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表題作泣いたカラスがもう笑う

元クラスメイトのカフェバイト 南
ノンケに恋しては振られてばかりのゲイ 烏丸猛

同時収録作品君の喜ぶ顔がみたい/ある晴れた日に

音楽家 ヒタキ 
没落華族の跡取り息子 白泉瑛正

その他の収録作品

  • カラスの勝手でしょ

あらすじ

南の親友烏丸は恋愛体質。背も高いし、よく見ればイケメンなのに、ノンケに振られては泣きついてくる烏丸に、うんざりする毎日を送っていた南。 「なんで烏丸は俺のことは好きになんねぇの?」 男同士の恋愛なんて他人事だったはずなのに、いつからか胸のモヤモヤが消えなくて…!? 男限定恋愛体質男子☓ノンケ男子の親友以上恋人未満なじれったい恋。他、没落貴族リーマンの恋も収録した、豪華2本立て作品集! 後日談の描き下ろし付き★

作品情報

作品名
泣いたカラスがもう笑う
著者
糸井のぞ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
芳文社
レーベル
花音コミックス
発売日
ISBN
9784832288379
3.9

(35)

(14)

萌々

(12)

(5)

中立

(2)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
13
得点
135
評価数
35
平均
3.9 / 5
神率
40%

レビュー投稿数13

もう一歩、突き抜けてほしい

決着がつかない良さ、というものが世の中にあるのは重々承知です。
サクラダファミリアも完成しないから、人々の興味を引くのであって、完成してしまったら、有名な観光地のひとつというだけの、唯一無二ではなくなりそうだし。
でも、曖昧な中にも、もう少し、行き先を示してくれるような何かが欲しいときもあるわけで。
そんな気持ちになる表題作と、もう1CPが収録されています。

【君の喜ぶ顔がみたい】(3話)【ある晴れた日に】
近所の子供たちに「幽霊屋敷」と恐れられる屋敷に住む、没落貴族の末裔・白泉。
彼がある日出会ったヒタキという不思議な青年との触れ合いを通して、少しずつ自分の殻を破っていくストーリー。
気になることや思いついたことを「やらない理由」なんて考えずに飛び込んでいくヒタキは、好奇心旺盛な少年のようです。
そんなヒタキに引っ張られて、「やらない理由」や「だめな原因」ばかりを並べ立てていた白泉の視野が広がっていくのが楽しい。
「一緒にいて楽しい」という気持ちから人として「好き」は分かるけど、性的な「好き」につながるのが、いまいち説得力がなかった気がするけれど、芸術家相手に理屈をこねても無駄ですね。
自分もヒタキのようになれたらいいなあと思える、楽しい作品でした。

【泣いたカラスがもう笑う】(2話)【カラスの勝手でしょ】
ううーーーん、勝手すぎる…。
しかも決着がつかない…。
白黒はっきり派の方はご注意を。
惚れっぽくて、自分のことを「かわいい女子」だと思い込んでいて、ノンケ男子に連敗中の友人・烏丸に、毎度恋愛話を聞かされる南。
「涼しげ美形でノンケがいいなら、南くんぴったりじゃない」という烏丸兄の一言で、「どうして自分はスルーなんだ?」と疑問を抱いてしまったところから、話はおかしな方向へ。
好きだけど、友人の枠を壊したくないから、似た人を追うのか。
曖昧なまま、ふわーっと終了します。
南くんはMではないかと思います。

収録順が逆だったら、と考えると、それはそれでナシなんですよね。
先にすっきりと楽しく読める作品があって、表題作で謎かけのような読後感を味わう。
これで正解と思うけど、もうちょっと何かが欲しいと思ってしまう。
そんな1冊でした。

1

趣の異なる二作品、どちらも好き

二つの作品が収録されていますが、それぞれ趣きが異なっていてどちらも好きです。

【君の喜ぶ顔が見たい 1 2 3】【ある晴れた日に】
作曲家×没落貴族のリーマン
ある日、亡き父からもらった思い出のコインを排水溝に落としてしまい焦る瑛正。それを見かけた青年・ヒタキは雨の中一緒にコインを探してくれて…。

瑛正の背景にある没落貴族。時代物ではなく現在に生きるリーマンなんです。
財力はなく「名家」なんてもはや形骸化しちゃってるけど、誇りや血といったものを忘れず気高く生きる祖母にやんわり鎖を繋がれているような日々で半ば諦めたような面持ちで過ごしていた瑛正。それが音楽家ヒタキと出会って彼の生き生きとした感性に触れて、固く凍っていた瑛正の心がヒタキの作る音楽とともに少しずつ揺れ動いていく様子が描かれています。
そして家と自分のことを見つめ直した末の「これが僕の家族なんだ」という言葉がいいです。だけどやっぱり自分に課せられた「血」のために愛するヒタキと諦めようとした瑛正と、俺は諦めるつもりはないからお前も諦めるなといって別れたヒタキ。
【ある晴れた日に】でまさかのお祖母様と茶飲み友達としてヒタキが仲良くなっているところが好き。ヒタキって男前だなぁと。もうただただ惚れるしかないです。
そしてそこには外堀を埋めていく狡猾さみたいなものは感じないんです。(そういう下卑た考えはあのお祖母様なら絶対気づくはずなので)
強引さは全く感じさせないのだけど、穏やかにかつひたむきに(コインも決して諦めずに探し出してくれたし!)いつのまにか受けだけではなくその家族そのものも笑顔にして包み込んでいたような包容力、しかも全く押し付けがましくなく自分が好きでやってるんだといったような独特の超自由人さみたいなものを感じさせる攻めの魅力が良かった。(言葉にうまくできないのが悔しい!)
祖母も夢見たものと失ったもの、この狭間で生き続けてきた女性なんだけど、それを決して悔やまずに気高く生きてきた人物としてお話に不可欠な存在でして、お上手だなぁと。

