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表題作刹那と愛の声を聞け

藤堂宗一郎・広域指定暴力団の若頭補佐・42歳 
沖村貴生・外資系商社勤務・33歳

あらすじ

俺のためにヤクザから足を洗ってほしい――恋人には、決して言えない儚い望みを抱く商社勤めの貴生。浜村組の若頭補佐を務める藤堂は、一度別れ再び恋人となった男だ。どんなに激しく抱き合っても「また何かあったらおまえを捨てる」と告げる藤堂。過去に組の抗争に巻き込まれ、拉致監禁された貴生を想っての一方的な言葉に、内心反発していた貴生。そんな折、再び組で抗争が勃発して!?

作品情報

作品名
刹那と愛の声を聞け
著者
水原とほる 
イラスト
みずかねりょう 
媒体
小説
出版社
徳間書店
レーベル
キャラ文庫
発売日
ISBN
9784199008740
3.5

(24)

(4)

萌々

(11)

(4)

中立

(4)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
6
得点
80
評価数
24
平均
3.5 / 5
神率
16.7%

レビュー投稿数6

攻めの存在感が薄れているような

読み始めてすぐに何かの続編かと思った。
ヤクザとリーマンの恋人同士が跡目争いに巻き込まれていく話だが、出会いから再会までの全てが回想で語られる。その内容は文庫一冊分はありそうなほど盛りだくさんなのに、簡略化されて詰め込まれているため、前提とする別の一冊があるかのよう。しかも過去回想の中でさらに過去の学生時代の回想を始めたりするものだから、読んでいて置いてけぼり感が強かった。

受けの貴生は自分に危険が迫っていようが、とにかく攻めの藤堂と離れないと誓っている。作者は跡目争いに巻き込まれる受けが書きたく、争いのさ中に避難しない貴生に説得力を持たせるために過激な過去回想で説明したのかなあという印象。といってもこの書き方だと貴生の激しく強い気持ちは、頭で理解するだけで感情に訴えてくることはない。
藤堂は歯の浮くセリフとはこのことか、ってくらいにベタ甘なセリフで序盤から飛ばしていたが、中盤は存在感がない。貴生は元彼に口説かれ同僚に迫られしている上に回想でヤクザに回される。その間、藤堂の存在は貴生の中からのみ感じ取ることになり、この二人の強固な結びつきを回想から理解するしかない状態で読んでも微妙だった。

貴生や周囲からいかに藤堂が良い男であるかを聞かされるが、肝心の藤堂がなかなか出てこず、良い男っぷりを本人の言動から感じ取れなかったのが残念だった。そこに萌えられないと、どうしても満足度は低くなってしまう。

表紙は思わず手を伸ばしてしまう引力があるし、キャラも魅力的で話も悪くない。これを本当に一冊でまとめて書こうとした結果の産物なら、構成の失敗なんじゃないだろうか。
ずっと違和感がつきまとい、読みながら終始なぜこんな書き方をしたんだろうと、作者の意図ばかり考えてしまった。

ラストのエレベーター内のシーンはすごく好き。ここが表紙イラストの二人で再現されると最高。やっと萌えがあった、良かった。
エピローグもほのぼので安心して読み終われる。
すっきりして読みやすい文章も好み。

2

人生を賭ける価値があるんです

面白かったです。
こちら、主人公である受けが、とにかく魅力的なんですよ。
彼は、攻めの事情に巻き込まれ、過去にかなり悲惨な経験をしています。
それでも、共に生きる事を選ぶんですよね。
強くしなやかなその在り方と言いますか、全てを受け入れて、それでも愛し続ける覚悟のほどと言いますか。
いや、めっちゃ格好いいよ!!


ザックリした内容ですが、シリアス寄りのヤクザものです。
過去に攻めが関係するヤクザの内部抗争に巻き込まれ、拉致監禁された上に散々暴行、凌辱された主人公。
一度は別れたものの、再び二人は恋人として付き合っているんですね。
そんな中、組の内部抗争がまた起こりー・・・と言った感じになります。

で、二度と危険な目に遭わせたく無いばかりに、別れようとする藤堂(攻め)に、決して離れようとしない貴生(受け)のせめぎあいと言うのが、この物語の見処じゃないでしょうか。

まずこちら、組の内部抗争だったりと、しっかり作り込まれたエピソードに読み応えがあると思うんですけど。
また、そんな中で繰り広げられる人間ドラマが魅力的でして。
貴生に想いを寄せつつ、真摯に手助けしてくれる同僚に、事件に関わる刑事。
それぞれにしっかりドラマがあり、作品に深みを持たせてくれてるんですよね。

が、個人的に一番惹かれたのは、ズバリ受けのキャラだったりします。
情が深くて頭が良く、そしてなにより潔い。
彼が受けた暴行ですけど、回想と言う形でサラッと書かれています。
でも、やっぱりかなり悲惨なもので、読んでいて辛いんですよ。
また、精神に負った傷も相当なもので、心のリハビリに半年あまりも費やし、七年経った今でもトラウマに苦しんでいたりする。
しかも、この事件がおおやけになった事で、彼は一旦、全てを失っているんですよね。
そうやって全てを無くし、ボロボロになり、それでも貴生が唯一選んだものー。
それが藤堂と言う男で。

何だろう・・・。
彼のですね、この強くしなやかな在り方と言いますか、生き様と言いますか。
再びゼロから彼は立ち上がり、今の日常を取り戻した。
このまま平穏で優しい人生を歩む事も出来るのに、それでも藤堂と共に生きると言う、過酷な道を選ぶんですよね。
いや、この先に待つ困難やリスクを全て覚悟した上で、それでも譲れない自分の気持ちに正直に従う彼を見ていると、なんだかすごく心を打たれて。
作中で、情が深いのか、それとも業が深いのかと、自分の有り様を疑問に思ったりもしてるんですけど、まさにそんな感じの男なんですよね。
情も深いけど業も深いみたいな。

