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短編6本と書き下ろし1つ、(お楽しみの)「あとがき」が入っています。
アンソロで発表されたものもいくつか(3つ?「女子BL」と「B-BOYキューブ」が2つかな?)。
西田さん(知り合いでもないのに「さん」呼びを許して欲しい。それくらい好きなんですよっ)の長い話は硬派で読みごたえがあるのですが、短編も良いのです。大人の男性の狡さ、弱さ、情けなさと、だからこその可愛らしさやいじらしさがコマの間から滲み出ていると思います。
今回は表紙も口絵も可愛らしい(装丁もポップだ。シトロンだからか?)し、すべて(一応)ハッピーエンドなのに、そこはかとなく「悲しい感じ」「せつない感じ」が漂っているものが多い様な気がします。恋の顚末がついてしまった後も「物語はつづく」とでも言ったらいいのか「幸せになりました。あー良かったね」で終わらないで引きずるものが残ると言うか……特に最終話「ファーストキス」の西田節にはやられました。(「絵に癖がある」と言う人もいらっしゃいますが「この絵だからこそ、この余韻」だと私は言いたい!)
ダメな部分も含めて格好良い男性の話を読みたい方必見!と、おすすめいたします。
前作「やさしいあなた」を読んだ時に感じたのだけど、絶対西田作品の登場人物に色気が増してる!
表紙の左、真島を見て下さいよ!イイ顔してる。
目、が違うのかなぁ…イヤ、ファンとしては非常に嬉しいです。
キャラがもうそこにいるだけで、「何か」を醸し出して、語りかけてくる。
それに、私はこの作品が短編集だった事が更に良かった。
勿論長編の読み応えってのは格別だけど、作者の巧みさってのは短編に出ると思うのです。その意味で、この作品の短編たちは全編絶妙なエンディング。この含みのある感じが何とも最高…
「何も言うな」
これは従来なら攻めx攻め攻防、またはケンカップルの類型で描いた話だと思うけど、これは一味も二味も違う。でも小桜さん、はじめ俺がネコになってやるとか言ってたのにね!
「部長に突かれて」
これは意表をつかれた…!このスッキリした素敵リーマンが何して遊んでんの…?
「部長に抱かれなかった夜」
「部長に突かれて」のお2人さんの馴れ初め。これが意外な運命的出会い。ヒサキそばで会う2人の吹っ切れた顔がいい。
「貪欲な花」
初出が「女子BL」と知らず、このおばさまがホントは男か?とかずーっと疑って読んでた…。
でも、女子BLと言われてこういう作品、というのはすごいわ。異色、とはこの事。
「かき乱す指」
この短さで、一人の男の焦燥や隠された欲望、願望が叶う瞬間に快楽、そして安堵と悦びが全て描かれてる。傑作!
