• 電子書籍【PR】
  • 紙書籍【PR】

表題作CANIS THE SPEAKER #1

谷岡隼人,倉持会に所属するヤクザ
忠信(ノブ),10〜19歳,ヤクザが経営する高級ソープ店のボーイ兼男娼

あらすじ

三つが一つに
一つが三つに



ノブとハルとサムは孤児院の同室で、仲良しの三人組。
彼らの望みは、ずっと一緒にいて三人同時に孤児院を出ること。
ある日、【送別会】をきっかけに孤児院のヒミツに触れてしまい、
三人の関係が引き裂かれることに…!
主役を新たにCANISシリーズ新章スタート!

収録作品:

「CANIS」Chapter.1(OPERAvol.52)
「CANIS」Chapter.2(OPERAvol.53)
「CANIS」Chapter.3(OPERAvol.54)
「CANIS」Chapter.4(OPERAvol.55)
「CANIS」Chapter.5(OPERAvol.56)
「CANIS」Chapter.5.5(OPERAvol.59)

作品情報

作品名
CANIS THE SPEAKER #1
著者
ZAKK 
媒体
漫画(コミック)
出版社
茜新社
レーベル
EDGE COMIX
シリーズ
CANIS Dear Mr.rain
発売日
ISBN
9784863496095
4.5

(121)

(90)

萌々

(16)

(7)

中立

(5)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
11
得点
540
評価数
121
平均
4.5 / 5
神率
74.4%

レビュー投稿数11

満を持しての新章

CANISシリーズ新章。
前作に断片的に登場していたハロルド、岩城、サムの三人の物語になります。

ハロルドは、リョウ(前作攻め)が過去にいた組織の元ボス。
今まで曖昧だったリョウの過去関連の事情が遂に明らかになりそうで、期待が高まります。


物語は1980年、三人が11歳の頃からスタート。
ハル(ハロルド)、ノブ(岩城)、サム(サミュエル)は、アメリカの孤児院で同室に暮らしています。
勇敢なハル、賢いサム、大人しいノブ…とタイプは違うものの、とても仲の良い三人。
「外で働けるようになったら三人でここを出よう」と約束します。

ある日、三人は「新しいおうち」へ引き取られていく子どもたちの中に、送別会を開かれず突如いなくなる子どもがいることに気がつきます。
こっそり真相を調べ始めた三人は、夜中に怪しい男たちが子どもを連れて行く光景を目撃。
男の一人に見つかり脅されたことで、調査を中止しますが、その後すぐ、それぞれ別々の「新しいおうち」へ引き取られることが決まり…

と、いう感じの展開。
子どもたちの視点を通して描かれる大人たちの裏の顔、教会の闇の部分には底知れない恐ろしさがあり、
子どもなりに精一杯戦うも為すすべもなく離れ離れになってしまう三人の涙に胸が痛くなります。


そして物語後半部では、三人のうち一人だけ何者かに拉致される形で孤児院から姿を消したノブの、6年後の姿が描かれます。

表向きは高級ソープ、実態はヤクザ直営の売春宿で働くノブ。
店の女の子の代わりに、嗜虐趣味のある客の相手をさせられています。
犯されながらタバコの火を体に押し付けられる等、本当に酷いことばかりされているらしく、ノブの体は傷だらけ。
自分の体に触れたのがハルとノブだったら…と想いながら自分を慰め、その後思い出の中の二人に泣きながら謝る姿が痛々しいです。

しかし、絶望するばかりでなく、自力で現在の境遇から抜け出そうと地道な努力を重ねるノブ。
独学で様々な言語を学び、店に出入りする客たちの会話から裏社会について情報収集し…
ラストで因縁の相手を始末し、見事這い上がるノブはカッコいいですが、
少年時代の面影のない冷たい表情からは、彼の生きてきた日々の過酷さが窺われ切ない気持ちになります。

本作ではノブが大人になるまでが描かれており、ハル、サムの状況については不明。
二人がどんな人生を歩みどんな大人になっているのか、そしてどうやってノブと再会するのかは次巻に持ち越しです。

