• 電子書籍【PR】
  • 紙書籍【PR】

表題作春、君を想う

エリートサラリーマン・石嶋賢吾 30代半ば
カフェでバイト・相田沙智 19歳

その他の収録作品

  • 春、それから
  • あとがき

あらすじ

父親のDVが原因で大学進学を諦め、カフェでバイトをしている沙智。ある日、深酒した父親に怪我をさせられた沙智は、バイト先の先輩・尚が恋人と同棲しているマンションに匿ってもらうことに。そこで出会ったのは尚の恋人で賢吾というエリートサラリーマン。一見無愛想な賢吾に沙智はつい構えてしまうが、尚が仕事でいない夜に突然賢吾にキスされてしまい!?
(出版社より)

作品情報

作品名
春、君を想う
著者
小川いら 
イラスト
水名瀬雅良 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
シリーズ
春、君を想う
発売日
ISBN
9784344822023
2.4

(16)

(2)

萌々

(1)

(6)

中立

(0)

趣味じゃない

(7)

レビュー数
2
得点
32
評価数
16
平均
2.4 / 5
神率
12.5%

レビュー投稿数2

超・健気受け

この本には胸が痛くなるものが3つありました。
まず主人公の父親のアルコール依存症によるDV
その父親の立ち直りを信じて大学進学をあきらめ支える健気な主人公。
主人公によくしてくれるバイト先の先輩の恋人が主人公を好きになってしまったことで起きる三角関係と好きになってはいけない恋。
その苦しさが、じわじわ~と押し寄せてきてとっても苦しくなるのですが、BLはハッピーエンドが鉄則の轍ははずさない”皆イイ人”のおかげでその苦しさもむくわれる形でとてもほっとします。
このあまりに健気な主人公と”皆イイ人”がはなにつくと、しらじらしいと思ってしまったかもしれませんが、幸いに多少そう思わなくもなかったですが主人公が幸せになったことが素直に嬉しく思えたので、むしろそれまでの苦しさがけっこう読ませてくれたので、よかったんだと思います。

この主人公・沙智の父親、プライドが高かったためにアル中のDVになる。
でも、とてもよい父親だったこと、そして腐ってはいても本来は真面目で強さがあると信じて、母親は出て行ってしまったけど父親を支えようとするその健気さは、彼の性根がまっすぐで素直でとても優しい人間だということだと思われました。
しかし、一人で頑張っていてもどうしても耐えかねて辛くなる時がある。
極限になってしまった時に助けを求めるのが、先輩の尚しかいなかった。
この尚がとても面倒見の良い人で、
恋人の賢吾と同棲している家に沙智を招いて泊らせてくれて、なにかれと面倒を見てくれる。
この尚の人の良さが災いしたといえば災いだったのですね。
一方、賢吾は沙智の印象だととっつきにくくてちょっと苦手に思う人。
最初にお世話になった時もぶっきらぼうで、迷惑そうで、だから早く出て行かなくちゃって思うんです。
だけど、一緒にいるうちに彼の良いところもみえてくるのですが、その時点では賢吾を恋愛の対象として見るわけではなく、とにかく尚をたてて、よかったね、みたいな気持ちでいたはずなのに・・・
簡単に言えば、賢吾の心変わり。
正確にいえば、賢吾は本当は尚をあいしているわけでもなくて、居心地が良い人で、情はあっても愛はなかったという、結果からすれば、ひどい人なんですよね。
きっと、この人、酷い目にあっても耐えて前向きに一人で何とかしようと頑張っている沙智が放っておけない、どちらかというと守ってあげたいタイプが好みなんでしょうねww
尚と賢吾、同じ優しさでも尚は沙智の意思を尊重した友人的優しさ、賢吾は弱音を吐ける優しさ、それの違いも沙智の想いを賢吾へ傾かせる一因だったと思います。

一番カワイソウだったのは尚かもしれない。
賢吾が本気の愛じゃなかった分いつかは破局だったかもしれないけれど、沙智が現れなければ・・・本当はものすごく恨んでもいいはずなのに恨み切れないというところがとてもかわいそうでした(涙、、)

『春、それから』で、賢吾の本気が見てとれます。
水名瀬さんのイラストも良く合っていて雰囲気にぴったりでした。
久々に胸が苦しくなる話も読めて結構よかったな~v

4

早春に蕾がふくらむ木蓮

カバー絵に描かれている木蓮の花言葉は「自然な愛情」「恩恵」です。

行く手を照らしてくれる篝火のような花の姿と花言葉がこの話を表している気がします。

アルコール依存の父によるDVに我慢して生きてきた沙智に手を差し伸べるバイト先の先輩の尚とその同棲相手の賢吾。
この2人が沙智の行く手を照らすことになります。

作中での『人には自分だけの愛し方があって愛され方がある。どんなに愛情が深くてもその方法が違っていたら心はすれ違ってしまう』という尚の言葉に凝縮されています。

菩薩のような尚と健気な沙智の姿が丁寧に描かれているからこそ許される『好きになってはいけない人』同士の初恋。

尚は愛する賢吾のことを不器用と表現していますがハッキリ言って不誠実(笑)

「尚は強いから一人でも大丈夫だけれど、沙智を一人にしておくことはできない」
いくら最初から納得ずくの関係とはいえ、この発言を真顔で言われて平気な人はいな~い(T∀T)

でも、愛することを知った賢吾は人として、これから大きく変わるんだろうなぁ…と思います。
案の定、巻末の後日談は賢吾目線でベタ甘。

心情が丁寧に描かれているのに沙智の父が迎える転機だけが曖昧かつ急なのが残念。

ともすれば後味の微妙な読後感を抱きそうですが、私の場合は尚の救済愛となる続編の【夏、恋は兆す】を手にしながら読んでいたので『良かったねぇ』とほのぼのとなりました。



2

この作品が収納されている本棚

マンスリーレビューランキング(小説)一覧を見る>>

PAGE TOP