奪うな。他と代えられないものをもう失いたくない。

  • 電子書籍【PR】
  • 紙書籍【PR】

表題作5人の王 Ⅲ

青の王(アジュール)本名:アージェント
緑の王(ヴァート)本名:セージ

あらすじ

妹を守るため、過去に戻り自らを消す決意をしたセージは、神の血を高めるため青の王に抱いて欲しいと告げる。「愛しているふり」をする、それが青の王から出された条件だったが、与えられた束の間の幸せな時間に、彼の記憶から消えてしまうことが怖くなる。さらに、芽生えた王としての自覚に、西方のこの先を見たいと願い始めるセージ。しかし、グリニッジを捕え一度は落ち着いたかに見えた西方だが、ヴェア・アンプワントの生き残りの民の復讐はまだ終わってはいなかった。緑の王として、セージとして、愛する者のために選んだ未来とは??。

作品情報

作品名
5人の王 Ⅲ
著者
恵庭 
イラスト
絵歩 
媒体
小説
出版社
フロンティアワークス
シリーズ
5人の王
発売日
ISBN
9784861346521
4

(92)

(57)

萌々

(10)

(10)

中立

(5)

趣味じゃない

(10)

レビュー数
11
得点
360
評価数
92
平均
4 / 5
神率
62%

レビュー投稿数11

個人的な地雷さえなければ神でした

コミックが面白く、続きが待ちきれないので小説を読んでしまいました。

争いの場面ではちょっと飽きてしまうときもありましたが、反乱が一向に収まらずリアルだけどもうちょっとはしょれないのかとかとちょっぴり思ったりもしましたが、とにかく続きが気になり、ぐいぐいと読ませるストーリー展開で凄かったです。つい一気読みしてしまいました。徹夜したの久しぶりです。

両想いになるまでに時間がかかればかかるほど大好きなので、その点では大合格で楽しかったです。

ただ、ラブラブハッピーエンドというにはまだ不穏な雰囲気がやや残るという感じだなぁと思っていたら、外伝にその辺りが書かれていました。いまいち不安が拭い去れない二人で、そこが魅力でもありますが、どうにも落ち着かなくもさせます。徹夜明けだったのにドキドキして眠れず、口直しに違う本を読んで寝付いた有様です。

話は面白いんですよ。ただ、攻めの宮殿にいるルリが…地雷で。私は、
 1女性が悲惨な目に遭って救われず報われないままで終える
 2他人を犠牲にした女性が報いを受けないまま幸せで終わる(悪人でなくかつ聖女キャラで終わること)
が地雷なんですが、ルリは本人の意図でなく結果的にとはいえ2にあたるようで。セージや妹より年上なのに、自分がしでかしたことの責任を取らず逃避して周囲の温情で1人MAXお花畑気分で幸せに生きるっていうのにモヤモヤしました。主人公でもないってのに。ソーサラーとソースラーと比較するとオイコラ贔屓じゃん!って。

ラストがあの展開だと分かったので、もうコミックの続きは買えません。続編が出て、ああいうルリが必要なんだったと分かれば別ですけれど。

でもストーリーは面白いので、じれったいのが好きな方にはおススメです。

それと、登場人物の名前がカタカナなうえ、名前を複数持ってたりするので、私は覚えるまでは時間がかかりました。良く出る名前でもイラストにはちらとも出てこない登場人物もいるので、なお顔が浮かばず誰これとなってしまいました。イラスト自体は綺麗で素敵だと思いました。

3

挿絵

イラストが綺麗で品が有ります。
セージは、作品中のイメージだと余り頭が良くなくて失敗が多い、優しい子がこれでもかとイジメられて常に泣いている、という印象ですが、イラストだととても育ちがよくて賢そう。
なので、脳内変換しながら読む小説版より、比較すると漫画化されたコミック版の方が安心して読めました。