本作での性描写はノブが犯されるシーンのみですが、冒頭にハル、サム、ノブの3Pらしきカットがあり、再会後の三人の関係性についても気になります。


この新章終了後は再び現在のリョウと沓名の物語に戻るのか、まだ分かりませんが、シリーズの核心に迫る重要な章であることは間違いありません。

ダークな世界観ですが、映画のような重厚感あるストーリー展開は大変読み応えあり、オススメの一冊です。

16

名作の予感

CANISシリーズの新章です。前作までにちらちらと登場していたイケオジたちの過去を描いている今作、期待を大幅に超えてきました。これは傑作、名作の予感…!はじまりはアメリカの児童養護施設。あらすじにある通り、仲良しの3人がずっと一緒にいようとしますが、あんなこんなで引き裂かれてしまいます。1巻では主にノブがメイン。3人の中では大人しくて少し引っ込み思案な彼が、成長していくのかはたまた壊れていくのか…これからが楽しみです。痛くて辛い描写がありますが、それも必要な要素。映画のような構図で、浦沢直樹作品を彷彿とさせます。メインの登場人物だけでなくサブキャラも丁寧に描かれています。設定、伏線も細かそう…。画力が高いので物語に入りやすい。大まかなストーリーをなぞってただエロいものではなく、作り込まれてます。bl漫画の枠を超えた作品になりそうです。一見の価値あり。ストーリーはこれからなのに少しほめすぎ?でも期待を込めて。

6

ざわめき、切なく、高鳴る

読み始めから、ザワッと迫ってくるような怖さと期待。
ストーリー以前にZAKKさんの絵が伝える力が凄い。
そうしてストーリーは、ダークに、切なく、悲しく
そして、最後は続きを期待して胸が高鳴る。

CANISシリーズ、Dear Hatterの最後で幕開けが告げられていた、
NY時代のリョウの雇い主らしき男と因縁ありげな男達の過去話。
時代は1980年に遡る。


カトリック教会附属の孤児院暮らしだった仲良し3人組、
 頭のいいサム、明るく前に出るハル、そして黒髪のノブ
彼らは孤児院の秘密に気づき、それを知ったシスターやその裏が動き
運命は大きく動いていく……

 ハル ハロルド・アルド・フューズ かつてのリョウのボス
 サム サミュエル・マーフィー 財務長官 
 ノブ 岩城忠信 日本のヤクザ 

まずは三人の中で末っ子的なポジションだったノブの過去。
孤児院から拉致されるようにして連れ出された彼が
その後日本で過ごした過酷なティーンエイジャー時代。
救いのないダークな裏の世界で、静かに強く生きていくノブ。

孤児院から出て行く車で号泣するサムのアップに鼻がツンとし
男娼として犯され、傷だらけでシャワーを浴びながら、
過去の二人との絆を抱きしめて自慰をするノブに、強く胸を締め付けられた。


読み終わってドキドキが止まらず、続きが本当に待ち遠しい!
このまま失速せずに完結したならば、間違いなくBL界の傑作になる作品、
未完なので「神」をつけることに躊躇したけれど、
この昂ぶりには、やはり神をつけたい。

4

すべての始まり─CANISシリーズ 裏サイドの物語#1

一度読み出すとしばらく物語の世界に取り込まれてしまうCANISシリーズ。
まだこのシリーズを読まれていないどなたかの興味に引っかかったらいいな〜と思いながらレビューします!

いきなりここから始めますが、シリーズとしては4作目になります。
前の3作と雰囲気が違いすぎて本当に同じシリーズ作品なのか?と訝しみながら、このダークな雰囲気が自分の好みにドンピシャで、私はCANISシリーズはここから入りました。
順番に読むなら
CANIS -Dear Mr.rain-
CANIS -Dear Hatter- #1
CANIS -Dear Hatter- #2
CANIS -THE SPEAKER- #1(本作)
CANIS -THE SPEAKER- #2
となります。

私なりにこのシリーズを説明するなら、Dear Mr.rain〜Dear Hatter=CANISシリーズ 表サイドの物語、THE SPEAKER=CANISシリーズ 裏サイドの物語、とお伝えします。
同じ世界の裏社会で起こっている出来事を当事者側から描いているのがTHE SPEAKER、それをニュースで断片的に耳にしても無関心に聞き流している表社会側の住人の物語を描いているのがDear Mr.rain〜Dear Hatter、という感じです。
世界観がめちゃくちゃ立体的で多面的で、とにかく圧倒されます。
5冊読み終えても多分まだ見えているのは氷山の一角だろうねこれ。

