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独特のどろっと感を持つ短編詰め合わせでした。表題作は不思議な収録順。でもこの後編が一番最後にくることで、やっと救われた気持ちを味わえるので良かったです。
「ファンファーレが聴こえるか」
双子と幼馴染みと女子の四角関係。准介の中で何が起こってあのエンディングになったのか分かりにくかったのですが、盛り上がりの演出がすごくて圧倒されました。涼介が可哀想なままなのが気になります笑。
「はらぺこのメメント・モリ」
毒母親が出てきてどろっとしてるんだけど、瀬谷のからっとした性格のおかげか暗くならず、妙にすっきりとした読後感でした。
「ハロー・グレイ・ナイトシェード」
どろっと終わった虎視点の前編から嘉一視点に変わる後編へ。兄として愛情をかける虎が描かれて、虎も憎むべき相手が嘉一じゃないことは分かっていたのかなあと。ラストが爽やかで良かったです。もっと詳しい描写が欲しいところがいっぱいで、前後編じゃもったいない作品だと思いました。
『ハローグレイナイトシェード』、このタイトルと、カバーのちょっとアンニュイでセピアな色味に惹かれて買いました。
これはもう……大当たりでした!
久松先生の独特なタッチが、キャラクターたちの間に漂う空気の湿度、質感を、とても良く伝えて下さっている。このタッチでないと表現出来ない感じがします。
それに、全体的に、とってもお洒落。装丁は名作の多い『円と球』さんです。本体表紙のクラフト感も素敵。キャラクターそれぞれがすごく魅力的ですし、大丈夫、ちゃんとみんな救われます。
次作の『NEON』も買いたい!強くおすすめします。
この本には藤の花が挿し絵に入っていて、うちの田舎の家の門が白藤の棚で出来ていたのを思い出しました。藤の花には微毒があって、猪除けにしていたようです。
この巻に納められた作品の共通項は「秘密の愛の毒」と言えばいいのかな。脆い状況を一筋の愛が崩壊を防いで支えているような秘めた愛。
いい愛だなー。巻末に登場人物のプロットがあるので、いつか続篇が出るのじゃないかと期待。面白かった。神評価。
あらすじ:
▼ハロー・グレイ・ナイトシェード(前)
先祖帰りの兄と父知れずの弟の愛。
老舗の月路亭の主が母。料理長が父。正規の夫婦の間に生まれた長子は、先祖返りで父方祖父に似た異国風の美男子。母の不貞で生まれた弟は8才年下、ひな人形のような華奢な美男子。
老舗の料亭の跡取りは和風の容貌の弟に決まる。荊棘の城のような家庭。父の跡を継ぐために兄は、料理の修行に家を出る、力をつけたい。
母が嫌う兄を、弟は強く慕う。毎朝、弟は兄に電話をする。兄の同棲相手、恋人は男性。
突然訪問してきた弟に、兄は「兄さまが好きか」と問う。純真な弟に呟く「ほんと邪魔だなあお前」「お前が大嫌いだった」と言い、弟を汚したい兄はキスをする。弟は拒まない。
▼ファンファーレが聞こえるか:
四人の幼馴染。男子3人と女子一人の告白ごっこ。
准介が好きな光貴。鳴海が好きな涼介。鳴海は准介が好き・・の構造。
「女の子が相手じゃ勝ち目がない」と涙目の光貴。准介は、鳴海と涼ちゃんの話をしていただけ、鈍感な准介。999敗1勝、光貴の告白成功のファンファーレ。
・・だれがだれなのか、区別が難しくてこんがらがってしまう。
▼腹ペコのメメント・モリ:(★モデルの瀬谷和は、兄の昔の同棲相手と同じ名前)
宿なしの瀬谷和は、公園で身なりの良い紳士、志倉と出会う。
「うちに来たら?」条件は「君、僕と恋愛する気はあるかい」
和は母子家庭。とても美しかった自慢の母に、中学卒業の日、「産まなければ良かった」と言われる。その日から母は家に戻らなくなり、15才で全てを失う。アルバイトで稼いでも賃貸せず、居候を転々。顔が良いので根無し草でも困らない。
志倉と暮らして何もない二か月が過ぎた頃、庭の藤の花が満開になる。
「一房だけ咲く白い藤の花が10年前まで咲いていた」「君のお母さんを知って居る。その藤の樹の下に埋めた」 「僕が白い藤=君を欲しがったから」と詫びる志倉。「君は僕が恋した藤だ」
母は志倉の愛人だった。藤の樹で首を吊って自殺していた、遺体は樹の下。
志倉に抱かれる和。 藤花が揺れる樹に「ご馳走様、かあさん」と呟く。
※メメント・モリ:
