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表題作ステノグラフィカ

バツイチの政治部記者 西口諫生 44歳
国会速記者 名波碧 26歳

その他の収録作品

  • アフターグラフィカ
  • ナイトグラフィカ(あとがき)

あらすじ

国会でひっそりと働く碧。がさつで忙しない新聞記者・西口とふとしたことから言葉を交わすようになり、少しずつその素顔に触れて…?

(出版社より)

作品情報

作品名
ステノグラフィカ
著者
一穂ミチ 
イラスト
青石ももこ 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
シリーズ
is in you
発売日
ISBN
9784344825710
4.2

(251)

(139)

萌々

(65)

(28)

中立

(6)

趣味じゃない

(13)

レビュー数
36
得点
1045
評価数
251
平均
4.2 / 5
神率
55.4%

レビュー投稿数36

真逆の二人だからこそ

…どうしてこう、ミチさんの文章は私の心を捉えて離さないのでしょうか…。
どうやって敬意を表して良いのかわかりません。

年の差ラブ、と言ってしまえばそれまでかもしれないんですが、
この度も素晴らしい心情の描写の嵐!!!

大体にして、速記者を主人公にするあたりから凄いですよ!
色々勉強なさったでしょうね…。
頭が下がる思いになってしまいます。
正直、私は頭が悪いので国会や政治の事はちんぷんかんぷんですが、
それなりにわかりやすく説明して下さっていますし、
やっぱり(当然でしょうけど)様々な人の感情が行き交う場所なんだなぁと。

誰にも気に留められず、ひっそりとただ毎日職務を遂行していて、
家事一般をそつなくこなし、
感情の起伏にも恋愛にも縁が無い碧。

反対に、誰にも愛想が良く、
下ネタを他人と話しても下品さを感じさせず、
若者を盛り上げつつ、仕事にも全力な西口。

碧が西口の声と話し方と食べ方がずっと気になっていたというのも萌で、
話すきっかけになったトラブルで、
西口に庇ってもらったにも関わらず
素直にすぐ感謝の気持ちを伝えられないで悩むところも萌!!
序盤からぐぐぐいぃぃぃと掴まれました。
碧の手作り弁当を奥さんの愛妻弁当と勘違いしてっていうのも
後々引きずるんですが、これがまたいいわけですよw

年上の西口が、大人らしいスマートさを見せたかと思えば
子供みたいな面をさらけ出したりして、
これで好きにならないわけないって!!っていう。
別れた奥さんの事も、同僚の想いを寄せてくれている女性に対しても
西口なりの誠実さで関係していて、
本音を吐露する時にはわざと茶化したり…。
そして、別れた奥さんに仕事でも、人間としても負けたと
敗北感に打ちのめされた過去があり、
それを碧には話してしまいます。
好きすぎる、こんなおっさん!(そんなにおっさんぽくなかったけども)
愛しくてかなわんのです。

碧は近年の若者には滅多にいないような
真面目でまっすぐで…。
いつも、簡単とは言いながら
きっちり食材を使いこなして食事を作る自分が
男として恥ずかしい気がしてくる可愛らしさがいい!
コンプレックスに思う事ないじゃんか!
むしろ凄い事なんだよ、碧!

ちょっとした諍いがありながらも、
助け助けられの種明かしが、とにかくずっしり来ました。
それぞれの人間関係が、二人をそのまま象徴しているようでした。
心が温かくなって、涙ぐんでしまいましたよ。


そんな二人が愛を確かめ合うシーン、
西口がここで少しおやじっぽくて良かったです!
そうこなくちゃーw
頑なな受けが恥じらいながらも感じて乱れていく姿は
これこそBLの醍醐味!!みたいな気さえします。
敬語もいいし♪

『off you go』の佐伯は本当に口が悪くて、
実は私ちょっと苦手なんですけどもw
でも今回は良いスパイスになってくれました。
静はパートナーですごいなというかw
全部込みで愛しているんですけどね。

そしてこのシリーズの挿絵、青石ももこさん、
ミチさんもあとがきでおっしゃっていましたが、
「ちょっと体温の低そうな男の人」がたまらんです!

更にミチさんのブログのSS『ハートグラフィカ』
本編読後に是非是非!!
短いのに悶えるー!!ぐあー!!
ささいな、同じ様な事考えても
こっそり思うだけで口に出さない大人の男二人。
もう、勘弁して…。
(嘘です!もっともっと読みたいです!!)





14

暗号解読

一穂先生の作品は独特の文体(体言止め、修飾語が若干多め)から今まではちょっと避けておりました。
(先生の大ファンの方、申し訳ございません!あくまでも私独自の感想なので許してください)

しかしこの作品、読んでみると…高評価も納得です。

ステノグラフィカは暗号という意味を含むそうです。
国会速記が暗号のようだから、ということと、
「人の本当の想いはまるで暗号のように隠れて見えず、解読して(心を通わせて)初めて理解できるもの」であると、ダブルミーニングを持たせたタイトルではないか、と思います。
顕著に感じたのは皆様も書かれている、あのご老人のくだり。
本編もさることながら、萌え心を多いにくすぐられました。

