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表題作ラブラド・レッセンス

(仮)日賀睦
医者
(仮)藤代春次
写真家

その他の収録作品

  • after story①,②
  • カバー下漫画

あらすじ

目が覚めると病院のベッドにいた写真家の藤代春次。
どうやらカメラをかばって階段から落ち、意識不明のまま搬送されたらしい。
担当医の日賀睦は、偉そうな態度で何かと春次をイラつかせる。
だが、なぜか春次の創作意欲も刺激するのだった。
そして、睦もまた自分にないものを持つ春次が気になって……。

作品情報

作品名
ラブラド・レッセンス
著者
ymz 
媒体
漫画(コミック)
出版社
大洋図書
レーベル
H&C Comics ihr HertZシリーズ
発売日
電子発売日
ISBN
9784813030997
4.1

(143)

(76)

萌々

(30)

(21)

中立

(10)

趣味じゃない

(6)

レビュー数
23
得点
573
評価数
143
平均
4.1 / 5
神率
53.1%

レビュー投稿数23

読者の行間読み力を要する作品

1回通して読んでみただけだと面白さはわかりにくいかもしれない。
セリフや間など空気感を味わうタイプの話な気がします。
また、2人のトラウマや欠点的な部分も匂わせてるだけで深く描いてるわけではないので相手に出会ったことで解消されていくカタルシスを得るものではなく、やんわり、じんわりと解消のようなものがなされてる。
あと、カバー裏とかも見て思いましたが、作者はあえて読者に見せる情報をカットしてるのかとも思いまいた。好きになる過程がちょっとあっさり感もぬぐえません。

前半あたりは淡々としていてラブラブしさもなく、後半でも相変わらずなのですが、女性のライバル?がいいアクセントになっています。
睦(黒髪の方)の元カノのがちょっと主人公的な回があるのですが、彼女の気持ちに共感してしまいます。
「なんで忘れてしまうのかしらね」
彼女のセリフは印象深いです。
それ以外にも2人のセリフは読み直してああいいなあと気づくものもあります。
それと絵で描写されてるのはキスまでです。



3

自分だけの光を見つけてくれる

目を覚ますと病院のベッドにいた写真家の春次(しゅんじ)。
納得のゆく作品が撮れないことと腕の骨折が重なり、写真をやめようかと弱気になるが、主治医の睦(むつみ)の何故だか偉そうな態度と「大丈夫」という言葉に不思議と元気づけられる。

ぶっきらぼうで、でも優しくて、どこか本心の見えない睦。そんな睦を知りたくて、春次は食事に誘ったり彼の家へ料理を作りに行く。
睦もまた、春次の素直な明るさに惹かれて笑みをこぼすようになります。
そうして少しずつ時間を重ね、互いの心のなかにある見えないもの、大事にしていたはずのものゆっくりと思い出し、知っていく。
とてもゆったりとしたお話です。

作中にも出てきますが、タイトルの【ラブラド・レッセンス】とは、鉱石である"ラブラドライト"の特性。見る角度や個々の石によって様々な光の色を見せるこの石の特徴をそう言うのだそうです。

『見ようとする人にだけわかる光』

相手がくれる優しさも、愛情も、正直さも、受け取り方は人それぞれで、良くとる人もいれば悪くとる人も必ずいる。その人のもつ魅力や人間性というのは見る人によって七色に変化します。

言葉も感情も、ついでに行動も素直でよく笑う春次。
他人への深い優しさをもちながらも、感情や言葉を現わすことが苦手な睦。作中に登場する睦の元恋人なる女性は、誰に対しても等しく優しい睦の人柄を理解することができませんでした。
対する春次は、それが睦のありのままの姿だとあっさり言います。
また、感情を表に出せず持て余す睦にも「お前はそのままでいいよ」と素直に言葉を伝えるのです。

物語の全体的に恋愛や萌という要素は薄いです。
前作のお話もそうでしたが、どちらかといえば人間性などをベースに、一人と一人の心の交わりを緩やかに、温かみのある味わいで描いています。

最終話での睦の色々悟った顔というか、春次を見つめながらふと気付いたらこんな処に行き着いていたよ、というような表情はとても印象的でした。
睦の本当に欲しかったものを思い出させてくれる春次。
明るい彼の光は睦の優しさも不器用さも柔らかに受けとめ、春次もまた睦だけのもつ小さな光を愛しく思っています。
何かあげたい、返したいという想いに満ちたやりとり。穏やかな雰囲気に包まれた素敵な終わり方だと思いました。淡く色づく表紙がそれを現わしているようです。

巻末、カバー裏に後日談があります。
睦よりも春次が押せ押せって感じで可愛らしいです。

今回もymzさんの魅力あふれる一冊だと思いました。

4

かけがえのないきみ

ymzさんの新作、楽しみにしていました。
前作『さよなら、ヘロン』と比べ、シリアス度は低め
沸点と甘さもかなり控えめなのですが
ymzさんの作風というか、感性ってすごく魅力的なんですよね。