Dear Mr.rain〜Dear Hatter(以下「前章」と書きます)の中で、主人公の部屋のテレビを通して断片的に意味深に読者に伝えられてはいたものの、前章においてはただのノイズでしかなかったものがありました。
アメリカ情勢を伝えるいくつかのニュースです。
-ニューヨークでのFBIによるイタリア系マフィア一斉摘発
-アメリカ政府関係者によるグローバル銀行のマネーロンダリング関与
-サミュエル・マーフィー前国際担当財務次官の財務長官への就任承認
前章のストーリーには直接関係なく、意味も関連も分からなかったこれらのニュースが、このTHE SPEAKER(以下「本章」と書きます)を読むことで徐々に繋がっていきます。


本章は、前章から33年ほど過去に遡って1980年から始まります。
ニューヨークのとある孤児院に物語のすべての始まりがありました。
前章では関係性の分からなかった脇役、岩城(本章ではタダノブ)、ハロルド、サミュエルは、皆この孤児院の出身者でした。

同室で仲の良かった3人は、ある日ふとしたことをきっかけに孤児院の不思議な側面に気づいてしまいます。
同室の3人が必ず同時期に“新しいおうち”が決まって孤児院を出ていくこと。
その時に送別会をしてもらえる子と、してもらえない子がいること。
してもらえない子はいつの間にかいなくなっていること。
3人は“新しいおうち”には良いおうちと悪いおうちの2種類あるのではないかと考え、真相を調べ始めるのですが、まだ子供だった彼等に孤児院の裏の顔を明かす術などなく、彼等もまた“新しいおうち”に行くことが決定してしまいます。
彼等3人の中で〈送別会をしてもらえない子〉に該当するのはタダノブでした。
ハロルドとサミュエルが寝ている間にタダノブは姿を消し、残りの2人もその後すぐ離れ離れになってしまいます。

ストーリーはここからタダノブ視点とサミュエル&ハロルド視点の2サイドに分かれて展開していきます。
この先のあらすじを書くのは控えますが、まず描かれるのはタダノブの凄惨なその後。
岩城と名を変えるまでのエピソードが読めます。
前章で身綺麗なスリーピースに身を包んでいた彼の、あのスーツ姿の下はこんなことになっていたのかと知り、ゾッとしました。

サミュエル&ハロルドのその後は「CANIS -THE SPEAKER- #2」で明らかになります。


繰り返しになるけど、世界観の厚みがほんとすごいんです、このシリーズ。
この果ての見えなさは実際に読んで圧倒されてほしい!
巨大なZAKKワールドに飲み込まれてください!

【電子】シーモア版:修正-、カバー下なし、裏表紙なし

4

淡々としたノブの表情の変化に目頭が熱くなる

 発売年に読んでいたのですが、なかなかレビューが書けずに7年も経ってしまいました。スピンオフ元に先んじて初めて読んだZAKK先生の作品であり、改めて読み直しても当時受けた衝撃が鮮やかに甦ってきます。主人公の1人である表紙の青年が倫理を大きく踏み外した世界を知る、それも、明るく温かな世界から堕ちるのではなく堕とされるという内容なので、一口に面白いと言ってしまうととても語弊があるのだけど、とにかくページを捲る手が止まらなくなります。

 孤児院の外に広がる後ろ暗い世界、メインは仲良し3人組ということで、アニメ化もされたジャ○プ系の某漫画に通じる点もありますが、こちらにはファンタジー要素はありません。あるのはひたすら醜悪な現実。そして、3人組がシスターによって格差をつけられる所も悲痛で、憤りを覚えずにはいられない。サムやハルと同じく、未来に期待も不安も感じていたノブの子供らしく愛らしい瞳が、たった数年でこれほどまでに光を失くし、虚無を感じさせる瞳に変わったことが本当に悔しいです。それでも、サムとハルとの記憶が彼を鼓舞する。BLとしての萌えもちゃんとあって、シリアスな展開とBL面を期待させるシーンが上手く絡んでいます。モノローグが少なく、読者に余韻と想像の余地を残している所も引き込んでくれる要因の1つ。絵もストーリー構成も素晴らしい作家さんです。

1

この作品が収納されている本棚

マンスリーレビューランキング(コミック)一覧を見る>>

PAGE TOP