恵庭 先生のHPに、3巻の先の続きが掲載されていましたが、セージはもっと気の毒な体験をすることになっています。
セージが逝ったあとの青の王が失明していることや、黒の王が昔は良い人だったことなどが掲載されていました。
でも、これから出るだろう続巻が、そのままではなく、もう少し明るい内容に編纂されていたら嬉しい。
セージがいつも泣いていて、可哀そうすぎる。

1

お話が終わってしまって寂しい

最終巻なのにセージには次々に不幸が襲いかかって、お話に気を取られながらも「本当にこの巻で完結するのであろうか?」と思ってしまったんですが……ちゃんと終わりました。
まあ、疲れたのなんの。
しかし、これは心地良い疲れなのでした。

時間軸があちこち飛ぶのは(そもそもそういう作りのお話が好きなので)良いとしても、重要なキャラクターの一人であるウィロウの安否を長い間放置していたり、青の王がセージに対して自分の気持ちを隠さなければならない理由に絡む『コインのエピソード』が何度もほのめかされた割にはそれほど重要でなかったり、正直な感想としては「こなれていないなぁ」と感じた部分もありました。
でも、そんなことよりも何よりも「いい話だねぇ」と思う部分が多いのですよ。

一言で言えば、多分私が良しとする人生観(大げさで申し訳ない)が書かれているからだと思うの。
他者の命や尊厳を出来る限り尊重しようと思うこと。
自分に与えられた使命を果たそうと努力すること。
現場の声を、物事を考える起点とすること。
じぶんの力で足りない部分は人に任せること。
力で押し込めるのではなく、違う考えの人を説得しようとすること……etc.
セージがそんな風に考え、それ故に成長していくのがとても面白かったんだと思います。

何より好きなのは、このお話が『恋も仕事も』のお話であることなんです。
色々と迷った2人ですがそこに辿り着いて、いやー、良かった良かった。
人を幸せにするためには、まず自分が幸せになる必要があると思うのですよ。
お話の初めでは妹を幸せにするために自分の不幸を取ったセージが、ラストでは様々な悲しみを抱えながらも幸せになろうとする。これが感動的でした。
青の王の盛大なデレに大きなカタルシスを感じるのも、ここまで引っ張ったからだと思いますしね(笑)。

ストレスにまみれながら頑張って読んだ長編小説が終わってしまうのは一抹の寂しさを覚えたりします。
長期休暇にじっくり、しかし一気に読むべき物語だと思いましたです。

4

やっぱり面白かった!

さすが書籍化されるだけあって、面白かったです!!
やっぱ世間の腐女子が認めただけはありますね。私も読んで良かった。
ちょっと冷たい青の王が、時々、緑の王を可愛がるとこに萌えました。
王族ファンタジーと特殊能力ネタが大丈夫な人なら、きっと最後まで楽しめると思います。

セージは妹の死を受け入れられず、それでも緑の王になった自分の責務を果たそうと頑張るのですが、臣下に裏切られたり、命を狙われたり、その上、愛してる人を失いそうになったりと波乱万丈、一寸先は闇の物語。

文章のテンポが良く、三冊があっという間に読み終わってしまいました。
緑の王の気持ちが、焦りが、手に取るように迸っていて、読んでいる私まで切なくなりました。
早く読み進めたくて、家事放棄したくなりましたもんね。
読後は、すべてのピースが噛み合い、大きなパズルが完成したような満足感でいっぱいにまりました。
ラスト、少しだけ後味引きますけど、きっと、彼らは幸せになってる筈だと信じています。
あと、下のレビューでスノーブラックさんが書いてる「二人の王だよね」に思わず吹き出してしまいました・・。うん・・確かにネ・・!
でも緊迫感があって、とっても面白い作品でした!

