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関東大震災あとの大阪が舞台の、映画黎明期BL。
久我先生お得意の大阪ことばが沁み入ります。
主人公は、東京の映画業界が復興するまで大阪で活動することになった若手俳優の英介。
これからの映画は現代劇だ、と考えているのに今は大阪で旧劇ばかりやらされて…という不満が顔にも態度にも表れている。
そんな英介でも温かく目をかけてくれているのが旧劇の人気俳優・半次郎だった…
…という2人の出会いがあり、英介の住まいの長屋で火事があった事で半次郎の家に居候することになり。
そこに、半次郎の出自〜上方歌舞伎の名家の妾腹の子〜が絡んだお家騒動的な波乱が絡みつつ、英介に半次郎への恋心が芽生え始める…的なBL展開で進んでいきます。
正直…元は2人ともノンケ、というか恋愛に重きを置いてない人たちの感じなのに、同性への恋心や愛情の高まりがちょっと急に思えます。
本作の魅力はやはり「強気受け」としての英介かな。
俳優として美形だけれど優男では全くなくて、物の考え方は現実的で実は武闘派。
でも半次郎には…みたいなギャップあり。
映画黎明期の不安定さや先見の明を持つ者達の動き、戦争へ進む前段階の検閲への眼差しなども興味深い。
はーーー…控えめに言って最高オブ最高でした...✨
久我有加先生の未読作品、少しずつ集めて拝読しています。
カワイチハル先生の表紙も最高に麗しいのですが、
先生の描かれる扉絵のちびキャラがかっっっわいくて!! 大好き。。
時代は関東大震災直後の大正、その影響で東京から大阪へ流れてきて
活動する主人公・英介(受)。
”古い”と感じる旧劇を演じることに不満を隠そうとせず、
くさくさしていたところを9歳年上の役者・半次郎(攻)にたしなめられてー
と始まる、年の差ストーリーです。
弁士が語るトーキーから活動写真(映画)へと
大きな変化が生まれる中での二人の活躍、
厳しくなる政府の検閲を逃れるための画策など、
時代を反映する内容に気づけばグッと引き込まれていました。
半次郎に叱られ、目を覚まされ、初めこそ突っかかっていた英介ですが
一度”自分が間違っていた”と気付くと
きちんと謝罪をしたり、態度をあらためて真摯に演技に向かう姿、
とても好感が持てました。
で、また、叱る側の半次郎のスパダリっぷりが半端なく、
個人的に萌えて萌えてしかたなかった…!
”叱る”と言っても頭ごなしに怒鳴りつけたりするのではなく、
あくまでも冷静に、若い英介に自ら気づきを与えるように促す。
くうーーーーこれが大正の29歳なの!?と、
身悶えてしまう素敵な大人っぷり。惚れます。
半次郎に懐き、惹かれながらも
気持ち悪がられたくないーと必死に気持ちを隠そうとする英介。
そんな彼が思わず想いを吐露してしまった時の
半次郎の告白、そして後半、半次郎視点の英介への甘やかな視線。。
そのどれもにときめきすぎてドキドキし過ぎて、
読んでいる間、大正時代の彼らの家の壁となって
じーーーっと見守る気持ちでした(*´˘`*)
そして久我先生といえば、やはり関西弁!
「好きや」って言葉の破壊力たるや。
この作品でも、これ以上ないほど堪能させていただきました。
時代物には苦手意識があった自分ですが、
久我先生の時代もの(+年上スパダリ、が加わると尚良し)、大好きです。
先生の新作がもう読めないことは本当に寂しく、
悲しいことですが、、
これから先も、何度も御本を開き、
先生の書かれた世界に浸りたいと思います。・:*+.
受けの英介は、関東大震災で被災したため東京から大阪にやってきた新人役者。
やりたかった現代劇ではなく、旧劇を嫌々やってるのを半次郎(攻め)にあっさり見抜かれて……
というわけだけど、この半次郎が色気したたるいい男でしたねー。
最初は、女形として登場するので、え?どっちが攻め?女形もやってるってことは攻めの身長、そんなに高くないんだろうか?攻めの身長は180cm超えててほしいんだけど……、でも「美丈夫」ともあるしそれなりに背丈あるんだろか?
と最初こそ戸惑いましたが、読んでるうちに、気にならなくなりました。
半次郎は梨園育ちだけど訳あって梨園を飛び出し、役者をしているんですね。
苦労人ということもあって、包容力たっぷり。
なにかと英介に目をかけて、あれやこれやとお世話しまくり。ふふ。
半次郎の昔の大阪言葉が良かったです。
色気が凄まじいことよ……。
東京育ちの英介に「ほれ、半次郎さんが好きや、て言うてみぃ」と大阪言葉を言わせようとするも、「俺に大阪言葉しゃべらせようとするときは大抵、やらしいこと考えるからいや」とプイッとされてしまった時の
「やらしいこと考えてるわしは嫌か?」と囁くシーン。
もう大好きでーす!!!って感じなんだけど、これ現代物だったら、どこのひひじじいの台詞なのよ?とドン引き確定ですよね。
でも時代モノだから、キャー!!って感じ。萌える。
一方の英介は負けん気が強くてきっぱりさっぱりしてて、なかなか面白いキャラでした。
最後「二人でなら、きっとどんな困難も乗り越えていける」と締めくくって、ふむふむ確かにそうかも!と思わせた後のあとがきで「英介は一度出征します」とあり えええ〜!!!っとなりました。
まさかの出征!!!
確かに大戦に向かっていく時代ではありますが。
残された半次郎はどう過ごしていたんだろうか……生きた心地がしなかっただろうなぁ……と、さらりと描かれた彼らのその後に、ちょっ!!そこもっっと詳しくっっ!!!となりました。
あと芸人シリーズだと思い込んでいたせいで積んでましたが(芸人シリーズはまだ電子化されていないものも確かあるため、全部電子化されたら最初から読もうと思ってる)芸人シリーズではなかったですね。
もっと早く読めば良かったわ……。
電子書籍で読了。挿絵あり。あとがきあり。
無声映画からトーキーに移る頃のことは、合衆国のものをいくつか読んだり観たりしたことがあるのですが、日本でこの時代について書かれたお話はあまり読んだことがなかったのでとても興味深かったです(主役の二人よりも『活動写真のスター』竹蔵さんにえらく興味をそそられてしまったりして……)。
才能があり、真面目に取り組もうとしている若い受けさんと、年上のゆとりで包み込み、相手を仕事でも実人生でも大きく伸ばしていく攻めの組み合わせは、安心して読めます。
ただ、とてもライトに読み終わってしまったので「もうちょっとドラマチックな所があっても良かったかな」と思いました。
私が『日本映画の歴史』に気を取られて萌えそびれただけなのかも知れませんが。
あ、読後感は良かったです。
この時代のお話だと(大戦に向かっていく時代ですので)どうしても登場人物のその後が気になってしまうのですが、あとがきで触れられていて良かった。久我さんの登場人物に対する愛を感じました。
大阪芸能史の系譜に連なる作品ですが、今回は落語界やなくて、映画界のお話。
映画が活動写真と呼ばれた無声の時代劇から、トーキーという有声の現代劇への過渡期を舞台に、東京から来た俳優と、関西歌舞伎出身の人気役者との出会いが描かれます。
大正末から昭和初めの時代背景や、東京と関西の撮影所の違いなど、こういう、ちょっと昔のお話がちゃんと描かれているのって、とっても貴重で、とても嬉しい。
それだけに、この現代サラリーマン物にしか見えないカバーイラストはちょっと残念でした。
作家買いしてなければ、こんな面白い本を見逃すところでした。
