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主人公の錬(受)は、自分と同じテニスサークルに所属する喬介(攻)に恋をしている大学生。
親友として傍にいたけど、自分の気持ちを抑えるのにも限界がやってきてーー…という物語でした。
錬という人間の根幹にあるのは、ゲイであることに対する嫌悪感や罪悪感。
決してゲイバレしたくないという気持ちから、錬は本来の自分を押し隠し、がさつで横柄なキャラを演じています。
また、強い嫌悪感や罪悪感は、自慰時の女装癖へと繋がっていました。
女の子になりたいわけじゃないけど、女の子のふりをすることで、男性を求める罪悪感を少しでも和らげたい…ということなんですよね。
女装した自分の姿を「グロい」と笑う錬が痛々しい。
個人的にワケあり女装癖持ちの受け様が大好きなので、ガシッと胸を掴まれちゃいました。
自己評価の低い受け様は月村先生作品ではあるあるですが、ここまで自分自身を「嫌悪」しているのは珍しいかも…という印象。
そんな錬の秘密を知るのが、ふたりが通う大学の事務員・矢崎です。
矢崎はシニカルでいまいち掴みどころのない性格をしていますが、錬にとっては自分の女装癖を受け入れてくれる唯一の存在となります。
恋愛相手ではないからこそ、矢崎の前では肩の力を抜くことができ、素のままの自分を晒せるのでした。
もうね、ほんと矢崎が魅力的なんですよ。
すぐふざけるおちゃらけキャラだけど、本当に錬が落ちてる時は静かに受けとめてくれて。
これ、もし矢崎が錬に本気だったら辛すぎて無理でした。
なんで矢崎を選ばないんだ(悶)!ってなっちゃう。
でも、矢崎が錬に抱いている思いは純粋な恋じゃなくて…
そこには矢崎の過去に関係する複雑な思いがありました。
このなんとも表現し難いふたりの関係性がとてもよかったです。
わたしの中で錬と矢崎の関係性は、欠けた心を持ち寄り、ただ寄りそい合っているイメージでした。
寄り添うことはできるけど、欠けた部分を埋めてあげることは出来ない。
しかも錬と矢崎は、自分の欠けた部分を埋めてくれる人が誰かを知っている。
そんな感じがしました。
あの夜ゲイバーで出会ったのが矢崎で本当によかったと思う。
限界ぎりぎりだった錬の避難所になってくれた矢崎にも必ず幸せになって欲しいです。
それが新しい恋に落ちることなのか、はたまた過去を思い続けることなのかは分からないけれど。
本編は矢崎の存在感が大きくて、そちらにかなり気を取られたのですが、続編の「空回りする恋心」では喬介の独占欲にきゅんとしました。
女装することへの葛藤、ひいてはノンケと付き合うことへの不安もきちんと描かれていて最高のお付き合い編でした。
月村先生の過去作品追いかけ中で、こちらは2016年発売。サブキャラが好きで好きで堪らなかったのですがあまり得意ではない要素があったので萌にしました。雑誌掲載分170Pほど+後日談50P+真生先生のコミック2P+あとがき。少しでも女装ネタが不得意な方は、ちょっと考えた方がよいかも。
同じテニスサークルの喬介のことが好きな錬(れん)。中学から自分の性志向を認識していて実家では辛かったため、大学入学と同時に一人暮らしを始めていて、喬介と仲良くなった後は部屋に入り浸る関係に。色々煮詰まって、喬介に思いがバレそうな気がしてきたので、ある日思い切ってゲイバーに出かけていき・・と続きます。
攻め受け以外の登場人物は
矢崎さん(カプの通う大学の事務員)、その他テニスサークルの仲間少々。矢崎さんが好き。この人のスピンオフが絶対あるのではと思ったんですけどね・・見つけられない。こんな悲しい、でも良い人をそのままにしておくのは嫌だなあ(涙)
**内容に触れる感想
受けは超超超小心者で、びびりのあまり逆ギレするタイプ。「可愛い子がタイプ」という喬介のことを好きになってしまって、可愛い子になれるかなと女装を試したりする一途な方。一緒にいられるのは嬉しいけれど気持ちがバレたら大変、大学にいる間くらい親友でいたいと、がちがちに緊張しまくっている方。だから疲れちゃって、知り合った矢崎さんは、一緒にいてとても楽だし、性癖は最初からバレてるし、ちょっかいかけてきてくれるので・・とフラッとしてしまうのは、すっごく良く分かります。
攻めはほんわり包容力大な大型犬イメージで、錬もタカをくくっていたら、めっちゃ錬の想いがバレバレだったというお話なのですが。
