始まりは、偶然と好奇心――部下×上司、カラダから始まるリアルラブ。希代のストーリーテラー・麻生ミツ晃の待望作!

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表題作only you, only

須藤章成,28歳,子会社勤務の常務の息子
真木唯行,32歳,出向した補佐役の主任

その他の収録作品

  • 或る休日
  • あとがき

あらすじ

恋の成就は望んでいない――ただ好きでいるだけで良かった。部下の須藤を密かに想う真木。ある夜、行きずりの男に身を任せる姿を、須藤に見られてしまう。そして、好奇心で須藤から身体の関係を持ちかけられ、抱かれるようになり…。カラダだけでいい――でも、彼の好奇心が一日でも長く続きますように。危うく淫らなオフィスラブ。

作品情報

作品名
only you, only
著者
麻生ミツ晃 
媒体
漫画(コミック)
出版社
海王社
レーベル
GUSH COMICS
発売日
ISBN
9784796405195
4.2

(255)

(141)

萌々

(66)

(28)

中立

(7)

趣味じゃない

(13)

レビュー数
32
得点
1060
評価数
255
平均
4.2 / 5
神率
55.3%

レビュー投稿数32

ズルさと迷いと正直さと

今年出たBL漫画で、私の中ではベスト3に入るかもしれない。
それくらい好きです!!
麻生先生、とても素敵な作品をありがとう~♪

※このお話の好きなところを書くと、かなりネタバレになります。
なので、未読の方は読まないでね~☆


あらすじは
同じ企業に勤める真木主任と常務の次男坊、須藤。
ゲイ疑惑のある真木を偶然二丁目で目撃した須藤。
後日、須藤は二人きりの時に「俺と寝ません?」と真木にもちかける。
はじめは冷静に断っていた真木だが、真木を探していた須藤が二丁目で写真を撮られた事を切欠に、気持ちが漏れだす。
付き合いだした二人だが、須藤には見合いの話があって…?


内容は、BL漫画でよくあるお話なんてすが。
ひとつひとつがとても丁寧に描かれています。

その中でも何が好きって、真木のズルさ、須藤のズルさを正直に真正面から扱っているところ。
真木の、恋愛の深みにハマると後で痛い目にあうからと、ドライな生き方を選ぶ性分。
須藤の、決定的な部分は真木に丸投げで、計算高くて打算的で、そんな自分を自覚している事。

世間体とか、出世とか、家庭とか、そういった誰もが持つ当たり前の欲。
互いの気持ちは、そんなものたちに簡単に押し潰されてしまう。
そうして選んだ新しい互いの生き方。

でも、真木は須藤と出会う前の自分に戻ることが出来ない。
愛し愛される熱を知った心と身体をリセット出来ない。
須藤は弱いところを見せたはじめての相手である真木の存在を、完全には消しきれない。
必死に新しい未来へ走りはじめたのに、大きな落とし穴に落ちてしまう。

それは、須藤のからだの事。
それが須藤の心を大きく打ち砕いた事。
これは…辛すぎて…読んでいて物凄くショックでした。
人として、とても辛い事柄ですから…。

このお話、甘々ハッピーエンドではありますが。
決して100%ではないハッピーエンドやと思います。
須藤にとって、何が幸せなのか?を、すごく考えさせられました。

祖父を見習って、好きな人と結婚する夢には近いけれど。
やはり、失ったものやあきらめたものは心の隅を支配していて。
でも、彼の素晴らしいところは、そういう自分を隠さない事。

そして真木も、須藤の悲しみを理解したふりをするのではなく、正直に自分の気持ちを吐き出す姿。
相手の気持ちを理解しきるなんて、誰にもできませんもの。
理解するんではなく、自分に正直になって、寄り添うから心にしみる。

