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“ヤバい男達が組んだ”
連載中から目が離せなかった梶本さんの新作がついにコミックに。
上下巻合わせて100ページ以上の描き下ろしがあり、連載時より更に壮大な人間ドラマに仕上がっています。
舞台は90年代の北海道。
道警警部補の鬼戸(攻め)はヤクザ幹部の八敷(受け)と組み、彼を情報提供者として次々銃器を摘発。
やがて身体の関係を持ち、互いの立場を越えて協力し合うようになる二人ですが、果たして無事生き延びることが出来るのか。
そして、何がここまで二人を駆り立てるのか。
二人の間に起こった出来事を様々な視点・時系列から少しずつ解き明かしていく凄絶なサスペンス作品です。
※殺人・強姦・人体欠損(耳や指があんなことに…)など暴力表現やグロ描写が多いため、耐性のない方には少々キツイかもしれません。
上巻で主に描かれるのはヤクザ・八敷の人物像。
凄い美人なのに顔は切り傷だらけ、指詰めにより足の指は殆どなく、その生い立ちも酷いもので…と、一見同情すべき悲劇のヒロインのように見える人物です。
「特区」と呼ばれる被差別地区に生まれ、幼少から父親に性的虐待を受けてきた八敷。
彼に代わって父を寝たきりにしてくれたのが、幼馴染でアニキ分の佐伯でした。
やがて一緒に暴力団に入る二人ですが、出世する八敷とは対照的に、佐伯は薬に溺れ度々ヘマをし、その尻拭いとして八敷がエンコや輪姦の罰を受けるように。
そして遂に、佐伯はシャブを横流しした罪で…。
ここまでの八敷は、好きな人にとことん尽くす健気な人物に見えますが、それだけでは終わらないのが本書の面白いところ。
描き下ろしの佐伯視点の番外編を読むと、彼に対する印象はガラリと変わってきます。
八敷の悲劇は、可哀想なお姫様のような境遇にありながら、本人は誰かに守られるようなヤワな神経の持ち主ではなく、むしろ人を傷つけることに罪悪感を持たない「異常者」である点。
自身の父親に自ら手を下せなかったことを残念がる彼は、根っからのサイコパスなのだと思います。
そんな八敷を守るつもりがどんどん差をつけられ落ちぶれていった佐伯は、心をコオリにすることが出来なかった(ある意味)まともな人物。
幼い頃は互いに支え合っていた筈の二人が、どんどんすれ違っていく様はただただ切ないです。
ではそんな八敷と組んだ鬼戸はどのような人間なのか。
上巻の鬼戸は、柔道や結婚に失敗した過去こそあるものの、ワイルドで男前なオヤジという印象。
死を望む八敷を励ます姿は救いのヒーローのように見え、八敷とイチャつくシーンの甘さにも和みます。
しかし彼が時折見せる暴力性と暗い瞳、そしてラストに引用されるオペラ「ファウスト」の劇中歌は、彼の中にも何らかの闇があることを暗示しており、非常に先の気になる引きです。
互いに何かに挫折した「負け犬」同士の二人は今後どう愛し合い、どのような結末を迎えるのか。
下巻の展開に注目です。
梶本先生が引退宣言されたのは先月のこと、その時は既に「コオリオニ」上下巻を購入していましたが、諸々あってすぐには読めない状況にありました。
梶本先生、とても気になってたんですよ。「高3限定」の一場面を見たときから只者ではない妖気を感じまして、ずっと読みたいリストに入っているのですが、まだ未購入なのです。ポチ寸前までいっては本当に凄そうでポチに至らずの有り様でしたが、これは迷わずに買いました。
私にとっては初の梶本作品、期せずしてラストということにもなってしまいましたので、腹を括って読ませて頂きまして…衝撃を受けました。言葉はガサツになってしまいますが、「うおー!こんな凄まじいのよく書いたな!」という感じ。
評価は神です、何度か評価間違えたと書いている私ですが、神以外にありません。時間を置いて10回評価するとしたなら10回神評価を着けると思います。評価は揺るぎませんが但し、読後感は複雑なのです。
そう、複雑。
読み終えてそろそろ十日ほどは経つのですが、未だに怖いのですよね。それは何というのか心理的な怖さ。
流血のバイオレンスシーンもありますが、私はそれは割と大丈夫だったんです。梶本先生の書き方が巧みであられるのでそこはね、思っていたよりはマイルドだな、と。
だけど「オニ」が怖い!
