表題作忘却曲線

ヒロト・三流詐欺師・28歳
大介(大城戸祐介)・警察官・26歳

その他の収録作品

  • なくしものをいぬとさがす。

あらすじ

※18禁
「しもべと犬」番外編同人誌(大介編)

作品情報

作品名
忘却曲線
著者
玄上八絹 
媒体
小説
サークル
27000Hz〈サークル〉
ジャンル
オリジナル
シリーズ
しもべと犬
発売日
5

(2)

(2)

萌々

(0)

(0)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
2
得点
10
評価数
2
平均
5 / 5
神率
100%

レビュー投稿数2

本編脇役大介の過去話ですが、傑作!

わんこシリーズの番外編同人誌。
わんこシリーズ同人誌の第一弾ですが、主人公は本編脇役の大介。
大介が五係に来る前の過去話です。

本編を読んだ印象では、
『ゲームしながら上の空で聞いてるような取り調べが特徴の取調官』
正直『なんで大介が主役??』って思っていました。

けれど、実際に読んでみたら
身を切られるような切なさがヒリヒリと伝わってくる傑作でした。
バッドエンドに耐性のある方なら、オススメです。
本当に読めて良かった……。

【忘却曲線】約67P、大介視点 
大介は本編から想像していたより、かなり色々欠如してる人物でした。
過去の記憶は曖昧で、生きることが極端に下手。
生きる意志も薄く、あまり感情が動かず、
餓死しそうになりながら、かろうじて生き延びてる雰囲気。

帰宅途中に気分が悪くなった大介を助けて自分の家に連れ帰ったのがヒロト。
人懐っこい人柄で、大介を黒にゃんこと呼び、
食事をさせ風呂に入れ、キスを仕掛けてきます。

『寝る相手が欲しかったのか』と、結論づけようとする大介に
『黒にゃんこ見てたら暖めたくなった』
と、温もりを分け合うためのセックスを教えます。

  大介は下だったのかっ! 
  というか、そもそも
  恋愛めいたことが始まるとも想定してなかった!
  だって、本編では三次元のことに興味なさそうだったし。

二人は翌日も偶然会って、ヒロトの家で一緒に食事をして
そのまま半同棲のような形になります。
ところが、ヒロトの仕事は詐欺師(それも三流)だったのです。

大介は警察官の身分を明かし、
詐欺行為を止めて欲しいと訴えますが、ヒロトは
『何か、愛されてるみたいだね』と笑って誤魔化します。
その一言で自分がヒロトを愛してることに気づいた大介の様子に、
胸が震えました……。

しかし、その後も詐欺を止めさせたい大介と
やめなきゃいけない理由が分からないヒロトは平行線……。

しかも間の悪いことに大介がヒロトを助けるためにした行動が
三流だったヒロトに詐欺の知恵を付けさせ、
ヒロトはそれを使ってヤクザの組長から大金を騙し取ります。

ここに居たら殺される!と、
ヒロトを連れてアパートから逃走する大介。
ヤクザにそして警察にまで追われるヒロトをなんとか追尾の手から逃がそうと、
大介は必死になってできる限りのことをしますが……。


  大介にとってヒロトが唯一無二であることや、
  ヒロトは本当に大介を大切にしてくれているのにも関わらず、
  詐欺を止めて欲しいというたった一つの願いが伝わらない無力感が
  痛いほどに伝わってきて、どっぷり大介に同調して読んでいました。

  その一方で、詐欺の常習犯の心情や詐欺の手法、
  インサイドマンと言われるブレインの存在など
  詐欺に関してかなり詳しい描写が見られて
  『玄上さんらしい〜』と感心しながら読んでもいました。


【なくしものをいぬとさがす。】約8P、信乃視点
ヒロトの骨を失くした大介が、信乃を頼って探してもらうお話。
見つかった時に、声もなく涙をこぼす大介が可哀想で……。


  本編だけ読んでいるときは、ただのゲームオタク、
  どちらかといえば、ふてぶてしいイメージで大介を想像していましたが、
  実は可哀想で可愛い華奢な迷い猫(ち、違うかも…)でした。

7

大介の物語も読みたい。

「しもべと犬」から始まる≪犬≫シリーズ最初の同人誌。
本編では脇役、ゲーオタコミュ障ながらやたら腕の良い取調官、大介こと大城戸祐介が主役。
≪犬≫を差し置いての堂々初同人誌というのがすごい。
シリーズにおける謎の多い脇役たちに背景となる物語がそれぞれ用意されていることが透けて見える一冊と思う。
読み終えての感想は、これはBLだろうか??ということ。
甘くない。・・ズルくて、寂しくて、切なくて、真実の愛も誓いもない。
ただし、≪犬≫と共通するような、悲しいまでの愛への渇望が見える。と思うと、読んで良かった、と心から思うと同時に、なぜこれが商業にならなかったのだろう、いや今からでもなってほしい!!とここで叫んでおく。
以下、少しのネタバレを含みます。
取調べにおいて、嘘を受けつけないが故に見抜く大介。ひょんなことから拾われ、身体を重ねるようになったチンピラ詐欺師のヒロトは息をするように嘘を吐き、ただし与えられる温もりややさしさは到底嘘と思えず。
大介視点の物語は、淡々と感情に乏しいようで、大介の喋りのように重ねられる言葉が焦燥感を煽ります。
最後にヒロトが起こしてしまった事件の展開は、スリリングで手に汗握る玄上先生のアクションで、読み終えるのが惜しい、と思いつつ。
このラストを商業で出す勇気が出版社にはないのか!!



バットエンドです。嫌いな方は見かけてもスルーしてください。
ただし、物語としての読み応えは最上級。
多くの人に、≪犬≫シリーズとして読まれてほしい、そんな作品です。

SSと同人誌「スフィンクスの夢」にて、大介のその後は語られます。
この作品からどれだけの時を経ているのか知る由もないですが、忘却曲線の曲線は描かれず変わらない大介に胸が痛みます。
どうか、大介にもなんらかの救いを!(そして、≪犬≫シリーズの続きを!!)
と願わずにはいられません。
(2017年時点)

5

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