こういう、家族とか社会とか世間体とか、夢物語にも現実の事がきちんと丁寧に描かれていると、すごく心に残りますね。
二人の生き方描かれ方が、とても大好きな作品です。

18

恋って苦しい

男同士のラブストーリーってこんな作品のことを言うのではないかと思います。
リアルな男同士の恋愛が切なくて苦しくて、ただ好きな気持ちだけではどうにもならない
会社での立場、将来の夢や希望、心無い噂にストレスの数々、心の弱さ。
様々な感情も作品から溢れ出しているように思えるのです。

コミカルで軽く笑えてのハッピーものが大好きだけれど、たまにはこんなに苦しい
恋の話をじっくり読んでみるのもいいと思える作品でした。
派手さがないのに胸に染み込んでくる様々な感情の波がマイノリティーの
現実の厳しさも描いていて、かなり深い作品なのです。

下手な作品の内容はあえて書かずに、是非手にとって苦しくて切なくて辛い恋を
でも、その辛さがあっても諦めることが出来なかった恋する話を読んで欲しい。
久々に大人のリアルな恋愛をテーマにした作品に心打たれました。

16

ただ、それだけでいい

タイトルから様々なことを考えました。
「only you=あなただけ/君だけ」は須藤・真木のふたりともが感じているものでしょう。でも次の only は、ふたりそれぞれ違う意味を持つのかも…と唸りました。
もうこの先あなただけ、という一本筋の意味合いかもしれないし、はたまた (替えようのない)たった一人の人 のニュアンスかもしれない。ただひたすらに、かも。もちろん、どれも違っていて、答えはないやもしれません。
そうして読後、じっとり考え込んでしまうくらい素敵でした。
もともと連載ではなく読み切りスタートだったそうですが、ちぐはぐさなどはちっとも感じません。強引で情熱的な年下攻めがお好きで、なおかつ眼鏡受け好きな方にぜひともお勧めしたいです。

真木主任は、恋愛にまつわるすべてのことを閉じているのに、寂しいときは誰かに抱かれに行く。ものすごく消極的で諦めがちなのに、妙なところだけ積極的で、けれども本質を見せるわけでもなく。
本気になってはいけないと考えてもいるし、本気になろうと考えてもひとつの山はどうしても越えられない。自らが引いた一線を消し去ることはしないし、自分の欲なんて二の次だから求める場所がどこかを、おそらく自身で心を隠してしまっている。
奥底にあるのは熱情くすぶる想いであろうに、決して自我は通さずわがままにもならず、考え込んで押し込んで、やっぱり繕って消し去ってしまう。
……感情を大切にして傷つき壊れてしまうよりも、その場限りの関係とそこでだけ繰り広げられる疑似的な愛の方が有意義だということに説得力を感じました。

真木も本質的には『本当の愛を感じたかった』んでしょうね。
だからこそ須藤が真木の肩を抱いて噂話を蹴散らした、そのカラッとした心意気に惚れてしまったわけで。今までは遠ざけられるか厭われるかもしくは当たり障りない距離感を保たれるかであったのに、すっと懐に入り込んできた存在は、稀有で心地よかったのだと思います。
けれど、真木が繕ってきた『真木唯行』は心に蓋をしているから。上手に鍵を開けることができないし、なによりその鍵の場所さえ分からなくなってしまっているから。
須藤は、どんどん距離をつめ、どんどん真木の心に溶け込み、どんどん愛を知らせてくれてしまう。それに怖くて戸惑って、そうしてまた真木はフッと自身を『現実』の舞台から降ろして客観視しようと遠ざかったように思えました。
冷静になりすぎてしまう、そのとき、自分の感情はすべて蓋をする。なにがしたい、どうしたい、恋愛に在りうるはずの欲望をすべて、フラットにしてしまう。真木なりの守り方ですし、読者側としても須藤の立場を考えると致し方ないとも思うわけで…。

でもやっぱり、真木の思うように、ほんとうはしてほしいんです。
我慢なんてしてほしくない、須藤を欲しがってほしい。須藤はあんなにも愛情を表現してくれている、真木が今まで乗り越えられなかったところを「しんどさに耐えてください」と懇願する。甘っちょろいことかもしれないけれど、その勢いがまぶしいくらいでした。
そう、真木にとってあまりにも真っ直ぐな須藤は、眩しかったのでしょうね。
だから遠巻きに見るだけで、追いかけることもしないで、触れ合わない距離感をかろうじて保てる程度。関係などなくっても、好きでいる、ただそれだけ。 only ですね。