メメント・モリ(羅: memento mori)は、ラテン語で「自分が(いつか)必ず死ぬことを忘れるな」、「死を忘るなかれ」という意味の警句。 芸術作品のモチーフとして広く使われる。
▼ハロー・グレイ・ナイトシェード(後)
兄にキスをされながら、回想する弟。
小学校の授業参観日を回想する;両親は忙しくて来ない。同級生にからかわれているところに、カッコイイ兄様が教室に入ってくる。からかわれて涙ぐむ弟を抱き上げて、からかっていた子達と遊ぶ兄。「いいなあ 兄ちゃんかっこよくて」と言われる。
父は待っている;「お前は全てをもっているじゃないか」と兄が家を出て、弟は独りぼっち。自分の歪を感じて、泣きながら兄に℡をする弟。毎朝厨房を掃除した後、兄に℡する日課。厨房で見つけた包みは、兄の年の数だけ揃えた包丁、それは父の秘密。
知ってしまった;アルバイト先で、代議士の娘と出会い、あなたは不義の子だと告げられる。
・・兄は「嫌われても好きだ」と泣く弟の様子から、弟も同じ痛みを内に持っていたことを知る。
兄は「一緒に帰れなくてすまない」と詫び、「あと十年したら迎えに来る」と弟は告げて別れる。
ホテルの料理長に就いた兄を、月路亭支配人として弟が迎えに来る。
▼書下ろし
或日の予約客は、昔の兄のモデル仲間だった。兄は「イケメンすぎる料理長」としてメディアで特集され話題。瀬谷和が抱きつく。瀬谷は、弟に少し似ていた。
華やかな顔なじみと再会する兄を見て、気後れする弟に兄は、キスして「仕事に戻りな」と笑う。
※ナイトシェード:
ナイトシェードとはナス科の植物を指す古い表現。 現代の学名「Solanaceae(ナス科)」に相当しますが、「夜の影」の名が示すように毒草としてのニュアンスが強くあります。ベラドンナはナイトシェードの中でも謂れの多い種類でdeadly nightshadeという物騒な名前がついています。
※「灰色の毒ナス」で調べたら、「朝鮮朝顔に接ぎ木したナス」の中毒事件がありました。
★接ぎ木した毒・・弟のこと?・・・それなら、帯の「かわいい嘉一、おまえをどうやって壊してやろう」の「壊す」は、兄は接ぎ木で出来た毒(不貞で生まれた子)を愛で「解毒」してあげたという意味に。
久松先生の作品、∞回収中
他作品(NEON)で出ていたモデル仲間の虎くん
その弟、年の離れた嘉一くんとのお話
彼たちのお話は前後ですが途中に他のコの短編がぽんっと入ってくるから??ってなったけど、それはそれでまた良き
短編はキラキラDKたちの恋とか、ダークなお話とか…こちらもすごくよかった
さて。兄弟のお話に戻ります
表紙絵の二人が兄弟
ただ単に美しいだけの兄弟愛ではなく、親の所為で苦しんだり悩んだりします
結果的には兄弟がそれぞれに答えを出して、幸せになる道を切り拓いていく
前向きなラストが素晴らしいと思うのです
甘々というか溺愛なのも好き
他作品のコたちも登場して、何気にリンクするのも大好きです
短編集としてはかなり高いクオリティの作品だと思います。
ブラックかと思うと純愛だったり、
純愛かと思ったらブラックだったり……
想像できない結末が待っていて、どのお話も楽しめました!
【ハロー・グレイ・ナイトシェード】
一流料亭に生まれた義兄弟のお話です。
優しい兄と兄を慕う弟ーー
愛しいから壊したい、憎らしいほど愛しいという気持ちがよく伝わってきました。
誰にも似ていない兄と母の不貞でできた弟でしたが、
お互いにとっての支えであり希望であったことが胸を打ちます。
ラブかどうかは分かりませんが、
揺るぎない兄弟愛があったことは間違いありません。
どうなることかと思いましたが、素敵なラストで安心しました。
【ファンファーレが聴こえるか】
双子の兄弟と片割れにアタックする友人のお話です。
恋破れて残りの双子とくっつくかと思ったら、
ちゃんと両想いになれました!
ちょっと驚いたけど、とても好きなラストです^^
【はらぺこのメメント・モリ】
大好きな母に嫌われ、捨てられた和。
公園で知らないおじさんに拾われ、同居を始めます。
しあわせな生活が続くかと思ったら、
おじさんがとんでもない爆弾を落としてきました!
最後は、和の方がおじさんに執着しており、
若干ゾクリとする場面でラスト……
面白かったです!
どの作品もそれぞれ完成度が高く、
物足りなさを感じさせませんでした!