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表題作片思い

三笠高志
高校の同級生で社会人
吉本智
気の強い隠れゲイの大学生

同時収録作品あのひと

松下
大学の数学講師 39歳
門脇尚史
ゼミの学生 22歳

その他の収録作品

  • 恋は盲目
  • それから
  • 同窓会
  • おかえり
  • あとがき

あらすじ

大量書き下ろし25P&大幅改稿!!!
さらに、イラストに伊東七つ生先生を迎えた新装版でお届けします!!

「俺、結婚するから」
高校の時の友人、三笠の突然の告白に吉本はびっくり。
なぜなら彼はずっと自分と同じく男が好きだったからだ。
取り残された気持ち以上になぜか三笠の結婚を素直に喜べない吉本は思い余って酔ったふりをして…!?
超鈍感男を好きになった負けず嫌いのツンデレ青年のこの恋の行方は?
吉本と三笠の友人、門脇と数学講師・松下の静かな恋を描いたもうひとつの片思い「あのひと」も全て収録した新装版!
書き下ろしも収録?

作品情報

作品名
片思い
著者
木原音瀬 
イラスト
伊東七つ生 
媒体
小説
出版社
リブレ
レーベル
ビーボーイノベルズ
シリーズ
片思い
発売日
ISBN
9784799712610
4.2

(64)

(33)

萌々

(20)

(6)

中立

(3)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
11
得点
266
評価数
64
平均
4.2 / 5
神率
51.6%

レビュー投稿数11

心への刺さり度が神

電子で前編・後編を読んだ。前編は、仲良し三人組のうち二人がカップルになるお話。後編は出来上がったカップルの相談役になっている、もう一人の友人のお話。
作風を語れるほどの読者でもないのに、木原さんの作品を読んでるなーと強く感じた。特に前編!恋して汚くなる描写の人間らしさがすごくて圧倒される。心への刺さり度が神。

吉本と三笠のお話は、とにかく吉本の性格が悪い!気分の波が激しく、すぐヒステリーを起こすし、無駄なプライドが高い。でもそういう捻じれた心理描写が本当にすごくて、引き込まれるように読んだ。
印象的だったのは、吉本の中に女性嫌悪の感情が生まれる瞬間。実質ただの逆恨みだけど、人の心の動きとしての説得力がありすぎて、ただただ納得させられてしまった。

三笠は天然っぽいキャラで、突っ走って何かやらかしそうな雰囲気がある。吉本と本気でぶつかろうとしているときの言動は結構怖い。
それにしても激しいくっつき方で、ENDマークで安堵の笑いが漏れてしまった。最後まで吉本は吉本で。第三者視点の後日談でも相変わらずの二人で笑った。

後編は、前編で良いポジションにいた門脇と、講師の松下のお話。
17歳も年上の大人として見ると、“一度ヤっただけで彼氏面”状態になっている松下の行動は正直怖い。
門脇はノリ気じゃないし同情の方が上回っているようだしで、ハピエン展開は意外。欲を言えば、恋や愛に転じる門脇の心理描写はもう少し欲しかった。いきなりあんな重い告白をするキャラだったとは。

くっついた後は、家族問題が絡んでくる。門脇には随分と厚かましかった松下が身内にはグズグズと何も言えない様子に、しっかりしろと言いたくなる。兄妹の言い合いでは、両方に嫌悪感。どちらかというと松下の自己中の方が嫌かも。

妹はこれから先も家に帰れば兄に期待する母の一言一言に傷付きながら生きていくんだろうか。歪みの元凶が分かる描写になっているので、辛辣な言葉が飛び交うシーンも読みやすかった。

門脇家族の方は完全な雪解けもありそう。温かすぎてびっくりするくらいのほっこり展開。終わり方も希望の見える感じで、読後感も良い。

感じたものは萌えとは違うし、好きになれたのは門脇だけだし、誰にも共感できない。でも人の醜さもそのまま見せてくれる描写が素晴らしく、読み応えがある。十年後や二十年後に再読すればどう感じるのか、自分の感想に興味が湧く作品。

0

BLらしい・ベストツンデレ吉本

“このままだと、このままになる。”

2組。
吉本/三笠組:好きな同性が彼女に求婚しようとしている・お前はゲイだろーが!プロポーズ前に男を送り込んでやる!(自分がそいつをスキ…絶対言えないけど)
門脇/先生組:先生、僕に気があるのか、スッパリ断るけど、でも居心地良いな……ズルズル

どちらもBLコミックのような展開といえるので読みやすいのではないでしょうか。木原さん独特の心理的ヒリヒリ感は比較的少なめだと思いました。とは言え門脇/先生cpは同性愛への世間の冷たさは氷点下でリアリティがあります。