この一作で一穂ミチファンになりました。

12

碧のお弁当~

一穂さんの描く年の差カップルが結構すきです。
シュガーギルドもそう。
職業や仕事の描写がかなりリアルできちんと描かれているところや独特な表現の上手さにいつも脱帽です。
しかも今回は主人公碧の作るお弁当ったら!
本人は至って普通のどこにでもある珍しくもない弁当と謙遜していますが、主婦歴だけは無駄に長い私にとってはもう、参りました〜って感じです。
家事も淡々とソツなくこなして、それが全く当たり前で特別なことと思っておらず、全てにおいて几帳面に丁寧に日々を過ごしている、しかも謙虚に。
西口じゃないけど、どうしたら今どきこんな青年が育つんでしょうね。
碧の作る料理は、まるで本人を表すように派手さは無いけど、文字で読むだけでもおいしさが伝わってくるようでした。地味な作業にも愛着を持って手を抜かず丁寧に仕上げてゆく。こんなところも目立つことが好きではない碧の人柄を上手く表しているなと感心します。
西口がうんと年下の碧に安らぎと愛しさを感じ、時に甘えたり、鼻の下を伸ばして締りのない顔をしてるところがかわいいな、と。
つい二人の幸せを祈ってしまいました。
続きのお話をまた書いて欲しいです。

11

機械化の波に呑まれて消えていく職業

is in you、off you go、そしてステノグラフィカと三作続けて読みました。
なんか、もうどっぷりこの世界観にハマってしまいました!
一穂ミチ先生の本は他にも何冊も読んでますが、
このシリーズが一番好きです。

私は「国会速記者」という仕事は全く知りませんでした。
国会中継自体、見る事無かったですし。
でも読んでると、なんとなく国会に興味も湧いてくるし、
議事堂にも行ってみたくなる。ほんと、野次馬ですが(笑)
壁のアンモナイトの化石や、郵便ポストの描写の部分とか、すごく好きです。

この本で一番の見所は、もちろん碧のお弁当でしょう。
本当に美味しそう!毎日これだけのお弁当を作ってる碧はすごい。
西口じゃなくても、一度食べてみたくなります。

碧と西口は、議員に無理を言われて困っていた碧に、
西口が助け船を出した事がきっかけで言葉を交わすようになります。
でも本当は、知りあうずっと以前からお互いに意識しあってたんですよね。
碧は、西口のしゃべっている声を聞いて。
西口は、碧のお弁当を食べている姿を見て。

二人が惹かれあいながらも、碧には妻が、西口には元妻がと、
それぞれ愛する人がいると勘違いして一歩を踏み出せずにいる様子は、もどかしいです。
(碧の「妻が居る」説が、訂正出来ぬ間にどんどんドツボにハマっていくのは
可笑しくもありましたが)
碧の「あの日、あなたに見つけてもらえて、どんなに嬉しかったか」
が、なんかすごくいじらしくて切なかったです。

大磯の松田老人、存在感がありました。
西口がすみれの事件の責任を取る事になった時に、碧が松田の前で泣く場面、
松田の懐の大きさを感じました。碧と松田の関係も、すごく好きです。
最後に松田の過去が少し明かされますが、これがまた痛い話でした。
ある意味で本編よりインパクトがあったかも・・・

「off you go」の佐伯と静も登場しますが、
佐伯、さすがです。チョイ役でも相変わらずブラックで(笑)
初対面の碧に「こいつ悪気があって口も悪い」
と紹介されてしまう佐伯は、ある意味大物かもしれません。

三作読み終わると、また最初から読みたくなってしまいます。
無限ループにハマってますね。

11

碧が可愛い…!

新聞社シリーズ3作目になる今作品。3作目ではありますがそれぞれ独立しているお話なので、これ単品でも問題なく読めます。新聞社シリーズは今現在4作品出ていますが、私はこれが一番好きです。なんといっても碧が可愛い!

この作品を読んで初めて「国会速記者」という仕事を知りました。なじみのない仕事ゆえに非常に興味深く読みました。目立たず、影のように表に出てはいけない仕事。それにうってつけのような地味な碧。これと言った趣味もなく外出と言えばボランティアで年配の方のところに出かけるくらい。家事は完璧で、すごくおいしそうなお弁当まで作れる。こんなお嫁さんが欲しいなあ(自分がなろうとは決して思わないけどw)。

お弁当って料理を作れるってことももちろん大事なことだけれど、それ以上に、あるものをうまく組み合わせて作るとか一度にたくさんの種類の料理をパパッと作れるとか、いつもきちんと食料品を管理しておくとか、いろいろな要素が組み合わさってないと毎日作るって大変なもの。碧のきちんとしていて、整理上手で細やかな性格を表すのにとても効果的な表現だと思いました。

対して攻めの西口さん。彼もとても好き。個人的に、ああいうさっぱりしていて頼りがいのある年上の攻めが好きということもあると思いますが。普段はざっくりしているのに、碧のことが絡むと途端にワタワタしてしまう西口さんもとても可愛らしいと思いました。

性格が真逆だったり、西口さんの前妻さんのことがあったり、碧に奥さんがいると西口さんが勘違いしていたりとバタバタするところもあるのですが、根本のところに二人がお互いを思う気持ちが溢れていてほんわかと読むことができました。

それと、「off you go」の佐伯さんは出てくる作品ごとに印象が変わりました。今まではあまり好きなキャラではなかったのですが、今作品の佐伯さんはいい味出してます。スルメのような…(噛めば噛むほど味が出る)?イヤ、失礼。

一見良妻賢母のような碧ですが、自分の仕事に誇りを持っていたり、人に対する気持ちも一本筋が通っていたり、非常に男前な性格なんじゃないかなと思いました。

11

この作品が収納されている本棚

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