また、そんな貴生が人生をかけて愛する男・藤堂。
彼はですね、貴生を自分から解放しようと、事ある毎に別れを選ぼうとします。
普通ならヘタレ認定する所ですが、彼の根底にあるのは、貴生に対する深い愛なんですよね。
愛する人に幸せになって欲しいと言う、とても切実な思いなんですよ。
また、ただただ優しいばかりの男ではなく、しっかりヤクザとしての凄みみたいのも持っておりまして。
そう、仁義に熱く懐が深く、意外としたたかでもある。
彼のこのしたたかな一面と言うのがラストで種明かしされまして、思わずニヤリとしちゃったんですけど。
うん、貴生が人生をかける価値のある男ですよと。

あと、どうしたって幸せな未来が見えて来ない二人で、かなりハラハラさせられたんですよね。
でも、これが希望に満ちた素敵なラストに落ち着きます。
まさか藤堂がこう来るとはなぁと驚いたんですけど、逆にいかにも彼らしい気もして。
なんにせよ、ハッピーエンドで良かったよ!と。

評価で「神」がゼロなんですけど、すごく読み応えがあって心を動かされたので、「神」とさせてもらいます。

ところで、こちら、レビューが無かったら完全にスルーしちゃってました。
レビュー書いて下さって、ありがとうございます!(* ´ ▽ ` *)
と、ここでコソッと書いてみる。

5

分かっちゃいるけど危なっかしい

2017年刊。
ヤクザ・藤堂と堅気者・貴生の一生添い遂げる覚悟の恋。
暴力団の跡目争いを巡っての張り詰めた空気の中で、貴生を巻き込みたくない藤堂と、何があっても別れたくない貴生の駆け引き。

貴生は7年前にも藤堂の敵に拉致されて、数日間薬を使って陵辱された挙げ句、責任を感じた藤堂と一旦別れてしまい身も心もどん底に落ちた辛い経験を持っている。
…と、痛い部分から見せつけられる話だがご心配なく。
壮絶な人生なのは間違いないものの、不幸に沈み切らなかったところが貴生の強さで、逆にボロボロになった事で吹っ切れて偽りない生き方を目指そうという逞しさがある。

一度は別れたはずの藤堂と再会を果たして復縁してからのいちゃつきぶりは見目のいい洒落たカップルに映るが、端では再び暴力団のきな臭い争いが起こってしまう。
藤堂がいくら心配しても、貴生は再度の別れ話には一切首を振らない。

結局は巻き込まれてしまうのが目に見えていたので、貴生の聞き分けの悪さに苛ついてしまうかなと思っていたが、いざとなった時の肝の据わりと機転が利く行動で逆に感心したのだった。
それにしても、貴生ってば傾国の美女の如くホント色々な男にモテるね。
ま、藤堂のほうも組の存亡を左右する存在とはいえ、真っ直ぐな性格が災いする男なので、どちらも危なっかしい二人に変わりはないが。

痛すぎるのはキツいので穏やかな締めくくりにホッとして、上手くまとまった感はある。

3

時代の波なのね

すでに出来上がったカップルが、一度の別れを経て、二度と別れないと頑張る話。
二人がなぜ一度離れなければならなかったのか、そもそもの出会いは等は、途中、途中で回想として語られるけど、この本って、前作のある続編じゃないよねって探り探り読む感じ。
言うなれば、出会い編がまず1冊あっての、シリーズ2冊目でその後の二人の平穏な暮らしと再び訪れる波乱が1冊にまとまった体の、ある意味お得な1冊。
甘々濃厚エロも、拉致監禁エロもとバリエーションは豊富だけど、分量的にくどくなり過ぎないところもいい。
攻めの藤堂が、ヤクザ物にありがちな寡黙すぎたり俺様過ぎたりしないところや、すっぱり足を洗っちゃうところも好感度高いです。

8

相思相愛な2人が好き!

一気に読みました!
少しアダルティーな世界観のリアルな情景を思い浮かべられるしっかりした設定に、ヤクザもの+純愛のラブストーリーを映画館で観たような気分です。

性格男前の綺麗めリーマンというありがち設定ながら波瀾万丈な大変な人生を送ってきた受けさんの貴生。
それも、攻めさんで同棲相手の藤堂が若頭補佐を務めるヤクザだからで。
過去に藤堂の入ってる組の抗争に巻き込まれ、拉致・監禁・凌辱・薬とトラウマとして残ってしまうほどの事をされ、それがきっかけで1度は別れた2人。
数年後、ぱったり偶然再会し、2人の愛も再燃し、今も危ないながら同棲するまでに至っていました。
藤堂の貴生を想っているからこその気遣いに内心モヤモヤしながらも仲睦まじく暮らしていた2人でしたが、また組内の抗争に巻き込まれ…

と、あらすじだけでも次々と問題が起こっては貴生に身の危険が迫るというなかなかに過酷なお話で。
それでも、貴生も大人しく守られてばかりやられてばかりではなく、トラウマを抱えながらも以前の経験と藤堂に対する一途な気持ちから、絶対に藤堂から離れることも逃げることもしない男前さもあり。
ヤクザものとしては珍しく、俺様でも傲慢でも自分勝手でもない藤堂という攻めさんも新鮮で魅力的でした。

本当にハラハラする場面が多々あり、見ていられないくらい酷いシーンも若干あったりするので、向き不向きが分かれる作品かもしれませんが、是非読んでほしい純愛ものでした(。・ω・。)

4

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