表題作「片思い」の吉本はツンデレのオールタイムベスト。スペックと共にプライドは鬼高で、自分の気持ちとは裏腹の事しか言えません。彼に比べたら「place」の加賀なんて可愛いものです。吉本の極限ツンっぷりは振り切れていて、そこからのデレはこちらも蕩けてしまいます。ほぼ無いですが(笑)
高校時代の惚れやすい三笠(同性愛を公表した)を恋愛ゲームの捨て駒のようにしている吉本(ゲイを隠している)が、酷いけれど面白かったです。

「あのひと」はタイトルがまず素敵過ぎます。
通常、私はお話の主人公達のすぐ脇でもカップルが成立する話が嫌いです。AとBがくっつき、CとDがくっつくのは如何にも創作で気持ちが悪く、JとZで良いじゃん…と思っています。ですのでこのお話は「片思い」と二人の親友である門脇と、その大学の先生の組合せだったので、木原さんのものでなければ投げ出していました。結果、面白かったのですが。

先生と学生のお話は「眠る兎」(高校生と現国先生)が好きで、この門脇ペアはそれよりも自然で落ち着いた雰囲気とBLらしいグイグイ感がありました。会話に出てくる数学の話題、このテーマを描く為に著者は沢山資料を漁られたのだろうなと、素人には全く理解は出来ないのですが「設定の取ってつけた感」の無さが凄く落ち着きました。
この作品ではBLらしさもあり、また同性愛の行末の厳しさ、二人でしか理解し合えない心細さ(と側からは見える)が混ざり合っています。
辛さもあるのですが、朝食での門脇の兄弟と先生の会話の打ち解け具合がとても愛おしかったです。どこまでもタメ口で遠慮ない門脇兄弟と、それを気にせず流されず丁寧に言葉を返す松下先生の会話が、其々の変えられない性格まで感じ取れて心地良く、もっともっと続いて欲しかった(読みたかった)し、続いていくのだろうと思うととても素敵な余韻でした。本自体かなり分厚いのにもっと分厚くして欲しかったです。

挿絵はとても丁寧で美しいのですが、どうしても吉本と門脇の髪型が想像と違いすぎて違和感が最後まで残り残念でした。三笠は可愛く良かったです。

1

あまコノハラ

内容は2組のカップルの物語で、元々2つの「片思い」とスピンオフの「あのひと」を合わせた新装版となっています。だからか、とっても分厚い。

「片思い」
高校時代の友人3人組。吉本と門脇は大学生、三笠は就職し社会人。
三笠は高校時代に2人に男の方が好きな事をカミングアウト。
だが実は吉本も…
吉本は誰にも言わずに好きなクラスメイト(♂)の親友ポジションにいたのだが、何と三笠も同じ子が好きだと言う。自分が絶対言えない事を何故こんな嬉しそうに言うんだ!と激昂し、そこから三笠が大嫌いになり、三笠が色々な恋の悩みを相談してくるごとにけなし倒し、キツい言葉でやり込める…
…という風に心底嫌いムカつくと思っていた相手と…とストーリーが展開していきます。
受けの吉本の心理状態が何とも…本人には極限なんでしょうね。絶対自分から好きとは言えない、だから三笠に襲わせる…
だけどその後は三笠に無かったことにされ、門脇に何をやったかバレ。
高すぎるプライド、素直になれない性格もほどほどに、という教訓なのか、大嫌いな人とは自分に似た人かまたは深層では惹かれすぎる相手なのか。
恋ってこわいよなぁ。

「恋は盲目」
数年後、会社で係長になった吉本の部下・磯崎視点の一編。
吉本って誤解されるよね。ていうか不器用すぎるの?自分が好きだったり信頼できる相手に対しての、あまりにも酷い言動。甘えなのかなぁ。
社員旅行でこき使われまくる磯崎が、夜雑木林で三笠x吉本の野外Hを覗き見てしまう、というお話。
吉本は相変わらず三笠に冷たくて、でもデロデロに惚れてる。

「あのひと」
さて、門脇のターン。
彼はゲイではないんですよね。恋愛に興味のない数学科の学生で、偶然講師の松下が自分に好意を持っている事を知るけれど応えることはできない、と思っている。自分が贔屓されているように感じる所も居心地悪く感じている。
次第に静かで丁寧な松下の性格、また数学の話がすぐに通じる所などに甘え、松下の気持ちを知りながら優柔不断にそばにいる門脇だが…
…と物語は展開するのですが。
一度は別れるのですが、その後何故松下の後を追うまでに門脇の気持ちが動くのかがよくわからないんですよね…

「それから」
松下と門脇は神戸で同居している。
そして松下の妹に2人の関係を知られ酷くなじられる。何も言えない松下と、反論する門脇。
だがその後、門脇の精神状態は不安定に…
コレはコノハラ節開始か〜⁈と不安になりましたが、一応大丈夫ですよ。
だけどやっぱり何で門脇がここまで松下を愛してるの?というのがハラの底に落ちない。