私が勝手に思っているコオリオニは、八敷と鬼戸の二人です。
八敷は受けで美貌のヤクザ。この八敷の「オニ」の部分は何となく分かる…というか許容範囲にあるのですが、攻の刑事の鬼戸、この人が怖い!本当に!
ストーリーは実際にあったという北海道警察の潜入拳銃捜査(潜入は日本では違法でして、問題になったようです)が、ベースにはなっていますが展開上はそれほどでもありませんでした。
コオリオニの意味と心理的な恐怖がジワジワきましたが。
・・・繰り返しになりますが、絶対的神評価でもキュンとした萌えはなかったですかね。もっと深い死生観みたいな衝撃は受けました。
実は今もレビューに怖い以外の感想は浮かびません、こんなに凄い作品を書かれた梶本先生の突然の引退も、ある意味では納得でしょうか。
一作入魂の凄まじい気迫に呑まれます。
そして正直ですね、この作品は大きな声ではオススメはしません。それでも、一度読んだら忘れられない深みが見れるのではないかと思います。
私は、レビューを書きながら再度目を通しましたがやはりすぐにまた読む気にはなれません。もう少し時間が経ってから読んだ時にどう感じるか。感じられるか。いつか書けるかもしれないので、下巻は空けておくことにします。
なんとなく怖くて手を出せずにいた梶本レイカさん。
本作の電子版が発売されるというニュースに勢い付けられてついに読むことができました。
めちゃくちゃ面白かった!!!!
ビクつき過ぎてました私。(その後「高3限定」「悪魔を憐れむ歌」も読んだので追記。作者比で本作は読みやすかった。梶本作品ビギナーが最初に読むのに良いと思います。)
上巻に収録されている初版刊行時のあとがきと下巻に新たに加えられた電子版のあとがきを続けて読むと、今回はじめて作者の作品を読んだ私でさえ思わず胸が詰まるものがあったので、電子版発売をきっかけに手に取ってみられる私みたいな読者が1人でも多く生まれればいいなという思いを込めてレビューします。
本作の題材に使われているのは、今から20年ほど前に北海道警察が実際に起こした不祥事「稲葉事件」。
当時の警察とヤクザの腐敗した関係の中で出逢ってしまった刑事とエス役ヤクザのスリリングな物語です。
上下巻合わせて約500ページの分厚さですが、始まりから終わりまでまさに息を吐かせぬ展開で、彼等が最後に掴むのはピカレスクロマン的カタストロフィか、それともカタルシスか、というハラハラ展開にページをめくる手が止まりませんでした。
先にちるちるの↓の記事を読んでおくと、本作で描かれる警察とヤクザの関係が理解しやすいです。
綾野剛主演映画とBL『コオリオニ』の、恥さらしな関係(2016/03/28)
https://www.chil-chil.net/compNewsDetail/k/blnews/no/10795/
増加する銃器犯罪を抑止する為に警察が大々的な銃器摘発キャンペーンを実施した1990年代、厳しいノルマが課せられた刑事達は、摘発件数を上げるためにヤクザと組んで拳銃を横流ししてもらう出来レースに奔走していた。
そんな中で出逢った刑事の〔鬼戸〕とヤクザの〔八敷〕。
鬼戸は、言われたことをきっちりとひたすら真面目にやってきた男だったが、その真面目さが仇となった。
八敷は、特区の生まれで生まれた時から社会から弾かれて生きてきた人間だった。
彼等は「報われない」側の人間だった。
勝ち馬になることを夢見て手を組んだ彼等は、果たして負け馬の人生から抜け出せるのか──
実際の事件の方に引っ張られたせいか、無茶な逆転を狙って腐り堕ちてゆく男達を描いた物語かと思いきや、これがそうでもなくてですね。