医者の睦(むつみ)と写真家の春次という
普通なら接点のない職種で性格も真逆のふたりが知り合うことで
ゆっくりと動き出していく物語です。

出会いは医者と患者として、
そこからはじまるちょっと不思議な交流。
不思議と思うのは、真逆のふたりが違和感なく
理解し受け容れ合っているからで、
友達や恋人とはちょっと違うけれど
互いを尊重し、そのままで良いよって、大丈夫だよって言い合える
パートナーのような関係性として描かれています。

忙しい中で時間を作って会うこと、
一緒にごはんを食べること、電話で声を聞くことー
それは、代えのきく存在じゃないこと
誰でもいいわけでは決してないということ。

視点は、はじめは春次、そして睦、
睦の元カノからまた春次へと滑らかにバトンタッチされ
それぞれの想いが縫い、紡がれていきます。

睦の元カノさんの飄々としたキャラがとても好きです。
女性として、彼女が睦に求めていたことがよく分かるし
春次へのちょっと切ないエールもすごく良かった。

”ラブラドライト”という鉱石について
はじめて知ったのですが、とても素敵ですね。
調べてみるとこの鉱石は、自信を失いかけた時、
生きる意味を語りかける効果を持つらしいのですが、
ふたりのパートナー性にぴったりだと思いました。

終盤になって、ようやく自分の気持ちを明らかにするふたり。
自分の家の鍵を自然に渡す睦、
ラブラドライトと共に、仕様がないやつと言いながら
好きだと睦に気持ちを差し出す春次。
色気も甘いロマンスもなく
通常運転の延長上にある、ごく平坦なテンションなのだけど
その自然さが逆にグッとくる。

巻末、『after story』でようやくふたりのキスが見れます。
が、期待するなかれ、やっぱり糖度低めです(笑)
それでも、当たり前じゃないそこにある温かさや幸せが
じんわり伝わってくる素敵なお話となっています。

”萌え”とは明らかに違う。
でも、呼吸するようにごく自然に相手を求め、
一緒にいるふたりが描かれる今作が魅力的だと思うし
ymzさんの作品が好きだなあと改めて思える、そんな一冊でした。

4

本質、本音は見えない所にある

沁みました、心に
大人になっても抱えてる自分の人には見せられない弱さ、脆さ
それを見せられる相手に巡り合えた睦
医者という職業柄人に頼られなければならないとプライベートでも分別出来なかったんです
優しさを与える事は出来ても、無条件に優しさを与えられる事に慣れずに距離をとってしまって...
そんな睦にゆっくりと時にぐっと近づいていく春
素直に言葉を紡ぐ春を羨ましく思う睦

徐々に近づく距離
写真家の春は写真は一場面しか切り取れない
でも、そこには映らない背景が大事
見えない所に本質、本音はあると知ってるんです
そういう人が側にいる事で見せれない自分を気遣って貰える安心感に心が開けて、甘えられる様になっていく睦

この見えない所にある本質がこの作品のキーポイントで所々に散りばめられてるんです
ymzさんのセンシティブな作品の真骨頂だと思いました
不器用で自分の本音を明かせず、甘えられない睦
素直で敏感で時に強引な春
最後に結ばれたのは最早必然でした

素晴らしい小説を読んだ時の共鳴感を味わいました
ymzさんの描く心模様、キャラに心が潤い救われる気がしました

そのままでいいんだよ、って肯定して貰ってる様で
所謂分かり易いBL萌えではない作品ですが、だからこそ最後のキスシーンにキュンとしました
BL界では稀有な作品を描かれるymzさん
私は大好きです、これからもずっと応援していきます

7

目に見えない大事なもの

カメラマンの春次は、階段から転落する際カメラをかばったせいで頭を打ち、病院に搬送された。主治医となった睦は初対面からタメ口をきく、何を考えているのかわからない男で春次を苛立たせる。その一方で睦が気になって仕方がない春次は、何かとつきまとい、退院後に交流を始めるが…。


独特の雰囲気のある作品でした。
本編では受け攻めは判明せず、キスシーンすらないほのぼのな進展です。でもじっくりと育っていく気持ちが見えるので不足は感じませんでした。
どこからふたりの気持ちが恋愛感情になったのかな、と考えてみたのですがわかりませんでした。頭をなでられたときかなぁ。もっと最初の方の、写真をプレゼントされたときかなぁ。わからなかったけれど、間違いなくどこかで恋に落ちたんでしょうね。

本番がないので受け攻めはわかりません。そもそもお互いに肉体関係を求めているのかどうかも疑問。(カバー下のおまけマンガにて、そういう関係があるのだけは判明しました)
精神的につながっているだけで、かなり満足できるような恋人同士だと思います。

3

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