物語後半、目頭が熱くなりました。特に、「上書きされてしまう!」、あのシーンは鮮烈です。
参りすぎてやや精神的脆さを見せる真木でしたが、今まで 特定の相手は作らない としていた彼が完全にひっくりかえる、あの瞬間! 必死な姿に鳥肌が立ちました。
走馬灯のように駆け巡る、須藤を好きになったきっかけの記憶。真木というフィルターを通して読者が見る須藤の無邪気な笑顔がこのうえなく素敵なんです。
衝撃的な場面を目にしてやはり気が動転し、オカシクなっている真木にはうすら寒い怖さもありましたが、行き過ぎた悲しさは人を翻弄しますもの。ここで練習していたからこその返事が、雨の中でできたことにまた涙しました。
好きって言われたら、うれしいじゃない。幸せなことだよ、なにも諦めることじゃないんだよ、ちゃんと幸せになっていいんだよ。ふたりで歩いていけばいいんだよ。
セックスだって、寂しさを埋めるために誰彼かまわずするものでなくて、ちゃんと心許せる相手とすればいいんだよ。好き、という言葉を、好き、と言っていいんだよ。

須藤が心を許せるのは真木だけであって、なにより彼は初めから真木をきちんと見ていましたよね。そして情熱的で、温かい人。輝かしいほどのまっすぐな人柄に、心打たれます。
親兄弟のことに関してもしがらみはありますし、社内メールで噂全開の会社ですからこれから心苦しむこともあるでしょうが、真木もずいぶん変わりましたし大丈夫なのでしょう。(だって! あの真木が! 傘はあれども往来でキスを自らするだなんて!)

胸が苦しくなる場面も多い作品ですが、ねっとりとしたベッドシーンはドキドキしますし、ラストには光がありホッとできる素敵な一冊でした。
ストーリー自体はシリアスなですが、初回封入されておりますペーパーはクスッとできる可愛さがあるのでぜひ! ぜひ!

13

俺が欲しい、俺は欲しい、俺が欲しい。

2014年「初泣きBL」となったこちら。

ランキング上位だけれど初読み作家さん(だと思う)という事もあり、コミックスを買って万が一失敗したーと思うのも嫌なので、電子書籍サイトでサンプルをまず拝見しました。
サンプルで読んだ時は、『あまり好みの絵柄じゃないなぁ…』と思ったのですが、数日間そのサンプルを忘れる事が出来ず、結局そのまま電子書籍サイトにて購入に至りました。

今、読んだ直後なのですが…。
こんなに心にキて、切なくて辛くて、泣いてしまうとは思いもしませんでした。

上司という立場にある、ゲイで自分を出さない真木。
部下で、真木とは対照的な性格のノンケの須藤。
1冊丸々二人のお話でしたが、須藤が真木を好きになり、真木じゃなくちゃダメになる過程がスムーズで違和感を感じませんでした。
又、スムーズであるが故に、切ないポイントがジワリジワリと織り込まれていて、いい意味でずっと低空飛行をしているかのような気分。
淡々と、だからと言って波がナイ訳じゃなく。
須藤の立場も真木の感情も、思惑も歯がゆさも恋心も愛情も。
全てがゆっくりと、けれどしっかりと心に入り込んできて、がっちり握られ、全て持って行かれました。
読み進めても進めても、「終わりがない」感覚に陥るのです。


電車で、須藤の言葉を反芻して、うわごとで返事をするあのシーン。
アレがまさか、まさか再び通じ合った時に繰り返されるとは…。
考えても考えても、涙しか出て来ない自分がいます。
それほど、感情移入しました。

