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◆不可視の傷あと(表題作)
この作品だけで評価するなら中立にするところでした。掴みやキャラクターの背景について想像を膨らませる余地があったのは良かったのですが、シーン同士の繋ぎが浅いというか、唐突に感じてしまう場面が多かったです。突然好きになったり、突然記憶を失ったり…。ただ、デビュー作のようなので、倉橋先生の作品をたくさん読んできた今となっては、きっと先生が今同じ2人で描いたとしたらもっと繊細な物語になるんじゃないかなという気がします。
◆Loose
こちらは表題作ほど違和感のある部分はありませんでした。弱々しい見た目の受けが、実はビッチだったという意外な展開。短いながら上手くまとまっていたんじゃないかなと思います。
会社の先輩・後輩のお話でした。
表向きには愛想の良さを振りまいて、ウラでは仕事のために枕営業もしている片瀬。
でも彼がそんな風になったのは過去のトラウマが原因、ということなんでしょうかね。
義父との確執というか虐待?があったのは読み取れましたが、断片的な描写だったのでどんなエピソードがあったのかまではわからず。
それでも渋谷の記憶が一瞬で消えてしまうほどの強いストレスをいつも感じていたということはわかりました。
学生時代うやむやになった関係が大人になって再会して、何年か越しに結ばれたのは良かったなと思いました。
ストーリーは浅めな感じですが、絵はキレイでした。
倉橋先生のデビュー作は読んだことがなかったので、読めてよかったです。
倉橋先生の作品は登場人物の心情が表情やセリフに表れていて、「サラッと読み終わっちゃうレンアイマンガ」で無いところが好き
本作は表題作以外にもお話が入っていて、一つ一つが物足りない印象ではありますが、心情表現の丁寧さは健在です
人畜無害そうなキャラクターも、人らしく自分勝手な面や何らかのこだわりがあって、振り回す側・振り回される側と単純な構図ではなく、複雑に絡み合っているところがポイントかな?すごく日常に近い感じ
一つ目は、マクラで営業成績を上げつつも、そこに疲れや虚しさを感じているサラリーマンが、好きな人と再会する話
いっそ忘れてしまいたいほどの想いと絶望が静かに描かれている
二つ目は、ネクラな大学生と性に奔放なオトナの話
純真さが心を溶かしていく様を描くにはちょっと性急すぎたかな?という印象
いずれにせよ倉橋先生の作品はやさしくて大好きです!
別の本ですが、アイドルたちの恋愛模様が描かれている『ハローモーニングスター』が最高!
最近の可愛い♡に特化した作品群とは違い、なかなかの切なほの甘い作品。
ちょっとした後ろ暗さみたいな、仄暗い精神的負債もあって。
それは男同士の葛藤、というよりも。
幼少期のトラウマとか、思春期の忘れてしまいたい葛藤だったりする。
実際に片瀬は、忘れた過ぎて、記憶を一部失くしている。
フラッシュバックする、義父からの虐待。それが詳しく描かれることは無い。
封印してしまった記憶を呼び覚ますという、ちょっぴりミステリーな趣きもあって。
それでも、そこを掘り下げる事は無く。
中編なので。表層をふわりと撫でる様な。優しく包む様な。
そんな感覚で持って、優しく着地させている。
そうして、倉橋先生の絵が、それに相応しく、優しくて。綺麗で。
不可視の傷あとは、不可視のままで。きっと癒してくれるのだ。
片瀬の目尻と口元にある黒子が色っぽい。一見なよやかに細身の彼が「攻め」というのも、
それはそれでエロい。
彼が、嫌な事もいい事も、丸ごと記憶を取り戻して、自分を取り戻すというお話しなんだけど、
こう書くとどうにも暗いんだけど、それを優しく読み聞かせる様な筆致なのは倉橋先生らしいというか。
同時収録は、童貞くんがビッチに振り回される、どうしたって「Loose」
このビッチの可愛さもまた、倉橋先生らしくて♡
中編が2つ収録されています。
本当に絵が綺麗なのでそれだけでポイントが高い作者さんだと思うのですが、なぜか当たり外れが激しいのです、わたし基準ですが。
【不可視の傷あと】萌
あらすじを先に見てから作品を読んだのですが…。
片瀬は器用な腹黒人間という感じで、決してワンコキャラではなかったです。
ワンコキャラなら本人に聞こえるように黒い噂や陰口を叩かれないはず。
無理にワンコで言うならドーベルマン。ワンコ改めお犬様。
媚びないというと強いイメージですが、渋谷は気弱な引っ込み思案でした。
「ワンコキャラ」も「媚びない」もその人物に大きく影響するイメージを持った設定なので、この間違った情報に左右されると違和感が引っかかって、入り込むのが遅れるかもしれません。
トラウマ、現実逃避のための記憶の遮断からの再生がテーマでした。
作品の長さのせいなのか、トラウマの元となった父親のことは断片的な匂わせだけで、片瀬と渋谷を繋いだ片瀬の首の傷あとも父親がつけたものだとは思うのですが、その場面自体はありませんでした。
傷の位置も高校の時は詰襟で隠れる位置だったのが、社会人になってからは耳の下の後ろの、ちょうど襟足で隠れる位置になっていて、あれ?と。全ページ見返して傷を確認したのはわたしだけではないはず。出て来るのは3コマだけです。
タイトルの方の傷あとは「見えないこころの傷」の方ですが、片瀬自身が父から受けた傷、片瀬自身が渋谷につけたと思った傷、そのことで片瀬のこころに深く残った傷。渋谷の方が片瀬につけたと思い込んだ傷。いろいろな不可視の傷が出てきました。
見えないからこそ誰かに見つけてほしい、見えないからこそ本当はそんな傷はなかったんだと分かってほしい。そんなもどかしくも悲痛な思いが描かれた作品でした。
最初のあらすじによるミスリードがなければ、もっと素直に受け取れた作品だったと後悔しきりです。
【Loose】しゅみじゃない
まさにゆるい。
ノンケ喰いのビッチと隣に住む純情大学生の話でした。
この作品を読んで、もしかして小柄な可愛い系を描くのは苦手なのかなと思いました。
純情くんの妙なポジティブさに萌え要素が減ってしまった。こういう作品では本気になったのにビッチは遊びでしたと分かったあとの傷つくところが見どころだと思っているのですが、そこがスコーンと抜けてます。つばめを助けて若いつばめを手に入れたという話でした。
描き下ろしは表題作の後日談でした。
これは文句なしの萌2です。傷が治ったふたりをもっと見たかったと思わせる良い雰囲気でした。