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表題作修羅の華

カードマ・クン,寺の雑用係の息子,6歳→21歳
アーシャ・ルワン,尊師の養子,修行僧,6歳→21歳

同時収録作品修羅の華

ニキ,寺院の座主
アーシャ・ルワン,尊師の養子,修行僧,15歳→21歳

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

僧院で修行に励みつつも、魂の片割れとも思うカードマと戯れる日々。そんなアーシャのささやかな幸せは、養父である尊師の死と共に終わりを告げた。
母を庇って父を殺害したカードマを救うため、アーシャは欲深い座主に身を任せる。
ところがさらに悲惨な事件が起き、カードマは失踪。取り残されたアーシャは、座主の慰み者になっていた。
だが、復讐を誓うカードマと再会し――!

作品情報

作品名
修羅の華
著者
水原とほる 
イラスト
高緒拾 
媒体
小説
出版社
プランタン出版
レーベル
プラチナ文庫
発売日
ISBN
9784829625590
3

(5)

(0)

萌々

(1)

(3)

中立

(1)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
2
得点
14
評価数
5
平均
3 / 5
神率
0%

レビュー投稿数2

選び取った道へと

水原とほる先生作品かつ修羅と名のつく作品と来れば、きっと一筋縄ではいかないお話なのだろうなと想像をしながらページをめくりました。
やはりと言うべきか、作品全体に流れる空気はしっとりと低温で重ためです。
決して軽くは描かれない、読み応えがある1冊でした。

仏教が重んじられ、人々のよりどころとして信仰されているアジア風の架空の国の寺院を舞台に繰り広げられるのは、運命に翻弄された2人の少年の波瀾万丈な10数年の日々。
幼い頃に寺院でふと目が合った瞬間から、お互いのことを驚くほどしっくりくる己の半身のように感じ合っていた2人。
彼らのバックボーン・取り巻く環境が複雑がゆえに、次第に無邪気だったあの頃のままではいられなくなっていく。

タイトルにもある修羅の道へと足を踏み入れてしまうような、あらゆる物事や不条理が2人にどっと押し寄せて来ます。
ですが、読めば読むほど根っこに描かれているものはとても一途で健気なものなのです。
ただ半身と一緒にいたいだけだというのにままならず、不条理に翻弄されながらも必死で抗うカードマも、心にぽっかりと穴を開けたままでもカードマをひたすらに待ち続けるアーシャも本当に健気。
なぜ2人がつらい目に…と思わなくもないのですが、目には目をな展開もあり、やるなら徹底的にやるこの落とし前の付け方は非常に好みでした。すっきりします。

BL的な甘さは控えめかもしれませんが、ところどころにさり気なさを装ってやっていたと分かる攻めのかわいらしいエピソードも描かれていて、個人的にはこれくらいの甘さの方が作品の雰囲気と合っていて良いのかもと思います。
幼馴染ものとしても良かったですし、事件の真相が明らかになっていく過程も徐々にギアが上がっていくようで面白く読みました。
萌え成分的には2.5。話運びが面白かったので3.5寄りのこちらの評価に。

0

自ら選ぶ己の道

東洋のどこか小さな国にある町が舞台の物語。
年中太陽が照り、寺院が人々の拠り所となり尊敬される僧侶がいる、そんな場所はタイ・ミャンマー・カンボジアやバングラデシュあたりを連想するといいか。
残念ながらどこかの外国モノ設定ではあっても、その国の空気や風や匂いを感じる異国情緒は薄めかもしれません。

両親が亡くなり、叔父・叔母に引き取られて暮らしていたアーシャだが、生活が苦しくなり寺院に預けられることになる。
賢いアーシャを見て、その寺の尊師のルワンはアーシャを養子にする。
アーシャはこの寺の雑務をする寺男の息子である同じ歳のカードマと知り合い、彼と出会った時から魂の片割れのような存在感を持ち、寺の修行をこなしながらカードマと過ごす時間は穏やかなひと時であったが、突然具合を悪くした尊師のルワンが亡くなり、ゴールドラッシュで身を持ち崩した父親の暴力に耐えかねてカードマが父親を殺してしまうという出来事が。
尊師の後を引きついだニキが世俗に通じておりカードマを助けてもらう為にその身をゆだねるアーシャ。
しかし解放されたカードマは母親の自殺を目の前にして、アーシャを残して飛び出してしまうのです。

二人の出会い、そして事件、自分の片割れをじっと待つ6年間と再会。
全ては、6年後の再会と自分の進むべき道の選択の為にある話でした。
ルワン尊師がアーシャに言った言葉
「仏法は一つの道ではない。行きつく先は一つではないのだから自分の道を進みなさい。たとてそれが修羅の道であっても」
この物語はこの「自ら選択した修羅の道」なのです。

アーシャはとても健気です。
尊師をとても尊敬しておりましたから、僧侶にあるべき感謝と清貧が清らかなその姿で体現しているような外見です。
半身であるカードマがいなくなって、ニキにいいように使われ、身体を奪われていても
ニキの悪行を見てもじっと黙っています。
どうして何も言わないのだろう?何もしないのだろう?
そこには自分の非力を認めてただ耐えている、諦めているような姿にしか映らないのです。
しかもニキが癒着している警察署長にアーシャの身を売ろうとした時、絶望して死のうとするのです。
それが、マフィアとなって街に帰ってきたカードマとの再会、6年間の出来事、事件の真相が明らかになる事によって、それまでの受け身がウソのように強い人間になります。
魂の半身を得て、自ら修羅の道をやっと選択した。ということになるのでしょうか。
しかし、耐えて忍んでいる時も、修羅の道を選んだ時も、何故かアーシャがすごく俗臭く自分の事しか考えてないような人間のような気がします。
ニキの「欲」は金や名誉などの私利私欲でしたが、
アーシャの「欲」はカードマへの欲のような気がします。
所詮アーシャも、というか僧侶も人の子であるということか。

復讐劇はかなり血をもってあながうべきものが用意されていました。
特殊な仏教と寺院という信仰の元で出来あがっている町だからこそのこの結末なのでしょう。

5

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