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専門時代を描いた「SUPER NATURAL」より先にこちらを読んで大感動したものですが、今日前作が届いたので読み直しも兼ねて続けて読んでみました。
こちらだけだと暢は細かい変化まで気を配って、大地のことを思いやれる理想的な恋人に見えて、大地は繊細すぎるように思っていました。
前作を読んで、あらびっくり。
4年前は暢がわけのわからない行動に走るコントロールの効かない子で、大地はすごくしっかりとした子でしたよ。
社会経験を積んだこともさることながら、一緒に暮らした年月が2人を変えたんだなあと感慨深い気持ちになりました。
ゲイに見られる大地と見られない暢。
昔とは違う暢の気遣いが大地のことを「彼女」のように思っているからなんじゃないかと思ったり、自分が昔の対等だった友人のときよりか弱い存在だと思われているから優しくされるのかと悩んだり。
目標に向かってあんなにストイックに頑張って来た大地が、こんなにもアンバランスになってしまうほど「自分は男なのか、女のようなものなのか」というアイデンティティの揺らぎって大きな問題なんだと気付かされました。優しくされればされるほど対等じゃないと思えてしまうのは大地にとっても、気遣う暢にとってもきつい状態ですよね。何をしても裏目に出てしまう。
暢の職場の女性に嫌な気持ちになる大地と、美容室の同期の男性に牽制したい気持ちになる暢。体の関係を含むパートナーである以上、どちらかが女性の役割をしなければならないけれど、そのことが体だけでなく意識にまでこんなに影響を及ぼすこともあるんですね。
相手はまた女性と付き合える可能性があるけれど、もう付き合えない体に変えられてしまった自分はゲイというわけではないからもう誰とも付き合えずに独りでいることになる。こんなことを考えながら一緒にいるのはしあわせどころか、本当にしんどいですよね。
前に読んだときはこの作品のテーマを読み切れず、大地にことを考えても仕方ないことでイライラしてばかりで嫌な子だなと思ったものですが、前作と続けて読んだら全く印象が変わったことに驚きです。
好きだから優しくしたいし、気遣いたいだけなのに、相手に真っ直ぐに伝わらない。
自分には相手しかいないから失いたくないと思えば思うほど、不安が募る。
そんなどうにもならないジレンマ。
ただ「信じる」だけがこんなにも難しいことを見事に描き上げた作品でした。
好きだから一緒にいたい、それだけでしあわせという段階から、もっと先へ進んだ2人。
しっかりと向き合って、受け入れ合って深まった絆はきっと切れることはないだろうと思える素敵な作品でした。
前作『SUPER NATURAL』の爽やかさから一転、こちらでは最初からほぼ一冊、好きな気持ちはあるものの、いつ壊れてもおかしくないような不穏な雰囲気。
前作の流れからはちょっと違和感を感じたのですが、読めば読むほど切ない想いがじわじわと胸に迫ってきて、やっぱり絵津鼓先生好きだなぁ~とじみじみ。ストーリーにぴったり合っているさらっとした絵も本当に好き。
元々ノンケだった二人だけに恋人が同性であることが周囲にどう思われるのか?