須藤目線から見ると、真木の物事の考えって一風変わっていて、きっと世間で見てもそう感じる部分がある。
けれど、真木の捉え方って、決して間違っている訳でも理解できない訳でもない。
『少しズレてる』という言葉がこんなに当てはまるなんて。


会社のトイレで致したり、須藤の自宅で致したりして、セックスシーンは大胆に描かれているんですが、絶対的に必要なセックスだなと思えてならない。
線が細く、特に真木なんかは華奢にすら見える。
だからこそ、あれだけ乱れる真木には相当淫猥な印象を受けたし、かなり性欲が強そうに見える須藤も裏切らない。
付き合ってはいない、まるで取引のように始まった体の関係が、綺麗で仕方ありませんでした。


「俺が欲しい」も、「ありがとう、頑張る」も。
「カーキー入刀」も、「重たい関係になりましょう」も。
きっと暫く忘れられない言葉たちになりそうです。
どの言葉を聞いてもズシンと来て、ただひたすらその余韻に浸りたくなる。
そんな作品に出会えたことに感謝します。

13

まだ読んでいない人がうらやましい!

切なくて胸が痛くて、
何度も読みたいと思える作品ではないかも知れませんが、
“神”以外の評価は浮かびませんでした。

部下×上司の社内恋愛です。
部下の須藤(攻め)は、実は常務の息子。
心が通じ合い、幸せな蜜月を過ごしていた二人ですが、
真木(受け)は、彼の将来を考えて身を引くことを決心します。

心から深く愛する、唯一無二の相手の存在。
その恋を諦める決断は、勇気です。
潔い別れは美しかったですが、
会えなくても、触れられなくても、
どうしようもなく好きで、その気持ちを止められない!
その人間的な感情の方が美しいと、自分は感じました。

朝起きて一番にすることは、須藤を思い出すこと。
チャイムが鳴れば須藤ではないかと期待し、
日常の様々な出来事から須藤を連想し、涙をこぼす真木。

一日一日をこんなにも苦しく過ごしているのに、
社内で顔を合わせれば、何でもないような笑顔を向ける。
そんな真木の危うさと健気さに、心が締め付けられました。

「どうしよう、須藤…、寂しい」
「こんな時、前はどうしていたっけ」などの、
痛々しいモノローグは不憫で見ていられず、
この受けは、絶対に幸せにならなくてはいけないと思いました。

衝撃を受けたのは、
自暴自棄になってしまった真木が、
誘われるがままに、行きずりの男とホテルに入ってしまう場面です。
いざ事に及ぶ段階で真木は抵抗し、部屋を出ようとします。

真木の手首を思わず掴んで引き止める男を振り払い、
「上書きされる!」と泣きながら叫ぶシーン。
そして、その手を繋いでいた日々のフラッシュバック。

二度と触れることが出来なくても、
そのぬくもりの記憶を支えとして生きて来た真木の慟哭が、
心臓にズシンと響きました。衝撃でした。

真木側の感想ばかり書いていますが、
須藤側の気持ちもシッカリ描かれているので、
お互いの心情がよく分かり、とても読みやすかったです。

そして、激しく心が呼び合うように、魂が惹かれ合うように
再会を果たす二人の場面は涙が止まりませんでした。
この台詞はあの時の…?など、
見落としてしまいそうな小さな出来事も伏線として使われ、
お話全体に上質感を感じました。

もともと好奇心から始まった恋で、綺麗ごとばかりではなく、
リアルな男同士の恋愛として描かれている点も好みでした。
ハッピーエンドのおとぎ話ではなく、苦みたっぷりの辛口なお話ですが、
だからこそ、エンディングは読者にとっても大きなご褒美で、
映画を観終わった後のような、深い感動がありました。

麻生ミツ晃さんの絵は個性的で、得意ではなかったのですが
そんなことは全く問題になりませんでした。
むしろこの絵だからこその空気感や、独特の味がお話にマッチし、
本当に素晴らしかったです。まだ読んでいない人がうらやましい!

迷いなく“神”評価とします!

13

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