「ファーストキス」
高校時代の突然のファーストキスのエピソード、そこから現在に移って話の流れはミステリアスです。弁護士になった由利と警察になった弓野の間には、初めは感傷的な空気が流れているけれど、思いもよらない展開になっていく。ラストは不思議な明るさが漂っています。
「『何も言うな』のその後…」
『俺も揺らいでるんだからうやむやでいーんだよ』に大きくうなずく。何もかも、ハイ今から恋愛です、にしなくていいよね…
6作品+表題作後日談を収録。西田先生が描くオトコ達は、個人的に男性にこうであって欲しいと妄想するような理想に近いんですよ。そんな彼らが同性にしか見せない、弱さやズルさがとてつもなくセクシーなんです。
作風はコンパクトでありながら展開がドラマティック。お話のトーンがシリアスでも必ず笑いの要素があって、短編でも満足感タップリです。なんだか絵に色気が増してきているような気がする…。
どれもすっごく良かったんですけど、わたしはラストの「ファーストキス」がたまらんかったです。久しぶりにぎゅいぃぃぃん!!!ってなりました。レビューではそちらとアンソロに収録されていた「貪欲な花」について触れたいと思います。
「ファーストキス」は高校同級生の再会モノ。主人公の弓野と出席番号の近い由利の、十年以上に渡る痛く切ない初恋を描いたストーリーです。
頭が良すぎてクラスから浮いていた由利を放っておけず、何かしら声を掛け続けていた弓野は、体育の授業中に一度だけ由利にキスをされ…。
社会人となって妻帯者となった弓野は、結婚三年目にして妻を亡くしてしまいます。妻の葬儀で由利の姿を見掛けた弓野は、なぜ彼が姿を現したのか不思議に思いながら、忘れかけていた高校時代の記憶の糸を手繰って行くのですが…(以下、ネタバレを含みますので回避してください。)
↓
たとえ憎まれても、失ってしまうとしても、好きなヤツを抱きたい。由利にとって大概のことは意のままなのに、切実に欲するものだけは手に入れることができません。彼が弓野に対して執る手荒い行為に萌えるのです。攻めにしろ受けにしろ好意を寄せているノンケの相手と交わった女を寝取る。地雷率が高いかもしれないけど、これは男同士でしか成立しないシチュエーションではないでしょうか。
恋い焦がれる相手がどういう人間を愛し、その人とどんなふうに愛し合うのか。好きな人が寝た相手をトレースすることで擬似セックスをする。由利の行為は弓野への嫌がらせではないんです。フェティッシュに近いんです。ストーカー的純愛ゆえなんです!
「貪欲な花」はアンソロの方で読みました。小学校教員を定年退職した「田中さん」という独身女性が語り手です。『女子BL』で中高年女性を描かれていたのは西田先生だけでした。これは読み手の世代によって、解釈の幅が広がるタイプの物語だと思います。
浄水器販売員二人組のカモとなってしまった田中さん。彼女は彼らにかつての教え子たちの姿を重ねます。二人とも良い子たちだと思っていたのに、自宅で彼ら男二人のイチャイチャを見せられて…
なんていうか、田中さんが生きている女の世界と、鈴木と佐藤たちが生きている男の世界という全く重ならない異次元世界が、一瞬だけ交錯するような感覚。その邂逅は田中さんにとって衝撃的で、一番初めて抱いた感情は怒り、だったのですが…。女性が初めてやおいの世界を知った瞬間の象徴といえるかもw
終盤、田中さんが全てを受け入れたかのように思えるシーンこそ、そこに読者が何を見出すかによって受け取るメッセージが変わってくると思うのです。わたしは、彼女が女性として生きて行く上で自ら選んできた道を肯定し、そしてそこからまた一歩進もうとしている雄々しさみたいなものを感じました。このお話は全ての女性たちへの応援歌なのかな、とも。
内容も確かめずに作者買いしましたが、すごくよかったです。
特に気に入ったのは「部長に突かれて」「部長に抱かれなかった夜」の連作です。
「部長に突かれて」は、おっ!って感じのどんでん返しがあって(奥さんのブラなのに普通に男性がホックしめて着用できるって変じゃない?と脳内ツッコミを入れていたので、それも伏線だったんだと気付いた時は西田さんすごいと感動しました)物語としての緩急がすごく心地よかったのですが、何よりも最後の1コマの威力がすごかったです。
「部長に抱かれなかった夜」は「部長に突かれて」のふたりのなれそめの話で、結論はわかっているのだけど、結論に至るまでの過程が面白くて、互いに相手の正体に気付いてからの展開が最高でした。ほんと、西田さんってセンスの塊だな~と感心しました。
ちょいちょいある小ネタにいちいち笑ってしまいました。川野社長の顔…レイプ魔の顔…(笑)
西田ヒガシさんの話は本当に独特な世界観で引き込まれますな。真島いいキャラだった。
短編集だったので、表題作もっと長めに読みたかったです。書き下ろしで少し続きがあったのが救い!
西田ヒガシさんの作品大好きです!