なんといっても個人的一押しキャラは、矢崎さん(ネコ)。
攻め受けが両想いだろと予想していて、そのふらつく錬を受け止めてあげる矢崎さんが、すごく愛おしかったです。ネコなのに「こんな可愛い子ならタチ出来る」とか言ってくれて、優しく優しく錬のそのままを受け入れてくれて。「錬、こっちにしとけ!!!」と何回思ったことかあ。時が止まっている悲しい想いがあるけれど、それに巻き込むことなく、そっと錬の想いを応援してくれているように感じて、矢崎さんには感謝しかないです。彼がいつか幸せになるお話を読みたくてしょうがないんですけど、今探してみても、なさそうなんですよね・・・うう。
大学生メインカプの可愛い恋話より、サブキャラがめちゃくちゃ気になった一冊でした。
受けの錬の自己否定、自虐が過ぎて攻撃的になってしまう言動が痛々しかったです。
ゲイである自分を認められず、女装に走るという拗らせっぷり。
ゲイばれを防ぐために細心の注意を払って「ちょっとガサツで平凡なノンケ」を演じる日々。
そして親友・喬介への想いを必死に隠すあまりホモファビアめいた発言も時にする。
そのような態度を取ってしまう自分を嫌悪し、絶望しているんですね。
そんな錬が痛々しいと思っていたので「結構前から両思いだって確信してた」という喬介の告白にムカッときてしまいました……。
だったら、もっと早くに告白してこいや!と。(それだともはや「遠回りする」恋心ではないんだけど)
とくに「好意に気づいてカマをかけたのにかわされた」とボヤいたところになんかモヤっと。
ド直球で体当たりしてこんかい!と。
そんで逃げられたとしても必死で追いかけろ!と。
(注:私の好みはワンコです)
錬は心にもないことを吐いてまで必死に演技して哀れだな…と思ってたくらいなので、気づいてるならもっと早くに救ってほしかったというか……。
攻めよりも当て馬の矢崎の存在感が大きくて、彼に全部持っていかれた感が強いです。
シニカルでひょうひょうとした矢崎という避難所があったからこそ、錬はなんとか小康状態が保たれたんだろうなぁって。
だって相手が自制心のある矢崎じゃなかったら、いつ喰われてもおかしくなかったと思うの。
ほんと矢崎さまさまだと思う。
自分の心を持て余して愚痴をこぼした錬に対して
「今はわからなくても、きっと何年か経ったら、今のその気持ちを懐かしく愛おしく思い出すよ」と諭すところで、思わず泣いてしまった……。
矢崎……。
そんな矢崎に幸あれとみんな願ってるはずなのに、救済スピンオフは数年経った今も出ていないようですね……。
でも私の妄想の中で、矢崎は一途で実直な大学生(童貞)に惚れられて、幸せになってます。
大学職員の矢崎に一目惚れしたのは新入生の攻め。
年下ということもあり矢崎は全然相手にしないのだけど、あしらってもあしらってもめげずにひたむきに思いを伝えてくるワンコ。
そんなワンコの誠実な愛によって、過去の思い出がようやく昇華できた矢崎は幸せになるのです!
喬介の好意は最初からはっきりとしていたように思えたんですが、錬の卑屈にも思える程の自信の無さがややこしくしたように感じます。
私には錬の矢崎へのなつき方がちょっと唐突過ぎたように感じたし、矢崎の人を食ったような態度も好きになれませんでした。
喬介の戸惑いや怒りは当たり前だし、あれでよく錬に愛想を尽かさなかったと感心しました。
矢崎との間をあれだけ書くならば、喬介が錬のどこを気に入っていつから好きになって行ったのかをじっくり書いて欲しかったです。
錬のぐるぐる回る恋心が可笑しくて切なかった。
がさつでぶっきらぼう設定を一生懸命に演じる錬が痛々しくて「もうやめちゃいなよ喬介を好きなこと」と言ってしまいたくなりました。
好きな人のそばでドキドキジタバタする様子が乙女っぽくて『設定』とは真逆のなのに頑張って無理していたけれどあまりの不自然さにバテバテです。
当て馬的な役回りの矢崎さんいい人だ。
意地悪かったりしても本当は優しくて人の痛みがわかる人です。
限界だった錬の逃げ場になって壊れそうな心を救ってくれました。
どんなことも受け入れ認めてくれる人がいれば大丈夫だと思いました。
そして、手に入れたら失う恐怖が付きまとうのも恋愛というもの。
好きすぎるが故の妄想と考えすぎが可笑しいような哀しいような…で泣き笑いでした。