「同窓会」
同窓会で昔好きだった男に会うけれどやっぱり三笠が好き、という吉本。

「おかえり」
門脇は松下と付き合う事を家族にカミングアウトし勘当されている。だけど弟や妹とは仲がいい。
そしてこれからは彼らが門脇を助けて親に会えるようにしてくれる、というお話。

吉本の複雑で意地っ張りな所は可愛い、のかな?
カップルとしては松下x門脇の方が深みがありますね。
木原先生作品にしてはかなり甘目ですので、怖いのはこわいという方におすすめです。

0

電子前編分 三笠×吉本

木原音瀬さんの書く性格の悪いキャラは、最初は何この子?いくらなんでも酷すぎ…って顔しかめながら読むのに途中から可愛いとさえ思うようになるんだよなー。
吉本は自分の本質(隠れゲイ)を偽って他人を攻撃する典型的な嫌なヤツです。
三笠も三笠で真っ直ぐってだけで別にいいヤツではない。酔って吉本の誘惑に乗ってしまったことを無かった事にするくらいの狡さは持ち合わせてるし、まあ普通の男。
こんなね、とくに魅力も持ち合わせてない(ゴメン)2人なのに途中から幸せを願ってるんだよなぁおかしいなぁ笑。
人物描写、心理描写、展開の巧さが成せる技なんだろうなぁ。


三笠視点の数年後の話はあーハイハイ、ご馳走さまでしたねとしか言えない幸せっぷり。三笠は普段吉本にいくら罵倒されてもぜーーったい怒らないし負けてあげてるんだろうな、そんで夜は泣かせまくってるんだろうなっていうツンデレ受けカップルの正しい在り方がここに!って感じで面白かった。

2

片思いは簡単には終わらない

タイトルの「片思い」。ビブロス版では、三笠×吉本の話のタイトルで、松下×門脇の「あのひと」とは、別冊になっていたとのこと。
対照的なカップルの話ですが、一冊になったことで、「片思い」が全編を通した大きなテーマになっていると感じました。

片思いは、告白して相手が答えたら終わるものと思っていましたが、そうではないのですね。

三笠と吉本は付き合い始めてからも喧嘩が絶えず、三笠は門脇に呟きます。
「俺はどうして智(吉本)のことがわからないんだろ。好きなのに、どうしてかな」と。

門脇も思いが通じない不安を松下に吐露します。
「神戸に来る前、俺は先生の傍に行けば、単純にすべてうまくいくと思ってた。けれど現実は少し違ってた。どうしてわかってもらえないんだろう、伝わらないんだろうと考えているうちに、思いだけが一方通行で、まるで片思いしているようだったから」

付き合って傍にいるのに気持ちが通じないのは、一人の時より辛いですね。
両想いなのに片思いという状態から、どうやったら本当の両想いになれるのか?

その答えは、松下が勇気を出して門脇に言ったセリフにあると思いました。とても素敵です。
「言葉をため込まずに、なんでも言ってください。怒っても、怒鳴ってもいい。僕が泣いたり、不機嫌になっても気にしないで。不都合なことは二人で話し合って、改善策を考えましょう。僕は君とずっと長く続けていきたい。」
臆病で言葉も下手な松下が、初めて心をさらして門脇と向かい合ったことで、やっと二人の本当の両想いが始まった気がします。
松下の妹が二人の関係に激怒したおかげですね。雨降って地固まる。困難を乗り越えてこそ、関係も深まるというものです。

三笠×吉本は、さんざん喧嘩をした後、一緒に暮らし始めます。
「一人になりたいときでも三笠がいるってことだから…俺、疲れるかもしれないけど、試してみようと思う。今でも喧嘩ばかりしてるし、続かないかもしれないけど」と、吉本が覚悟を決めたことで、こちらも本当の両想いが始まったに違いありません。

きっと片思いは突然両想いに変わるのではなく、気持ちが通じ合う両想いが少しずつ増えていく中で終わるような気がします。

その後は、吉本が三笠の仕事を助けるようになったり、門脇は弟妹に応援されて松下を母に紹介したりと、末永く幸せに暮らしそうです。片思いは完全に終わったみたいで、ハッピーエンディング。よかったです。

それにしても、登場人物たちの涙にときめきました。片思いの涙はイイですね!
特に、神戸への誘いを門脇に断られた松下が、目尻に一瞬だけ見せた涙の気配が切なくて。
本当は臆病で泣き虫なのに、懸命に自分を抑える松下をとても好きになりました。
口絵も素敵ですね。物語中に描写されていた松下の寝癖もちゃんと描かれていて、可愛いです。

8

この作品が収納されている本棚

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