作者の言葉を借りて例えるなら、絶望のスコップで一掘りするごとに希望が掘り出されるようなトーンで描かれていくんです。
もはや明るい未来しかないような力強さで。
だからこそ、余計にハラハラさせられます。
この希望はちゃんとラストまで続いてくれるのかと。
鬼戸に焚き付けられた八敷がついにヤクザサイドに向けて賽を投げ、もう後戻りはできなくなった2人の物語はここで一旦【to be continued】。
下巻に続きます。
そして。
この後に収録されている〔佐伯〕の番外編。
佐伯は、八敷と同じ特区の生まれで八敷をクズの道に引き込んだ厄災のように描かれ、死んでいったキャラ。
これが凄い。作品の印象を一気に変えるドンデン返し。
最初読んだ時は、本編で読んだ内容と合わないこの番外編に混乱しました。
この番外編のアンサーは下巻にあります。
電子版には、さらにその後に八敷と佐伯の16ページの番外編「さよなら文豪」が追加収録されています。
ディスレクシア(識字障害)の佐伯のために八敷が買ってきた“文豪”で佐伯が小説を書くお話。(若い世代にそもそも文豪やワープロは通じるでしょうか?)
パラレルストーリーのようにも感じられるこの描き下ろしが意味するところは、もし佐伯がワープロを使ってこんなふうに文字が書けていたら佐伯の人生は違っただろうか?という何人かの読者の頭によぎったかもしれないたらればに対する梶本さんからのアンサーなのだろう、と思いながら読みました。
「俺は俺だ」という力強い自己肯定。
これこそが、この作品のテーマでしょうから。
※電子版上巻収録内容
第1話「刑事ごっこ」
第2話「ヤクザごっこ」
第3話「ごっこの始まり」
第4話「狐の嫁入り」
第5話「コオリの宝石」
番外編「コオリの女王」
番外編「さよなら文豪」(電子版描き下ろし 16ページ)
初版刊行時のあとがき
(全278ページ)
ふゅーじょんぷろだくとの電子は問答無用で白抜きになりますが、本作は青年誌レーベルから電子化されたおかげで最小限で済んでいます。(紙版と一緒かな?)
シリアスなストーリーをエロ本化されずに読めてありがたいです。
【電子】ebj版:修正◯、カバー下なし、裏表紙なし
友人に「すごいよー」と勧められ購入の初読作家さん。
なにがどうすごいのかは教えてもらわず、多少グロかろうが構いませんよとページを捲り、なるほどと唸る。
時系列がバラバラで、ちょっとわかりづらいけど、八敷、佐伯、鬼戸が見てるのは、同じ世界のはずなのに、全くの別物というところが恐ろしい。
特に佐伯においては、八敷と子供時代からの双方の感覚の大きなズレに戦慄。
いつどこでどう裏切られるのか常に番狂わせというのも怖い。
誰も信用出来ないよこんなの。
いつもニコニコ忠実そうな興津も、こういう人が敵に回すと一番厄介な気がします。
下巻に幸せが待っているとは思えなくて読むのが怖い・・・。
梶本先生の作品といえば、血生臭な暴力的・性的描写の異色作品が印象的。高3限定を読む時に相当気分が悪かった。
今回の作品は、設定だけを見れば、警察Xヤクザ情報屋、武器管理、薬物密輸等、どうみてもダークな設定。そのダークな話の中に歓楽な雰囲気が自然にストーリーに入るのが不思議。
美人でヤクザの八敷は幼年から数々の不幸を重ね、それをこらえ、今の美しく強い彼に成長した。鬼戸とは、お互い似た者同士だし、慰め合うようになる。似たようなキャラクターも他の作品にないでもないが、梶本先生の独特な色気に圧倒されちゃった。受けの艶と攻めの男らしさを壮絶的に醸し出している。
番外編は八敷の過去の話、そちらもとても読み応えあり、衝撃の連続(笑)