ボタンを押すと即立ち読みできます!
執着の果てを見せてくれる作者様として有名な佐田三季先生作品。意を決して読みました。
噂にたがわず。すごかった。
主人公は人嫌いの大学生・須田。
ある日、大学で隣の席に座った男・寺岡にまじまじと顔を見られ、「俺のこと、覚えてない?」と必死に聞かれる。
しかし、須田は子供の頃の数年間分、記憶が抜けているのだ…
…という設定。
須田は毎日毎日悪夢にうなされており、須田の過去に関するイメージは非常に陰惨で、ホラー的なテイストも感じられる。
須田は他人と馴れ合わず、バイトに明け暮れて疲れ切り、金は足りず。
何度母親に抜けた記憶の事を尋ねても教えてもらえずにイラついている。
そんな時に出会ってどうやら須田の過去を知っているらしい寺岡は、度を越した好意を須田に示してくる。
寺岡に素っ気ない須田と、諦めずに構ってくる寺岡のやり取りはなかなかの緊張感がある。
須田の見る悪夢の断片で過去何があったのかは予想でき、そして実際思った通りの出来事が起きてしまっていたが、その根底には子供の地獄・「いじめ」が大きく横たわっている。
そしてそこには寺岡も関わっていて、すべてを思い出した時に寺岡に復讐心を持つ須田だったが…
この作品は登場人物が男性2人で、友情とその裏切り、罪悪感と表裏一体の強い恋愛感情、存在の不安定さに負けて男の愛のようなものを受け入れてつかの間安らぐ心を抱く須田を描いて確かに「BL」として読めるけれど、消えた過去を探っていくサスペンス的な要素と、何か恐ろしいことを暴くホラー的な要素も大きく感じた。
さて、ラストは須田を好きだ好きだと言い募る寺岡にどうしてもすがってしまう須田の姿で終わり、この後の2人はどう関わっていくんだろう?と思わせたのだが。
続く書き下ろしの「夜が明けたそのあとに」では須田が寺岡にはっきりと「そばにいてほしい、離れていくのは嫌だ」と伝えている。
これは非常に苦痛に満ちた過去に苦しんだ2人に訪れたある種のハッピーエンドで、まあ良かったねという展開なんだろうけれど、2人がどうなったのかわからない、という結末のままの方が良かったのではないか、という気がした。
この結末になった以上、寺岡は一生をかけて須田を包み癒し愛すべき。そう感じる。
けっこう高評価を得ている作品なので、一票くらい「しゅみじゃない」があっても良いよね、という気持ちで、素直な感想を書かせていただきます。
今までに読んだBLのなかで、いちばん胸くそが悪い作品でした。
受けの幼少期に起こった事件とトラウマ。この時点ですんごい気分が悪い。
その事件には攻めも責任があるんです。
とにかく、なんで受けがこの攻めといっしょにいる事を選んだんだ?
いっしょにいなくちゃいけないんだ?
そんな気持ちでいっぱいでした。
受けにはただただ同情し、攻めには(大人になってからの攻めにも)一切魅力を感じませんでした (恋する暴君の森永ですら地雷だからなぁ……受けの事情お構いなしにグイグイくる自分勝手な攻め。しゅみじゃないみたいです)
木原音瀬さんのFRAGILEもまったく「しゅみじゃない」だったので、
私がこういう作風とかストックホルム症候群のような関係性がニガテだ
ということなんだと思います。
佐田さん2作目。
前回がとっても良かったので期待値高すぎたのかも……。
とはいえ、とっても楽しく読むことができました。
トラウマに記憶喪失と、BLでも使い古されたこの設定をどう消化するのかと読み始めたものの、序盤から受の過去について何となく分かってしまう……。
そしてその過去に絡んでくる攻の執着っぷりが怖い。
執着攻とほだされ受を書かせたら、本当に凄い作家さんだと思います。
受が過去にどんな目にあったか知っておきながら、強引に迫るという攻のアホっぷりが、何だか腹が立つといいますか。
受じゃないけどぶん殴りたい衝動に駆られます。
中盤までそんな感じで攻にイライラしてたんですが、後半戦に突入すると立場が逆転。全てを知って記憶を取り戻した受が、攻に対して強請って集って、攻の身ぐるみ剥がしちゃいます笑。
攻ざまぁw
と思いながら最初は読んでたんですが、何だか途中から攻のボロボロっぷりが哀れに……。
な、なにこの感情。
前作でも感じましたが、受の方が被害者であるはずなのに、気がつけばほだされてます。読んでる私もなんかほだされてしまって、畳みかけるようなラストにあれれれれ?と……。
納得いかない展開ながら、奇妙に惹きつける魅力のある作家さんです。
受の過去があまりに痛すぎて、萌があったかというと疑問なんですが、今後に期待して。
私は基本、切ないお話が大好きなのです。でも、この作品は読んでいてとても苦しくなったので、評価を中立にしました。
受けが、かわいそうすぎるんです……
この作品のキーワードは「いじめ」だと思います。この「いじめ」が、酷いんです。作品全体を重苦しいものにしています。
昔にいじめで辛い思いをした分、受けは幸せになっているかと言えば、そうでもない。全体的に理不尽で、現実的な雰囲気の作品だと思います。
酷い攻めは好きなのですが、ここまでくると、罪が大きすぎますね。ただ、その罪を必死で償おうとしているところが、良いところではあると思います。
表題作と、後日談SSが収録されています。メインの表題作は須田(受け)の目線で進み、後日談SSは寺岡(攻め)の目線で進みます。
寝る前にちょっと手にとるつもりが、一気に読み終えてしまい、なんでこんな時間にこんな話を読んだんだ、と読み終えた自分を罵倒したくなった午前2時でした。キツかった…須田の過去が重すぎて、読み終えても心臓がドキドキしたままでした。
ストーリー展開が上手で、あっという間に引き込まれてしまいます。可愛い後輩に、嫌な義姉という対照的な女性陣も登場し、飽きることがありません。
ただ、須田が子供の頃、ホームレスに襲われた過去が、キツかったです。
記憶を失うほど、悪夢にうなされて叫んでしまうほど、十年過ぎても暗闇が怖くなるほどの原因をつくった寺岡。そんな彼を許した、須田の内情をもう少し書いて欲しかったです。やつれながらも健気にお金を作る姿にほだされたというだけでない、何か。須田には自分でもうまく説明できないかもしれないけれど、読み手には分かる。それがもう一押し欲しかったです。須田の過去が重くて、私の中ではバランスが取れませんでした。
後日談SSの「夜が明けたそのあとに」は、表題作のその後から翌朝までの話です。表題作でも感じたのですが、寺岡は、須田の過去への償いよりも、須田が好きなので何でもしたいという気持ちが強い気がしました。そうでないと「許してくれるの?」なんて聞けないと思うのです。だからこそ、須田が不安になるのではないかと勘ぐりました。後日談はもっと日が過ぎた甘い話が良かったです。寺岡は朝を迎えても、須田にはまだ朝になるには時間が足りない気がしました。
寺岡が年を経て、須田が安心して頼れるだけのどっしりとした男になったのではなく、彼は彼で不安定。自分がちゃんと立っていないと、相手に与えることもできないということが分からず、全力を傾けてしまう。
ある意味、不安定同士の若い二人がゆらゆらしながら、お互いの心を伝えていく話です。そういう未熟なカップルが好きな方にはお勧めです。寝る前に読むのは適していません(笑)