たまたま好きになった相手が同性だっただけでゲイになった訳ではないのに、男性の同僚に嫉妬する恋人にイラっとしたり、本来感じる部分ではないところで感じるようになっていく体の変化に動揺したり、暢が女の子が好きになったら…と怯える反面、女の子のように甘やかされる扱いに傷ついたり、山程の不安要素を抱えながらも、どうしたらいいかわからず、口にすることさえできずに、もがき苦しむ大地の姿に胸を締めつけられました。
大地のそんな苦しみの片鱗を切ないキスで表現したり、声を殺して泣く姿で表現されるとたまらない気持ちになる一方で、理由はわからずも何かに苦しんでいる大地の髪をそっとなぜたり、ぎゅっと抱き締める暢の優しさにはキュン…。前作では子どもっぽさがあった暢ですがスゴくカッコいい大人になっていてドキドキ…。絵津鼓先生は機微を表現するのが本当にうまいです…うるうる
好きだからこそ不安に押し潰されそうな大地、好きだからこそ自分らしくいられない大地のために身を切るような決断をする暢、そんな二人の葛藤は胸にぐっと迫りくるものがありました。
ノンケくん同士だったが故に苦しいこともいっぱいあった二人ですが、悩み苦しんで乗り越えた分、かけがえのない相手と巡り合って結ばれるってやっぱりいいなぁ~と幸せな気持ちにさせる一冊でした。
こういうのって男も女も関係ないんだなぁって感じました。
二人ともお互いのことを大切にしたくて。
でもそのために自分を偽ることはしたくなくて。
長く長く一緒にいるからこそ生まれる不安ってあるよなって思いました。
そういう不安は男女のカップルだって絶対生まれるものだから、本当に恋をしている当人たちには大きな差はないと実感しました。
相手と一緒にいると幸せなはずなのに、いつかこの幸せがなくなってしまうことに漠然とした不安を感じる。
人の気持ちって一概には言えないからこそ、その不安はなくなるものではない。
ましてや男同士で付き合っているからこその、女の子に対する圧倒的コンプレックス。
終わりの見えないこの悩みは、二人で一日一日を重ねて、幸せで少しずつ上書きしていくしかないんですよね。
そんな二人の今までとこれからの長い長い生活の一ページを覗き見たようなそんな気持ちになりました。
こう言う感情って言葉にしづらいもので、だから相手に伝えるのも難しいものですが、それを漫画にしてこんなにも感情的にリアルに伝えることができる絵津鼓先生って本当に素晴らしい方です。
どっちも素敵なキャラクターだけど、どっちもしっかり人間らしいところがあって、漫画のキャラクターなのにこの人たちは本当に存在するのではないかというようなリアリティ。
ここまで繊細な気持ちを丁寧に描ける作家さんはなかなかいないと思います。
そして、暢が…!前作よりもずっとずっとかっこよくなっている……!
前からかっこよかったけれど、今作は特に男前度というか中身のかっこよさが尋常じゃないです。
それを最後に「大地のおかげ」って言う暢が本当に素敵だと思うし、その言葉も事実だと思うから暢をこんなにかっこいい男にした大地はすごいなぁって思います。
でも自分でかっこよくした暢は大地にとって、他の人に取られちゃうかもって不安になるほど魅力的になっちゃって、不安に思う大地がかわいそうだけど可愛かったです。
二人の今までの四年間が、そしてこれからの長い長い人生が、とても素敵なものになることがわかって幸せな気持ちになりました。
幸せで胸がいっぱいになって涙が溢れました。
レビューというより感想です。
前作よりさらに、暢が見た目も中身もカッコ良くなっていました。
大地の事を気にかけ、大切に思い、真剣に考えていて、その姿に泣けてしまいました。
二人で散歩するシーンは、本当に胸に刺さります。
二人が悩みながらも、成長し、自分達らしく、共に生きていってくれる事を願ってやみません。
前巻はストーリーがずっと穏やかで導入的内容だったので萌評価に留まったんですが、今作は絵津鼓先生のまさに本領発揮という感じで、非常に細やかな心情描写がされておりぐっと評価が上がりました。攻め視点と受け視点の切り替えの回数やタイミングもちょうど良く、どちらの考えも読者がよく理解できるようになっているのも良かったですね。暢視点の時に大地がどうしてこんな言動をとるのかいまいち分からないと思っても、次は大地視点で彼の想いを描いてくれるのでなるほどと納得がいきます。対等に扱われていると思っていたのが段々女の子扱いされていると感じるようになり、女の子の代わりなのかも、いつ捨てられてもおかしくないのかも、と不安を覚える大地。好きな人を大事にしたいという気持ちをそんな風に疑われるのって辛いし、最初は暢が可哀想にも思えました。でも、大地の気持ちを丁寧に辿っていくと、どうしても受けになる方ってそういう考えが芽生えてもおかしくないのかなと思えたり。ただ暢が言った通り、相手を信じるか信じないかは、暢の行動によってではなく最終的には大地自身の意思が決めること。そこに気付いた大地は、暢から少し置いてきぼりになっていたのがまた対等な立ち位置に戻れたのではないでしょうか。
心情描写も良かったのですが、前巻に比べて暢のスパダリ感が増していたのが最高でした。短くした髪がきっちりセットされスマートな立ち居振る舞いになっており、大地の感情的な言動にも言い返したり面倒臭がったりせずに終始落ち着いて相手の気持ちを理解しようと努めるところが、凄く大人の男になったなぁと思います。その分大地の可愛さが目立ち、ビジュアル面では互いに相手を引き立て合っているように見えますね。2人とも自分が相手の立場だったらどう感じるかをちゃんと考えるので、本当に思いやりのあるお似合いのカップルだなぁと改めて好きになりました。