家さんのようで、2010年のこのコミックから現在までにちるちるに登録されている著者は3作品しかありません。うち1冊はNOTBLです。BLで2015年発行の「みずのいろ。」よりこちらの作品の方がストーリーが難解でなく理解しやすいです。「みずのいろ。」で戸惑った方にお勧めです。

過去に関係した男に(ある意味で)振り回される二人が、互いの足りない部分を補い、心を通わせていくという話です。蓮(攻め)の関係でシリアスで重くなりそうな場面に、諒一(受け)が明るくしてくれるので読みやすいです。蓮の義兄・透崎がもっと執着を見せるかと思ったのですが、そうでもなくてちょっと残念でした。

雑誌で5話を読み、気になってコミックを購入しました。その時も、モノクロの印象が強い絵柄だと感じたのですが、コミックで読んでもその印象は変わらず。よく見たらスクリーントーンを余り使用せず、首の陰影などは斜線で表現していました。そのためか、白黒をとても強く感じます。「みずのいろ。」と比較しますと、あちらはもう少しスクリーントーンが使われているので、少し柔らかく見やすい絵柄になっています。あと、表情がとても素敵です。律という長髪男も、オヤジ(元警部)も格好良かったです!

なお、余談ですが5話のラストの白抜きの文字は、雑誌では手書きでした。だからどうだということではないのですが、こういう違いが雑誌購入者にとっては楽しいなと思いました。

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