【泣いたカラスがもう笑う】
いつもノンケに果敢に恋をしては振られて泣きついてくるゲイでオカマの烏丸。そしてせっかくアドバイスしてもちっとも聞く耳持たず、懲りずにノンケ相手の不毛な恋を繰り返す烏丸にうんざりしている南。
ある日、バイト先の店長(烏丸の兄)に「涼しげ美形のノンケなら南くんがぴったりなのに、なんであいつ南くんはスルーなんだろう?」と言われて、確かになんでだろう?と気になり始めちゃう。
だけど下手に聞いてしまうと、まるで自分が烏丸のことを好きだと思われてしまうからそれだけは避けたいと思っていたのに、熱中病で朦朧としていた最中、「なんでお前オレの事好きになんねぇの?」と言った直後に後悔するような最悪な聞き方をしてしまい…。

それまでオネエ言葉だった烏丸が「誰がお前みたいなへぼいカマ野郎好きになるんだよ。」と南にいなされた直後に「犯すぞコラ」とオス全開で迫ってくるところが好きです。
そしてまさかのノンケと付き合えるようになりウッキウキの烏丸にモヤる南と、憧れのイケメンとのデートにちっともときめかない烏丸。
南は微妙に自覚しつつあるんだけど、烏丸はまだ無自覚な状態で終わってて、この二人の続きが読みたいな。

2

切なさがエッセンスのハピエ

やっぱり糸井先生作品、大好きです。
前半は作曲家ヒタキ×没落貴族リーマン瑛正。もどかしくて切なくて。攻めのヒタキ君が頑張ってくれるからこそなんとか成り立っていける関係性とか、ちょっと頑なな瑛正が徐々に解けていくとことか、ホントにうわわわわぁと心が満ちていきます。
後半はノンケイケメン好きのゲイ烏丸×ノンケの親友南。こちらも、まあ、こりゃもどかしい。最後までもどかしい。
糸井先生特有というのか、本人は受け属性なんだけどカッコいい男子な攻め。そしてうまくいかなくてモダモダ。たまりませーん!性癖のさらに奥の部分を乗り超えた愛の成就を感じます。
ハッピーエンドですが何しろ先生の作品全体にかかる切なさが、とにかく好きです。
特に後半CP、続きを期待してます!

2

ほのぼの系

個人的には、エロ無しほのぼの系のイメージが強い糸井先生。
表題作は、幼なじみの、くっつきそうでくっつかない、無自覚なすれ違いを描いた、ゆるめのギャグテイストの作品。
一応、ノンケの主人公の方は恋愛感情に気づき始めているが、一方のふられてばかりいるゲイキャラくんの方は無自覚で、ゲイキャラくんの兄にはバレバレで面白がられているところで終了。
この続きって描く予定があるように後書きあるけど、描かれているのかな?結末はどうなったのか、コミックスにはなってない?
元々、糸井さんの絵が手書きっぽいアート系なので、この作品でもギャグ顔と普通顔はきわめて自然で自由に行き来するのでで読みやすい。

コミックスの前半分は全く味わいの違う作品。
没落華族の末裔と現代音楽家のお話。
私はこっちの話の方が好き。

2

たくさんの笑顔がみたい人へ

読み逃していた一冊。

表題作はあとがきによれば、この続きとしてまだまだ先のお話が用意されているようです。表紙のような雰囲気を予想しながら読むと、ん?という感じではあるけれども、私は好きです。読者は、彼らのわからなさそうでわかる、そんな感情そのものを楽しめると思います。
作者のあとがきもワクワクする楽しみのひとつ。

ところでこの本は、一つ目の作品『君の喜ぶ顔がみたい』が...いやもう涙でした。これは何も語らない方がよいと思うのですがやっぱりなにか書いておきたい。この作品を読み終えた時点で私は一度本を閉じました、そのまま続きを読めそうになくて。お茶を淹れて一服、頭をからっぽにして表題へと移る。そんなことは久々だったなぁ。

純粋に絶品だと思います。
レビュータイトルはこちらに向けたものです。
運命や絆が存在するとすれば、そういうものの最上級クラスのなにかでつながっていくふたりのお話ではないかしら。頑張って「つながっていこうとする」ふたり、のほうが近いかな。個人的に、壁をぶち壊す系のストーリー展開がなにより大好物なので、こちらは迷わず好きな系統だったとは思います。けれどこの作品がめずらしいところは、ぶち抜く役が出逢いのシーンから一貫して迷いがなく、穏やかにかつ力強く攻め入り続ける。ぶち抜く役の行動はあまり描写がないのですが、その分すべてが想像できるほど強烈な印象(超自由な芸術家)で、気が付いたら完全に陣地に入られているのが不思議と心地よい感覚を残します。納得のラスト、主要人物が同じ場所で皆笑顔になれる、こんなに素敵なことってないかもしれない。深く沁み入る作品だと感じています。

ラストのモノローグは誰の心にも光を灯すものであってほしい。

6

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