3

不憫健気の集大成

率先して争いの種を振りまきまくる、浅慮なお子さま王のお話も漸く終結です。
はぁ……長かったような短かったような、不思議な読後です。
読んでる途中、だんだんと自己中度が上昇してゆく受の、あまりの身勝手さにムカムカすることもありましたが、この度が過ぎた甘ちゃんっぷりも含めて、彼の魅力なのだと思います。
考えなしに人に迷惑を掛けまくってしまう愚かな受ではありましたが、どこか眩しくて愛さずにはいられないようなキャラでした。彼に惹かれてゆく周囲も、わかるような気がします。
とにかくこうと決めたら一本道で、絶対に何があってもブレないその姿勢が、ある意味この世界の中では一番男らしかったかもしれません。

そしてそして、これだけ広げた風呂敷を一体どうやってたたむつもりなのかと思ってましたが、そうですよねー、そうしますよねー。というか、そうするしかないですよねー、というほど予想通りな展開でした。
まさか3冊四六判でバッドエンドはないと思ってましたけど、ハッピーエンドにするにはそうするよね、というファンタジー読みには簡単に想像の出来る結末だったのは、ある意味で安心しました。良かったです。

受がひたすらに不幸で不憫、一体どこまでこの受をどん底に突き落としたら気が済むのかというくらいの作者のやりたい放題っぷりがいっそ清々しく、ぞくぞく震えるほど。
攻のわかりにくすぎる愛し方には私のM心がくすぐられてたまらなかったです。
お互いの献身的な愛が見事に成就してほっと一安心。
やっとのことで甘い桃色エッチが堪能できたのも、ここまでの長い話を読んできた甲斐があったってもんですね。
天然ド淫乱なビッチ受も大好きなので、ある意味この話は私にはたまらなく好み設定だったのかもしれません。攻も色んな意味で好みすぎて……。
これでもう終わってしまうのは寂しい、と思っていたところに丁度良くシアンとウィロウのスピンオフが発売されたので、有難く読もうと思います。

ファンタジーで興ざめしてしまう矛盾についてはもう正直どうでもよかった。
どうでもよかったと思えるくらい、受と妹の絆を一貫して書ききってくれた。
(まぁ、そのせいで肝心のBがLらしくなってないという失敗もありますが)
ただひとつだけ、どうしても納得出来ないのが女性の扱いについて。
ルリのエピソードはどう考えても物語に必要だったとは思えませんでした。
あれでは受もルリ自身もあまりにも可哀想です。
私はBLにおいて女性が不当な扱いを受けることが好きではないので、このエピソードについては書かれなかったこととして脳内処理したほど。
王宮もので世継ぎ問題のために攻が側室だ正室だのを娶って、こどもを作っても気にならない方ですが、今回のこれはそういった問題とは関係のない部分で描写されていたので不快感しかありませんでした。
自分の中ではなかったことになっているので、それ以外で作品が構成されたと考えての神評価になりました。なかったことにしなければ、このエピソードだけで一気にしゅみじゃないレベルにするくらいの気分の悪さです。

そして序盤トライアングルを期待しちゃったギルが、蓋を開いてみたら一番の空気だった罠。思わせぶりなこと言ってたセーブルも、何かもう生温かく見守り隊みたいになってるし……全然5人の王じゃないよね、2人の王でよくない? と野暮なこと思ってます。
この手のファンタジーを書くには、正直力不足感が否めないですが、でも面白くて転がるように読ませてくれましたので、最終評価としてはお気に入りのシリーズとなりました。次回は作者が書きたいものだけを押しつけるのではなく、読者がいることを考えた書き方にしてくれると親切だなと思いました。
磨けばキラキラと光りだしそうな素敵な作家さんなので、担当さんはぜひ指導に力を入れて欲しいです。

11

snowblack

薄雲さま、コメントをありがとうございました。

そうなんですよね、タイトル『2人の王』の間違いだろうっ!って
言いたくなりますよね?(笑)
あるいは『率先して争いの種を振りまきまくる、浅慮なお子さま王』
というタイトルもいいかも……!(笑)

>作者の勢いに呑まれてすっかりこのシリーズの虜です。
私も全くその通りです。
いろいろと突っ込みどころはあるにせよ、この巻き込む力は稀有。
本当に今後が楽しみな作家さんですね!

この作品が収納されている本棚

マンスリーレビューランキング(小説)一覧を見る>>

PAGE TOP